エステサロンの損益分岐点。固定費÷粗利率で、1日の必要客数を求める。

エステサロンの損益分岐点。固定費÷粗利率で、1日の必要客数を求める。 エステサロンの開業

エステサロンの損益分岐点は「固定費 ÷ 粗利率」で求めます。これは「毎月の固定費をまかなうために最低限必要な月商」です。計画の月商がこれを上回れば黒字、下回れば赤字になります。

日本政策金融公庫総合研究所の「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)によると、エステティック業の粗利率の平均は83.0%です。この数字と月の固定費から、損益分岐点と1日あたりの必要客数を計算できます。

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損益分岐点の算式

損益分岐点の月商は次の式で求めます。

損益分岐点の月商(円)= 月の固定費(円)÷ 粗利率

粗利率は「1円の売上から、変動費(材料費・仕入原価)を引いた残りの割合」です。エステサロンでは施術消耗品や店販仕入が変動費にあたります。

粗利率 = 1 − 原価率

エステティック業の原価率の全国平均は17.0%(公庫「小企業の経営指標調査」2025年度調査)です。したがって粗利率は 1 − 0.17 = 0.83(83.0%)です。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査」サービス業(他に分類されないもの)業種別経営指標(2025年度調査)。対象は公庫の融資先のうち従業者50人未満の法人企業。数値は平均値です。原価率は売上高総利益率(83.0%)を100%から引いた値です。

1人サロンの損益分岐点の試算

1人で施術するサロンで、月の固定費を「家賃8万円+その他の経費15万円=合計23万円」と設定した場合の損益分岐点を計算します(人件費は含みません。個人事業では事業主の生活費は別途利益から支払います)。

損益分岐点の月商 = 230,000円 ÷ 0.83 = 約277,000円(約27.7万円)

月商が27.7万円を超えれば黒字になります。次に、この月商を1日の客数に換算します。

1日の必要客数 = 277,000円 ÷ 客単価12,000円 ÷ 25日 = 約0.9人/日

客単価12,000円・月25日の場合、損益分岐のために必要な1日の客数は約0.9人です。言い換えると、1日1人の施術が入れば固定費をまかなえる計算になります。

スタッフ1人を雇用した場合の損益分岐点

スタッフ1人を雇用する場合、人件費が固定費に加わります。月給20万円のスタッフに対して事業主負担の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険の合計で概ね14〜15%)を約3万円と見込むと、人件費は月約23万円です。

固定費は「家賃8万+その他の経費15万+人件費23万=合計46万円」になります。

損益分岐点の月商 = 460,000円 ÷ 0.83 = 約554,000円(約55.4万円)

スタッフを1人雇うだけで、損益分岐点の月商は27.7万円から55.4万円へと2倍に増えます。次に1日の必要客数を求めます。

1日の必要客数 = 554,000円 ÷ 12,000円 ÷ 25日 = 約1.8人/日

客単価12,000円・月25日の場合、1日約1.8人の施術が必要です。

規模別の損益分岐点の比較(客単価12,000円・月25日・原価率17%の場合)
ケース 月の固定費 損益分岐点の月商 1日の必要客数
1人サロン(人件費なし) 230,000円 約277,000円(約27.7万円) 約0.9人
スタッフ1人雇用 460,000円 約554,000円(約55.4万円) 約1.8人

全国平均の費用構造から見た損益分岐点

公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)のエステティック業の平均は、人件費率38.0%・その他経費率44.5%(家賃を含む)です。これらは売上に対する比率であり、固定費として扱うとおおよその損益分岐点を確認できます。

売上を「S」とすると、費用は原価(0.17S)+人件費(0.38S)+その他経費(0.445S)です。損益分岐点は費用=売上のとき、つまり 0.17S + 0.38S + 0.445S = S のとき、合計係数は 0.995 です。全国平均の費用構造では、営業利益率の平均が −6.9%(全業種平均・赤字企業を含む)となっており、これは平均的なエステサロンが損益分岐点ギリギリかやや超えた水準で経営していることを示しています。

黒字企業(47社)の平均は、原価率14.7%・人件費率31.3%・その他経費率44.5%で、営業利益率4.5%です。黒字企業は特に人件費率が全体平均(38.0%)より低く抑えられています。

原価率が低いと損益分岐点も下がる

エステサロンの原価率(施術消耗品・店販仕入)は飲食業と比べると低い水準です。原価率が低いと粗利率が高くなり、損益分岐点が下がります。これは「売上が増えたときに利益が積み上がりやすい」構造でもあります。

