成年後見が始まると原則として本人が亡くなるまで続く。「やめたい」「後見人を変えたい」と思っても、自由には終了できない。これが法定後見の最大のデメリットの一つとして挙げられる理由だ。後見を途中で終了させる手段はあるが、条件は厳しい。まず後見をやめることができるケースと、後見人の解任・変更ができるケースを把握することが重要だ。
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法定後見が終了する3つのケース
法定後見(後見・保佐・補助)が終了するのは、原則として以下の3つのケースのみだ。
1. 本人の死亡
本人が亡くなった時点で後見は自動的に終了する。後見人は終了後、財産の引き継ぎ・精算を行う。
2. 判断能力の回復(後見終了の審判)
本人の判断能力が回復した場合、家庭裁判所に「後見終了の審判」を申立てることができる(民法第10条)。ただし認知症の場合は判断能力が完全に回復することはほとんどなく、このケースは稀だ。
3. 後見から保佐・補助への移行(段階の変更)
判断能力が一部回復して「後見」の必要性がなくなり「保佐」や「補助」で十分になった場合、家庭裁判所に申立てて段階を変更することができる。ただし認知症の進行とともに段階が下がることはほぼなく、逆に段階が上がることの方が多い。
「後見をやめたい」という理由で終了はできない
本人・家族が「費用が高い」「不便」「後見人と合わない」という理由で後見の取消しを申立てても、原則として認められない。
法定後見は「本人保護のための制度」であり、家族や本人の希望だけで終了させることは制度の趣旨に反するとみなされる。「後見をやめたい」という気持ちは理解できるが、制度上それを実現する方法はほとんどない。
これが「判断能力があるうちに任意後見・家族信託を備えておくことが重要」と言われる最大の理由の一つだ。法定後見が始まる前の段階で動いておけば、継続的な専門職後見人への報酬や、自由度の制限を避けることができる。
後見人の変更・解任はできるか
「後見をやめる」ことは難しいが、「後見人を変える」ことは条件を満たせば可能だ。
後見人の解任(民法第846条)は、後見人に「不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由」がある場合に、家庭裁判所が職権または申立てによって行う。
具体的に解任が認められやすいケースは以下の通りだ。
- 後見人が財産を横領・使い込みしている証拠がある
- 後見人が定期報告を怠っている
- 後見人が本人の意思や福祉を無視した判断をしている
- 後見人と被後見人の利益が著しく相反している
「費用が高い」「担当者と相性が合わない」という理由だけでは解任は認められないことが多い。
後見人の変更申立ての流れ
後見人の変更・解任を求める場合の手続きは以下の通りだ。
- 家庭裁判所に「後見人解任の申立て」を行う
- 申立てには「解任の具体的な理由」と「証拠(帳簿・通帳・やり取りの記録等)」が必要
- 家庭裁判所が調査・審理を行い、解任を相当と認めれば解任審判が出る
- 解任後、後任後見人の選任手続きが行われる(家庭裁判所が選任)
申立て人になれるのは、本人・後見監督人・親族・検察官・市区町村長等だ(民法第846条)。
法定後見が始まる前に動くことの重要性
「成年後見が始まってからデメリットに気づく」というケースは多い。
- 専門職後見人の報酬が月々かかることを知らなかった
- 不動産売却に家庭裁判所の許可が必要で時間がかかることを知らなかった
- 後見を「やめる」手段がほぼないことを知らなかった
こうした問題を事前に防ぐには、判断能力があるうちに任意後見(本人が選べる)または家族信託(継続コスト低・家裁不要)を設計しておくことが最善策だ。診断後すぐの段階が最後のチャンスになることを、改めて認識しておく必要がある。
この記事のまとめ
- 法定後見が終了するのは「本人の死亡」「判断能力の完全回復」「段階変更」の3ケースのみ
- 「費用が高い」「不便」という理由での後見終了は原則認められない
- 後見人の解任は「横領・不行跡・著しい職務不適任」に限られる(費用・相性だけでは難しい)
- 法定後見が始まる前に任意後見・家族信託を設計しておくことが最善策
出典:民法第10条(後見終了の審判)・第846条(後見人の解任)・第847条(後見人の欠格事由)、法務省「成年後見制度について」
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