消防設備士甲2の基礎的知識(機械)では、配管の「流速」「流量」「呼び径」に関する水理計算問題が出題されます。配管材料の種類・施工基準・圧力試験は別記事で解説しているため、この記事では計算問題に特化して解説します。公式・単位・よく出る数値を整理して、試験本番で素早く解けるようにします。
水理計算の基本:流量・流速・管径の関係
泡消火設備の配管水理計算の土台になる式は「連続方程式(流量保存の法則)」です。
Q = A × v
- Q:流量(m³/s または L/min)
- A:管の断面積(m²)→ A = π × (d/2)² = π × d²/4
- v:流速(m/s)
この式から「流量が同じなら管径が小さいほど流速が上がる」ことが分かります。甲2試験では「流速が一定の基準を超えないように管径を選ぶ」問題が出題されます。
泡消火設備の配管流速の基準値
消防法施行規則第18条に準じた泡消火設備の配管では、次の流速基準が適用されます。
| 配管の種類 | 流速の上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 吸水管(ポンプ吸入側) | 1.5m/s 以下 | 消防法施行規則第18条 |
| 吐出管(ポンプ吐出側) | 4m/s 以下 | 消防法施行規則第18条 |
「吸水管1.5m/s・吐出管4m/s」はそのまま暗記してください。試験では「正しい流速上限を選べ」という問題として出題されます。吸水管は流速が大きすぎるとキャビテーション(気泡発生による腐食・振動)が生じるため上限が厳しく設定されています。
流速計算の実例:呼び径を求める問題
試験で出る典型的な計算問題の例を解きます。
問題例:吐出管の流量が300 L/min のとき、流速が4m/s 以下になる最小の管内径(mm)を求めよ。
解き方:
- 流量をm³/sに変換:300 L/min ÷ 1000 ÷ 60 = 0.005 m³/s
- Q = A × v より A = Q ÷ v = 0.005 ÷ 4 = 0.00125 m²
- A = π × d²/4 より d² = 4A ÷ π = 4 × 0.00125 ÷ 3.14 ≒ 0.001592 m²
- d = √0.001592 ≒ 0.0399 m ≒ 40 mm
答えは管内径40mm以上。この問題形式では「内径40mm以上の配管を選ぶ」が正解です。試験では「π≒3.14」「√の計算は近似値を使う」ことが多く、答えが整数に近い数字になるように問題が設定されています。
配管の呼び径と実際の内径の違い
計算で求めた管内径と実際の「呼び径」の関係も試験で問われます。呼び径は「配管の規格上の呼称」であり、実際の内径とは異なります。
| 呼び径(A) | 呼び径(B・インチ) | 実際の外径(mm)目安 |
|---|---|---|
| 25A | 1インチ | 33.5mm |
| 32A | 1・1/4インチ | 42.7mm |
| 40A | 1・1/2インチ | 48.6mm |
| 50A | 2インチ | 60.5mm |
| 65A | 2・1/2インチ | 76.3mm |
| 80A | 3インチ | 89.1mm |
| 100A | 4インチ | 114.3mm |
試験で重要なのは「呼び径はA(メートル系)とB(インチ系)の2表記がある」という点と、「計算で求めた内径をもとに呼び径を選ぶ場合は、必要内径以上の最小の呼び径を選ぶ」という選び方です。
ヘッド1個あたりの放水量と必要管径
泡ヘッドの放水量(放射量)は泡消火設備の種類によって異なります。放水量から必要な配管径を計算する問題も出題されます。
| 設備の種類 | ヘッド1個の放射量(L/min) |
|---|---|
| 固定式泡消火設備(低発泡・自動閉鎖型) | 75 L/min以上(標準型) |
| 固定式泡消火設備(開放型・一斉開放式) | 設計放射量による |
| 移動式泡消火設備(ホース接続型) | 設計放射量による |
試験では「複数のヘッドへ同時に放水する場合の合計流量を求め、必要な管径を計算せよ」という問題が出ることがあります。その場合は「同時開放ヘッド数 × 1個あたりの放射量 = 合計流量」として計算します。
損失水頭(配管抵抗)の基礎
甲2の基礎的知識では、損失水頭に関する計算も出題されます。損失水頭とはポンプが必要な揚程のうち、配管の摩擦抵抗で失われる分を水柱高さ(m)で表したものです。
主な計算式:
- ハーゼン・ウィリアムス式(概算):直管の摩擦損失を求める際に使われる。甲2試験では係数を与えられた上での代入計算が出題されることがある
- 局部損失:バルブ・エルボ・チーズなどの継手による圧力損失。「直管換算長」で表すことが多い
- 全揚程 = 実揚程 + 配管損失水頭 + 放水圧力(水頭換算):ポンプの必要揚程を求める式
試験では公式そのものを暗記するよりも「全揚程を求める場合は実揚程に配管損失と放水圧力を加える」という概念を理解しておくことが重要です。
ベルヌーイの定理と管路の圧力計算
甲2の基礎的知識では、ベルヌーイの定理を使った計算も出題されます。ベルヌーイの定理は「流体が管路を流れるとき、ある断面での位置エネルギー・圧力エネルギー・速度エネルギーの合計は一定」という法則です。
ベルヌーイの式:
P₁/(ρg) + v₁²/(2g) + z₁ = P₂/(ρg) + v₂²/(2g) + z₂
