消防用設備等の設置基準は、消防法施行令によって定められています。しかし、建物の位置・構造・設備の状況によっては、その基準をそのまま適用することが著しく困難な場合や、適用を免除することが公益上必要な場合があります。こうした場合に個別に対応するのが、消防法施行令第32条の特例規定です。
乙6の試験では、特例の認定権限者・申請者・適用される条件が出題されることがあります。また、施行令第32条の特例と、消防法第17条の2の5が定める「特殊消防用設備等」の制度、さらに遡及適用の免除(消防法第17条の2第2項)との違いを区別して覚えることが重要です。この記事では、各制度を条文に基づいて整理します。
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消防法施行令第32条が定める特例の内容
消防法施行令第32条は、消防用設備等の設置基準の適用に関する特例を定めた条文です。条文の趣旨は次のとおりです。
消防長または消防署長は、防火対象物の位置・構造・設備の状況その他の状況により、消防用設備等の設置及び維持の技術上の基準に関する規定を適用することが著しく困難であるか、またはその適用を免除することが公益上必要と認める場合に、当該規定によらないことを認めることができます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 認定権限者 | 消防長または消防署長 |
| 特例が認められる条件① | 規定を適用することが著しく困難な場合 |
| 特例が認められる条件② | 適用を免除することが公益上必要と認める場合 |
| 判断の単位 | 防火対象物ごとの個別判断 |
| 効果 | 設置及び維持の技術上の基準に関する規定によらないことを認める |
出典:消防法施行令第32条(2026年10月確認)
重要な点は、認定権限者が「消防長または消防署長」であることです。消防庁長官や都道府県知事ではありません。また、特例の適用は法令が一律に定めるものではなく、個々の建物の状況を踏まえた個別判断です。
「著しく困難」と「公益上必要」の2つの要件はそれぞれ独立しており、どちらか一方に該当すれば特例の適用を認めることができます。試験では、この2つの要件の区別が問われることがあります。
特例が認められる具体的な場面
施行令第32条の特例が実際に検討される場面は、建物の性質や構造が標準の設置基準と合わない場合です。代表的なケースを整理します。
| 場面 | 特例が検討される理由 |
|---|---|
| 歩行距離の基準を物理的に満たせない建物 | 建物の構造・間取り上、20mの歩行距離内に消火器を配置できない場合 |
| 特殊な用途・構造の建物 | 標準の設置基準が過剰であり、同等以上の消火能力を他の手段で確保できる場合 |
| 文化財や史跡などの建物 | 標準の設置・維持基準を適用することが文化財保護の観点と著しく困難な場合 |
| 代替設備がある場合 | スプリンクラーなど同等以上の消火能力を持つ設備が設置されており、消火器の追加設置が公益上不要な場合 |
出典:消防法施行令第32条(2026年10月確認)
ただし、これらはあくまでも特例が検討される場面の例です。実際に特例が認められるかどうかは、消防長または消防署長が個別の建物ごとに審査・判断します。申請すれば必ず認められるものではなく、基準に適合した審査が必要です。
特例の認定手続き
施行令第32条の特例の認定を受けるためには、関係者(防火対象物の関係者、すなわち建物のオーナーや管理者等)が消防長または消防署長に申請します。
| 手続きの順序 | 内容 | 主体 |
|---|---|---|
| ①申請 | 特例の認定を求めて申請する | 関係者(防火対象物の関係者) |
| ②審査 | 申請内容をもとに建物の状況を審査する | 消防長または消防署長 |
| ③認定 | 基準によらないことを認める | 消防長または消防署長 |
出典:消防法施行令第32条(2026年10月確認)
試験で問われやすいのは、申請する側と認定する側の区別です。申請するのは「関係者」であり、認定するのは「消防長または消防署長」です。消防設備士が申請するわけではなく、建物の関係者が申請する点に注意してください。
また、特例の認定は建物ごと・設備ごとの個別判断であり、一度認定を受けた内容が他の建物に自動的に適用されるものではありません。それぞれの防火対象物について個別に申請・審査を経る必要があります。
消防法第17条の2の5との違い(特殊消防用設備等)
消防用設備等の設置基準に関する特例制度には、施行令第32条の個別特例のほかに、消防法第17条の2の5が定める「特殊消防用設備等」の制度があります。両者は似ていますが、異なる制度です。
| 制度 | 根拠条文 | 認定・承認する機関 | 対象の範囲 |
|---|---|---|---|
| 個別特例 | 施行令第32条 | 消防長または消防署長 | 個別の防火対象物ごとに適用 |
| 特殊消防用設備等 | 消防法第17条の2の5 | 総務大臣 | 性能評価を受けた設備・システムとして広く適用可能 |
出典:消防法施行令第32条・消防法第17条の2の5(2026年10月確認)