例えば、原価率17%(粗利率83%)と原価率35%(粗利率65%)の場合で、固定費23万円のときの損益分岐点を比べます。

原価率の違いによる損益分岐点の比較(固定費23万円の場合)
原価率 粗利率 損益分岐点の月商
17%(エステ平均) 83% 約277,000円
35%(飲食業参考) 65% 約354,000円

原価率が低いエステサロンは、同じ固定費でも損益分岐点が低くなります。ただし、その分「売上のほとんどが人件費・家賃・その他経費で消える」構造でもあるため、固定費の管理が収益の鍵になります。

客単価が10%下がったときの損益分岐の変化

客単価の変化は粗利率には影響せず、損益分岐点の月商自体は変わりません。ただし、「月商を達成するために必要な1日の客数」は変わります。

客単価が12,000円から10,800円(10%減)になったときの必要客数を計算します。

客単価の変化による1日の必要客数の変化(損益分岐点月商27.7万円・25日の場合)
客単価 1日の必要客数(1人サロン) 1日の必要客数(スタッフ1人)
12,000円 約0.9人 約1.8人
10,800円(10%減) 約1.0人 約2.1人

客単価10%の低下は、1日の必要客数を0.1〜0.3人押し上げます。スタッフを雇うケースでは、損益分岐に必要な客数への影響が相対的に大きくなります。

シミュレーターで損益分岐点を確認する

当サイトのエステサロンの開業 収支シミュレーターは、入力した数字から損益分岐点の月商と1日の客数を自動で計算します。人件費・家賃・その他経費を入力すると、全国のエステティック業の平均と並べて比較できます。

客数が計画の70〜90%に落ちた感度分析も確認できます。開業前の計画の精度確認にご利用ください。

数字を入れて確認する:
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計画月商270万円に対して、損益分岐点は何%の水準にあるか

シミュレーターの既定値(ベッド3台・1日3回転・客単価12,000円・月25日)では、計画月商は270万円です。この月商を達成している状態を「100%」として、損益分岐点が何%の水準にあるかを固定費の違い別に確認します。

粗利率83.0%(原価率17.0%)を前提に計算します。損益分岐点の月商 = 固定費 ÷ 0.83。

固定費の水準別・損益分岐点の月商と計画月商比(計画月商270万円の場合)
ケース 固定費の内訳 月の固定費合計 損益分岐点の月商 計画月商270万円に対する比率
1人サロン(人件費なし) 家賃8万+その他15万 230,000円 約277,000円(約27.7万円) 約10.2%
スタッフ1人(月給20万) 家賃8万+その他15万+人件費23万 460,000円 約554,000円(約55.4万円) 約20.5%
スタッフ2人(月給20万×2) 家賃8万+その他20万+人件費46万 740,000円 約891,000円(約89.1万円) 約33.0%
スタッフ3人(月給20万×3) 家賃10万+その他20万+人件費69万 990,000円 約1,193,000円(約119.3万円) 約44.2%

1人サロンの場合、計画月商の約10%(27.7万円)が損益分岐点です。計画が大幅に未達でも赤字になりにくい構造です。スタッフを3人雇用すると損益分岐点は約119万円まで上がり、計画の44%に相当します。この水準では、稼働率が計画の60%以下に下がると損益分岐を下回ります。

計画月商に対して損益分岐点が低いほど、売上が計画を下回ったときの「安全余裕率」が大きくなります。スタッフ雇用の計画を立てる際は、採用時点ではなく「稼働率が上がってからスタッフを追加する」という順序のほうが、資金リスクを抑えられます。

損益分岐点の1日客数を、ベッド数と回転数で確認する

損益分岐点の月商を1日の施術件数に換算するには、「月商 ÷ 客単価 ÷ 営業日数」の式を使います。

1日の必要施術件数 = 損益分岐点の月商 ÷ 客単価 ÷ 月の営業日数

ベッド3台・月25日・客単価12,000円の前提で、固定費の水準別の1日必要施術件数と、ベッドあたりの必要回転数を計算します。

固定費の水準別・1日の必要施術件数とベッドあたり回転数(ベッド3台・月25日・客単価12,000円)
ケース 損益分岐点の月商 1日の必要施術件数 ベッド1台あたりの1日回転数
1人サロン(固定費23万) 約277,000円 約0.9件 約0.3回転(3台で0.9件)
スタッフ1人(固定費46万) 約554,000円 約1.8件 約0.6回転
スタッフ2人(固定費74万) 約891,000円 約2.97件 約1.0回転
スタッフ3人(固定費99万) 約1,193,000円 約3.98件 約1.3回転