- P:圧力(Pa)
- ρ:流体の密度(水は1,000 kg/m³)
- g:重力加速度(9.8 m/s²)
- v:流速(m/s)
- z:高さ(m)
試験では公式を丸ごと使う問題より「管径が変わったときに流速はどう変化するか」「高い位置と低い位置での圧力の差はいくらか」という概念を問う問題が多いです。「管径が細くなると流速が増加し、圧力が低下する」という方向性を覚えておいてください。
管路の全損失水頭の計算(ダルシー・ワイスバッハ式)
配管の摩擦損失を求める代表的な式は「ダルシー・ワイスバッハの式」です。甲2試験では係数を与えられた上で代入計算をする問題として出ることがあります。
直管の摩擦損失水頭:
h = λ × (L/d) × (v²/2g)
- h:損失水頭(m)
- λ:管摩擦係数(鋼管で0.02〜0.03程度。試験では値が与えられる)
- L:管の長さ(m)
- d:管内径(m)
- v:流速(m/s)
- g:重力加速度(9.8 m/s²)
この式で重要なのは「管が長くなるほど・管径が細くなるほど・流速が速いほど損失が大きくなる」という定性的な理解です。試験では数値代入よりも「損失水頭が増加する条件はどれか」という問題が多く出題されます。
局部損失(バルブ・エルボ等)の扱い方
配管の途中にあるバルブ・エルボ(曲がり継手)・チーズ(分岐継手)では摩擦以外の局部的な損失(局部損失)が生じます。甲2の計算問題では「直管換算長」を使って局部損失を直管の長さに換算する方法が出題されることがあります。
| 継手・バルブの種類 | 直管換算長の目安(呼び径による) |
|---|---|
| 90°エルボ(標準) | 管径の30倍程度 |
| ゲートバルブ(全開) | 管径の7〜13倍程度 |
| ボールバルブ(全開) | 管径の3〜8倍程度 |
| チーズ(流れの方向変化) | 管径の60〜90倍程度 |
上記の数値は目安であり、試験では問題文に直管換算長が与えられます。「直管換算長を使って全体の損失水頭を計算する手順」として、①各継手の直管換算長を求める→②直管の長さと合計する→③損失水頭の式に代入するという流れを覚えておいてください。
必要揚程の計算(ポンプ選定に使う式)
甲2の工事設計では、ポンプの必要揚程を求める計算が重要です。揚程(H)は次の式で求めます。
必要揚程 H = h₁ + h₂ + h₃
- h₁:実揚程(水源の水位からポンプ吐出口までの高低差。単位:m)
- h₂:配管の損失水頭(直管+局部損失の合計。単位:m)
- h₃:先端(泡ヘッド等)で必要な放水圧力を水頭換算したもの(単位:m。1MPa = 約100m水柱)
試験で頻出の知識:「1MPa = 100m水頭(水柱)」という換算は計算問題で必ず使います。0.1MPa = 10m、0.35MPa = 35mというように素早く換算できるようにしておいてください。
圧力と水頭の換算(頻出)
甲2の計算問題では「圧力(MPa)と水頭(m)の換算」が必須です。次の換算を暗記してください。
- 1MPa = 100m水頭(水柱)(水の密度1,000 kg/m³・g=9.8 m/s²として)
- 0.1MPa = 10m水頭
- 0.35MPa = 35m水頭(泡ヘッドの最低放水圧力としてよく出る数値)
- 0.5MPa = 50m水頭
試験で「放水圧力0.35MPaを水頭に換算せよ」という問題が出た場合、「0.35 × 100 = 35m」と即答できるようにしておいてください。全揚程の計算では「実揚程(m)+損失水頭(m)+放水圧力を水頭換算(m)」の3つを足し合わせます。すべてm単位に統一してから計算することがポイントです。
計算問題対策のまとめ
- 吸水管の流速上限:1.5m/s 以下
- 吐出管の流速上限:4m/s 以下
- 流量Q = A × v(Aは断面積・vは流速)
- 内径を求めたら、それ以上の最小の呼び径を選ぶ
- L/minをm³/sに変換する手順(÷1000÷60)を忘れない
- 全揚程 = 実揚程 + 配管損失 + 放水圧力(水頭換算)
- 1MPa = 100m水頭(換算は×100)
- ヘッド個数の端数は切り上げる(安全側設計の原則)
配管材料と管継手の選定ポイント(鑑別問題対策)
甲2の鑑別試験では「配管の写真を見て材料名・用途を答える」問題も出ます。よく出る配管材料と管継手をまとめます。
- 白ガス管(SGP):消防設備に最も多く使われる鋼管。内面亜鉛めっき処理で錆に強い。消防法施行規則第12条に規定
- ステンレス鋼管(SUS):耐食性が高く、海沿い・薬剤配管に使われる。白ガス管より高価
- フランジ継手:大口径(65A以上)の接続に使用。ボルト締めで取り外しが容易。点検口・バルブの前後によく使われる
- ネジ込み継手(エルボ・チーズ等):中口径(50A以下)の配管接続。工具で締め込む。施工が簡単
- 溶接継手:高圧・大口径に使用。接合強度が高く、漏水リスクが低い。施工に溶接技術が必要
鑑別問題では「この管継手の名称と使用場所を答えよ」という形式が出ます。写真を見た瞬間に名称が出てくるよう、テキスト付属の写真を繰り返し確認してください。
出典:消防法施行規則第18条・消防法施行令(e-Gov法令検索)


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