施行令第32条の特例は、個々の建物の状況に応じた個別対応です。これに対して、消防法第17条の2の5の特殊消防用設備等は、総務大臣が性能評価を行い、従来の基準では想定されていない新たな技術・システムを認定する仕組みです。特殊消防用設備等として認定を受けた設備は、施行令の基準とは異なる形で設置・維持が認められます。
試験では「特例の認定権限者は誰か」という問いに対して、施行令第32条の場合と第17条の2の5の場合を区別して答える必要があります。施行令第32条は消防長または消防署長、第17条の2の5は総務大臣です。
遡及適用の免除(消防法第17条の2第2項)との違い
施行令第32条の特例とは別に、消防法第17条の2第2項には「遡及適用の免除」の規定があります。この2つは別の制度です。
| 制度 | 根拠条文 | 適用される場面 |
|---|---|---|
| 特例 | 施行令第32条 | 設置基準の適用が著しく困難または公益上不要な場合 |
| 遡及適用の免除 | 消防法第17条の2第2項 | 法改正前の基準で設置された既存設備を直ちに変更しなくてよい場合 |
出典:消防法施行令第32条・消防法第17条の2第2項(2026年10月確認)
遡及適用の免除は、法令の改正があっても、改正前の基準で設置された既存の消防用設備等をすぐに新しい基準に合わせる必要がない場合についての規定です。既存の設備をそのまま維持することが認められます。
施行令第32条の特例は、今後の設置・維持に関して基準を変えることを個別に認める制度です。遡及適用の免除は、過去に設置した設備について新基準を直ちに適用しないという制度です。両者は適用される場面が異なります。試験では「どの場面に適用される制度か」という観点で区別してください。
消防法の体系における第32条の位置づけ
消防法の体系は、法律(消防法)・政令(消防法施行令)・省令(消防法施行規則・規格省令)の層で構成されています。施行令第32条は政令(消防法施行令)の中に置かれており、消防用設備等の設置基準(施行令第7条〜第29条の3等)を補完する特例規定として位置づけられています。
| 法令の層 | 主な内容(乙6に関係するもの) |
|---|---|
| 消防法(法律) | 消防設備士の業務独占(第17条の5)・点検義務(第17条の3の3)・特殊消防用設備等(第17条の2の5) |
| 消防法施行令(政令) | 設置基準(第10条)・設置基準の特例(第32条)等 |
| 消防法施行規則(省令) | 設置の詳細基準(第6条・第9条)・点検の詳細(第31条の6等) |
| 規格省令(技術的規格) | 消火器の構造・機能・表示の詳細基準 |
出典:消防法・消防法施行令・消防法施行規則・規格省令(2026年10月確認)
施行令第32条の特例は、施行令全体の設置基準に対して適用されます。消火器に限らず、消防用設備等全般の設置基準が対象となりますが、乙6の試験では消火器の設置基準との関連で出題されることがあります。法の体系と各条文の位置づけについては消防法の体系と乙6に関係する条文で整理しています。
試験での出題パターン
施行令第32条の特例に関して、試験では次のようなパターンが出題されます。
| 出題のパターン | 正解 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 特例の認定権限者は誰か | 消防長または消防署長 | 施行令第32条 |
| 特例の認定を申請するのは誰か | 防火対象物の関係者 | 施行令第32条 |
| 特例が認められる条件は何か(2つ) | ①適用が著しく困難、②適用免除が公益上必要 | 施行令第32条 |
| 特殊消防用設備等を認定するのは誰か | 総務大臣 | 消防法第17条の2の5 |
| 遡及適用の免除の根拠条文はどれか | 消防法第17条の2第2項 | 消防法第17条の2 |
出典:消防法施行令第32条・消防法第17条の2の5・消防法第17条の2第2項(2026年10月確認)
引っかかりやすいのは、施行令第32条の認定権限者が「消防長または消防署長」であることです。「消防庁長官」や「都道府県知事」と混同しないようにしてください。また、申請者が「消防設備士」ではなく「関係者(建物のオーナー等)」である点も確認しておいてください。
法令(共通)の試験科目全体の対策は乙6の法令(共通)6問の対策で整理しています。
まとめ
消防法施行令第32条の特例は、消防用設備等の設置基準の適用が著しく困難な場合、または適用を免除することが公益上必要な場合に、消防長または消防署長が個別に基準によらないことを認める制度です。申請するのは防火対象物の関係者であり、認定するのは消防長または消防署長です。
試験では、この制度を消防法第17条の2の5の特殊消防用設備等(認定は総務大臣)、および消防法第17条の2第2項の遡及適用の免除(法改正前の既存設備の扱い)と区別して覚えることが重要です。認定権限者と申請者、適用される場面の違いを条文と対応させて整理してください。
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