消火器の放射能力は、規格科目の出題テーマの一つです。「充填量の90%以上放射しなければならない」という基準は試験で問われやすく、機能点検での放射試験の手順と合わせて理解しておく必要があります。
この記事では、放射量・放射時間・機能点検での放射試験の手順を、消火器の技術上の規格を定める省令(以下、規格省令)と消防庁告示第9号をもとに整理します。規格科目の全体的な出題テーマは乙6の規格6問の対策をあわせてご参照ください。
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▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
放射量の基準(規格省令第10条)
消火器から放射される消火薬剤の量(放射量)は、充填量の90%以上でなければなりません。これは規格省令第10条が定める要件です。
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 放射量 | 充填量の90%以上 | 規格省令第10条 |
| 残留量(許容される残り) | 充填量の10%以下 | 規格省令第10条(放射量90%以上の要件から導出) |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令第10条(昭和39年自治省令第27号)(2026年10月確認)
「充填量の10%以下が残ることは許容される」というのは、規格省令が「90%以上放射できること」を要件としているためです。操作を続けても薬剤が完全には出し切れない設計的な余剰分が最大10%認められている、という意味です。
試験では「充填量の何%以上放射しなければならないか」という形で出題されます。「80%以上」「95%以上」などの選択肢と並べて出題されるため、90%という数値を正確に覚えておいてください。
放射時間の基準(規格省令第10条)
放射時間についても規格省令第10条で定められています。薬剤の種類と充填量によって放射時間の下限が決まっており、一定時間以上放射できなければなりません。
| 消火薬剤の種類 | 充填量(容量) | 放射時間の下限 |
|---|---|---|
| 粉末(ABC・BC) | 1kg未満 | 8秒以上 |
| 粉末(ABC・BC) | 1kg以上3kg未満 | 10秒以上 |
| 粉末(ABC・BC) | 3kg以上 | 20秒以上(大型は30秒以上) |
| 強化液 | 6L未満 | 8秒以上 |
| 強化液 | 6L以上 | 20秒以上 |
| 水(棒状・霧状) | 6L未満 | 8秒以上 |
| 水(棒状・霧状) | 6L以上 | 20秒以上 |
| 泡(化学泡・機械泡) | 全容量 | 20秒以上(大型は40秒以上) |
| 二酸化炭素 | 全重量 | 大型以外は規定なし(大型は60秒以上) |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令第10条(2026年10月確認)
放射時間の下限は、使用者が消火作業を行うのに十分な時間を確保するための要件です。粉末消火器では充填量1kg未満で8秒以上、1〜3kg未満で10秒以上、3kg以上で20秒以上と段階的に長くなります。
放射距離の規定
規格省令には放射距離の固定の数値規定はありません。放射距離は消火試験(A火災・B火災・C火災の消火性能試験)で実際に測定し、消火できる範囲で判定されるものであり、「〇メートル以上」という形で一律に定めた条文はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放射距離の規格省令上の扱い | 固定の数値規定なし |
| 放射距離の判定方法 | 消火試験(型式試験)での消火性能で間接的に確認 |
| 実際の放射距離の目安 | 粉末消火器で3〜6メートル程度(機種による) |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令(2026年10月確認)
試験では放射距離を問う問題が出ることがありますが、規格省令が直接定めているのは放射量(90%以上)と放射時間(秒数の下限)であり、放射距離は型式試験の消火試験で間接的に確認されます。「放射距離は規格省令で〇メートルと定められている」という選択肢は誤りです。
機能点検での放射試験の手順
消防設備士乙6が実施する機能点検では、一定の周期で消火器の放射能力を確認するための放射試験を行います。点検要領(消防庁告示第9号)に基づく手順です。
放射試験の対象(抜取り方式)
| 消火器の区分 | 放射試験の対象数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 加圧式(粉末・水・強化液) | 抜取り数の50%以上 | 消防庁告示第9号・点検要領 |
