小規模多機能型居宅介護の外泊・入院時の費用。月額定額制の仕組みと対応。

小規模多機能型居宅介護の外泊・入院時の費用。月額定額制の仕組みと対応。 介護

小規模多機能型居宅介護は月額定額制のサービスです。利用者が旅行・入院・帰省などで外泊した場合、費用はどうなるのか、訪問サービスは継続できるのか、事業者として整理しておくべき点があります。

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小規模多機能の費用の仕組みと外泊の関係

小規模多機能型居宅介護の報酬は、登録者1人につき月額の定額制です。通い・泊まり・訪問の利用回数にかかわらず、月単位の報酬が発生します。

この定額制の仕組みから、利用者が外泊(旅行・帰省・親族宅への滞在など)した場合でも、その月の月額報酬は原則として変わりません。外泊中に通い・訪問を利用しなかったとしても、報酬の減額はありません。

月額定額制の利点として、利用者の体調や状況によって利用頻度が変動しても、事業所の収入が安定しやすい構造があります。

外泊時に訪問サービスを提供できるか

外泊先(旅行先・帰省先・親族宅など)への訪問サービスは、原則として提供できません。小規模多機能型居宅介護の訪問は、「利用者の居宅(住民票上の住所または普段生活している場所)」への訪問を想定しており、外泊先には算定できません。

ただし、利用者の住民票のある住所(自宅)への訪問は、外泊中に自宅に戻った際であれば通常通り実施・算定できます。

外泊とショートステイの違い

小規模多機能の宿泊サービスと、短期入所生活介護(ショートステイ)を混同するケースがあります。それぞれの費用・制度上の位置づけを整理します。

小規模多機能の宿泊 vs ショートステイ
小規模多機能の宿泊 短期入所生活介護(ショートステイ)
費用の仕組み 月額定額制に含まれる(別途加算で増減) 1日ごとの出来高制(利用日分のみ請求)
利用できる施設 自事業所の宿泊室のみ 老人短期入所施設・特養等
ケアマネジャー 事業所の計画作成担当者がケアプランを作成(他のケアマネとは契約しない) 居宅ケアマネジャーがケアプランに組み込む
宿泊費(実費) 食費・居住費等を実費で徴収できる 食費・居住費等を実費で徴収できる

小規模多機能の登録者は、他の事業所のショートステイを併用することが原則として制限されています(居宅ケアマネジャーとの契約も解除されるため)。登録者が宿泊を必要とする場合は、基本的に小規模多機能内の宿泊で対応します。

入院した場合の費用の扱い

利用者が入院した場合、入院期間中も月額報酬は維持されます。短期間(数日〜2週間程度)の入院であれば、退院後にすぐにサービスを再開できるのが小規模多機能の強みです。

長期入院(1か月以上)が見込まれる場合は、利用者・家族と契約の継続について話し合う必要があります。長期入院中も月額報酬を請求し続けることは、実態に沿ったサービス提供の観点から問題になる場合があります。

入院期間と対応の考え方
入院の期間の目安 対応の考え方
数日〜2週間程度 契約を維持しながら退院を待つ。退院後に通い・訪問を再開する
1か月以上の見込み 利用者・家族と相談し、契約の一時停止・解除を検討する。入院先からの退院後に再登録する場合もある
長期入院後の施設入所 施設入所が決まった場合は登録解除の手続きを行う

入院の場合の費用について、個別の判断が難しいケースは市区町村の介護保険担当窓口や国保連合会に相談することをお勧めします。

外泊時に宿泊を他の場所で取る場合

利用者が旅行・帰省等で外泊する際、その期間中は小規模多機能の宿泊は利用できません。外泊先で介護が必要な場合は、外泊先の地域のサービスを使うことになります。

ただし、小規模多機能の登録者は他の訪問介護・通所介護事業所と別途契約することが原則として制限されているため(居宅ケアマネジャーとの契約がないため)、外泊先でのサービス利用は計画的に事前調整が必要です。

