消防設備士第5類(乙5・甲5)を取得すると、避難はしご・救助袋・緩降機などの避難器具の整備・点検・工事に従事できます。乙5は整備・点検のみ、甲5は工事・設計も含めた全工程を担当できます(消防法第17条の5)。避難器具は学校・病院・福祉施設・ホテルなど幅広い建物に設置義務があり、設置後も年2回の点検が義務づけられているため、継続的な需要があります。
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乙5と甲5の業務範囲の違い
消防設備士の免状の種類によって、担当できる業務範囲が法律で定められています(消防法第17条の5)。
| 免状の種類 | 業務範囲 | 対象設備 |
|---|---|---|
| 乙種第5類 | 整備・点検 | 避難器具(はしご・救助袋・緩降機等)の整備と定期点検 |
| 甲種第5類 | 工事・設計・整備・点検 | 避難器具の新規設置工事・改修工事・設計・整備・点検 |
出典:消防法第17条の5(工事整備対象設備等の工事又は整備)
「整備」とは、消防用設備等の修理・整備・点検です。「工事」とは新たに設備を設置したり、設置位置を変更したりする工事です。既存の建物で避難器具の位置変更や新規増設工事がある場合は、甲5を持つ消防設備士が担当しなければなりません。
避難器具の点検業務の実態
消防用設備等の点検は、特定防火対象物(病院・旅館・百貨店等)では1年に1回、非特定防火対象物(学校・工場・事務所等)では3年に1回、消防長(消防署長)に報告する義務があります(消防法第17条の3の3)。ただし点検そのものは年2回(機器点検と総合点検)実施します。
| 点検の種類 | 実施頻度 | 内容 |
|---|---|---|
| 機器点検 | 6か月に1回以上 | 外観・機能の確認(器具の変形・損傷・腐食・格納状態等) |
| 総合点検 | 1年に1回以上 | 実際に使用して作動確認(緩降機のロープ展張、避難はしごの展開等) |
出典:消防法第17条の3の3・消防法施行規則第31条の6
現場では機器点検で外観を確認し、総合点検で実際に避難器具を展開・使用して動作を確認します。緩降機はロープを繰り出してテンションを確認し、固定はしごは各横さんの取付け状態や腐食を目視します。救助袋は袋本体の破れや縫製部の状態を確認します。
避難器具が設置されている建物の種類
消防法施行令第25条に基づき、次のような建物に避難器具の設置義務があります。点検業務の対象になる建物の種類を把握しておくと、就職先の候補をイメージしやすくなります。
| 別表第一の用途 | 代表的な建物 | 収容人員の基準 |
|---|---|---|
| (六)項 | 病院・診療所・特別養護老人ホーム・保育所・障害者施設 | 2階以上で20人以上(下階条件で10人以上) |
| (五)項 | ホテル・旅館・共同住宅(3階以上) | 2階以上で30人以上(下階条件で10人以上) |
| (一)〜(四)項・(七)〜(十一)項 | 劇場・百貨店・飲食店・学校・神社・工場等 | 2階以上で50人以上 |
出典:消防法施行令第25条第1項
福祉施設・医療施設・宿泊施設を主な顧客とする消防設備点検業者では、第5類の取得者を積極的に求めています。大規模施設では1棟で数十か所の避難器具が設置されているため、点検一件あたりの作業時間は相当かかります。
消防設備士5類が活躍できる職場
消防設備点検業者
消防用設備等の定期点検を専門に受託する会社です。主な業務は年2回の点検(機器点検・総合点検)と報告書の作成です。第4類・第6類の資格も合わせて持つことで、自動火災報知設備や消火器の点検も担当でき、業務の幅が広がります。第5類単独より、他の類との組み合わせが採用の際に評価されます。
消防設備工事業者
建物の新築・改修時に消防設備を設計・設置する工事業者です。避難器具の新規設置には甲5が必要です。大規模改修や福祉施設の新設案件では、甲5の需要が継続的にあります。甲1(屋内消火栓等)や甲4(自動火災報知設備)と組み合わせると、より広範囲の工事に対応できます。
ビルメンテナンス・設備管理会社
商業施設・ホテル・病院などの建物管理会社では、自社で消防設備の点検を行うケースがあります。第5類の取得者は、館内の避難器具点検の担当者として活用されます。第4類・第6類も合わせて取得していると、消防設備全般の管理担当者として評価されます。
建設会社・設備サブコン