| 蓄圧式(粉末・強化液) | 抜取り数の50%以上 | 消防庁告示第9号・点検要領 |
| 化学泡 | 全数(1年ごと) | 消防庁告示第9号・点検要領 |
出典:消防庁告示第9号・消防用設備等の点検要領(第1 消火器具)(2026年10月確認)
加圧式・蓄圧式ともに、抜取りの対象になった消火器のうち50%以上で放射試験を行います。「放射試験は抜取り数の全数で行う」は誤りで、50%以上が正しい基準です。
放射試験の判定基準
| 確認項目 | 合格基準 |
|---|---|
| 放射量 | 充填量の90%以上が放射されること |
| 放射時間 | 規格省令第10条の下限以上であること |
| 放射の状態 | 著しい詰まり・むら・断続放射がないこと |
出典:消防用設備等の点検要領(第1 消火器具)・規格省令第10条(2026年10月確認)
放射試験で不合格となった消火器は、整備または廃棄の対象になります。放射量が充填量の90%に満たない場合、薬剤の充填量が基準を下回っているか、ガス量が不足している可能性があります。
放射量と能力単位の関係
消火器の能力単位(A・B・C火災に対する消火能力の単位)は、型式試験での消火試験によって決まります。放射量が充填量の90%以上という要件は、消火試験で必要な量の薬剤が実際に放射されることを担保するための基準です。
| 関係する要素 | 内容 |
|---|---|
| 能力単位の決定 | 型式試験でのA火災(木材模型)・B火災(油面積)の消火性能で決まる |
| 放射量との関係 | 放射量が90%を下回ると、消火試験と同等の消火性能が発揮できない |
| 点検での意味 | 放射試験で放射量を確認することは、消火器が設計どおりの能力単位を発揮できるかの確認でもある |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令第10条・規格省令全般(2026年10月確認)
設置基準(消防法施行規則第6条・別表第三)では、防火対象物の用途ごとに必要な能力単位数が定められています。点検で放射量が基準を下回った消火器をそのまま設置し続けると、設置基準上の能力単位を満たさなくなります。
試験での出題パターン
規格科目の放射能力に関する出題は、主に次の形式で問われます。
放射量に関する問題
| 出題の形式 | 正しい答え |
|---|---|
| 「消火器の放射量は充填量の何%以上か」 | 90%以上 |
| 「放射後に残ることが許容される量は充填量の何%以下か」 | 10%以下 |
| 「放射量の根拠条文はどれか」 | 規格省令第10条 |
放射試験に関する問題
| 出題の形式 | 正しい答え |
|---|---|
| 「機能点検の放射試験は抜取り数の何%以上で行うか」 | 50%以上 |
| 「化学泡消火器の放射試験の対象は何か」 | 全数(1年ごと) |
| 「放射距離は規格省令で固定値として定められているか」 | 定められていない |
出典:規格省令第10条・消防庁告示第9号・点検要領(2026年10月確認)
よく出る誤りの選択肢は「充填量の80%以上放射されること」「放射試験は抜取り数の全数で行う」「放射距離は規格省令で3メートル以上と定められている」などです。いずれも正確な数値・規定と置き換えて覚えてください。
放射能力と整備の関係
機能点検で放射試験を行った消火器は、放射後に整備(薬剤の再充填・ガスの充填・本体の点検)が必要です。放射試験を実施した消火器を整備なしでそのまま設置することはできません。
| 放射試験後の状態 | 必要な対応 |
|---|---|
| 放射量が90%以上・放射状態が正常 | 整備(再充填・ガス再充填)を行って設置 |
| 放射量が90%未満・放射に異常 | 整備または廃棄 |
| 腐食・変形等の外観異常 | 機能点検への移行または廃棄 |
出典:消防用設備等の点検要領(第1 消火器具)(2026年10月確認)
乙6(消防設備士乙種第6類)の業務は消火器の整備と点検です。点検で放射試験を行うことは整備の必要性を判断する作業でもあります。点検と整備の実務全体は消防設備士 乙6でできる消火器点検の実務で整理しています。
まとめ
消火器の放射能力の基準として、放射量は「充填量の90%以上」(規格省令第10条)と定められています。放射時間は薬剤の種類と充填量によって下限が決まっており、粉末消火器では充填量1kg未満で8秒以上・3kg以上で20秒以上です。放射距離は規格省令に固定の数値規定はありません。
機能点検での放射試験は、加圧式・蓄圧式とも抜取り数の50%以上で実施し、化学泡は全数・1年ごとに行います。試験では「90%以上」「50%以上」の数値と、「放射距離は規格省令で数値規定はない」という点を正確に押さえてください。
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