第1類危険物(酸化性固体)は、消防法別表第一で9つの品名に分類されています。指定数量は50kg・300kg・1,000kgの3段階あり、品名によって危険等級がI・II・IIIに区分されます。危険物取扱者 乙種第1類(乙1)の試験では、この9品目の指定数量・危険等級・代表物質・消火方法がすべて出題対象になります。
このページでは、第1類危険物の9品目を一覧表で整理し、試験で問われる数値と性状の要点をまとめます。各品目の外観・物性・工業用途と、試験でよく出る誤解も合わせて解説します。
第1類危険物9品目の早見表
| 品名 | 指定数量 | 危険等級 | 代表物質 | 消火 |
|---|---|---|---|---|
| 塩素酸塩類 | 50kg | I | 塩素酸カリウム(KClO₃)・塩素酸ナトリウム(NaClO₃) | 大量の水 |
| 過塩素酸塩類 | 50kg | I | 過塩素酸カリウム(KClO₄)・過塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₄) | 大量の水 |
| 無機過酸化物 | 50kg | I | 過酸化ナトリウム(Na₂O₂)・過酸化カリウム(K₂O₂)・過酸化バリウム(BaO₂)・過酸化マグネシウム(MgO₂) | 乾燥砂(水厳禁) |
| 亜塩素酸塩類 | 50kg | I | 亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂) | 大量の水 |
| 臭素酸塩類 | 50kg | I | 臭素酸カリウム(KBrO₃) | 大量の水 |
| 硝酸塩類 | 300kg | II | 硝酸カリウム(KNO₃)・硝酸アンモニウム(NH₄NO₃) | 大量の水 |
| ヨウ素酸塩類 | 300kg | II | ヨウ素酸カリウム(KIO₃) | 大量の水 |
| 過マンガン酸塩類 | 300kg | II | 過マンガン酸カリウム(KMnO₄)・暗紫色 | 大量の水 |
| 重クロム酸塩類 | 300kg | II | 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)・橙赤色 | 大量の水 |
| その他のもの | 1,000kg | III | DCCA(ジクロロイソシアヌル酸)・三酸化クロム等 | 大量の水 |
出典:消防法別表第一(第一類)・危険物の規制に関する政令別表第一・危険物の規制に関する規則別表第4
指定数量50kgは5品目に共通する(危険等級I)
指定数量50kgの品目は、塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類の5品目です。これらはいずれも危険等級Iに区分されます。
指定数量は、危険物を「何kg以上保管したら危険物施設の基準が適用されるか」の基準となる数量です。指定数量が小さいほど少ない量でも規制を受けることを意味し、危険性の高さと対応しています。
- 塩素酸塩類(50kg・等級I):塩素酸カリウム(KClO₃)が代表。有機物・硫黄との混合物は衝撃・加熱で爆発する。鋭感性が高く第1類で最も注意が必要な品目の一つ
- 過塩素酸塩類(50kg・等級I):過塩素酸カリウム(KClO₄)が代表。塩素酸塩類より安定しているが同様の危険性を持つ。過塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₄)はロケット推進剤に使われる
- 無機過酸化物(50kg・等級I):過酸化ナトリウム・過酸化カリウム・過酸化バリウム・過酸化マグネシウムが代表。水と反応して酸素を発生し強く発熱するため、消火には乾燥砂を使う。二酸化炭素消火器も不可(Na₂O₂ + 2CO₂ → 2Na₂CO₃ + O₂の反応が起きる)
- 亜塩素酸塩類(50kg・等級I):亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂)が代表。酸と反応して二酸化塩素(ClO₂)を発生し爆発の危険がある
- 臭素酸塩類(50kg・等級I):臭素酸カリウム(KBrO₃)が代表。有機物との混合で加熱・衝撃により危険性が高まる
指定数量300kgは4品目(危険等級II)
指定数量300kgの品目は、硝酸塩類・ヨウ素酸塩類・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類の4品目です。危険等級はIIです。指定数量50kgの品目と比べると、少量では比較的安定していますが危険物であることには変わりありません。
- 硝酸塩類(300kg・等級II):硝酸カリウム(KNO₃)・硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)が代表。硝酸アンモニウムは大量になると爆発性を示す(1947年テキサスシティの爆発事故が有名)。工業用爆薬(ANFO)にも使われる
- ヨウ素酸塩類(300kg・等級II):ヨウ素酸カリウム(KIO₃)が代表。食塩への添加(ヨウ素強化食塩)や分析化学に使われる
- 過マンガン酸塩類(300kg・等級II):過マンガン酸カリウム(KMnO₄)が代表。暗紫色の結晶。水溶液は鮮やかな紫色。強い酸化剤で、還元剤・有機物・酸との接触で危険。消毒・漂白・分析(過マンガン酸カリウム滴定)に使われる
- 重クロム酸塩類(300kg・等級II):重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)・重クロム酸アンモニウム((NH₄)₂Cr₂O₇)が代表。橙赤色の結晶。過マンガン酸塩類と色で区別する(過マンガン酸→暗紫色・重クロム酸→橙赤色)
指定数量1,000kgは「その他のもの」(危険等級III)
「その他のもの」は指定数量1,000kgで危険等級IIIです。上記9品目に分類されない酸化性固体が該当します。代表的なものはジクロロイソシアヌル酸(DCCA)で、プール・水道水の消毒剤として広く使われています。三酸化クロム(CrO₃)なども含まれます。
各品目の外観・状態・工業用途一覧
試験では物質の色・状態・用途が問われることがあります。主要物質の外観と用途をまとめます。
| 物質名 | 外観・状態 | 主な工業用途 |