外泊の定義と「泊まり」との違い

小規模多機能の文脈で「外泊」とは、利用者が事業所の宿泊室でなく外出先・帰省先に宿泊することです。「泊まり(宿泊サービス)」は事業所の宿泊室を使うことで、報酬上の扱いが異なります。

  • 泊まり(宿泊サービス):事業所の宿泊室を利用する→月額報酬内。夜間職員配置加算等が別途加算される場合がある
  • 外泊:事業所の宿泊室を使わず外出先に宿泊する→月額報酬の変動はなし。宿泊費の実費請求も発生しない

外泊時の記録と管理

利用者が外泊する場合、事業所としては次の点を記録・管理します。

  • 外泊の開始日・終了予定日・外泊先(利用者の介護記録に記載)
  • 外泊中に緊急の連絡が来た場合の対応フロー(連絡先を確認しておく)
  • 外泊前の状態確認(転倒リスク・服薬の確認等)
  • 外泊から戻った後の状態確認と記録

外泊中も利用者との関係を維持するために、電話での定期連絡を行っている事業所もあります。家族への安心感を提供する観点からも有効です。

外泊時費用の利用者への説明

月額定額制の費用体系については、契約時に利用者・家族に丁寧に説明することが重要です。「外泊しても月額は変わらない」という点は、利用者・家族にとって理解しにくい場合があります。

重要事項説明書の中で、「月額料金はご利用の有無にかかわらず月単位で請求します」という旨を明記しておくことで、後々のトラブルを防げます。

月額定額制の仕組みと外泊が発生しやすいケース

小規模多機能の利用者には、独居で家族が遠方に住んでいるケースが多くあります。年末年始・お盆・ゴールデンウィーク等に家族宅へ帰省する「長期外泊」が発生することがあります。

長期外泊中も月額報酬が発生する仕組みを利用者・家族が把握していないと、「使わなかったのに費用がかかる」という不満につながります。契約時に、月額定額制の仕組みと長期外泊の場合の費用について、具体的な例を示して説明しておくことが重要です。

外泊中も請求できる費用とできない費用

外泊中の費用の取り扱い
費用の種類 外泊中の取り扱い
月額介護報酬(基本報酬) 請求可(利用の有無にかかわらず月額で発生)
各種加算(認知症加算・機能訓練体制加算等) 算定要件による。外泊中に加算の算定条件を満たさなくなる場合は算定停止
宿泊費(実費) 外泊先での宿泊であれば請求不可(事業所の宿泊室を使っていないため)
食費(事業所での食事) 外泊中は事業所での食事提供がないため請求不可

特に長期外泊中の加算の算定については、個別の加算の要件を確認して判断することが必要です。

長期外泊・長期不在への対応方針

利用者が1か月以上の長期外泊・長期不在になる場合、事業所として次の対応を検討します。

  1. 契約の継続・一時停止の検討:長期外泊・入院が数か月以上見込まれる場合、利用者・家族と相談のうえ契約を一時停止または解除するか決める
  2. 定期的な連絡の維持:外泊先・入院先への電話連絡で利用者の状況を把握し、戻ってきた際にスムーズにサービスを再開できる関係を維持する
  3. 居宅への確認訪問の継続:長期不在中も郵便物の確認・植物への水やり等の自宅管理に関する確認訪問を続ける事業所もあります(これは介護報酬の算定対象外です)

外泊が多い利用者と事業所の収支

月額定額制のため、外泊が多い利用者(通い・泊まり・訪問の実利用が少ない利用者)は、事業所にとって相対的に収益性が高い利用者です。サービスを提供するコストが低い分、他の利用者(医療ニーズが高く訪問が多い利用者)との収益のバランスをとる形になります。

一方、外泊が多い利用者が多数を占めると、定員を埋めつつも実際のサービス提供が少ない状態になります。サービスの質の観点から、「なぜ通いや訪問を使わないのか」という背景を確認することが重要です。

