液化石油ガス設備士の技能試験で落ちた。翌年度の再受験手順と、次にやること。

液化石油ガス設備士の技能試験で落ちた。翌年度の再受験手順と、次にやること。 資格

液化石油ガス設備士の技能試験で不合格になった場合、翌年度は筆記試験を免除して技能試験だけ受け直すことができます。ただし、この免除を使えるのは1年間だけです。証書の提出期限を過ぎると、翌々年度からはまた筆記試験から受け直すことになります。

この記事では、技能試験の内容・採点の仕組み・よくつまずく点・翌年度の再受験手続きの流れをまとめます。出典はKHK(高圧ガス保安協会)の国家試験受験案内書(令和8年度)です。

技能試験は筆記とは別に落ちる

液化石油ガス設備士の国家試験は、筆記試験と技能試験の2段階です。どちらも合格しなければ免状は取得できません。

筆記試験(法令15問・配管理論等20問)に合格した受験者だけが技能試験を受けることができます。試験会場にいる全員は、少なくとも筆記試験をクリアした人です。その中で、さらに技能試験での合否が分かれます。

令和7年度の受験者数は1,577人で、合格率は38.0%でした(出典:KHK「令和7年度 知事試験の合格率」)。この数字は筆記試験と技能試験を合わせた結果であり、技能試験だけに限った合格率ではありません。ただし、「半分以上が落ちる」水準であることは確かです。

試験の流れを整理しておきます。

  • 筆記試験と技能試験は同じ試験日程の中で行われます(令和8年度は11月29日)
  • 筆記・技能ともに合格して、はじめて免状申請ができます
  • どちらか一方が不合格の場合、翌年度は不合格だった科目だけを受け直せます

この記事では、技能試験が不合格だった場合の話を中心に説明します。

技能試験では何をするのか

技能試験には2種類あります。電動工具を使う試験と、手動工具を使う試験です。

  • 電動工具使用:試験時間60分
  • 手動工具使用:試験時間75分

どちらの試験を受けるかは受験申込時に選択します。申込時点での選択が試験当日まで変わることはありません。

試験では、LPガス設備の配管に関する実際の作業を行います。一般的にはフレア接続・管端処理・配管の組み立てといった作業が含まれます。

合格基準は「各60%程度」とされています(出典:KHK受験案内書)。ただし「60%程度」という表現が示す通り、毎年固定の点数で合否が決まるわけではなく、試験の難易度に応じて調整される場合があります。

電動工具と手動工具、どちらを選ぶか

電動工具を使う試験は時間が短い(60分)です。電動工具があれば力が要らない場面もありますが、工具の扱いに不慣れな場合は逆に手間取ることもあります。

手動工具の試験は時間が長い(75分)です。工具自体が単純な分、作業工程の手順や精度が問われます。

どちらが「楽」かは人によって異なります。職場で普段から電動工具を使っている人は電動工具を選ぶのが自然でしょうし、手作業に慣れている人は手動工具を選んだ方が安心できる場合もあります。

再受験の際に前回と異なる種類に変更できるかどうかについては、翌年度の受験案内書で確認してください。案内書が発行されたら、選択に関する条件を最初に確認することをお勧めします。

判定項目は試験の翌日に公表される

技能試験でどの項目が採点対象になるかを示す「技能判定項目」は、試験前ではなく、試験翌日に公表されます。令和8年度の場合、技能試験は11月29日(日)で、判定項目の公表は12月1日です。

この仕組みの意味を理解しておくことが重要です。

試験当日の時点では、何が採点されているかが受験者には分かりません。完成品の外観だけで採点されるのか、作業の途中経過も見られているのか、仕上げの精度か、手順の正確さか——これらは試験中には知らされません。

結果として、「全体的にうまくできた感触があったのに不合格だった」という事態が起きやすい構造になっています。試験中の自分の感覚と採点基準との間にズレがあっても、受験者は気づけないのです。

不合格だった人が「自分はどの項目で減点されたのか」を振り返りたい場合は、合否通知が届いた後に、KHKが公表した判定項目と照らし合わせて確認することができます。令和8年度の合否通知(技能)は令和9年1月5日の発送予定です。

過年度の判定項目については、KHKのウェブサイトで確認できる場合があります(掲載期間については直接確認してください)。再受験を決めたら、過年度の判定項目を参照して「何が採点対象になりやすいか」の傾向を把握することが再挑戦の準備になります。

採点の仕組みを理解する

技能試験の採点は、「完成品が問題なく動くかどうか」だけを見るわけではありません。

一般的な技能試験の採点方式は、個別の判定項目を一つずつ確認する方式です。「全体的にはよくできている」という印象ではなく、「この項目はOK・この項目はNG」という個別評価で点数が積み上がります。

たとえば、配管の気密・フレア部分の仕上がり・管端処理の状態・接続部分の締め付けといった作業が、それぞれ独立して採点される可能性があります。ある項目で点を落とした場合、他の項目で挽回できるかどうかは採点方式次第です。

合格基準が「60%程度」とされている以上、すべての項目を完璧にこなす必要はありません。ただし、特定の重要な項目が「不適切」と判定された場合に大きく減点される可能性は否定できません。

