令和8年6月以降にグループホームを開業するとき、報酬が下がる理由。

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令和8年6月以降に新規指定を受けた事業所は、基本報酬に972/1000を乗じる

令和8年6月1日以降に新たに「指定」を受けた障害者グループホーム(共同生活援助)は、基本報酬の単位数に「972/1000」を乗じた値が適用されます。分かりやすく言うと、基本報酬が約2.8%引き下げられます。

この引き下げは「新規指定時の引き下げ」と呼ばれるもので、令和6年度の報酬改定で導入されました。指定を受ける時期によって報酬水準が異なる、という仕組みです。

(出典:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年6月施行)・共同生活援助サービス費の注)

なぜ報酬が下がるのか。引き下げの背景

障害者グループホームの事業所数は、障害福祉サービスの中で近年最も急速に増加しています。厚生労働省の統計によると、令和5年度末時点で全国に約1万4千か所を超えており、毎年一定数の新規開業が続いています。

事業所数が急増する背景には、介護・福祉系サービスの中でも収益性が比較的安定していること、小規模での開業が可能なこと、障害者の地域移行の推進という政策的な需要があることなどが挙げられます。

一方で、急速な事業所の増加は「サービスの質」の確保という課題も生じさせます。厚生労働省の令和6年度報酬改定資料では、急増する事業所数の動向を踏まえた対応として、新規指定事業所への基本報酬の差異化が盛り込まれています。新規参入の事業所に対し、慎重な事業計画に基づいた開業を求める趣旨の措置です。

どの事業所が対象か

「令和8年6月1日以降に新たに指定を受けた事業所」が対象です。

対象になる事業所:

  • 令和8年6月1日以降に初めて指定を受ける新規開業の事業所
  • 既に別の事業所を運営していても、新しく追加で指定を受ける事業所

対象にならない事業所:

  • 令和8年5月31日以前に指定を受けていた既存の事業所
  • 事業所の経営者や名義が変わっても、同じ指定番号を引き継ぐ場合(同一事業所としての継続扱い)

なお、「指定を受けた日」が令和8年6月1日以降かどうかで判定されます。指定申請の提出日ではなく、指定を受けた日(指定通知書の指定日)を基準とします。

計算例:引き下げによる影響額

定員15人・その他の地域(10.00円)・入居者全員区分4(基本報酬372単位)の場合で試算します。

【既存の事業所(引き下げなし)】

基本報酬:372単位 × 10.00円 × 15人 × 30日 = 1,674,000円/月

【令和8年6月以降の新規指定事業所(引き下げあり)】

基本報酬に使う単位数:372 × 972/1000 = 361.584単位(端数は切り捨て→361単位)
基本報酬:361単位 × 10.00円 × 15人 × 30日 = 1,624,500円/月

月の差額:1,674,000円 − 1,624,500円 = 49,500円

月に約5万円、年に約60万円の収入差になります。

さらに夜間支援等体制加算や人員配置体制加算も「所定単位数に基づく加算」のため、基本報酬が下がればこれらの加算の合計も連動して若干少なくなります。処遇改善加算も同様です。

引き下げが続く期間

現時点(令和7年度)では、この新規指定時の引き下げは「令和9年度の障害福祉サービス報酬改定」まで継続する見込みです。令和9年4月以降の改定の内容によっては、廃止・緩和・継続のいずれかの方向に変わる可能性があります。

なお、新規指定時に引き下げが適用された事業所であっても、その後の報酬改定で扱いが変わった場合は、改定後の新しい算定構造が適用されます。「ずっと2.8%低いまま」ではなく、次の報酬改定の時点で見直される可能性があります。

開業計画への影響:収支計画にどう反映するか

令和8年6月以降に開業を検討している場合は、収支計画において基本報酬を約2.8%引き下げたベースで計算することが必要です。

具体的には、収支シミュレーターで基本報酬を入力する際に「令和8年6月以降の新規指定」の設定をオンにして試算することで、実際の収入に近い数字が出ます。

月5万円・年60万円の差を見ると小さく感じるかもしれませんが、損益分岐点(稼働率が何%で収支がゼロになるか)の計算では、この差が1〜2%の稼働率の差として現れます。開業初年度の資金計画を立てる際に、この分を見越しておくことが重要です。

引き下げがあっても、開業後に収益を改善する方法はある

新規指定の引き下げがあっても、加算の積み上げによって収入を補うことができます。たとえば:

  • 夜間支援等体制加算(I)を取得する(月に数十万円の加算収入)
  • 処遇改善加算の上位区分(Ⅰ・Ⅱ)を取得する(収入の16%相当)
  • 入居者の障害支援区分が高い方を受け入れる体制を整える(基本報酬を引き上げる)

加算の取得は、新規指定の引き下げを補ってなお余りある収入増をもたらします。開業前に「どの加算を取得するか」を具体的に計画しておくことが、安定経営への近道です。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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