法定後見の申立てが必要になったとき、「誰が申立てできるのか」「家族の誰でもできるのか」という疑問が生じることが多い。申立てができる人の範囲は民法で定められており、範囲外の人は申立てができない。また、申立ての優先順位はなく、誰が先に動いても構わないが、申立てが競合した場合は家庭裁判所が判断する。
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後見申立てができる人の範囲(民法第7条)
成年後見(補佐・補助を含む)の申立てができる人は、民法第7条・第11条・第15条に規定されている。
- 本人:自分自身が申立てることもできる
- 配偶者
- 四親等内の親族:子・孫・兄弟姉妹・甥姪・叔父叔母・いとこ(4親等)まで
- 未成年後見人・未成年後見監督人
- 保佐人・保佐監督人(現在の保佐人がいる場合)
- 補助人・補助監督人
- 市区町村長:身寄りがない・親族が申立てを拒否している等の場合に市区町村長が申立てる「市区町村長申立て」が可能(老人福祉法第32条等)
- 検察官(特定の事情がある場合)
「四親等内の親族」の範囲は広く、甥・姪・いとこまで含まれる。孫も含まれる。しかし姻族(配偶者の兄弟等)は四親等内に含まれない。
申立てができない人・できないケース
「息子の妻(嫁)」は申立て人になれない(四親等内の「親族」は血族と一親等内の姻族が対象だが、血族としての四親等ではないため)。ただし息子(子)は当然申立てができる。
また、申立て人と本人の間に深刻な利益相反がある場合(例:申立て人自身が財産を巡って訴訟中)は、家庭裁判所が申立て内容を慎重に審査する。
申立て人と後見人は別の人でよい
重要な点として、「申立てをした人」が「後見人に選任される人」と一致する必要はない。
申立て書類の中で「後見人候補者」を記載することができるが、家庭裁判所はその候補者を必ずしも選任するわけではない。家族間に対立がある場合・財産が多額の場合・複雑な事情がある場合は、候補者とは別の専門職(司法書士・弁護士)が後見人に選任されることが多い。
最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年)によると、後見等申立てのうち後見人等に選任されたのは「親族」が約26%、「司法書士・弁護士・社会福祉士等の専門職」が約74%だ。
誰も申立てできない場合:市区町村長申立て
本人に親族がいない・連絡が取れない・親族全員が申立てを拒否している等の事情がある場合、市区町村長が職権で申立てを行う「市区町村長申立て」の制度がある。
対象となる根拠法令は老人福祉法第32条・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第51条の11の2等だ。申立てを担当するのは市区町村の高齢者担当部署(介護保険課・高齢福祉課等)だ。費用は市区町村が負担する場合もある。
自分で申立てをする立場にないが、誰かに後見を受けてほしい状況がある場合は、まず市区町村の窓口に相談する。
申立てに必要な書類と費用
後見申立てに必要な主な書類は以下の通りだ。
- 申立書(家庭裁判所所定書式)
- 本人・申立人の戸籍謄本(3か月以内)
- 本人の住民票(3か月以内)
- 診断書(家庭裁判所所定書式・主治医作成)
- 財産目録・収支状況報告書(預貯金通帳コピー・不動産登記事項証明書等を添付)
- 成年後見等登記されていないことの証明書(法務局発行)
申立費用(収入印紙等)は800円程度だが、鑑定が必要な場合は別途3万円〜10万円(医師への鑑定料)がかかる。司法書士または弁護士に申立て代理を依頼する場合は、依頼費用が15万円〜30万円程度かかる。
この記事のまとめ
- 後見申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長等(民法第7条)
- 申立て人と後見人候補者は別の人でよい(家裁が最終的に後見人を決める)
- 専門職(司法書士・弁護士)が選任される割合は約74%(令和5年)
- 誰も申立てできない場合は「市区町村長申立て」の制度がある
- 申立てには書類集めと費用(鑑定ありの場合は数十万円)が必要。司法書士への依頼が実務的
出典:民法第7条(後見開始の審判)・第11条・第15条、老人福祉法第32条、最高裁判所「成年後見関係事件の概況」(令和5年)
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