この採点構造が意味することは、「全体的に雑でも通ることもあれば、ほとんど完璧でも1点が引っかかって落ちることもある」という難しさです。試験前に判定項目が公表されないため、どこに集中して練習すればよいかを事前に絞り込みにくい面があります。

この仕組みを把握しておくことで、「うまくできた感触があったのに落ちた」という状況を客観的に整理できます。感覚と結果がズレること自体は、この試験の構造から来ているのです。

「楽勝だと思っていたら落ちた」理由

技能試験で落ちた人の中には、「手を動かす作業は得意だから」「配管の仕事を長年やってきたから」と軽く見ていた人も一定数います。

実際の現場でのLPガス設備工事と、国家試験の技能試験では、求められることが少し違います。

現場では「問題なく動く設備を作ること」が目的です。施工後に気密検査を行い、漏れがなければ問題なしです。作業の細かい手順は、作業者が長年の経験から身につけた方法でも通用します。

しかし国家試験では「決められた手順で、決められた判定項目を満たすこと」が求められます。現場では問題なく通用する方法でも、試験の採点基準の観点では「不適切」と判定されることがあります。

具体的に起きやすいズレをいくつか挙げます(一般論として)。

  • 現場では「この程度の締め付けで問題ない」と感覚でやっていた部分が、試験では仕上がりが個別に確認されている
  • 現場では手順を省略したり順番を入れ替えたりすることがあるが、試験では定められた手順での作業を求められる場合がある
  • 作業スピードを優先するあまり、仕上がりの精度が試験基準を下回る
  • 現場では「後で確認するから今は仮留めで」という進め方が通用するが、試験では作業中の状態も見られる可能性がある

20年以上現場でLPガス設備を扱ってきた人が、試験の採点基準を意識せずに受験して不合格になったという話は珍しくありません。「現場で通用する技術」と「試験で採点される技術」は重なっている部分も多いですが、完全に一致しているわけではないのです。

再受験の際には、「現場のやり方で作業する」のではなく、「判定項目を意識して作業する」という意識の切り替えが必要です。この切り替えが、経験者が再受験で結果を変えるための最初のポイントです。

翌年度の再受験:筆記は免除できる

技能試験だけで不合格になった場合、翌年度の試験では筆記試験を免除して技能試験のみを受験することができます。この制度を使うには、筆記試験の合格を証明する書類(証書)をKHKへ提出する必要があります。

令和8年度の場合、前年度(令和7年度)の筆記合格者が筆記免除で受験するには、証書のFAX提出期限が9月7日です(出典:KHK受験案内書令和8年度版)。この期限を過ぎると免除が受けられません。

また、この免除が使えるのは「1年間だけ」です。令和7年度に筆記に合格した人は、令和8年度だけ筆記免除で技能試験を受けられます。令和8年度の技能試験にも落ちてしまった場合、令和9年度は筆記試験からやり直しになります。

「来年もどうせ技能だけ受ければいい」という考えは通用しません。筆記免除は1年間限りのリミット付き制度です。

再受験の手続きの流れ:年間スケジュール

再受験の年間スケジュールを整理します。令和8年度に技能試験を受験し不合格だった場合、令和9年度の流れは次のようになります。

1月:合否通知を受け取る

令和8年度の技能試験(11月29日)の合否通知は、令和9年1月5日に発送予定です。通知が届いたら、KHKが12月1日に公表した判定項目と照らし合わせて、自分がどの作業で評価を落とした可能性があるかを確認します。この「振り返り」が、再受験の準備の出発点です。

2〜7月:実技練習の開始

受験案内書が発行される前の期間です。実際の配管材料と工具を使った反復練習を早めに始めることができます。過年度の判定項目を参照して、採点対象になりやすい作業を重点的に練習します。

夏ごろ:受験案内書の発行を確認する

KHKから翌年度の受験案内書が発行されます(発行時期はKHKのウェブサイトで確認してください)。この時点で確認すべき内容は次の3点です。

  • 筆記免除の申請方法と証書の提出期限
  • 技能試験のみで受験する場合の受験手数料
  • 試験日程(技能試験の実施日)

受験手数料については、技能試験のみで受験する場合の金額を翌年度の受験案内書で確認してください。令和8年度の受験案内書に記載されている書面申込23,200円・電子申請22,700円は、筆記・技能の全科目を受験する場合の金額です。技能のみで受験する場合、金額が異なる可能性があります。

9月上旬:証書を提出する(期限厳守)

筆記免除を受けるには、前年度の筆記合格証書をKHKにFAXで提出する必要があります。令和8年度の提出期限は9月7日でした。翌年度も同様の時期に期限が設定される見込みです。

案内書を受け取ったら、この提出期限の日付だけは手帳やカレンダーにすぐ記録しておくことをお勧めします。

9〜10月:受験申込み

受験申込の受付期間内に申込みを済ませます。証書の提出が完了している状態で申込みを行います。

11月下旬:技能試験本番

例年11月下旬に技能試験が行われます。令和8年度は11月29日でした。翌年度の日程は受験案内書で確認してください。

この流れを見ると、合否通知を受け取ってから試験本番まで約10ヶ月あります。準備に十分な時間はありますが、証書の提出期限(9月上旬)を見落とすと免除が使えなくなります。受験案内書が届いた時点での確認が最重要です。