|---|---|---|
| 塩素酸カリウム(KClO₃) | 白色光沢ある結晶・粉末 | マッチ頭薬・花火・煙火・農薬(除草剤) |
| 塩素酸ナトリウム(NaClO₃) | 白色結晶 | 除草剤(主成分)・パルプ漂白・二酸化塩素製造 |
| 過塩素酸カリウム(KClO₄) | 白色結晶 | 固体ロケット推進剤(酸化剤)・爆薬・花火 |
| 過塩素酸アンモニウム(NH₄ClO₄) | 白色結晶・粉末 | ロケット固体推進剤(スペースシャトルの固体補助ブースター) |
| 過酸化ナトリウム(Na₂O₂) | 白色〜淡黄色粉末 | 漂白剤・消毒剤・酸素源(潜水艦用呼吸剤の原料) |
| 過酸化バリウム(BaO₂) | 白色粉末 | 過酸化水素製造・ガラス・陶磁器の材料 |
| 硝酸カリウム(KNO₃) | 白色結晶 | 火薬(黒色火薬の原料)・肥料・食品添加物(発色剤) |
| 硝酸アンモニウム(NH₄NO₃) | 白色結晶・粒状 | 窒素肥料・ANFO爆薬・冷却パック |
| 過マンガン酸カリウム(KMnO₄) | 暗紫色結晶 | 消毒剤・漂白剤・水処理・化学分析(酸化還元滴定) |
| 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇) | 橙赤色結晶 | 皮革のなめし・酸化剤・分析化学 |
| DCCA(ジクロロイソシアヌル酸) | 白色固体・錠剤状 | プール消毒剤・水道消毒・衛生用品 |
出典:各物質の安全データシート(SDS)および工業技術資料
試験で覚えるべき数値の整理
試験で数値の問題が出たときのために、品目ごとの数値を整理します。
| 指定数量 | 危険等級 | 該当品目(数) |
|---|---|---|
| 50kg | I | 塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類(5品目) |
| 300kg | II | 硝酸塩類・ヨウ素酸塩類・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類(4品目) |
| 1,000kg | III | その他のもの(1種類) |
指定数量50kgの5品目はすべて「〜酸塩類」または「無機過酸化物」という名称です。硝酸塩類(300kg)は「指定数量が大きい方」と覚えると混同しにくくなります。
指定数量の混同を避けるための覚え方
試験で多い誤りが「硝酸塩類の指定数量を50kgと答えてしまう」ケースです。硝酸塩類(KNO₃・NH₄NO₃)は300kgです。名前に「酸塩類」がついているため、塩素酸塩類(50kg)と混同しやすいです。
次のように整理すると間違えにくくなります。
- 「塩素酸塩類・過塩素酸塩類・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類」→ いずれも「塩素」または「臭素」を含む塩類で50kg
- 「硝酸塩類」→ 「硝酸」は塩素・臭素と関係なく、300kg(大きい方)
- 「ヨウ素酸塩類・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類」→ 硝酸塩類と同じ300kg
- 「無機過酸化物」→ 50kg(消火方法も別で水厳禁)
第1類危険物に共通する性状と取扱い上の注意
9品目すべてに共通する性状をまとめます。
- すべて固体(酸化性固体)
- それ自体は燃えない(不燃性)
- 加熱・衝撃・摩擦で分解して酸素を放出する
- 放出した酸素が可燃物の燃焼を促進する(促進燃焼)
- 可燃物・有機物との接触が危険
- 運搬容器の表示:「火気・衝撃注意」「可燃物接触注意」(危険物の規制に関する規則第44条)
消火方法は、無機過酸化物のみ「乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩」(水厳禁)で、それ以外の8グループは「大量の水による冷却」が基本です。
よくある受験者の誤解:第1類は水でも消火できない?
「第1類は酸化剤だから水では消せない」という誤解が多くあります。正しくは次のとおりです。
- 第1類で水厳禁なのは「無機過酸化物」だけ(過酸化ナトリウム・過酸化カリウム・過酸化バリウム・過酸化マグネシウム)
- 残り8品目(塩素酸塩類・過塩素酸塩類・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類・硝酸塩類・ヨウ素酸塩類・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類)は大量の水による冷却消火が基本
- 「第1類全体が水厳禁」と覚えてしまうと、試験で誤答になる
試験では「次の第1類危険物のうち、消火に水を使ってはならないものはどれか」という形で問われることが多いです。無機過酸化物の1品目だけが答えになります。
甲種受験に向けた第1類の学習の重要性
甲種危険物取扱者は第1〜6類すべての危険物を扱える資格で、性質消火の問題は20問出題されます。うち第1類は2〜3問程度出題される計算になります。乙1で第1類9品目の指定数量・性状・消火方法を完全に覚えておくと、甲種の第1類問題をすべて得点できます。
甲種の受験資格として「乙種の免状を4種類以上取得していること」という要件がありますが、乙1(第1類)はこの4種類に含まれる資格です。乙4を持っている場合、乙1・乙2または乙3・乙5を取得すると甲種受験資格になります。乙4取得済みなら乙1の受験は性消10問だけになるため、比較的短期間で取得できます。
乙1の問題集で9品目を確認する
危険物乙1 AI問題集では、第1類9品目に対応した性質消火の問題を100問練習できます。9品目それぞれの性状・指定数量・消火方法が問われる問題が収録されており、答えのあとに消防法の根拠条文が表示されます。
法令70問・物化50問も合わせて220問を無料で練習できます。危険物取扱者の問題集まとめでは乙4・乙6・甲種との比較もできます。
出典:消防法別表第一(第一類)・危険物の規制に関する政令別表第一・危険物の規制に関する規則別表第4

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