キッチンカーの開業資金はいくら必要か。

キッチンカーの開業費用は、車両費・改造費・許認可費・運転資金を合わせておおむね150〜400万円程度が目安とされています。固定店舗の飲食店は平均975万円(日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」)に対して初期費用を抑えやすいのがキッチンカーの特徴ですが、資金が少なすぎると開業後すぐに資金不足に陥るリスクがあります。

この記事では、キッチンカーの開業にかかる費用の内訳と、資金の調達方法を解説します。

キッチンカーの開業費用の内訳

開業費用は大きく「車両・設備費」と「許認可・備品費」と「開業前の運転資金」の3つに分けられます。

キッチンカー開業費用の主な内訳
費目 金額の目安 備考
車両の購入費(中古) 50〜150万円程度 新車・軽自動車・1tトラック等で大きく変わる
車両の購入費(新車) 100〜300万円程度 軽バン〜1tトラックの範囲
キッチン設備の改造費 50〜150万円程度 コンロ・シンク・保冷設備・換気扇・電源設備等
食品営業許可の申請手数料 申請先の保健所に要確認 都道府県・区市町村によって異なる(後述)
食品衛生責任者の講習費 地域によって異なる 各都道府県の食品衛生協会に要確認(後述)
車両保険(自賠責・任意) 年5〜15万円程度 車両の種類・走行距離・補償内容による
開業前の食材仕込み・備品 5〜15万円程度 メニュー・仕込み量による
開業前3か月の生活費・固定費 20〜60万円程度 月の固定費+生活費×3か月分が目安(後述)

上記の金額はすべて目安であり、公的な統計に基づくものではありません。特に車両の状態(年式・走行距離・改造のしやすさ)によって費用は大きく変わります。

食品営業許可の手数料について

キッチンカーで営業するためには、食品営業許可(移動飲食店営業)が必要です。この許可の申請手数料は、都道府県・区市町村によって異なります。

東京都の場合、固定店舗の飲食店営業の許可手数料は18,300円(東京都福祉保健局「食品関係営業許可申請手数料一覧」)ですが、キッチンカーが対象となる「移動飲食店営業(自動車)」は別の手数料区分になります。たとえば練馬区では移動飲食店営業の新規申請手数料は5,600円、更新は2,700円とされています(練馬区・2023年)。

許可手数料は営業場所を管轄する保健所によって異なるため、開業前に出店予定エリアの保健所に直接確認することをお勧めします。「CLAUDE.mdに書いてある飲食店の18,300円はキッチンカーではない」と問い合わせれば丁寧に教えてもらえます。

なお、2021年6月施行の食品衛生法改正により、都道府県をまたいで営業する場合でも原則として1つの都道府県の許可があれば他の都道府県でも営業できる仕組み(許可の相互乗り入れ)が整備されました(食品衛生法第55条第2項関連)。ただし営業する都道府県それぞれで申請が必要なケースもあるため、実際の出店予定エリアの保健所に確認することが確実です。

食品衛生責任者の費用について

食品営業許可を取得するには、施設ごとに食品衛生責任者を置くことが義務付けられています(食品衛生法第48条)。食品衛生責任者の資格を持っていない場合は、各都道府県の食品衛生協会が主催する養成講習会を受講する必要があります。

講習会の費用は都道府県によって異なります。たとえば北九州市(公益社団法人北九州市食品衛生協会)では10,000円、沖縄県では8,250円とされています。正確な費用は各都道府県の食品衛生協会のウェブサイト、または各保健所で確認してください。なお、調理師・栄養士・製菓衛生師等の資格をすでに持っている場合は講習を受けずに食品衛生責任者になれます。

車両費の判断:新車・中古・レンタル

キッチンカーの車両は「新車を購入する」「中古車を購入して改造する」「キッチン設備付き車両を買う」「レンタル・リースを使う」の選択肢があります。

初期費用を抑えたい場合は中古車両に自分でキッチン設備を後付けする方法が安くなりますが、改造にかかる費用・車検への対応・耐久性は事前に確認が必要です。キッチンカーの改造・製作を専門とする業者に見積もりを取ることで、費用感を把握できます。

購入費用を抑えたい時期の選択肢として、月額数万円程度のキッチンカーのレンタルサービスも複数登場しています(各サービスの価格・条件は提供会社に確認が必要です)。初期投資を抑えて試験的に営業したい場合の選択肢の一つになります。

資金調達の方法

キッチンカーの開業資金の主な調達方法は次のとおりです。

日本政策金融公庫の創業融資

国が設立した政策金融機関で、創業時の融資に積極的です。「新創業融資制度」は無担保・無保証人で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)の融資が受けられる制度で、創業前・創業後2期以内の事業者が対象です。金利は時期によって変わりますが、民間銀行より低い傾向があります。審査には事業計画書(創業計画書)が必要で、収支の見通しを数字で説明できることが重要です。

自治体の創業支援融資

都道府県・市区町村が独自の創業支援制度を設けている場合があります。公庫と組み合わせて使える補助制度・利子補給制度もあるため、開業予定地の自治体の産業振興部門や商工会議所に確認することをお勧めします。

補助金・助成金

小規模事業者持続化補助金(最大50万円・自治体によっては上乗せあり)や、地域によっては創業時の設備費への補助金があります。補助金は事後精算のものが多く、採択が確定してから開業することが難しいケースもあります。また、申請には事業計画の作成が必要で、採択が保証されるわけではありません。活用できるかどうかは申請前に最新の公募要領を確認してください。

自己資金

融資を受ける場合も、自己資金の割合が多いほど審査で有利になる傾向があります。日本政策金融公庫の創業融資では、開業資金の10〜30%程度を自己資金として準備しておくことが審査上の目安になることがあります(公庫の審査基準は非公開のため、実際の条件は窓口での確認が必要です)。

資金計画のポイント:開業費用だけで考えない

よくある失敗は「車両と設備が揃えばすぐ利益が出る」と考えて運転資金を少なくしすぎることです。開業後の最初の1〜3か月は売上が安定しない時期で、その間も仕入れ・出店料・固定費・借入返済・生活費が出ていきます。

開業資金を考えるときは、「車両・設備・許認可の費用」と「開業後3か月間の収入がゼロでも乗り越えられる運転資金」の2つを分けて計算することが重要です。

たとえば月の固定費(車両維持費・保険・通信費)が5万円で生活費が15万円なら、3か月分の運転資金として20万円×3か月=60万円を事業費用とは別に確保しておく、という考え方です。

資金の試算については、キッチンカー開業 収支シミュレーターで開業資金・借入条件・開業後の収支を合わせて計算できます。

開業後3か月の資金繰りについて

開業資金を確保したあとは、開業後の資金繰りを計画することが次のステップです。資金繰りについては「キッチンカー開業後の資金繰り、最初の3か月が山場。」で詳しく解説しています。

キッチンカーの収支全体の構造については、「キッチンカーの収支、開業前に知っておくべき数字の全体像。」で解説しています。

開業費用を自分のケースで計算する

開業費用の内訳・借入金額・借入条件を入力して、開業後の収支と資金繰りを試算したい場合は、キッチンカー開業 収支シミュレーターが使えます。無料で使えます。


出典:日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査(2025年12月5日公表)」。飲食業・宿泊業全体の平均費用975万円・中央値600万円(キッチンカーに特化した数字ではありません)。食品営業許可の手数料は区市町村により異なります。練馬区の例は練馬区公式情報(2023年)。食品衛生協会の費用は各都道府県協会の公式情報(北九州市10,000円・沖縄県8,250円)。正確な金額は申請先の保健所・食品衛生協会に確認してください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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