就労継続支援A型・B型の処遇改善加算は、取得できる金額も取得の要件も、同じ障害福祉サービスの中で最も複雑な部類に入ります。令和6年4月の報酬改定で旧3加算が1本の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に統合され、区分の名称と率が変わりました。このページでは、A型・B型それぞれの加算率・計算方法・計画書の提出について整理します。
令和6年4月に旧3加算が1本に統合された
令和6年3月以前は、障害福祉サービスの人件費補助として3つの加算が存在していました。①福祉・介護職員処遇改善加算、②福祉・介護職員等特定処遇改善加算、③福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算です。
令和6年4月の報酬改定で、この3つが「福祉・介護職員等処遇改善加算」1本に統合されました(告示第523号)。区分はI・II・III・IVの4段階で、旧加算の要件と率を引き継ぎながら整理されています。IとIIはさらに「イ」と「ロ」に分かれており、合計6段階です。
旧加算をすべて取得していた事業所は、令和6年4月以降は原則として新加算の上位区分に移行しています。令和6年3月以前に取得していた区分との対応は指定権者(都道府県・市区町村)からの通知で案内されています。
A型の処遇改善加算区分と率
就労継続支援A型の処遇改善加算は、月の報酬合計(基本報酬+他の加算)に以下の率を乗じて算定します(告示第523号 別表第13)。
| 区分 | 加算率(A型) | 旧加算の対応(おおよそ) |
|---|---|---|
| 処遇改善加算 Iイ | 10.8% | 旧3加算すべて取得・旧ベースアップ等支援加算イ |
| 処遇改善加算 Iロ | 11.2% | 旧3加算すべて取得・旧ベースアップ等支援加算ロ |
| 処遇改善加算 IIイ | 10.6% | 旧処遇改善加算+旧特定処遇改善加算・旧ベースアップ等支援加算イ |
| 処遇改善加算 IIロ | 11.0% | 旧処遇改善加算+旧特定処遇改善加算・旧ベースアップ等支援加算ロ |
| 処遇改善加算 III | 9.1% | 旧処遇改善加算+旧特定処遇改善加算(ベースアップ等未取得) |
| 処遇改善加算 IV | 7.5% | 旧処遇改善加算のみ取得 |
| 取得なし | 0% | 未取得 |
出典:告示第523号 別表第13。率は令和8年4月現在。
加算I・IIのイとロの違いは「月額賃金改善要件II」の有無です。ロのほうが取得要件が厳しいぶん加算率が高くなっています。
B型の処遇改善加算区分と率
就労継続支援B型の加算率はA型とは別に設定されています(告示第523号 別表第14)。A型より全体的にやや低い水準です。
| 区分 | 加算率(B型) |
|---|---|
| 処遇改善加算 Iイ | 10.5% |
| 処遇改善加算 Iロ | 10.9% |
| 処遇改善加算 IIイ | 10.3% |
| 処遇改善加算 IIロ | 10.7% |
| 処遇改善加算 III | 8.8% |
| 処遇改善加算 IV | 7.4% |
| 取得なし | 0% |
出典:告示第523号 別表第14。率は令和8年4月現在。
A型とB型で加算率が違う理由
A型とB型で加算率が異なるのは、サービスの性格の違いを反映しています。A型は利用者と雇用契約を結ぶ事業であり、職員とは別に利用者への賃金支払いが必要です。処遇改善加算はあくまで「職員」の処遇改善を目的としており、利用者への賃金には充てられません。
B型では利用者への工賃の支払いはありますが、雇用契約ではないため社会保険料の使用者負担が発生しません。固定費構造がA型より小さいぶん、処遇改善加算の原資をやや小さく設定したとみられます。ただし差は0.2〜0.4ポイント程度であり、取得要件に違いはありません。
加算の計算方法(具体例)
処遇改善加算は、その月の報酬の合計(基本報酬+福祉専門職員配置等加算・送迎加算などの加算額の合計)に加算率を乗じて計算します。
例として、就労継続支援A型・定員20人・稼働率90%・地域区分10円・評価点105〜130点未満(区分4・基本報酬666単位)の事業所で、加算Iイ(10.8%)を取得している場合を考えます。なお、開業から1年間は評価点80〜105点未満に相当する単位数(533単位)で算定し、さらに965/1000の引き下げが適用されます(告示第523号 注3の2・注3)。
まず月の基本報酬の概算を計算します。稼働率90%として1日平均18人の利用、1か月22日稼働とすると、基本報酬の月合計は概算で以下のとおりです(他の加算は省略して基本報酬のみで計算)。
- 1日あたりの基本報酬単位(定員20人以下・区分4・サービス費Ⅰ): 666単位(告示第523号 別表第13)
- 1日の利用者数:18人(定員20人×稼働率90%)
- 1か月22日稼働時の月間単位数:666×18×22 = 約263,700単位
- 1単位10円換算での月間報酬:約2,637,000円
ここに処遇改善加算Iイ(10.8%)を加えると:
- 処遇改善加算分:2,637,000円×10.8% = 約285,000円
- 月間の総収入(処遇改善込み):約2,922,000円
この約285,000円が、その月の処遇改善加算として加算請求できる金額です。この金額を職員の賃金改善に充てることが義務づけられています。
B型でも計算の仕組みは同じです。月の基本報酬合計(前年度工賃月額区分に対応した単位数×利用者数×稼働日数)に加算率を掛けます。
取得要件の概要
処遇改善加算を取得するには、主に2つの要件があります。
職場環境等要件
「職場環境等要件」は、職員の定着・育成・働きやすさに関する取り組みを一定数以上実施することを求めるものです。取り組みは「入職促進に向けた取り組み」「資質の向上・キャリアアップに向けた支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「生産性向上のための取り組み」「やりがい・働きがいの醸成」の6区分に分かれており、区分ごとに取り組む必要のある項目数と、全体の必要数が区分によって異なります(告示第523号の附記)。
加算Iを取得するには、加算IVよりも多くの取り組みが求められます。既存の職場環境改善に取り組んでいる事業所は、どの取り組みが要件に該当するかを確認することで、上位区分の取得が可能になる場合があります。
賃金改善要件
加算で得た収入は、原則として職員への賃金改善(基本給・手当等の引き上げ)に充てることが義務づけられています。「月額賃金改善要件I」は、特定の職員(経験・技能のある職員)に月額一定額以上の賃金改善を行うことを求めます。加算IとIIは月額賃金改善要件Iが必須です。
加算Iイ・ロは「月額賃金改善要件II」としてさらに要件が追加されます。ロのほうが加算率が高い代わりに、要件が厳しい設計になっています。
なお、加算IVは月額賃金改善要件なしで取得できる最低の区分です。開業初年度から取得できますが、加算率は7.4〜7.5%と低く、職員への還元も小さくなります。
計画書・実績報告書の提出
処遇改善加算を取得するには、毎年度の開始前に「処遇改善計画書」を指定権者に提出し、翌年度の取得を申請します。実績は年度終了後に「処遇改善実績報告書」で報告します。
提出の期限や書式は都道府県・市区町村によって異なります。一般的には4月に提出する都道府県が多いですが、指定権者ごとに確認が必要です。既存の取得状況の引き継ぎ(令和6年3月以前の旧加算との対応)も含め、指定権者に相談することが確実です。
新規に開業した事業所は、年度途中でも加算を取得できる手続きがあります。開業時に計画書を提出し、要件を満たすことで加算を算定できます。開業後に計画書の提出を忘れると、その年度は加算が取得できないまま経営が続くことになるため、開業前に確認しておくことが重要です。
未取得が経営に与える影響
処遇改善加算を取得しないと、加算の収入がまるごと入ってこないだけでなく、職員の賃金水準が他の事業所と比べて低くなりやすく、採用・定着に影響が出る可能性があります。
具体的な金額の差を確認するため、先ほどの計算例(月間基本報酬約264万円)で比べてみます(区分4・666単位・定員20人・稼働率90%・地域区分10円)。
| 取得区分(A型) | 月間加算収入 | 年間加算収入(概算) |
|---|---|---|
| Iロ(11.2%) | 約29.5万円 | 約354万円 |
| Iイ(10.8%) | 約28.5万円 | 約342万円 |
| III(9.1%) | 約24.0万円 | 約288万円 |
| IV(7.5%) | 約19.8万円 | 約238万円 |
| 取得なし | 0円 | 0円 |
加算Iロと未取得では、年間で約354万円の収入差が生じます。全国平均の収支差が約994万円(A型・令和6年度決算)であることを考えると、加算の未取得は経営上の大きな損失になります。
B型でも同様の構造です。基本報酬が低い区分(工賃月額が低い段階)では加算の絶対額は小さいですが、加算IV(7.4%)と加算Iロ(10.9%)の差は約3.5ポイントあり、事業所規模が大きいほど差が広がります。
加算区分を上げるための実務
現在加算IVまたはIIIを取得している事業所が上位区分に移行するには、職場環境等要件の取り組み数を増やすことが出発点になります。厚生労働省が示す取り組みの例示の中から、自事業所でまだ実施できていないものを選んで記録に残すことが、上位区分への移行の準備になります。
記録の書式や提出方法は都道府県・市区町村によって異なりますが、「取り組みを実施していることを書面で示せる状態」にしておくことが基本です。事業所内の研修・会議の記録、育児介護支援制度の整備状況、ハラスメント対策の文書化など、日常の管理業務の中でできるものが多くあります。
既存の事業所が加算区分を見直すタイミングとしては、毎年度の計画書提出前(4月前後が一般的)が最も多いです。前年度実績を振り返りながら「今年度は上位区分を取得できるか」を確認する流れになります。
A型・B型の収支シミュレーターで加算込みの試算ができます
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