認知症による口座凍結を解除する方法。生前凍結と死後凍結の違いと対処

認知症で口座が凍結されると「二度と使えない」と思っている家族もいるが、実際には凍結を「解除」できるケースと「合法的に資金を引き出す手順」がある。凍結には「銀行が自主的に凍結するケース(本人の認知症を把握した場合)」と「本人の死亡によって凍結するケース」の2種類がある。それぞれの解除・対処の方法を整理した。

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「口座凍結」の2種類を区別する

口座凍結には性格が全く異なる2つのケースがある。

  • 生前凍結(認知症による):本人が生存中、金融機関が「本人に判断能力がない」と判断した場合に口座操作を制限するケース。法律上の義務ではなく、各金融機関の内規による。
  • 死亡による凍結:本人が亡くなった後、相続手続きが完了するまで口座が「入出金停止」になるケース。この場合は「凍結解除」ではなく「相続手続き」が必要だ(本記事では生前凍結を主に扱う)。

生前凍結の解除方法

本人が生存中に銀行が生前凍結をした場合の対処は次の通りだ。

  1. 成年後見人(法定後見)の選任:後見登記事項証明書(法務局発行)を金融機関に提出することで、後見人が口座を管理できるようになる。これが最も確実な解除方法だ
  2. 任意後見の発動:事前に任意後見契約を締結していた場合、任意後見監督人の選任申立てを行うことで任意後見が開始し、受任者が財産管理できる
  3. 金融機関への個別交渉:一部の金融機関では「介護・医療目的の資金需要がある」という説明と書類(要介護認定通知・入院領収書等)の提出によって、一時的な資金引き出しに応じてくれる場合がある。対応は金融機関・支店によって大きく異なる

「預金の払い戻し制度」(相続発生後)

本人が亡くなった後の口座凍結については、2019年施行の「相続預金の払い戻し制度」(民法第909条の2)を活用できる。

これは相続人が一人でも、遺産分割協議が成立する前に各金融機関あたり「相続開始時の預金残高×1/3×払い戻しを求める相続人の法定相続分」(上限150万円)を引き出せる制度だ。葬儀費用・当面の生活費に充てるための制度として導入された。

手続きには「被相続人の死亡を証明する書類(戸籍謄本等)」「払い戻しを求める相続人の戸籍謄本・身分証」が必要だ。

凍結を防ぐために今すぐやること

生前凍結を受ける前に、まだ本人が判断能力を持っている段階でできる準備は次の通りだ。

  • 代理人カードの申請:主要な取引銀行すべてで代理人カードを取得しておく
  • 任意後見契約の締結:公正証書での任意後見契約を締結しておく(開始は判断能力が低下した後)
  • 家族信託の設定:信託口口座への資金移動を完了させれば、凍結後も受託者が信託財産を管理できる

この記事のまとめ

  • 生前凍結は成年後見人の選任または任意後見の発動で解除できる
  • 金融機関への個別交渉は「介護・医療目的」と書類を添えて行う(対応は金融機関によって異なる)
  • 相続発生後の凍結は「相続預金の払い戻し制度」(民法第909条の2)で1人150万円まで引き出せる
  • 凍結を防ぐ最善策は「代理人カード取得・任意後見契約・家族信託」を判断能力があるうちに設定すること

出典:民法第909条の2(遺産分割前の相続預金払い戻し・2019年施行)、任意後見契約に関する法律、各金融機関の内規(生前凍結の根拠)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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