危険物取扱者 乙種第3類(乙3)は、自然発火性物質と禁水性物質を扱うための国家資格です。カリウム・ナトリウム・黄りんなど、空気や水に触れただけで発火・爆発する危険物を正しく管理するために必要な知識を問われます。このページでは、試験概要・出題範囲・合格率・勉強法・おすすめ問題集まで、乙3に関する情報をまとめています。
乙種第3類とはどのような資格か
危険物取扱者は消防法に基づく国家資格であり、甲種・乙種・丙種の3区分があります。乙種はさらに第1類から第6類まで6区分に分かれており、取得した類の危険物のみ取り扱えます。
第3類は「自然発火性物質及び禁水性物質」を扱う区分です。空気に触れると自然発火するもの、水に触れると発火・可燃性ガスを発生させるものが対象で、化学工場・研究機関・半導体製造工場などで需要があります。
資格を取得すると、取り扱いだけでなく立会い(無資格者の作業に付き添う業務)も可能になります。乙種は類ごとの取得が必要ですが、1つ取得すると他の類を受験する際に「法令」と「物理化学」が免除されます。
試験の概要と日程
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 一般財団法人 消防試験研究センター |
| 受験資格 | なし(誰でも受験可) |
| 試験方式 | 筆記試験(マークシート) |
| 試験科目 | ①危険物に関する法令(15問)②基礎的な物理学および化学(10問)③危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問) |
| 合格基準 | 各科目60%以上(足切りあり) |
| 試験時間 | 2時間(免除ありの場合は35分) |
| 受験手数料 | 4,600円(2024年現在) |
| 試験日 | 都道府県によって異なる。年複数回実施 |
| 合格発表 | 試験日から2〜3週間後 |
試験は都道府県の消防試験研究センター支部が実施します。受験申請はインターネットまたは書面で行います。
出題範囲:3科目の内容と特徴
科目①:危険物に関する法令
消防法・危険物の規制に関する政令・規則に基づく問題が出題されます。指定数量・製造所等の区分・貯蔵・取り扱い・移送・危険物保安監督者・危険物取扱者制度など、法律の内容全般が対象です。乙種全類で共通の内容であり、1類取得済みの方は免除されます。
科目②:基礎的な物理学および化学
燃焼・爆発の原理、消火の仕組み、化学式・化学反応、原子・分子・イオン、溶液の性質などが出題されます。高校化学の基礎レベルが問われ、乙種全類共通です。乙3の性質科目と連動する内容(金属の反応・水との反応)が特に重要です。
科目③:危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(性質消火)
乙3固有の科目です。第3類危険物の各物質について、物理的・化学的性質・危険性・貯蔵方法・消火方法が出題されます。第3類の特徴である「水との反応」「空気との反応」が核心テーマです。品名ごとの指定数量・危険等級の暗記が必要です。
第3類危険物の品名一覧
消防法施行令別表第一に定められた第3類危険物の品名と指定数量は次の通りです(消防法施行令第1条の10・別表第一による)。
| 品名 | 指定数量 | 危険等級 | 代表的な物質 |
|---|---|---|---|
| カリウム | 10kg | I | K(金属カリウム) |
| ナトリウム | 10kg | I | Na(金属ナトリウム) |
| アルキルアルミニウム | 10kg | I | トリエチルアルミニウム(TEA) |
| アルキルリチウム | 10kg | I | n-ブチルリチウム |
| 黄りん | 20kg | I | P₄(白りんとも呼ばれる) |
| アルカリ金属(K・Na除く) | 50kg | II | Li(リチウム)・Rb・Cs |
| アルカリ土類金属 | 50kg | II | Ca・Ba・Sr・Ra |
| 有機金属化合物(Al・Li除く) | 50kg | II | ジエチル亜鉛(Et₂Zn) |
| 金属の水素化物 | 300kg | III | NaH・CaH₂・LiAlH₄ |
| 金属のりん化物 | 300kg | III | Ca₃P₂(りん化カルシウム) |
| カルシウム・アルミニウムの炭化物 | 300kg | III | CaC₂(炭化カルシウム)・Al₄C₃ |
| その他のもので危険物に定めるもの | - | - | 塩素化けい素化合物(危険等級III・300kg) |
「危険等級I」が最も危険で、指定数量が最も少ないのが特徴です。カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウムはいずれも10kgという極めて少ない量が指定されています。
乙3の消火方法のルール
第3類危険物の消火で最も重要なのは、禁水性物質への水の使用が絶対禁止である点です。
| 物質の種類 | 有効な消火方法 | 禁止される消火方法 |
|---|---|---|
| 禁水性物質(黄りん以外の大半) | 乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩 | 水・泡・強化液・CO₂(禁忌) |
| 黄りん(禁水性なし・自然発火性のみ) | 注水冷却・乾燥砂 | - |
CO₂消火器も一部の禁水性物質(カリウム・ナトリウム)では反応するため使用不可です。試験では「水で消火できる例外は黄りん」として出題されます。
保管方法の重要ポイント
