令和6年6月に、3本の加算が1つに統合された。
通所介護の処遇改善加算は、令和6年6月から大きく変わりました。
それまで3種類が別々に存在していた加算が、「介護職員等処遇改善加算」1本に統合されました。
- (旧)介護職員処遇改善加算
- (旧)介護職員等特定処遇改善加算
- (旧)介護職員等ベースアップ等支援加算
この3つが廃止され、新しい「介護職員等処遇改善加算」(以下、処遇改善加算)の1本に置き換わりました。区分はⅠ〜Ⅴの5段階です。
一本化の目的は、事務負担の軽減と加算の使い方の透明化です。それまでは3本の加算を別々に計算・届出・報告する必要がありましたが、一本化によって手続きがまとめられました。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」処遇改善加算の見直し(2024年3月)
通所介護の処遇改善加算率は、最大14.8%。
令和6年6月以降、通所介護の処遇改善加算率は以下のとおりです。
| 区分 | 加算率 |
|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算Ⅰ | 14.8% |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅱ | 12.0% |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅲ | 10.6% |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅳ | 7.2% |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅴ | 4.9% |
加算率は「基本報酬その他の加算の合計」に乗じて計算します。通所介護は人件費割合が55%のサービス区分に属しており、この割合によって加算率が決まります。
たとえば月の基本報酬(加算を除く)が80万円の事業所で加算Ⅰを算定すると、80万円 × 14.8% = 118,400円が加算収入として上乗せされます。月の総収入は約918,400円になります。
逆に加算Ⅴ(4.9%)しか取れない場合、同じ事業所では39,200円の上乗せにとどまります。どの区分を取れるかで、年間の収入が100万円近く変わることもあります。
加算の区分は、4種類の要件の組み合わせで決まる。
処遇改善加算のどの区分が取れるかは、次の4種類の要件をいくつ満たしているかで決まります。
要件1:キャリアパス要件(3種類)
職員のキャリア形成に関する仕組みを整えることが求められます。
- キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備し、すべての職員に書面で交付している。
- キャリアパス要件Ⅱ:資質向上のための研修計画を策定し、研修の機会を確保または実施している。
- キャリアパス要件Ⅲ:経験・資格・評価に基づく昇給の仕組みを設け、すべての職員に書面で交付している。
要件2:月額賃金改善要件(2種類)
加算額をどのように賃金に反映させるかを定めた要件です。
- 月額賃金改善要件Ⅰ:加算額の2/3以上を、月額賃金(基本給や毎月支払われる手当)の引き上げとして支払う。
- 月額賃金改善要件Ⅱ:月額賃金引き上げ部分のうち、1/2以上を介護職員への月額賃金引き上げに充てる。
月額賃金改善要件Ⅰは、賞与だけで加算を消化することを制限するものです。毎月の給与として継続的に支払うことが義務づけられています。
要件3:職場環境等要件
職場環境の改善に向けた取り組みを複数実施することが求められます。取り組みのカテゴリーは以下の6つです。
- 入職促進に向けた取り組み(ホームページ等での積極的な情報公表、多様な就労形態の整備など)
- 資質の向上・キャリアアップに向けた支援(研修計画の策定・実施、自己啓発の機会確保など)
- 両立支援・多様な働き方の推進(育児・介護と仕事の両立、有給休暇取得促進など)
- 腰痛を含む心身の健康管理(腰痛予防の取り組み、メンタルヘルス対策など)
- 生産性の向上のための業務改善の取り組み(ICT導入、業務手順の見直しなど)
- やりがい・働きがいの醸成(利用者へのケアの向上につながる取り組みなど)
加算Ⅰを算定するには、このうち2つ以上のカテゴリーからそれぞれ1つ以上の取り組みを実施する必要があります(令和6年度改定後の要件)。
要件4:ベースアップ等支援加算要件
令和4年10月から令和6年5月まで算定していた「介護職員等ベースアップ等支援加算」の実績がある事業所に該当するか、または加算額の1/2以上を基本給や毎月の手当の引き上げに使うこと、という内容です。
新規開業の場合、旧ベースアップ等支援加算の算定実績はありません。この場合でも、加算額の1/2以上を基本給等の引き上げに充てることでこの要件を満たすことができます。
要件ごとの対応区分、一覧表で確認する。
どの要件を満たせばどの区分が取れるか、まとめると以下のとおりです。