技能試験に向けた準備の方法

技能試験の準備は、筆記試験のような「問題を解く練習」とは性質が違います。実際の配管材料と工具を使った反復練習が中心になります。

独学で準備する場合

まずKHKが公表する過年度の技能判定項目を参照して、採点対象になる動作の傾向を把握します。判定項目は過年度分もKHKのウェブサイトで確認できる場合があります(掲載期間は直接確認してください)。

次に、実際の配管材料と工具を使った練習を繰り返します。特に次の点を意識して練習することが重要です。

  • フレア接続の仕上がり:現場の感覚ではなく、試験の基準を意識した仕上がりを目指す
  • 作業の手順:現場で省略しがちな工程も、試験では丁寧に踏む
  • 時間管理:電動工具60分・手動工具75分の制限時間を意識しながら練習する
  • 作業途中の状態:完成品だけでなく、作業中の状態も評価対象になりえると意識する

可能であれば、他の人に作業を見てもらいながら練習することも有効です。自分では気づかない癖や、採点基準と合わない動作を指摘してもらえます。職場の同僚や先輩の中に過去の受験者がいれば、実際の試験の感触を聞いておくことも参考になります。

KHK講習を受ける場合

KHKが主催する液化石油ガス設備士の講習は、全国の主要都市で年複数回開催されています。

再受験の目的でKHK講習を受ける主なメリットは、試験に近い環境での実技練習ができる点です。講習で使う設備や工具が試験に近い形式であるため、本番を意識した練習になります。ただし、講習を受講しても技能試験の合格が保証されるわけではありません。

講習の日程・費用・申込方法、および講習受講が試験にどう影響するかについては、KHK(高圧ガス保安協会)のウェブサイトで確認してください。

練習の量より質、ではなく「量をこなしてから質を問う」

技能試験の準備で陥りがちなのが、「気をつけながら1回だけやる」という練習方法です。採点基準を意識しながら緊張感を持って1回こなすことは大切ですが、それだけでは試験本番で体が自然に動くようにはなりません。

目標は、「考えなくても正しい手順で作業できる」状態にすることです。そこに至るには、繰り返し練習して手順を体に覚えさせる必要があります。試験1〜2ヶ月前には、実際の制限時間内に完成できるかを確認する模擬練習を複数回行うことをお勧めします。

筆記試験の知識は「見直し」程度でよい

技能試験のみで落ちた場合、翌年度の受験に向けて筆記の勉強をどこまでやるべきか迷う人もいます。

結論としては、筆記の知識は「見直し」程度で問題ないことが多いです。前年度に筆記を通っているということは、基礎は固まっています。ただし、1年間のブランクで細かい数字や条文が曖昧になることはあります。試験1〜2ヶ月前に過去問を解いて確認しておく程度で十分です。

時間とエネルギーの大半は、技能試験の実技練習に使うことをお勧めします。再受験でまた技能試験で落ちると、翌々年は筆記から受け直しになってしまいます。

筆記試験の内容を確認したいときは、液化石油ガス設備士 過去問アプリを使うと、スマートフォンやパソコンでいつでも問題を解けます。令和6年度・令和7年度の過去問(計70問)を無料で収録しています。AIが生成した問題で演習量を増やすこともできます(有料機能)。

まとめ:技能試験で落ちたら、まず翌年度の手続き期限を確認する

技能試験で不合格になった場合にやることを整理します。

すぐにやること(合否通知が届いたら)

  • KHKが公表した判定項目と、自分の作業を照らし合わせて振り返る
  • 再受験するかどうかを決める

翌年度の受験案内書が届いたらすぐ確認すること

  • 筆記免除の証書提出期限(令和8年度は9月7日)
  • 技能のみで受験する場合の受験手数料
  • 試験日程(技能試験の実施日)

準備の進め方

  • 合否通知が届いたら、過年度の判定項目を参照して何が採点対象になりやすいかを把握する
  • 実際の材料と工具を使った反復練習を早めに始める
  • 制限時間内に完成できるかを確認する模擬練習を試験前に複数回行う
  • 筆記の確認は試験1〜2か月前に過去問を数回解く程度でよい

筆記免除は1年間しか使えません。令和8年度に落ちた場合、令和9年度だけが筆記免除のチャンスです。令和9年度にも落ちると、令和10年度からはまた筆記試験から受け直しになります。

「次はどうせ受かる」と思っていても、技能試験を甘く見たことで同じ轍を踏む人は少なくありません。合否通知が届いたら、まず翌年度の申し込み期限を確認することが最初の一歩です。

試験全体の日程・申し込み方法・出題科目の詳細については、液化石油ガス設備士 試験ガイド2026にまとめています。合わせてご確認ください。

出典:KHK(高圧ガス保安協会)「液化石油ガス設備士国家試験 受験案内書(令和8年度)」・KHK「令和7年度 知事試験の合格率」

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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