小規模多機能型居宅介護の定員。登録29人・通い18人・宿泊9人の仕組み。

小規模多機能型居宅介護の定員はいくつか 介護

小規模多機能型居宅介護には、「登録定員」「通い定員」「宿泊定員」の3種類の定員があります。それぞれの上限は、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号。以下「省令第34号」)で定められており、登録定員は29人以下、通い定員は登録定員の2分の1かつ18人以下、宿泊定員は通い定員の3分の1かつ9人以下とされています。これらは法令に基づく変更できない上限です。

3種類の定員はそれぞれ独立した数字ではなく、連動する形で上限が決まっています。登録定員が収益の天井を決め、通い定員はその2分の1以内に制限され、宿泊定員はさらにその3分の1以内に収まります。収支計画を立てるうえでは、この連動関係を正確に把握しておく必要があります。

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3種類の定員がある理由

小規模多機能型居宅介護は、「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスを1つの事業所が一体的に提供します。利用者は必要に応じてこれらを組み合わせて利用でき、それぞれのサービスを別々の事業所に申し込む必要がないのが特徴です。

この仕組みのなかで、定員には2つの役割があります。

ひとつは「その事業所に登録できる利用者の最大人数」です。これが登録定員です。登録した利用者は、訪問・通い・宿泊を自由に組み合わせて利用できます。報酬は月額定額制のため、1か月に何回サービスを受けても請求金額は変わりません。

もうひとつは「同じ日に施設内に受け入れられる人数の上限」です。通い定員と宿泊定員がこれに当たります。登録者全員が毎日通うわけではありませんが、同じ日に多くの利用者が重なると、施設のスペースや職員の対応能力を超えます。そのため、1日に通える人数と宿泊できる人数にもそれぞれ上限が設けられています。

3種類の定員は連動して設定されています。通い定員は登録定員を基準に決まり、宿泊定員は通い定員を基準に決まります。この連動関係は開業前の計画段階から理解しておく必要があります。

登録定員は29人以下と法令で上限が決まっている

省令第34号第63条第2項は、小規模多機能型居宅介護の登録定員について「29人以下」と定めています。

この上限が設けられている背景には、制度設計の方針があります。小規模多機能型居宅介護は2006年(平成18年)の創設当初から「地域密着型サービス」として位置づけられており、住み慣れた地域で生活を継続するための、小規模で地域に根ざしたサービスであることが制度の趣旨です。大規模化を防いで地域の利用者と密接な関係を維持するために、29人という上限が設けられています。

登録定員29人という数字は、収益の上限に直結します。小規模多機能型居宅介護の報酬は月額定額制であり、1か月に何度訪問・通い・宿泊を利用しても、請求できる金額は変わりません。登録者が29人で定員に達すれば、基本報酬としてそれ以上の収入増は原則として見込めません(加算は別)。

29人以下であれば事業者は自由に登録定員を設定できます。20人や25人で申請することも可能です。ただし、収支を成り立たせるためには登録者数を定員に近い水準で維持する必要があります。そのため、多くの事業所は省令の上限である29人を登録定員として設定します。

登録定員の変更は、指定を行った市区町村への変更申請が必要です。開業後に「定員を増やしたい」と思っても、29人の上限を超えることはできません。この上限が収益の構造的な制約になることを、計画段階で認識しておく必要があります。

出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条第2項

通い定員は登録定員の2分の1・最大18人まで

通い定員は「登録定員の2分の1以下、かつ18人以下」と定められています(省令第34号第63条第2項)。

2つの条件が課されているため、どちらを満たすかではなく、どちらの条件も満たす必要があります。登録定員が29人であれば、2分の1は14.5人です。端数は切り捨てとなるため、通い定員の上限は14人と計算します。この場合、「登録定員の2分の1(14人)」と「最大18人」のうち小さい方が適用されるため、通い定員の上限は14人になります。

以下の表に、登録定員ごとの通い定員の上限をまとめます。

登録定員と通い定員の上限(省令第34号第63条第2項に基づく計算)
登録定員 登録定員の2分の1 通い定員の上限
29人(最大) 14人(端数切り捨て) 14人
25人 12人(端数切り捨て) 12人
20人 10人 10人
18人 9人 9人

登録定員の最大が29人である以上、通い定員の実質的な上限は14人になります(29人 ÷ 2 = 14.5 → 14人)。「18人以下」という条件は、登録定員が36人以上ある別の地域密着型サービス類型を想定した規定で、小規模多機能型居宅介護では登録定員の上限が29人であるため実際の通い定員の上限は14人になります。

