ケアマネジャーに関連する機関として、「地域包括支援センター」と「居宅介護支援事業所」の2つがよく挙げられます。どちらも高齢者の生活を支援する機関ですが、役割・対象・設置根拠が異なります。
この記事では、2つの機関の違いと、利用者が移行するタイミング、開業後に連携が必要になる場面を整理します。
すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。→ 居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)の開業 収支シミュレーター
地域包括支援センターとは何か
地域包括支援センターは、介護保険法第115条の46に基づき市区町村が設置します。直営の場合もありますが、多くは社会福祉法人・医療法人・NPO法人などに委託されて運営されています。
配置が義務づけられている専門職は3職種です。
- 保健師(または地域ケアに経験のある看護師)
- 社会福祉士
- 主任介護支援専門員
この3職種がチームを組み、地域全体の高齢者の相談に対応する機関です。
出典:介護保険法第115条の46(地域包括支援センター)・第115条の47(地域包括支援センターの設置)
居宅介護支援事業所とは何か
居宅介護支援事業所は、介護保険法第79条に基づき、都道府県知事(または市区町村長)の指定を受けた民間の法人が設置します。主任介護支援専門員と介護支援専門員(ケアマネジャー)が配置され、要介護1〜5の認定を受けた利用者のケアプランを作成します。
居宅介護支援の費用は全額が介護保険から支払われるため、利用者の自己負担はありません。
出典:介護保険法第79条(居宅介護支援事業者の指定)・第46条(居宅サービス計画費の支給)
2つの機関の役割の違い
最も大きな違いは、対象となる利用者の要介護度と、担う機能の範囲です。
| 項目 | 地域包括支援センター | 居宅介護支援事業所 |
|---|---|---|
| 設置主体 | 市区町村(委託可) | 民間の法人 |
| 法的根拠 | 介護保険法第115条の46 | 介護保険法第79条 |
| 主な対象 | 65歳以上の高齢者全般・要支援1・2 | 要介護1〜5の認定者 |
| ケアプランの種類 | 介護予防サービス計画(予防給付) | 居宅サービス計画(介護給付) |
| 利用者の費用負担 | なし | なし |
| 主な業務 | 総合相談・権利擁護・包括的継続的ケアマネジメント支援・介護予防ケアマネジメント | 居宅サービス計画の作成・給付管理・モニタリング |
簡単に言い換えると、地域包括支援センターは「まだ要介護になっていない高齢者も含めた、地域全体の相談と予防の窓口」です。居宅介護支援事業所は「要介護認定を受けた人のケアプランを作成し、サービスをコーディネートする機関」です。
利用者が2つの機関を移行するタイミング
介護保険の認定区分が変わるタイミングで、担当機関が移行する場合があります。
要支援1・2の人は、地域包括支援センターが介護予防サービス計画を作成します。一方、要介護1〜5に区分変更された場合は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが居宅サービス計画を作成します。
よくある移行の流れは次のとおりです。
- 要支援1または要支援2の認定を受けた高齢者が、地域包括支援センターでケアプランを受ける
- 病気・転倒・ADL(日常生活動作)の低下などにより、要介護1以上に区分変更となる
- 本人・家族が居宅介護支援事業所を選択する(自由選択)
- 地域包括支援センターのケアマネジャーから、居宅介護支援事業所のケアマネジャーへ引き継ぎが行われる
逆に、要介護認定を受けていた人が区分変更で要支援になった場合は、居宅介護支援事業所から地域包括支援センターへの移行が生じます。
この移行のタイミングで引き継ぎがスムーズに行われると、利用者の生活の継続性が保たれます。包括とケアマネ事務所が日頃から顔の見える関係にあることが、引き継ぎの円滑さにも影響します。
地域包括支援センターが担う4つの機能
地域包括支援センターの業務は、法令上4つの機能に整理されています。
- 介護予防ケアマネジメント:要支援1・2の人の介護予防サービス計画を作成し、サービスをコーディネートします。
