ケアマネ事務所を開業した直後は、担当利用者がゼロからのスタートになります。認知度がない状態で依頼が来るのを待っているだけでは、収益が生まれるまでに時間がかかります。どの経路から依頼が来るのかを理解したうえで、意図的に関係づくりをしていく必要があります。
この記事では、居宅介護支援事業所への依頼が実際にどこから来るのか、主な経路の特徴と、開業後に取るべき具体的なアプローチを整理します。
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依頼が来る主な経路は4つある
居宅介護支援事業所への利用者の依頼は、大きく次の4つの経路から来ます。
| 経路 | 依頼の背景 | 開業初期の動きやすさ |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 要介護認定を受けた方が新規に介護サービスを使い始めるときや、要支援から要介護に区分が上がったとき | 関係づくりができれば安定した紹介元になりやすい |
| 病院・医療ソーシャルワーカー(MSW) | 入院・退院時に居宅でのケアマネが必要になったとき | 医療機関との連携実績が必要で時間がかかる |
| 他の介護事業所 | 訪問介護・通所介護の利用者がケアマネを必要としているとき、または担当ケアマネの交代が必要なとき | 顔見知りになれば口コミ的に紹介が来やすい |
| 本人・家族からの直接問い合わせ | インターネット検索・市区町村の介護保険の窓口からの案内 | 開業初期は少ないが積み上がると安定した経路になる |
それぞれの経路の特徴と、具体的なアプローチを詳しく見ていきます。
地域包括支援センターとの関係が最初の核になる
居宅介護支援事業所の開業後、最初に依頼をもたらす可能性が高いのは地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、介護保険法第115条の46に基づき、市区町村が設置する機関です。主な役割のひとつとして、要介護認定を受けた高齢者に対して介護サービスの利用開始を支援することがあり、その中で「どの居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)に相談すればよいか」を利用者・家族に案内する機能を持っています。
地域包括支援センターが利用者に紹介するケアマネ事務所は、担当地域内でその事務所を知っているかどうかに左右されます。開業してすぐは「どこにあるかわからない」状態のため、自ら出向いて顔を売ることが不可欠です。
地域包括支援センターへのアプローチの基本
地域包括支援センターへのアプローチでは、次のことを意識します。
- 開業後できるだけ早く挨拶に行く。名刺と事業所のチラシを持参し、「この地域で開業した○○ケアマネ事務所です」と顔を覚えてもらう
- 担当地域内にある包括は複数あることが多い。まずは事業所の所在地から最も近い包括から回る
- 担当の社会福祉士・主任ケアマネと個人的に顔見知りになることを目的にする。「困ったときに思い出してもらえる」状態をつくるまでが目標
- 1回行くだけでは記憶に残らない。定期的(月1回程度)に立ち寄るか、地域ケア会議など包括が主催するイベントに出席する機会をつくる
地域包括支援センターとの関係が安定してくると、新規の利用者が入ったタイミングで「○○さんに聞いてみてください」と案内されるようになります。これが開業後に依頼件数を積み上げる最も一般的な経路です。
医療ソーシャルワーカーからの紹介は時間をかけて関係を積む
入院中または退院時に居宅でのケアマネジメントが必要になった場合、医療ソーシャルワーカー(MSW・医療相談員)がケアマネ事務所を案内することがあります。
退院・退所時の連携は、介護報酬上も「退院・退所加算」として評価されており(後述)、医療機関との連携に積極的に取り組むことが収益にも影響します。
ただし、医療機関との連携は地域包括支援センターへのアプローチよりも時間がかかります。MSWは日々多くの相談を抱えており、新顔のケアマネ事務所を積極的に紹介するには、「信頼できる事業所」という印象が先に必要です。
医療機関へのアプローチ
開業直後に医療機関との関係を築くうえでの基本的な考え方は次のとおりです。
- 病院の相談室に挨拶に行く際は、事業所のチラシと名刺を持参し、「連絡先を知ってもらう」ことだけを最初の目標にする。売り込みにならない態度が大切
- 最初の担当利用者が退院に関わる場合、退院前カンファレンスに積極的に出席する。病院側の担当者に「動いてくれるケアマネ」として認知されるチャンスになる