スタッフ2人(固定費74万円)の場合、損益分岐に必要な1日の施術件数は約3件です。ベッド3台・1日1回転で達成できる水準です。

スタッフ3人になると、ベッド1台あたり1.3回転が必要です。1回の施術が60〜90分かかるエステサロンでは、1日の稼働時間(例:10時〜20時の10時間)の中で1台あたり1.3回転はおおむね実現可能な数字ですが、稼働率が90%以上を維持することが前提になります。

1人サロン(業務委託ゼロ・固定費23万円)の場合、ベッド1台あたり0.3回転が損益分岐です。実質的に「1日1件施術すれば固定費はまかなえる」計算になります。この数字は、1人オーナーが開業初期に予約が少ない時期でも赤字になりにくい理由を示しています。

当サイトのシミュレーターでは、固定費(家賃・人件費・その他)を入力すると、損益分岐点の月商と1日の必要客数が自動で計算されます。スタッフを増やすタイミングの検討にもご利用ください。

数字を入れて確認する:
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損益分岐点を下げる2つのアプローチ

損益分岐点は「固定費 ÷ 粗利率」です。損益分岐点を下げる(黒字化に必要な月商を減らす)には、「固定費を下げる」か「粗利率を上げる(原価率を下げる)」のどちらかです。

アプローチ1:固定費を下げる

固定費の主な構成は人件費・家賃・その他経費です。それぞれの削減効果を試算します(粗利率83.0%で計算)。

固定費削減による損益分岐点の変化
固定費の変化 削減額 損益分岐点の変化 月商への影響
家賃を8万円から6万円に下げる −20,000円 −24,096円 損益分岐点が約2.4万円低下
家賃を8万円から10万円に上げる +20,000円 +24,096円 損益分岐点が約2.4万円上昇
スタッフ採用(月給20万円・社保事業主負担約3万円込み) +230,000円 +277,108円 損益分岐点が約27.7万円上昇

スタッフを1人採用すると、損益分岐点の月商が約27.7万円上昇します。採用することで1日の回転数・台数が増え、売上が27.7万円以上増えれば採用は収益に貢献します。スタッフ1人の採用でベッド1台分の施術が追加できると、客単価12,000円・25日なら月300,000円(=1日1回転分)の売上増になるため、人件費のプラス分を上回ります。

アプローチ2:客単価を上げる

客単価を上げると、同じ固定費・同じ来店客数でも損益分岐に必要な客数が減ります。

客単価の変化による損益分岐点の1日客数の変化(固定費23万円・粗利率83%・月25日)
客単価 損益分岐月商 1日の必要客数
8,000円 277,108円 約1.4人
10,000円 277,108円 約1.1人
12,000円 277,108円 約0.9人
15,000円 277,108円 約0.7人

固定費が同じ23万円なら、損益分岐月商は客単価に関係なく約27.7万円で変わりません。ただし、客単価が高いほど「1日何人の施術があれば損益分岐を超えるか」の人数が少なくなります。客単価15,000円なら1日に0.7人(月間17〜18人)の施術で損益分岐を超える計算です。

開業1か月目(75%スタート)でも損益分岐を超えられるか確認する

開業直後は月商が計画を下回るため、計画月商ではなく「75%スタートの月商」で損益分岐を超えられるかを確認します。

ベッド3台・3回転・12,000円・25日の計画月商270万円の場合:

開業1か月目の月商(75%)= 2,700,000円 × 0.75 = 2,025,000円
損益分岐月商(固定費23万円)= 約277,000円
差額 = 2,025,000円 − 277,000円 = 約1,748,000円(プラス)

1人サロンで固定費が23万円の場合、開業1か月目の月商(75%)でも損益分岐を大幅に上回ります。問題が起きやすいのは「人件費が増えた後」か「売上が計画より大きく下回った場合」です。固定費が115万円(家賃15万+人件費80万+その他20万)まで増えると、損益分岐月商は約138.6万円になり、75%スタートの月商202.5万円との余裕は約63.9万円まで縮まります。

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この記事は、fufumumu_design(当方)が公表資料をもとに整理した情報です。記載の内容は情報提供を目的としており、税務・法務・融資の相談・代行は行っていません。税理士・中小企業診断士・社会保険労務士などの専門家に確認されることをお勧めします。最終確認:2026年10月。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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