- 総合相談・支援:介護に限らず、医療・福祉・生活全般に関する相談を受け付けます。本人・家族・地域住民からの相談の窓口になります。
- 権利擁護:高齢者の虐待防止・成年後見制度の活用支援・消費者被害の防止などを担います。
- 包括的継続的ケアマネジメント支援:地域のケアマネジャーへの支援・困難事例の相談対応・ケアマネジャーのネットワーク形成を担います。
4番目の「包括的継続的ケアマネジメント支援」は、地域包括支援センターが居宅介護支援事業所のケアマネジャーを側面から支援する機能です。困難な利用者への対応で悩んだときや、医療との連携が難しい場面で相談できる機関として機能します。
開業後に地域包括支援センターと連携が必要になる場面
居宅介護支援事業所を開業した後、地域包括支援センターとは複数の場面で関わることになります。
よくある連携の場面をいくつか挙げます。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 利用者の紹介を受ける | 区分変更で要介護になった利用者を、包括から紹介してもらう(開業直後の利用者の主要な流入経路のひとつ) |
| 困難事例の相談 | 家族関係が複雑な利用者・虐待が疑われる事例などで、包括の社会福祉士・主任ケアマネジャーに相談する |
| 地域ケア会議への参加 | 包括が主催する「個別地域ケア会議」や「自立支援型地域ケア会議」に、担当ケアマネとして参加する場合がある |
| 情報提供・共有 | 担当利用者が虐待を受けた疑いがある場合や、権利擁護が必要な場面で包括に連絡・連携する義務がある |
開業直後の居宅介護支援事業所にとって、地域包括支援センターからの利用者紹介は収益の基盤になる場合があります。包括に自事業所を認知してもらうために、開業後に挨拶に赴く事業所が多いのはこのためです。
地域包括支援センターの設置数と担当圏域
地域包括支援センターの設置数は全国で5,431か所(令和4年時点・厚生労働省調べ)です。各センターはおおむね中学校区を単位とする「日常生活圏域」を担当しており、1センターあたりの担当人口は高齢者約3,000〜6,000人を目安としています。
ただし、地域によって担当圏域の広さや設置密度は異なります。人口の少ない町村では1センターが広いエリアをカバーすることもあります。
自分の事業所がどの地域包括支援センターの担当圏域にあるかを確認するには、市区町村の介護保険担当窓口または市区町村の公式ウェブサイトで確認するのが確実です。
出典:厚生労働省「地域包括支援センターの現状について」(令和4年度調査)
地域包括支援センターの主任ケアマネジャーとの関係
地域包括支援センターに配置されている主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーへの支援・指導的な役割も担っています。
運営指導(旧「実地指導」)でケアプランの内容について課題が指摘された場合や、困難な利用者への対応でケアプランの見直しが必要になった場合に、相談・助言を求める相手になります。
居宅介護支援事業所の管理者も主任ケアマネジャーでなければならないことが原則ですが(令和9年3月31日まで経過措置がある都道府県もあります)、地域包括支援センターの主任ケアマネジャーとの関係は、管理者要件とは別に実務上重要な意味を持ちます。
まとめ
地域包括支援センターは市区町村が設置する総合相談・予防給付のケアマネジメントを担う機関で、要支援1・2の人のケアプランを作成します。居宅介護支援事業所は民間法人が設置する機関で、要介護1〜5の人の居宅サービス計画を作成します。
利用者は要介護度の区分変更のタイミングで2つの機関を移行します。開業後の居宅介護支援事業所にとって、地域包括支援センターは利用者の紹介・困難事例の相談・地域ケア会議での連携など、多くの場面で関わる機関です。
開業前に収支の見込みを確認したい方は、以下のシミュレーターをご利用ください。担当件数・要介護度の構成・加算の取得状況を入力して、月次の収入と損益分岐点を試算できます。
開業後の収支の見込みをご自身で確認されたい方は、シミュレーターをご利用ください。→ 居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)の開業 収支シミュレーター


コメント