認知症が進んで、固定資産税の納付書が届いていても親が気づかず・払えない状態になってしまった。家族が気づかないままでいると、滞納・差し押さえ・延滞税の発生につながる。認知症高齢者の固定資産税の滞納を防ぐ方法・滞納した場合の対応・払えない場合の減額・猶予制度を整理した。
5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)
固定資産税の滞納が起きやすいケース
認知症高齢者の固定資産税の問題が起きやすい状況を整理した。
- 納付書が届いても本人が気づかない・忘れる:毎年4〜5月ごろに市区町村から届く固定資産税の納付書を、認知症が進んでいる本人が封を開けない・紛失する・払わずに放置するケースがある
- 本人の口座への自動引き落としが停止した:口座振替(自動引き落とし)を設定していても、口座残高不足・口座の変更等で引き落としが停止することがある。停止したことに本人が気づかない場合がある
- 認知症が判明して後見申立てを進めている間の空白期間:後見申立てから審判まで数か月かかる間に、後見人も家族も正式な権限がない状態になる。その間に固定資産税の納付期限が来てしまうことがある
- 本人が施設に入所して誰も自宅にいなくなった:本人が施設に入所した後、誰も自宅に住んでいない状態でも固定資産税は課税される。自宅に届く郵便物を確認する人がいないと滞納になりやすい
滞納した場合に起きること
固定資産税を滞納すると、次のような流れで手続きが進む(地方税法第331条以下)。
- 督促状の送付(納期限から20日以内):納付期限を過ぎると市区町村から督促状が届く(地方税法第329条)
- 延滞金の発生:納付期限の翌日から延滞金が発生する(地方税法第326条)。延滞金は最初の1か月は年2.4%、それ以降は年8.7%(令和6年の場合)
- 催告:督促状を送付した後も納付がない場合、市区町村から催告(追加の納付催促)が届く
- 財産調査・差し押さえ:滞納が続く場合、市区町村は財産調査を行い、財産(預金・不動産等)を差し押さえることができる(地方税法第331条)
家族が「代わりに」固定資産税を払う方法
認知症の親の代わりに家族が固定資産税を払う方法を整理した。
- コンビニ・金融機関でのバーコード決済:固定資産税の納付書にバーコードがある場合、家族がコンビニや金融機関の窓口で代わりに支払うことが可能だ。第三者による納付は一般に認められている(民法第474条)
- 口座振替の変更:本人の口座から自動引き落としを設定している場合は、口座残高が十分かどうかを家族が確認する体制を作る。後見人が設定されていれば、後見人の管理する口座に口座振替を変更する手続きができる
- 後見人による納付:後見人が設定されている場合は、後見人が本人の財産から固定資産税を納付することが後見人の職務の範囲内だ
固定資産税の減額・猶予制度
固定資産税が「払えない」場合に活用できる制度を整理した。
- 徴収猶予(地方税法第15条):本人が「震災・風水害・火災等の被害」「事業の廃止・休止」「疾病による医療費負担が増大した」等の理由で固定資産税の納付が困難な場合は、市区町村に「徴収猶予」の申請ができる。認知症による医療費・介護費の増加が「疾病による支出の増大」として認められる可能性がある
- 換価の猶予(地方税法第15条の5):差し押さえを受けた財産を直ちに売却されると生活が困難になる場合は「換価の猶予」を申請できる。申請が認められると差し押さえた財産の売却が猶予される
- 分割納付の相談:一括での納付が困難な場合は、市区町村の税務課に「分割納付(複数回に分けての支払い)」を相談できることがある
「住んでいない自宅」の固定資産税問題
本人が施設に入所して「誰も住んでいない自宅」の固定資産税は、特に問題が起きやすい。
- 「特定空き家」に指定されると税優遇が失われる:誰も住んでいない自宅が「特定空き家(空家等対策特別措置法に基づく指定)」に指定されると、固定資産税の「住宅用地の特例(税額の6分の1〜3分の1の軽減)」が適用されなくなる。固定資産税が最大6倍になることがある
- 自宅の売却を検討する場合:施設入所が長期化する場合は、自宅の売却を検討する家族も多い。自宅の売却には後見人の権限が必要(後見人が不動産を売却する際は家庭裁判所の許可が必要・民法第859条の3)。後見申立てを早期に進めることが重要だ
- 賃貸活用の場合:自宅を売却せずに賃貸に出す場合は、後見人の権限で賃貸借契約を締結できる。賃料収入は本人の財産として後見人が管理することになる
「固定資産税の減額」を受けられる場合
固定資産税は土地・建物の「評価額(課税標準額)」に税率をかけて算出される(地方税法第350条)。評価額は3年ごとに見直される(評価替え)。法律上の軽減が受けられる場合を整理した。
- 住宅用地の特例:住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税の「課税標準額」が「小規模住宅用地(200㎡以下の部分):評価額の6分の1」「一般住宅用地(200㎡超の部分):評価額の3分の1」に軽減される(地方税法第349条の3の2)。これが誰も住まない「特定空き家」になると特例の適用が除外される