外泊時の安全確認の体制

利用者が外泊中の安全確認は、事業所によって対応が異なります。義務ではありませんが、次のような取り組みが見られます。

  • 電話での定期確認:外泊開始後2〜3日に一度、利用者または家族に電話で状況を確認する
  • 緊急連絡先の再確認:外泊先の住所・連絡先・緊急時の連絡フローを外泊前に確認し記録する
  • 服薬管理の確認:外泊先でも必要な薬を持参しているか、服薬管理の方法を家族と確認する

これらの取り組みは介護報酬の算定対象ではありませんが、利用者・家族からの信頼を高めるサービスとして重要です。小規模多機能の「地域のかかりつけ」としての役割の一部です。

外泊先での緊急事態への対応

利用者が外泊先で急病・転倒等の緊急事態が起きた場合、対応の一次窓口は外泊先の家族・本人になります。事業所は直接的な対応ができませんが、次のような役割を担うことがあります。

  • 利用者・家族から連絡を受けた場合のアドバイス(かかりつけ医の連絡先案内・搬送先の相談等)
  • 利用者が入院することになった場合の今後のサービス再開についての調整
  • 外泊先で介護が必要になった場合の外泊先近くのサービス事業所の紹介(可能な範囲で)

外泊先での緊急連絡先として事業所の電話番号を伝えておくことで、利用者・家族の安心感につながります。24時間の連絡体制がある場合はその旨も案内します。

外泊時費用と重要事項説明書の整備

月額定額制に関する費用の説明は、重要事項説明書に明記することが必要です。特に外泊・入院時の費用の扱いについては、利用者・家族が誤解しやすいため、次の内容を含めることをお勧めします。

  • 月額料金はサービスのご利用の有無にかかわらず月単位で発生すること
  • 外泊・入院中も月額料金(介護報酬の利用者負担分)は継続して請求されること
  • 長期外泊・入院の場合は事業所に相談いただくこと(一時停止・解除の相談窓口)
  • 外泊中の宿泊費(実費)は発生しないこと

長期外泊・入院と収支シミュレーション

小規模多機能は月額定額制のため、長期外泊・入院の利用者が複数いる場合でも月次収入は変わりません。ただし、長期不在の利用者が多い状態は、事業所として「サービスを実際に提供していない利用者に報酬が発生している」状態です。

収支シミュレーションでは、稼働率(実際にサービスを受けている登録者の割合)が変わっても月次収入が安定するという小規模多機能の特性を活かした計画を立てることができます。

収支全体の試算は小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターでご確認ください。

小規模多機能の在宅支援としての外泊支援

小規模多機能は「在宅生活を継続するための多機能な支援」を提供します。外泊先への直接サービスは算定できませんが、外泊前後のサポートを充実させることで、利用者が安心して外泊・外出できる環境を整えることが事業所の役割の一つです。

具体的には次のようなサポートができます。

  • 外泊前の持ち物・薬の確認(服薬ケースへの詰め替えサポート等)
  • 外泊先で使う用品の準備サポート(歩行補助具の確認・衣類の整理等)
  • 外泊先から戻った日の状態確認訪問と健康チェック
  • 外泊から戻った後の食事・入浴・通いの再開サポート

外泊のある利用者と事業所のサービス提供の工夫

外泊が多い利用者にとって、外泊から戻った直後の「在宅復帰支援」が重要です。長期外泊後・入院後の在宅復帰時には次のようなサービス提供の工夫が有効です。

  • 戻った当日または翌日に訪問を入れ、体調・生活環境を確認する
  • 外泊先・入院先での状況を確認し、通いのスケジュールを再調整する
  • 在宅生活の再開に必要な物品・環境の整備(冷蔵庫の中身・入浴補助用具の確認等)

在宅復帰支援としての小規模多機能の役割を積極的に担うことで、地域のケアマネジャーや入院先の医療機関から「退院先の調整」として紹介を受けやすくなります。

参考・出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)

この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。個別の費用請求の判断は市区町村・国保連合会にご確認ください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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