通い定員が登録定員の2分の1に抑えられている理由は、利用形態の実態と関係しています。登録者全員が毎日通うことは現実には少なく、訪問を中心に使う利用者や、週に数日だけ通う利用者が混在します。そのため、登録者全員が一度に来ても対応できる規模を設備・人員の両面で要求することは現実的ではないという判断があります。

実際の運営では、通い定員に対して「どれだけ安定的に通いを確保できるか」が収支に影響します。宿泊や訪問のみの利用者が多いと、通い定員を使い切れない日が続くことがあります。月額定額制のため、この差は収益に直接は反映されませんが、職員の稼働計画や費用配分に影響します。

出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条第2項

宿泊定員は通い定員の3分の1・最大9人まで

宿泊定員は「通い定員の3分の1以下、かつ9人以下」です(省令第34号第63条第2項)。

登録定員が29人で通い定員が14人の場合、宿泊定員の上限は3分の1の計算から出します。14 ÷ 3 = 4.66…となり、端数を切り捨てると4人です。9人という上限よりも、3分の1の計算が先に効いてくるため、宿泊定員の上限は4人になります。

以下の表に、通い定員と宿泊定員の上限をまとめます。

通い定員と宿泊定員の上限(省令第34号第63条第2項に基づく計算)
通い定員 通い定員の3分の1 宿泊定員の上限
14人(登録29人の場合) 4人(端数切り捨て) 4人
12人 4人(端数切り捨て) 4人
9人 3人 3人
18人(登録36人以上の仮定) 6人 6人(9人の上限に収まる)
27人(9人の上限が効くケース) 9人 9人(最大)

小規模多機能型居宅介護では登録定員が最大29人のため、宿泊定員の実質的な最大は4人となります。

宿泊定員が小さく設定されている背景には、制度の位置づけがあります。小規模多機能型居宅介護は「居宅サービス」の延長として設計されており、宿泊は主に家族の急病や冠婚葬祭など一時的な事情への対応として想定されています。長期の入居を前提とした施設サービスとは性質が異なるため、宿泊の定員も少なく設定されています。

実際の運営上では、宿泊定員の少なさが制約になることがあります。「緊急の宿泊ニーズが重なって断らざるを得ない」という事態は、定員4人の事業所では決して珍しくありません。一方で、宿泊の稼働が少ないと宿泊室の設備コストに見合った収益が得られない面もあります。

宿泊定員の運用については、後述する弾力化(通い定員の範囲内での融通)が認められています。緊急時に限り、通い定員を超えない範囲で宿泊定員を超えた人数を泊めることができます。

出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条第2項

定員を超えた場合の減算がある

登録定員・通い定員・宿泊定員のいずれかを超えて利用者にサービスを提供した場合、定員超過利用減算が適用されます。

具体的には、所定単位数の100分の70で算定します。通常の報酬に対して30%が減額されます。登録者数が定員を超えている月については、その月の全利用者に対する報酬が減算の対象となります。

この減算の影響は大きくなります。たとえば要介護3の利用者の場合、月額基本報酬は22,283単位で、その他地域の単価(11.40円)で計算すると約254,026円です。30%の減算を受けると、1人あたり約76,000円以上の減収です。登録者全員に適用されるため、規模が大きいほど影響は深刻になります。

以下は、定員超過利用減算が発生する主な場面です。

  • 登録者の退所・死亡の把握が遅れ、管理上の登録者数が実態より多くなっていた。
  • 他事業所から緊急の引き受けを行い、一時的に登録定員を超えた。
  • 通いの当日に急な依頼に対応した結果、通い定員を超えた。
  • 宿泊の緊急依頼への対応が宿泊定員の弾力化の要件を満たさないケースで超過した。

定員超過を防ぐためには、登録者数の日次・月次の管理体制を整えることが重要です。特に登録定員は、「現在の登録者数」だけでなく「今後の入所依頼に備えた空き枠」を常に意識しながら管理する必要があります。

また、通いや宿泊の当日の対応については、「定員を超えて受け入れる」ことで利用者や家族の緊急のニーズに応えたい場面もありますが、減算のリスクを理解したうえで判断することが必要です。

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)、定員超過利用減算に関する規定

登録定員29人が収益に与える影響

小規模多機能型居宅介護の報酬は月額定額制です。1か月を通じて通い・訪問・宿泊を何回利用してもその金額は変わりません。収益は「登録者数 × 要介護度別の月額報酬」で決まる構造です。

以下は、要介護度別の基本報酬(令和6年度改定後・同一建物減算なし)と、その他地域(単価11.40円)での月額換算です。

小規模多機能型居宅介護の要介護度別基本報酬と月額換算(令和6年度改定後)
要介護度 基本報酬(単位/月) 月額換算(11.40円/単位)
要介護1 10,458単位 約119,221円
要介護2 15,303単位 約174,454円
要介護3 22,283単位 約254,026円
要介護4 24,593単位 約280,360円
要介護5 27,209単位 約310,183円

