危険物取扱者 乙種第1類(酸化性固体)と乙種第6類(酸化性液体)はどちらも「酸化性」という共通点を持ちながら、取り扱う物質の状態(固体か液体か)・品目数・指定数量・消火方法に大きな違いがあります。乙4取得後に乙1・乙6を追加取得するルートをたどる方が多いですが、両者の違いを正確に把握してから学習に入ることが重要です。
この記事では、乙1と乙6を試験対策・実務の両面から比較し、どちらから先に取得すべきかの判断材料も紹介します。
乙1と乙6の基本的な違い
乙1(第1類)と乙6(第6類)の主な違いを表で整理します。
| 項目 | 乙1(酸化性固体) | 乙6(酸化性液体) |
|---|---|---|
| 対象物の状態 | 固体 | 液体 |
| 品目数 | 9品目+その他 | 6品目 |
| 指定数量の範囲 | 50kg〜1,000kg | 300L(全品目共通) |
| 危険等級 | I〜III | I〜II |
| 消火方法(原則) | 大量の水(無機過酸化物を除く) | 大量の水(フッ素系3品目を除く) |
| 水厳禁の品目 | 無機過酸化物(Na₂O₂等) | 三フッ化臭素・五フッ化臭素・五フッ化ヨウ素 |
| 受験資格 | なし | なし |
| 試験問題数 | 35問(法15・物10・性10) | 35問(法15・物10・性10) |
| 合格基準 | 各科目60%以上かつ全体60%以上 | 各科目60%以上かつ全体60%以上 |
| 乙4取得後の免除 | 法令・物化免除可 | 法令・物化免除可 |
試験の形式・問題数・合格基準は同じです。大きく異なるのは性質消火の範囲で、扱う物質(固体 vs 液体)が違うため、学習すべき品目の性状が全く別になります。
乙1の品目は9種類、乙6の品目は6種類
乙1(第1類)が対象とする品目は9品目です。危険等級・指定数量とあわせて確認します。
| 品目 | 指定数量 | 危険等級 | 代表物質 |
|---|---|---|---|
| 塩素酸塩類 | 50kg | I | 塩素酸カリウム(KClO₃) |
| 過塩素酸塩類 | 50kg | I | 過塩素酸カリウム(KClO₄) |
| 無機過酸化物 | 50kg | I | 過酸化ナトリウム(Na₂O₂) |
| 亜塩素酸塩類 | 50kg | I | 亜塩素酸ナトリウム(NaClO₂) |
| 臭素酸塩類 | 50kg | I | 臭素酸カリウム(KBrO₃) |
| 硝酸塩類 | 300kg | II | 硝酸カリウム(KNO₃) |
| ヨウ素酸塩類 | 300kg | II | ヨウ素酸カリウム(KIO₃) |
| 過マンガン酸塩類 | 300kg | II | 過マンガン酸カリウム(KMnO₄) |
| 重クロム酸塩類 | 300kg | II | 重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇) |
さらに「その他のもの」(指定数量1,000kg・危険等級III)として、ジクロロイソシアヌル酸(DCCA)などが含まれます。
乙6(第6類)が対象とする品目は6品目で、過塩素酸・過酸化水素・硝酸・三フッ化臭素・五フッ化臭素・五フッ化ヨウ素です。乙6の指定数量は全品目300Lで統一されており、乙1より品目数は少ないものの、フッ素系化合物という特殊な物質が含まれます。
指定数量の構造は乙1が複雑
乙1の指定数量は品目によって50kg・300kg・1,000kgと3段階に分かれており、危険等級もI〜IIIと幅があります。乙6は全品目300Lで統一されているため、指定数量の計算が単純です。
複数品目を同一場所で貯蔵する場合、指定数量の倍数(貯蔵量 ÷ 指定数量)の合計が1以上になると規制を受けます。乙1は品目ごとに指定数量が異なるため、倍数の計算で注意が必要です。
たとえば塩素酸塩類100kgと硝酸塩類300kgを一緒に貯蔵する場合、倍数の合計は100/50 + 300/300 = 2 + 1 = 3となります。倍数が3なので、指定数量の3倍以上として消防法の規制対象になります。
乙6であれば過塩素酸600L・過酸化水素300Lを貯蔵する場合、600/300 + 300/300 = 2 + 1 = 3と計算します。単位がLとkgで異なりますが、計算の仕組みは同じです。
消火方法の違いは「水厳禁の品目」で分かれる
乙1と乙6はどちらも「大量の水で冷却」が基本ですが、一部の品目で水が使えない例外があります。
- 乙1で水厳禁:無機過酸化物(過酸化ナトリウム Na₂O₂・過酸化カリウム K₂O₂・過酸化バリウム BaO₂等)。これらは水と激しく反応して酸素を発生するとともに、強く発熱します。消火には乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩を使います。
- 乙6で水厳禁:三フッ化臭素(BrF₃)・五フッ化臭素(BrF₅)・五フッ化ヨウ素(IF₅)の3品目。いずれも水と激しく反応するフッ素系化合物です。乾燥砂等で消火します。過塩素酸・過酸化水素・硝酸は大量の水で消火できます。
この「水厳禁の例外がある」という構造は乙1・乙6ともに共通しています。試験では「第1類は全品目水厳禁」「第6類は水を使ってはいけない」という誤りの選択肢が出題されるため、例外品目を正確に押さえることが大切です。
乙1と乙6の混載は可能