大型建設プロジェクトでは、消防設備工事を専門のサブコン(下請け専門業者)が担当します。甲5の取得者は、避難器具の設置工事の責任者として現場を担当できます。
5類単独では業務の幅が狭い。組み合わせる資格の選び方
消防設備士第5類(避難器具)だけを持っていても、実際の点検現場では自動火災報知設備(第4類)や消火器(第6類)も同時に点検することが多いです。5類単独の取得者より、複数の類を持つ取得者の方が就職・転職市場で有利です。
| 資格の組み合わせ | 対応できる業務 | 取得のおすすめ順 |
|---|---|---|
| 乙5+乙6 | 避難器具・消火器の点検 | 乙6を先に取ってから乙5 |
| 乙5+乙4 | 避難器具・自動火災報知設備の点検 | 乙4の方が試験難度が高い |
| 乙5+乙6+乙4 | 主要3設備の点検全般 | 乙6→乙5→乙4の順が多い |
| 甲5+甲4 | 避難器具・自動火災報知設備の工事整備全般 | 工事・設計まで担当する場合 |
就職・転職での5類の活用方法
消防設備士第5類は単独でも資格手当の対象になる企業が多いですが、第4類や第6類との複合保有が採用では評価されます。消防設備点検業者の求人票には「乙4・乙6・乙5いずれか取得者優遇」と記載されているケースが多く、5類は「あると嬉しい資格」の一つとして位置づけられています。
福祉施設や病院のビルメン(設備管理)職では、(六)項の用途が多く避難器具の点検頻度が高いため、第5類の有資格者を直接雇用したいという施設側のニーズがあります。大型の特別養護老人ホームや障害者支援施設の施設管理担当として働く場合、第5類は直接的に活用できます。
消防設備士5類の仕事に携わる人の一日のスケジュール例
消防設備点検業者に就職した場合の一日の流れを把握しておくと、就職後のイメージが具体的になります。機器点検の日と総合点検の日では作業内容が異なります。
機器点検の日の流れ(例:学校・事務所ビルの機器点検)
| 時間帯 | 作業内容 |
|---|---|
| 8:00〜9:00 | 会社出発・点検器具の積み込み・点検先へ移動 |
| 9:00〜12:00 | 建物内の消防設備の外観確認(消火器・避難器具・自動火災報知設備等)・格納状態の確認・器具の変形・腐食・損傷のチェック |
| 13:00〜17:00 | 別の建物の機器点検・報告書の下書き作成 |
| 17:00〜18:00 | 帰社・報告書の清書・データ入力 |
総合点検の日の流れ(例:病院・介護施設の総合点検)
| 時間帯 | 作業内容 |
|---|---|
| 8:30〜9:00 | 施設の担当者と打ち合わせ(点検の範囲・立入条件の確認) |
| 9:00〜12:00 | 緩降機のロープ展張・避難はしごの展開確認・救助袋の格納状態目視・動作確認 |
| 13:00〜16:00 | 別フロアの総合点検継続・自動火災報知設備の発報試験(甲4・乙4保有者が対応) |
| 16:00〜17:00 | 施設担当者への結果報告・指摘事項の説明 |
現場では1棟の建物に複数の種類の消防設備が設置されているため、複数の類の免状を持つ点検員の方が担当範囲が広くなります。第5類(避難器具)だけでなく第6類(消火器)や第4類(自動火災報知設備)も同日に点検できる免状の組み合わせが、現場での活躍の幅を広げます。
5類の仕事に求められる体力と技術
消防設備点検の仕事は屋外・室内問わず移動が多く、器具の取り扱いには一定の体力が必要です。ただし特別な体力を必要とする重作業は少ないのが特徴です。
- 重いものの運搬:点検器具・報告書類を運ぶ(1日に数kgの荷物を持ち歩く)
- 高所作業:避難器具が設置されている窓枠・ベランダでの点検(安全帯使用)
- 書類作成:点検報告書・消防長(消防署長)への提出書類の作成
- コミュニケーション:施設の担当者・管理者への点検結果の説明
まとめ。5類は継続需要があるが複数類の取得が実践的
消防設備士第5類の業務は、避難器具が設置されている建物への点検・整備です。設置義務がある建物は学校・病院・福祉施設・ホテルなど多岐にわたり、年2回の点検義務があるため需要は継続します。ただし現場では複数の消防設備を同時に点検するため、乙6(消火器)や乙4(自動火災報知設備)と合わせて取得することで、就職・転職の選択肢が大幅に広がります。甲5まで取得すれば工事・設計も担当でき、より専門性の高いポジションへのキャリアアップが可能です。

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