就労継続支援A型のBCP訓練、利用者は「従業員」として扱う必要がある。
就労継続支援A型のBCP(業務継続計画)は、同じ障害福祉サービスでも他のサービスとは異なる論点がある。利用者が雇用契約を結んだ従業員であるためだ。
BCPの研修は年1回以上・訓練は年1回以上が義務だ。これは他の障害福祉サービスと同じだが、A型のBCPには「事業継続計画としての側面」と「雇用継続のための措置」の2つを同時に考える必要がある。
根拠は基準省令(指定障害福祉サービス等基準省令)のA型に関する条文と、厚生労働省の解釈通知(障発0330第12号)だ。BCPに関する条文は平成30年度の報酬改定で追加され、令和3年度の改定で研修・訓練の年間回数が義務として整理された。
BCP研修・訓練の根拠となる省令条文。
基準省令は、就労継続支援A型についてもBCPの策定と研修・訓練の義務を規定している。研修・訓練に関する条文は次のように規定している。
就労継続支援A型事業者は、従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
(指定障害福祉サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 就労継続支援A型に関する条文より引用)
解釈通知(障発0330第12号)は、定期的に行う回数として研修・訓練ともに年1回以上と示している。
BCPの策定そのものは、令和3年度の改定で経過措置期間が設けられたのち、令和6年4月からすべての就労継続支援A型事業者に義務となった。
A型のBCPは「2種類の継続」を考える。
他の通所系サービス(就労継続支援B型・放課後等デイサービス等)のBCPが主に「事業所としての業務継続」を考えるのに対して、A型のBCPはそれに加えて「利用者の雇用継続」も考える必要がある。
就労継続支援A型の利用者は、事業所との間に雇用契約を結んでいる。労働基準法や最低賃金法の適用を受ける従業員だ。この点が、B型や生活介護など他の通所系サービスと根本的に異なる。
大規模災害や感染症の流行によって事業が停止した場合、B型であれば「サービスを一時的に停止する」という判断だけで済む場面でも、A型では「雇用契約を持つ利用者の賃金や就労継続をどう守るか」という判断が追加で必要になる。
具体的には次のような論点が生じる。
- 事業所が閉鎖した場合の休業補償(休業手当)の取り扱い
- 自宅でできる作業(テレワーク的な生産活動)の可能性
- 雇用調整助成金の活用手続き
- 事業再開のめどが立たない場合の解雇・雇用契約終了の手順
BCP研修では、こうした雇用継続に関する論点をあらかじめ整理しておくことが、A型に固有の課題だ。
訓練で確認する内容。
年1回以上の訓練で確認すべき主な内容は次のとおりだ。
第1に、安否確認の手順だ。発災後に利用者・職員全員の安否をどの手段でどの順番で確認するかを実際に動かしてみる。A型では利用者が雇用契約を持つ従業員であるため、安否確認は雇用管理の一環でもある。
第2に、代替手段の確認だ。主要な設備や機械が使えなくなった場合の代替作業の洗い出しや、主要取引先への連絡手順を確認する。
第3に、指揮命令系統の確認だ。管理者や担当職員が不在の場合に誰が意思決定を行うかを確認する。
第4に、記録の様式確認だ。訓練の実施と結果を記録し、次回の訓練に活かす改善点を書き留める。
訓練の方法は、机上訓練(テーブルトップ演習)でも構わない。重要なのは「やった証拠としての記録」と「改善点を次回に活かす仕組み」だ。
感染症研修との違い。
BCP研修と似た研修として感染症研修があるが、それぞれの位置づけは異なる。
| テーマ | 研修の年間回数 | 訓練の年間回数 | 委員会 |
|---|---|---|---|
| BCP | 年1回以上 | 年1回以上 | 不要 |
| 感染症 | 年2回以上 | 年1回以上 | 不要 |
| 虐待防止 | 年1回以上 | 不要 | 年1回以上 |
| 身体拘束の適正化 | 年1回以上 | 不要 | 年1回以上 |
感染症研修だけが年2回以上と回数が多い。BCP研修・訓練はそれぞれ年1回以上だ。この2つは内容が重複する部分(感染症流行を想定したBCP等)もあるが、別の研修・訓練として実施し、それぞれ記録を残す必要がある。
BCP・感染症・虐待防止・身体拘束の年間計画の組み方。
12ヶ月の年間計画に落とし込むと、就労継続支援A型の法定研修は次のように配置できる。
感染症研修が年2回必要なため、4月と9月など半年おきに配置する。BCP研修・訓練は同日に実施するか、研修を5月・訓練を11月など分けて計画する。虐待防止と身体拘束はそれぞれ年1回以上のため、月1テーマで計画すれば自然に組み込める。
A型固有テーマ「雇用契約と労働条件」「生産活動の安全と工賃」(研修キットのオリジナルテーマ)と合わせると、12テーマで12ヶ月の計画を埋めることができる。
記録の保管と運営指導での確認。
BCP研修・訓練の記録として残すべき内容は次のとおりだ。
- 実施日と参加した職員・利用者の名前
- 研修のテーマと使用した資料
- 訓練の場合は訓練の方法・実施した内容・気づいた改善点
運営指導では、BCPの計画書そのものの提出を求められるほか、研修・訓練の記録の確認がある。計画書と記録がセットで揃っていることが重要だ。
BCPは「作っただけ」では不十分とされており、研修・訓練を通じて職員が内容を理解し、実際の緊急時に動けることが求められている。
就労継続支援A型向けの法定研修ツール。
就労継続支援A型向けの法定研修・訓練キットを公開している。BCPを含む12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案・年間計画を、1つのツールで作成できる。
BCPについては、発災後の安否確認・代替手段・指揮命令系統・記録の4点を含む研修資料と、机上訓練の記録様式が含まれている。A型固有テーマ「雇用契約と労働条件」「生産活動の安全と工賃」も収録している。
無料版では虐待防止の1テーマをすべての機能で試すことができる。


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