- 担当利用者の状態が変わったとき(入院・認知機能の低下)に、速やかに医療機関と情報共有することを積み重ねる。これが「連携しやすいケアマネ事務所」の評価につながる
入院時情報連携加算(Ⅰ・Ⅱ)は、利用者が入院した際にケアマネが医療機関に情報提供することで算定できます。医療機関との連携行動が加算につながる仕組みになっているため、担当利用者の入院時に漏れなく動くことが収益にも影響します。
他の介護事業所からの口コミ的な紹介
訪問介護・通所介護・訪問看護などの他の介護事業所のスタッフは、担当利用者のケアマネと日常的に関わります。そのため、既にサービス利用中の高齢者がケアマネを変更したいと相談した場合や、サービスは利用しているがケアマネがついていない人を見つけた場合に、知っているケアマネ事務所を紹介することがあります。
特に、自分の事業所と同じ法人の関係会社や、日ごろから連絡を取り合っている事業所は紹介元になりやすいです。逆に、名前も顔も知らない事業所を紹介することは難しいため、他の事業所との関係は積み上げが必要です。
他の事業所との関係づくりのポイント
- サービス担当者会議(ケアプランを確定する際に担当者を集めて行う会議)を、形式的に書面で済ませず、関係者が顔を合わせる機会として活用する
- 担当利用者が他の事業所のサービスを利用している場合、連絡や情報共有を丁寧に行う。「このケアマネは連絡が来る・返事が速い」という評価が口コミにつながる
- 地域の介護事業所が集まる研修会や、市区町村が主催する連絡会に積極的に参加する
インターネット経由と窓口案内からの直接問い合わせ
利用者本人や家族が「ケアマネ 探し方」「ケアマネ 地域名」などで検索した場合、または市区町村の介護保険担当窓口で「居宅介護支援事業所の一覧」を案内された場合に、直接連絡が来ることがあります。
この経路からの依頼は、開業後すぐには多くありません。検索で見つけてもらうためにはWebでの露出が必要であり、市区町村の一覧に掲載されるだけでは積極的に選ばれる理由にはなりません。
ただし、長期的には安定した経路になる可能性があります。Webサイトに「この地域でケアマネを探している方へ」という視点での情報を置いておくことや、市区町村の事業所一覧への登録を確実に行っておくことは、手間が少ないわりに将来の下地になります。
開業後の最初の3か月で何をするか
開業後の最初の3か月は、担当件数がゼロからわずかの状態が続きます。この期間に関係づくりをしておくことが、その後の依頼の増え方に影響します。
| 時期 | 優先する動き |
|---|---|
| 開業前〜開業直後 | 担当地域の地域包括支援センターへの挨拶回り。名刺・チラシを持参して「開業した」と伝えることを目的にする |
| 開業後1か月目 | 包括への2回目の訪問。最初の担当利用者がついたら、担当サービス事業所への挨拶も兼ねてサービス担当者会議を実施する |
| 開業後2〜3か月目 | 担当利用者が在籍する医療機関や薬局にも顔を見せる。地域ケア会議・連絡会への参加を続ける |
| 開業後3か月〜 | 紹介が来たら迅速に対応することを積み重ねる。「返事が早い・動いてくれる」評価が紹介元の信頼につながる |
依頼件数の増え方は地域によって差がある
担当利用者数が損益分岐点(ひとりケアマネ事務所では25〜30件程度が目安)に達するまでの期間は、事務所の所在地域や近隣の既存事業所の密度によって変わります。
高齢者の人口が多い地域や、既存のケアマネ事務所の担当件数がすでに満員に近い地域では、依頼が来るまでの時間が短い傾向があります。一方、ケアマネ事務所の数が多く競合が多い地域では、関係づくりに時間がかかることもあります。
いずれの地域でも、地域包括支援センターや他のサービス事業所との顔の見える関係を先に築いておくことが、依頼経路を広げるうえで共通の基本になります。
まとめ
居宅介護支援事業所への依頼は、地域包括支援センター・病院のMSW・他の介護事業所・利用者や家族からの直接問い合わせという4つの経路から来ます。
開業直後は認知度がゼロのため、地域包括支援センターへの早期の挨拶と定期的な訪問を最優先にすることが件数を積み上げる近道です。医療機関や他の事業所との関係は時間をかけて積み上げることで、安定した紹介経路になっていきます。
出典:介護保険法第115条の46(地域包括支援センターの設置根拠)、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
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