- 新築住宅の特例(新築から3〜5年間):新築から一定期間は固定資産税が2分の1になる特例(地方税法附則第15条の6)。ただし認知症高齢者の自宅は通常この特例の対象外だ
- 自然災害による被害の減額:火災・地震・台風等の自然災害で家屋・土地が被害を受けた場合は、申告によって固定資産税が減額される場合がある(地方税法第367条)
「固定資産税の納税義務者」は誰か
固定資産税は「その年の1月1日(賦課期日)時点の登記名義人」が納税義務者だ(地方税法第343条)。認知症が進んで本人が対応できなくなっても、登記名義が本人のままであれば本人が納税義務者のままだ。
問題が起きやすいケースを整理した。
- 親名義のままで子が住んでいる場合:子が親名義の自宅に住んでいる場合でも、固定資産税は親(登記名義人)に課される。本人が認知症になっても登記名義を変えない限り、本人が納税義務者のままだ
- 相続後に登記変更をしていない場合:本人が亡くなっても登記変更をしていない場合、亡くなった人の名義で固定資産税の通知が届くことがある。相続後の登記変更(相続登記)は2024年4月以降「相続から3年以内に行う義務」が生じた(不動産登記法第76条の2・2024年施行)
施設入所後の空き家の維持コストを試算する
親が施設に入所した後の「空き家の維持コスト」を整理した。介護費用と自宅維持コストのどちらを優先するかを判断するための数字だ。
- 固定資産税:自宅(住宅用地・建物)の固定資産税。地域・建物の規模によって異なるが、一般的な住宅で年5〜20万円程度
- 都市計画税(市街化区域内の土地・建物に課税):固定資産税と一緒に納付書が届く。固定資産税の評価額の0.3%以下
- 火災保険料:空き家状態でも火災保険は継続する必要がある。ただし居住中と比べて保険料が高くなる場合がある
- 電気・ガス・水道の基本料金:解約しない場合は基本料金が発生する
- 草刈り・維持管理費用:空き家を放置すると草が生い茂り、近隣への迷惑になることがある。定期的な管理が必要だ
これらのコストと「介護施設の費用(年間)」を比較して、自宅を維持するか売却・賃貸に出すかを判断することが重要だ。
この記事のまとめ
- 認知症が進むと固定資産税の納付書を見落とす・忘れるケースが増える。家族が納付状況を把握する体制を作ることが重要だ
- 滞納すると督促状→延滞金(年2.4〜8.7%)→差し押さえの順で手続きが進む(地方税法)
- 家族がコンビニ・金融機関で代わりに払うことは民法上可能(民法第474条)
- 後見人が設定されれば、後見人が本人の財産から固定資産税を納付・猶予申請の手続きができる
- 誰も住んでいない自宅が「特定空き家」に指定されると固定資産税の軽減特例が失われ、最大6倍になることがある(空家等対策特別措置法)
- 固定資産税は「住宅用地の特例」で小規模住宅用地(200㎡以下)は評価額の6分の1・一般住宅用地(200㎡超)は3分の1に軽減される(地方税法第349条の3の2)。「特定空き家」に指定されるとこの特例が外れる
- 施設入所後の空き家は「固定資産税・都市計画税・火災保険・管理費用」が継続してかかるため、売却・賃貸を後見申立てと並行して検討することが重要だ。自宅不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要(民法第859条の3)
- 誰も住まない自宅が「特定空き家」に指定されると住宅用地の特例(固定資産税6分の1軽減)が外れ、最大6倍になることがある(空家等対策特別措置法・地方税法第349条の3の2)
- 相続後の登記変更(相続登記)は2024年4月以降「相続から3年以内」に行う義務が生じた(不動産登記法第76条の2)。義務を怠ると10万円以下の過料が課される可能性がある
- 固定資産税は「口座振替で自動引き落とし」に変更することで納付漏れを防げる。口座残高が不足すると引き落としが止まるため、後見人または家族が残高を定期確認(月1回程度)する体制が必要だ
- 滞納が始まると督促→延滞金(年2.4〜8.7%)→差し押さえの流れで進む(地方税法第326条・第329条・第331条)。初期の段階(督促状の段階)で市区町村の税務課に相談することで、分割納付・徴収猶予の道が開ける
- 相談先:市区町村の税務課(徴収猶予・分割相談)・後見人・弁護士・司法書士(相続登記・後見申立ての専門家)
出典:地方税法第326条(延滞金)・第329条(督促状)・第331条(差し押さえ)・第15条(徴収猶予)・第15条の5(換価の猶予)、民法第474条(第三者による弁済)・第859条の3(後見人による不動産売却)、空家等対策の推進に関する特別措置法(特定空き家の指定)
5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)

コメント