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訪問看護ステーションには感染症対策の研修と訓練が義務付けられています。訪問看護師は多くの利用者の自宅を訪問するため、感染症の媒介リスクを常に意識した行動が求められます。この記事では、根拠条文・義務の内容・委員会の設置・研修で扱うべき内容を整理します。
訪問看護の感染症対策研修、何が義務か
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第29条の2では、訪問看護ステーションに対して感染症及び食中毒の発生を予防し、まん延を防止するための義務が定められています。
具体的には以下が求められます。
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための指針の整備
- 委員会の設置・おおむね6か月に1回以上の開催
- 職員への研修(年2回以上)
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための訓練(年2回以上)
出典:平成12年厚生省令第80号第29条の2
「研修」と「訓練」は別々に年2回ずつ必要
感染症対策では「研修」と「訓練」を混同しやすいため、整理が必要です。
| 区分 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| 研修 | 感染症の基礎知識・標準予防策・感染経路別予防策・PPEの使い方などを学ぶ | 年2回以上 |
| 訓練 | 感染症が発生した・または感染疑い者が出たときの実際の対応手順をシミュレーションする | 年2回以上 |
「研修を2回実施したから訓練も終わり」にはなりません。研修と訓練を別々に管理し、それぞれ年2回以上の記録を残してください。
訪問看護ならではの感染リスク:複数宅の訪問
訪問看護師は1日に複数の利用者宅を訪問します。この「複数宅訪問」という業務形態は、感染症の媒介リスクとして特有の問題を生みます。
- A宅で感染症の利用者にケアをした後、B宅へ移動する際の手指消毒・器具の消毒が不十分だと媒介になる
- インフルエンザ・ノロウイルスの流行期に、自分自身が無症状の感染者として複数の利用者に広げる可能性がある
- 防護具(手袋・マスク)の使い方が不適切だと、かえって汚染を広げることがある
研修では「訪問宅を移動するときの手順」「利用者宅でのPPEの着脱順序」を具体的に確認することが重要です。
標準予防策(スタンダード・プリコーション)の徹底
標準予防策は「すべての患者・利用者の血液・体液・分泌物・排泄物は感染性があるものとして扱う」という考え方に基づきます。訪問看護師が日常のケアの中で実践すべき内容は以下のとおりです。
- 手指衛生:ケア前後・手袋をはずした後に石けんと流水か速乾性アルコール消毒剤を使用する
- 個人防護具(PPE)の使用:血液・体液・分泌物・排泄物に触れる可能性がある場合は手袋を使用。飛沫の可能性がある場合はマスクを追加
- 器材の洗浄・消毒:使用した器材は適切に処理する。使い捨て器材は適切に廃棄する
- 注射針等の鋭利物の取り扱い:使用済みの針はリキャップしない。専用容器に廃棄する
感染症が疑われる利用者への対応
訪問中に利用者の感染症を疑う症状(発熱・下痢・嘔吐・発疹など)を確認したとき、訪問看護師はどう対応するかを事前に確認しておく必要があります。
- 症状を確認し、可能であれば医師・主治医に報告する
- 感染経路に応じたPPEを着用してケアを継続するか判断する
- 同一訪問者からの感染連鎖が疑われる場合は、ステーションの感染対策委員会・管理者に報告する
- 当日の他の訪問スケジュールへの影響を管理者と確認する
委員会の役割と開催頻度
おおむね6か月に1回以上の委員会開催が義務です。委員会では以下の内容を確認します。
- 感染症の発生状況の共有(報告があった場合)
- 指針の内容が実態に合っているかの確認
- 研修・訓練の計画・実施状況の確認
- 消毒剤・PPEなどの在庫・補充状況の確認
訪問看護ステーションは少人数の職場が多いため、短時間でも全員参加・議事録ありの会議を年2回実施することが現実的な目標です。
訓練(シミュレーション)の実施方法
訓練は「研修で学んだことを実際の手順に落とし込む」ための機会です。以下のようなシナリオを設定して実施します。
- 「訪問先で利用者に発熱・下痢の症状を確認した。ノロウイルスが疑われる。次に何をするか」
- 「自分がインフルエンザに感染した可能性がある。今日の訪問スケジュールはどうするか。管理者にどう報告するか」
- 「複数の利用者が同じ時期に同じ症状を呈している。感染の連鎖を疑うときの報告手順は何か」
「机上シミュレーション(口頭で手順を確認する)」でも訓練として認められます。実際に手を動かすシミュレーション(PPEの着脱練習など)と組み合わせると効果的です。
研修・訓練の記録
感染症対策の研修・訓練の記録として残すべき項目は以下のとおりです。
- 実施日・実施時間
- 研修か訓練かの区分
- 参加した職員の氏名
- 内容(研修テーマ・訓練シナリオ)
- 振り返り・改善点
研修と訓練を年2回ずつ、合計年4回の記録が残るよう管理してください。
まとめ
訪問看護の感染症対策で最も重要なのは「複数宅を移動するスタッフとしての意識」です。施設の感染対策と違い、「移動している間の感染媒介リスク」を常に意識した手指衛生・PPEの使用が求められます。研修では知識の習得、訓練では実際の手順の確認をそれぞれ年2回以上実施し、記録を残してください。
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訪問看護ステーションの法定研修の全体像は、こちらの記事をご覧ください。
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