危険物を運搬する際の混載(異なる類の危険物を同一車両で運ぶこと)について、乙1と乙6の組み合わせは禁止されていません。危険物の規制に関する規則第47条で定められた混載禁止の組み合わせに、第1類と第6類の組み合わせは含まれていないためです。
混載が禁止されているのは、第1類を基準にすると次の組み合わせです。
- 第1類と第2類(可燃性固体)→ 禁止
- 第1類と第3類(自然発火性・禁水性)→ 禁止
- 第1類と第4類(引火性液体)→ 禁止
- 第1類と第5類(自己反応性)→ 禁止
- 第1類と第6類(酸化性液体)→ 禁止されていない(混載可)
この点は試験で出題されやすい内容です。「第1類と第6類の混載は禁止されている」という誤りの選択肢が出ることがあります。
難易度は性消の範囲の広さで乙1がやや上
試験の形式・合格基準は同一ですが、性消の学習範囲は乙1(9品目)の方が乙6(6品目)より広く、品目ごとの性状の違いを覚える量も多くなります。
特に乙1では、無機過酸化物(水厳禁)・塩素酸塩類(鋭感性が高く火薬の原料にも使われる)・過マンガン酸塩類(強い酸化作用と特徴的な紫色)・重クロム酸塩類(有毒な六価クロム含む)など、性状が大きく異なる品目が混在しています。乙6の6品目は「液体の酸化性」という共通点でまとめやすい面があります。
乙4の免状を持っている方が乙1・乙6を追加取得する場合、どちらも性消の10問のみの受験になります。科目免除後の学習範囲の差は比較的小さくなりますが、乙1の9品目対乙6の6品目という品目数の差は残ります。
乙1と乙6を両方取得する価値
乙1(第1類)・乙6(第6類)はそれぞれ取り扱える危険物の類が異なるため、どちらか一方だけでは対応できない現場もあります。化学工場・研究施設・農薬製造・漂白剤製造などでは、第1類と第6類の両方が出てくる場合があります。
また、甲種危険物取扱者の受験資格として「乙種4種類以上の取得」が必要です。乙4・乙1・乙6・乙3の組み合わせが代表的な甲種受験ルートの一つです。乙1と乙6の両方を取得することで、甲種への道が大きく近づきます。
乙1と乙6の学習優先度の考え方
乙4を既に持っている方が次に乙1・乙6のどちらを取るかを迷う場合、実務上の必要性・甲種への組み合わせ・学習量のバランスで判断するとよいでしょう。
実務上の需要では、乙1は化学工場・農薬・漂白剤・花火製造など幅広い業種で求められます。乙6は硝酸・過酸化水素を扱う研究・製造施設での需要があります。勤務先や転職志望の業界に合わせて優先順位を決めるのが実践的です。
甲種の受験資格を目指す場合は、「乙4(持っている)・乙1または乙6(1種)・乙3(必須)・乙5(必須)」の組み合わせが最短ルートです。乙1と乙6のどちらでも甲種受験資格の要件を満たせるため、どちらを先に取るかで大きな差はありません。
乙1・乙6の合格基準と試験対策のポイント
乙1・乙6ともに合格基準は「各科目60%以上かつ全体60%以上(35問中21問以上)」です。全体が21問以上でも、1科目でも60%を下回れば不合格になります。各科目の基準は次のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 合格基準(60%以上) |
|---|---|---|
| 危険物に関する法令 | 15問 | 9問以上 |
| 基礎的な物理・化学 | 10問 | 6問以上 |
| 危険物の性質と消火 | 10問 | 6問以上 |
| 合計 | 35問 | 21問以上かつ全科目60%以上 |
科目免除を使う場合は性消10問のみで6問以上が合格ラインです。法令・物化を免除して性消に集中する場合でも、10問中6問という基準は決して低くありません。第1類(乙1)なら9品目の性状・消火方法を、第6類(乙6)なら6品目の性状・消火方法をしっかり覚える必要があります。
乙1・乙6でよく出る誤解と対策
乙1・乙6を学習する際によくある誤解を整理します。
- 「乙1と乙6は性状が似ているから一緒に覚えられる」:酸化性という共通点はあるものの、物質の状態(固体 vs 液体)・品目数・指定数量・水厳禁の品目が異なります。別々の問題集で品目ごとに整理することが重要です。
- 「合格基準は各科目40%以上」:誤りです。正しくは各科目60%以上かつ全体60%以上です。
- 「第1類と第6類は同一施設に保管できない」:誤りです。混載禁止規定では第1類と第6類の組み合わせは禁止されていません。保管(貯蔵所内での同室保管)についても、第1類と第6類の混在自体は禁止されていません。ただし実務上は安全上の観点から分けて保管するのが原則です。
- 「乙6の全品目に水を使ってはいけない」:誤りです。乙6で水厳禁なのは三フッ化臭素・五フッ化臭素・五フッ化ヨウ素の3品目のみです。過塩素酸・過酸化水素・硝酸は大量の水で消火できます。
乙1・乙6それぞれに特化した問題集で練習する
危険物乙1 AI問題集では第1類(酸化性固体)の確認済み220問(法令70問・物化50問・性消100問)を繰り返し無料で練習できます。危険物取扱者の問題集まとめでは乙1・乙6・乙4・甲種の問題集を一覧で確認できます。複数の乙種を受験予定の方はあわせて参照してください。
出典:消防法別表第一・危険物の規制に関する政令別表第三・危険物の規制に関する規則第47条

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