認知症の親が「訪問販売で高額な契約をしてきた」「知らないうちにリフォーム契約をしていた」という問題は実際に起きる。認知症の状態で結んだ契約は有効なのか、取り消せるのか。法律的な判断基準と、取り消し手続きの方法を整理した。
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認知症の状態で結んだ契約は「無効」か「取消可能」か
認知症の親が結んだ契約の効力は、「意思能力の有無」によって判断が変わる。
- 意思能力がない状態での契約は「無効」:民法第3条の2(2020年施行)は「意思能力を有しない者の法律行為は無効」と定める。認知症が重度で、契約の内容を全く理解できない状態での契約は無効だ
- 意思能力があるが判断力が著しく低下している状態の契約:軽度〜中等度の認知症で、形式的には理解している状態の契約は「有効」として扱われる可能性がある。ただし成年後見(保佐・補助)が開始していれば、一定の行為について「取消権」が認められる
成年後見(保佐・補助)が開始していれば取消権がある
成年後見(後見・保佐・補助)が開始していると、後見人等に「取消権」が認められる場合がある。
- 後見(成年後見):本人が行った日常生活に関する行為以外はすべて取消可能(民法第9条)
- 保佐:民法第13条第1項に定める重要な行為(不動産の売買・多額の借財等)は保佐人の同意が必要で、同意なしの行為は取消可能
- 補助:家庭裁判所が定めた範囲の行為について、補助人の同意が必要で取消可能
成年後見が開始していない場合の取り消し方法
成年後見が開始していない段階で、認知症の親が不利な契約をした場合の対処は次の通りだ。
- クーリングオフの活用:訪問販売・電話勧誘等に該当する契約は、特定商取引法に基づくクーリングオフ(契約後8〜20日以内)が使える。期間内であれば無条件で解除できる
- 「意思能力がない」として無効の主張:契約当時に意思能力がなかったことを証明できれば、民法第3条の2に基づいて無効を主張できる。医師の診断書(契約当時の認知症の程度)が証拠になる
- 消費者契約法による取り消し:消費者が「誤認」「困惑」した状態で結んだ契約は、消費者契約法第4条・第10条に基づいて取消または無効の主張ができる
- 消費生活センターへの相談:内閣府の「消費者ホットライン(188)」に電話して相談する。消費生活相談員が業者との交渉を無料でサポートしてくれる
「認知症と知りながら締結させた」契約への対応
業者が「相手が認知症と知りながら」契約を締結させた場合は、詐欺・不当勧誘として刑事告訴の対象になることもある。消費生活センター・警察の相談窓口(#9110)に相談する。
この記事のまとめ
- 意思能力がない状態での契約は民法第3条の2に基づき「無効」
- 成年後見が開始していれば後見人等に「取消権」がある(後見は日常行為以外すべて取消可能)
- クーリングオフ期間内なら特定商取引法に基づいて無条件解除できる
- 消費者契約法による取り消し・消費生活センター(188)への相談を活用する
出典:民法第3条の2(意思能力・2020年施行)・第9条(成年後見人の同意権)・第13条(保佐人の同意権)、消費者契約法第4条・第10条、特定商取引法(クーリングオフの根拠)
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