出典:指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)、令和6年4月改定後の基本報酬

登録定員が29人の場合、全員が要介護3と仮定した基本報酬の上限は以下のとおりです。

254,026円 × 29人 = 約7,366,754円/月(加算なし)

これはあくまで基本報酬のみの試算であり、実際には要介護度の異なる利用者が混在します。また、処遇改善加算・特定事業所加算・認知症加算などが加わることで実際の請求額は増えます。

一方で、稼働率(定員に対する実際の登録者数の比率)が100%に達しない期間も多くあります。開業直後は特に登録者が少なく、収支がマイナスになる期間が続くことが一般的です。

登録定員が1人増えれば、要介護3の場合で月25万円前後の収入増が見込めます。しかし29人の上限が法定されている以上、増収の手段は限られています。実務的には以下の方向性が考えられます。

  • 要介護4・5の利用者の比率を高め、単位数の高い利用者に対応できる体制を整える。
  • 処遇改善加算・特定事業所加算・認知症加算などの加算を確実に取得する。
  • 稼働率を定員に近い水準で安定させ、空白期間を最小化する。

開業前の収支計画では、「登録定員29人が満床になるまでの期間」と「そのときの要介護度構成」を丁寧に試算することが重要です。収入の天井が法定されているサービスである以上、費用構造の管理と稼働率の確保が経営の柱になります。

定員の緩和運用(弾力化)の仕組み

省令第34号には、一定の条件下で定員を弾力的に運用できる規定があります。特に実務上よく使われるのが、宿泊定員の弾力化です。

宿泊定員については、以下の条件を満たす場合に限り、通い定員を超えない範囲で宿泊定員を超えた人数を受け入れることが認められています。

  • 緊急やむを得ない理由があること(例:家族の急病、冠婚葬祭、介護者の入院など)
  • 利用者の処遇に支障がないこと
  • 受け入れる人数の合計が通い定員を超えないこと

たとえば、登録定員29人・通い定員14人・宿泊定員4人の事業所で、ある夜に通いで来ていた利用者のなかに「今日は帰れない」という事情が発生した場合、通い定員(14人)を超えない範囲であれば宿泊定員(4人)を超えて5人・6人の宿泊を認めることができます。

ただし、この弾力化は「緊急時の臨時的な対応」であり、常態的に宿泊定員を超えて運営することはできません。毎週のように宿泊定員を超えて受け入れている状態は、制度の趣旨に反します。

通いサービスについても、弾力化が認められる場合があります。一部の市区町村では、通い定員を超えて受け入れることを条例で認めているケースがあります。具体的な要件は自治体によって異なるため、開業前に指定権者(市区町村の担当窓口)へ確認することが必要です。

また、登録定員の上限を緩和する特例として、同一敷地内に複数の小規模多機能型居宅介護の事業所が設置される場合など、市区町村の条例で定員の設定方法が変わることがあります。一般的な単独の小規模多機能型居宅介護の開業では、登録定員の上限は29人です。

開業の準備段階で定員の設定を検討する際には、省令の条件だけでなく、指定権者の市区町村が独自に定める条例の内容も確認する必要があります。

出典:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)の関連規定

まとめ

小規模多機能型居宅介護の定員は、省令第34号第63条第2項で以下のとおり定められています。

3種類の定員の上限まとめ(省令第34号第63条第2項)
定員の種類 上限の決め方 登録定員29人の場合の上限
登録定員 29人以下(法定) 29人
通い定員 登録定員の2分の1以下かつ18人以下 14人
宿泊定員 通い定員の3分の1以下かつ9人以下 4人

登録定員29人・通い定員14人・宿泊定員4人の組み合わせが、法令の範囲内での最大の設定です。この定員の構造が収益の天井を決めるため、収支計画を立てる際にはこれらの数字を起点に試算します。

定員を超えた場合は報酬が30%減算されます。登録者数・通い・宿泊の日次管理は運営の基本として位置づけ、特に登録定員に近い水準で運営する局面では空き枠の管理を丁寧に行う必要があります。

宿泊定員の弾力化(通い定員の範囲内での緊急受け入れ)は緊急時に限った運用であり、定常的に定員を超えることはできません。弾力化を適用する際は、省令の要件(緊急やむを得ない理由・処遇に支障がないこと)を満たしているかを確認します。

開業前の段階では、登録定員と要介護度別の利用者構成を想定して月額収入を試算し、費用との差額を確認することが重要です。シミュレーターでは、これらの条件を変えながら3年分の収支と資金繰りを確認できます。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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