軽貨物運送事業(黒ナンバー)を1人でやっている個人事業主にも、令和7年4月1日以降はドライバー教育(12テーマの指導・監督)の義務が適用されています(令和6年告示第1193号)。「社員を雇っていないのに、誰が誰に指導するのか」という疑問は当然ですが、自分1人でも義務の内容は変わりません。この記事では、1人事業者が実際にどう対応すれば義務を果たせるかを、よくある疑問への回答形式で整理します。
1人でも指導・監督の義務はある
令和6年告示第1193号は「貨物軽自動車運送事業者は、その事業用自動車の運転者に対し、指導・監督を行わなければならない」と定めています。1人事業者の場合、事業者と運転者が同一人物になります。したがって「自分で自分を指導する」という形になりますが、法令は義務の免除を定めていません。
「自分で自分に指導する」は実際にどういう意味か
法令が求めているのは、12テーマについて「理解している」状態を作り、記録として残すことです。具体的には次のような対応になります。
- 告示で定められた12テーマの内容を、教材・資料をもとに自分で学習・確認する
- 確認した日付・テーマ名・確認した内容を記録に残す
- 自署(または確認印)を記録につける
「他の誰かに教わらないといけない」という要件は法令に定められていません。外部の研修会に参加する・トラック協会の講習を受けるという方法も有効ですが、自分で資料を読んで理解し記録を作るという方法でも義務の要件を満たします。
年1回以上やれば3ヶ月ごとの要件を緩和できる
「3ヶ月に1回」という頻度要件は、全12テーマを年1回以上実施していれば緩和されるとする取り扱いがあります(解釈指針または運用通達による取り扱いです。詳細は運輸局またはトラック協会に確認することをお勧めします)。1人でやる場合は「年に1〜4回、12テーマをすべて確認した記録を作る」という計画が現実的です。
最低ラインとして「年1回・12テーマを1日でまとめて確認し記録を作成する」という対応でも義務の要件を満たすと考えられます。ただし、実態として1人事業者が年1回の確認記録だけで巡回指導をクリアできるかどうかは、運輸局・トラック協会に確認することをお勧めします。
記録の書き方、具体例
記録の様式は法令に定められていません。手書きでも、パソコンで作成した表でもかまいません。最低限記録に含める内容は次のとおりです。
- 実施日(年月日)
- 指導したテーマ名(告示第1366号 別表第2の12テーマのいずれか)
- 指導の内容(どの教材・資料を使い、どんな内容を確認したか)
- 指導を受けた者の氏名と署名(1人の場合は自署でよい)
- 指導を行った者の氏名(1人事業者の場合は自分の名前)
記録を残す期間は「実施日から1年間」です(輸送安全規則第10条の2の規定による・詳細は運輸局またはトラック協会に確認)。年末に12テーマの記録をまとめて作成した場合、その記録は翌年末まで手元に残しておく必要があります。
トラック協会の講習を使う方法
都道府県のトラック協会(適正化実施機関)は、一般貨物・軽貨物ドライバー向けの研修・講習を定期的に開催しています。12テーマの指導内容をカバーした講習を受けることで、「受講した」という事実が記録として残ります。
参加時にもらう受講証明書や修了証を保管しておくことで、巡回指導での確認に対応できます。開催スケジュールと申し込み方法は、各都道府県のトラック協会のウェブサイトで確認できます。
自分で資料を使って確認する場合の教材
市販の教材や、国土交通省・トラック協会が公開している資料を使って自己学習し、記録を作成する方法もあります。
- 国土交通省・全日本トラック協会が作成した「指導・監督のための実施マニュアル」は、ウェブサイトで公開されている場合があります
- 全日本トラック協会(jta.or.jp)は、ドライバー向けの教材を出版・配布しています
- 都道府県トラック協会の窓口でも、指導・監督に使える資料の提供を受けられる場合があります
資料を使って学習し、内容を確認したという記録を作成する方法は、一般貨物の小規模事業者でも広く行われています。
バーチャルな「運行管理」の仕組みを作る
1人事業者で「運行管理者」を別に置いていない場合でも、指導・監督の記録を管理する仕組みを自分で作っておくことが、実務上は大切です。次のような方法が参考になります。
- 研修記録を1ファイル(フォルダ)にまとめて保存し、年度ごとに整理する
- スマートフォンやパソコンのカレンダーに「ドライバー研修」の予定を年間で入れておく
- 年末(または年度末)に「今年の記録は12テーマ揃っているか」を点検する習慣をつける
1人なので「誰かに提出する」必要はありませんが、記録が「後から見つかる」状態にしておくことが大事です。
巡回指導が来た場合の対応
軽貨物の場合、現時点では一般貨物ほど頻繁に巡回指導が行われているわけではありませんが、令和7年4月以降の義務化に伴い、適正化実施機関による指導の対象に含まれる可能性があります。
巡回指導が来た場合に求められるのは、「指導・監督を実施した記録を提示できること」です。記録がなければ、改善指示の対象になります。1人事業者であっても、記録を残しているかどうかが確認のポイントになります。
軽貨物の義務化は令和7年4月1日から
軽貨物運送事業者への12テーマの指導・監督義務は、令和6年告示第1193号(令和7年4月1日施行)から始まっています。令和7年4月1日以降に乗務した日から義務が発生するため、令和7年4月以降の乗務の記録から12テーマの実施記録を残す必要があります。
詳細な施行状況や適用範囲については「軽貨物(黒ナンバー)のドライバー教育、令和7年4月から義務になった。」も参照してください。
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ドライバー教育の義務の全体像は「運送業のドライバー教育、何が義務で年何回か。」をあわせてお読みください。
出典:令和6年国土交通省告示第1193号(e-Gov法令検索)、貨物自動車運送事業輸送安全規則 第10条(e-Gov法令検索)


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