| 区分(加算率) | KPⅠ | KPⅡ | KPⅢ | 月額Ⅰ | 月額Ⅱ | 職場環境 | ベースアップ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 加算Ⅰ(14.8%) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 加算Ⅱ(12.0%) | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ |
| 加算Ⅲ(10.6%) | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - |
| 加算Ⅳ(7.2%) | KPⅠまたはⅡのどちらか | - | ○ | - | ○ | - | |
| 加算Ⅴ(4.9%) | - | - | - | - | - | ○ | - |
(KP=キャリアパス要件)
加算Ⅲが現実的な最低ラインという事業所が多いです。キャリアパスⅠ・Ⅱ(就業規則・賃金規程の整備と研修計画の策定)、月額賃金改善要件Ⅰ(加算の2/3を月給に)、職場環境等要件の取り組みを揃えれば、加算Ⅲ(10.6%)を算定できます。
加算額の使い道には制約がある。
処遇改善加算は、算定した加算額をすべて職員の賃金改善に充てなければなりません。事業所の利益として留保することはできません。
区分に応じて、賃金改善の方法に制約があります。
- 加算Ⅰ・Ⅱ:加算額の2/3以上を月額賃金(毎月支払い)として支払う義務あり
- 加算Ⅲ・Ⅳ:同様の制約あり(月額賃金改善要件Ⅰを満たす場合)
- 加算Ⅴ:職場環境等要件のみのため、賃金の月額制約はなし(ただし加算額はすべて賃金改善へ)
また、「介護職員以外の職員への配分」についても制限があります。加算Ⅰ・Ⅱでは月額賃金改善要件Ⅱにより、月額賃金引き上げ部分の1/2以上を介護職員に充てる義務があります。事務職員・栄養士・調理員等への配分は残り1/2の範囲内に収める必要があります。
届出は算定開始の前月末日までに提出する。
処遇改善加算を算定するには、都道府県等(指定権者)への届出が必要です。
提出期限は、加算算定を開始したい月の前月末日です。4月から算定するなら3月末日まで、6月から算定するなら5月末日までに提出します。
提出書類は、「介護職員等処遇改善加算等計画書」です。書式は都道府県等から指定されることが多く、e-Gov等の電子申請システムを利用する自治体もあります。
開業直後に加算を算定する場合は、指定申請と合わせて計画書の提出時期も確認しておくと手続きが滞りなく進みます。
年度末に実績報告書の提出が必要になる。
処遇改善加算を算定した事業所は、事業年度終了後2か月以内(多くの事業所は毎年5月末日ごろ)に「介護職員等処遇改善実績報告書」を提出します。
実績報告書では、以下を記載します。
- 算定した加算額の総額
- 職員への賃金改善額の総額(職員ごとの内訳は不要。総額ベースで報告)
- 賃金改善が加算額に満たない場合の理由
加算額よりも賃金改善額が少ない(差額が生じている)場合、次年度以降の加算算定において差額分の改善計画を求められることがあります。
書類管理の観点では、職員への賃金改善の実績(賃金台帳・賃金計算根拠など)を事業年度ごとに整理・保管しておくことが重要です。運営指導(旧:実地指導)で確認される項目でもあります。
開業1年目から加算Ⅰを取ることは可能か。
開業初年度でも加算Ⅰを算定することは可能です。要件は実績ではなく「体制を整備しているか」を問うものが中心です。
ただし、実務的にいくつかの準備が開業前から必要になります。
- 就業規則・賃金規程に、職位・職責に応じた任用要件と賃金体系を明記する(キャリアパスⅠ)
- 研修計画を年間スケジュールとして策定し、職員全員に周知する(キャリアパスⅡ)
- 経験・資格・評価に基づく昇給のルールを書面化する(キャリアパスⅢ)
- 職場環境等要件に対応した取り組みを開業時点から実施する
これらを開業と同時に揃えておけば、指定を受けた後の最初の届出から加算Ⅰで申請することができます。
一方で注意が必要なのは、加算Ⅰを取ると月の加算収入が増える半面、その2/3以上を毎月の給与として支払い続けなければならないという制約もついてきます。開業直後は利用者数が少なく収入が不安定な時期でもあるため、加算収入が少ない段階での月額賃金増加がキャッシュフローに与える影響を事前に試算しておくことをおすすめします。
まとめ
- 令和6年6月から3本の加算が統合され「介護職員等処遇改善加算」1本になった。区分はⅠ〜Ⅴの5段階
- 通所介護の加算率は最大14.8%(加算Ⅰ)。月の報酬合計が80万円なら加算収入は約118,000円になる
- どの区分が取れるかは、キャリアパス要件3種・月額賃金改善要件2種・職場環境等要件・ベースアップ等支援加算要件の組み合わせで決まる
- 加算額はすべて賃金改善に充てる義務がある。加算Ⅰ・Ⅱでは2/3以上を月額賃金として毎月支払う必要がある
- 算定開始の前月末日までに計画書を提出し、年度終了後2か月以内に実績報告書を提出する


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