適正化実施機関(トラック協会の適正化事業部)による巡回指導では、ドライバー教育に関連する記録が主要な確認項目になります。この記事では、教育記録の準備に絞って、確認される書類と空白期間が生まれやすいケースを説明します。
巡回指導と行政監査(運輸局による立入検査)の違い(実施機関・処分権限・頻度・通知の有無)については、「運輸局の運営指導(監査)で、ドライバー教育はどう確認されるか。」で詳しく解説しています。
巡回指導の確認項目(ドライバー教育に関連する部分)
適正化実施機関が使用する巡回指導の確認項目は全部で47項目(5分野)あります(出典:全日本トラック協会「適正化事業実施機関の巡回指導確認表」)。そのうちドライバー教育に直接関連する確認項目は次のとおりです。
| 確認項目 | 確認内容の概要 |
|---|---|
| 定期的な指導・監督の実施(12テーマ) | 実施記録(年月日・内容)が作成・保存(1年間)されているか |
| 初任運転者への特別な指導 | 採用後・乗務開始前の指導記録が作成されているか |
| 適性診断の受診 | 初任・定期・特定の運転者が受診しているか・結果票を保管しているか |
| 運転者台帳 | 乗務員全員の台帳が作成・更新されているか |
| 乗務記録(日報) | 運行ごとに記録が作成・保存(1年間)されているか |
この5項目は、書類を実際に見せて確認するものです。口頭で「実施している」と説明するだけでは対応できません。
準備する書類の一覧
巡回指導の当日に準備・提示できる状態にしておくべき書類は次のとおりです。
| 書類 | 保存期間 | よくある不備 |
|---|---|---|
| 12テーマ指導記録(定期指導) | 実施日から1年間 | テーマの抜けがある・記録がない・記録に年月日・内容が記載されていない |
| 初任運転者指導記録 | 実施日から1年間 | 作成されていない・定期指導記録と混在して区別できない |
| 適性診断結果票(初任・定期・その他) | 受診日から保管(明示なし・実務上は在職期間中) | 結果票を紛失している・定期受診が漏れている |
| 運転者台帳 | 退職から3年間 | 作成されていない・更新がない・項目が不足している |
| 乗務記録(日報) | 作成日から1年間 | 記入漏れがある・保管場所が不明 |
| アルコールチェック記録 | 作成日から1年間 | 記録がない・目視確認のみで検知器の使用記録がない(令和6年1月以降) |
指導記録・乗務記録の保存期間「1年間」は、作成日ではなく実施日・運行日から起算します。前年の記録は当日時点で「1年以内か」を確認しておく必要があります。
空白期間が生まれやすいケース
書類は準備しているつもりでも、特定の期間の記録が抜けていることがあります。よく見られるパターンは次のとおりです。
繁忙期に研修を後回しにした
年末年始・お盆・3月末など運送量が増える時期に研修を後回しにした結果、12テーマの一部が未実施のまま年を越えているケースです。「忙しかった」という説明は記録の不備への回答にはなりません。
途中入社・退職に伴う記録の欠落
年度途中に採用した運転者の初任教育記録が作成されていない、または在籍期間中の定期指導記録の一部が残っていないケースです。運転者ごとの記録管理が徹底されていないと起きやすい不備です。
担当者の退職・交代による引き継ぎ漏れ
前任の運行管理者・担当者が退職した際に、記録の保管場所や管理方法が後任に伝わっていないケースです。記録は担当者個人のパソコンやファイルに入れたままにせず、所定の保管場所を決めておくことが対策になります。
前々年度の記録を廃棄した
「古い記録は捨ててよい」と判断して1年以内の記録を廃棄してしまったケースです。起算日に注意が必要で、昨年10月に実施した研修の記録は今年10月まで保存義務があります。カレンダー年と保存期限が一致しない場合があります。
事前通知が届いたら最初にすること
巡回指導の通知が届いたら、次の順番で準備するのが効率的です。
- 乗務員全員のリストを作成し、各乗務員について「12テーマ指導記録・初任教育記録(初任者のみ)・適性診断受診記録・運転者台帳」が揃っているかを確認する
- 乗務記録(日報)が過去1年分揃っているかを確認し、保管場所を整理する
- アルコールチェック記録が揃っているかを確認する
- 不足している記録がある場合、遡及して作成することはできないため、その旨を正直に申告する準備をする
書類の「数」ではなく「揃っているかどうか」が確認されるため、不足があれば素直に申告し、改善計画を示すことが指導の進め方として有効です。
指摘を受けた場合の対応
巡回指導で不備を指摘された場合、改善報告を求められることがあります。改善報告は「いつまでに・何を改善するか」を具体的に書いて提出するものです。
改善報告で改善が見込まれない・重大な不備が繰り返される場合は、適正化実施機関から運輸局への通知が行われる場合があります。通知を受けた運輸局が立入検査(行政監査)を行い、悪質な場合は行政処分につながります。
巡回指導での指摘は改善のきっかけとして活用し、指摘された内容を記録管理の見直しに反映することが重要です。
運送業 法定研修キット(12テーマ)について
12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録をブラウザで使える研修キットとして公開しています。研修資料・確認テストと受講記録が一体になっており、研修実施後その場で記録まで完結します。テーマ1(心構え)は無料でお使いいただけます。
記録の書き方・様式については「ドライバー指導記録の書き方、法令が定めている記載項目と実務上の様式。」も参照してください。
ドライバー教育の義務の全体像は「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。
出典:貨物自動車運送事業法 第16条・第24条の2(e-Gov法令検索)、貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条・第9条の4・第10条・第10条の2・第10条の3(e-Gov法令検索)、「一般貨物自動車運送事業者の行政処分等の基準」(国土交通省)


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