第3類危険物の保管で試験頻出の内容です。
- カリウム・ナトリウム:石油(灯油)の中に保管。空気との接触を絶つため液中に完全に沈める。
- 黄りん:水の中に保管。空気中では約34℃で自然発火するため、必ず水中で保存する。
- アルキルアルミニウム・アルキルリチウム:窒素ガス封入容器など不活性ガス雰囲気下で保管。
「水中保管と灯油中保管を間違えない」ことが乙3性質科目の得点ポイントです。
乙3の合格率と難易度
消防試験研究センターが公表するデータによると、乙種全体の合格率は例年60〜70%台です。乙3の単独データは公表されていませんが、乙種全体の傾向と大きく変わらず、適切な勉強をすれば合格できる難易度です。
乙3の難易度が上がる要因は性質消火科目の暗記量です。品名・指定数量・危険等級・物質ごとの性質・消火方法をセットで覚える必要があります。逆に、乙4を取得済みの場合は法令・物化が免除されるため、性質消火の10問だけに集中でき、難易度は大幅に下がります。
乙4保有者の科目免除制度
乙種の他の類を既に取得している場合、「危険物に関する法令」と「基礎的な物理学および化学」が試験免除になります(消防法第13条の4の規定による)。受験時間は35分に短縮されます。乙4取得済みで乙3を受験する方は、性質消火の10問(60%=6問以上正解)だけを対策すればよいことになります。
乙4を既に持っている化学プラント・ガソリンスタンド等の従業員が、取り扱いできる危険物の幅を広げる目的で乙3を追加取得するケースが多いです。
乙3の勉強方法と勉強時間の目安
初受験(法令・物化も受験する場合)
目安は2〜3ヶ月・50〜70時間程度です。法令・物化それぞれに2〜3週間をかけ、残りを性質消火に集中させる配分が効果的です。
乙4保有者(免除あり)
目安は1〜2週間・15〜20時間程度です。第3類の品名・性質・消火方法を集中的に暗記するだけで合格ラインに到達できます。
勉強の進め方
- 品名一覧表を作り、指定数量・危険等級を暗記する。
- 各物質の特徴(水と反応するか・空気で発火するか)を整理する。
- 消火方法の原則(禁水性は乾燥砂・黄りんは注水)を先に覚え、例外物質を把握する。
- 過去問・AI問題集で繰り返し練習し、曖昧な知識を潰す。
AI問題集で効率よく演習する
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- 法令・物化・性質消火の3科目対応
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過去問だけでは対応できない「知識の組み合わせ問題」も練習できます。乙3の試験対策に活用してください。
まとめ:乙3合格のための3つのポイント
- 品名・指定数量・危険等級の表は必ず暗記する。特に危険等級Iの4品名(カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム)と黄りん(20kg・等級I)を優先する。
- 消火方法は「禁水性=乾燥砂」「黄りん=注水OK」の2軸で整理する。
- 保管方法は「カリウム・ナトリウム=灯油中」「黄りん=水中」を絶対に混同しない。
乙3の性質消火10問は、正しく整理して覚えれば確実に得点できます。AI問題集や過去問を繰り返し活用して、試験本番に備えてください。
乙3の試験日程と受験申請の手順
試験日程は各都道府県によって異なります。消防試験研究センターの公式サイトで都道府県ごとの試験日・申請受付期間を確認してください。東京都・大阪府など大都市圏では年に複数回試験が実施されます。
受験申請はインターネット申請と書面申請の2種類があります。インターネット申請は申請手数料がやや安くなる場合があります。申請時に受験票が発行され、試験当日に持参します。
試験結果は試験実施日から約2〜3週間後に消防試験研究センターのウェブサイトで発表されます。合格者は合格通知書を受け取り、都道府県知事あての免状交付申請を行います。
乙3を活かせる仕事・職場
乙種第3類の危険物取扱者資格が活かせる職場は以下の通りです。
| 業界 | 具体的な職場・業務 |
|---|---|
| 化学工業 | 化学プラント・研究施設でのアルキルアルミニウムや有機金属化合物の取り扱い |
| 半導体製造 | シリコン半導体のCVD工程でのアルキルアルミニウム・アルキルリチウムの管理 |
| 溶接・金属加工 | 炭化カルシウム(カーバイド)から生成するアセチレンガスの管理 |
| 農薬・殺虫剤製造 | りん化カルシウムを使ったくん蒸剤の取り扱い |
| 研究機関 | 大学・研究所でのアルカリ金属・有機金属試薬の安全管理 |
| 薬品会社 | 水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤の取り扱い管理 |
乙3単独での求人はやや少ないですが、他の類との複数取得で危険物の専門職としての価値が高まります。乙4を持ちながら乙3を追加取得する方が多く、危険物保安監督者の要件(甲種または乙種6類全取得)に向けた道筋として取得されるケースもあります。
甲種危険物取扱者を目指す場合の位置づけ
甲種危険物取扱者はすべての類の危険物を取り扱えます。甲種の受験資格には「乙種4種類以上取得済み(1・2・3・4類または1・3・5・6類等の組み合わせ)」という要件があります(消防法第13条の4の規定による)。乙3はその4種類のひとつとして有効です。甲種を目指す方にとって乙3は必須の通過点です。

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