消防設備士 乙5と甲5の違い。業務範囲・受験資格・試験内容を整理する。




消防設備士第5類の乙種(乙5)と甲種(甲5)の最大の違いは業務範囲です。乙5は避難器具の「整備・点検のみ」、甲5は「工事・設計・整備・点検のすべて」を担当できます。試験内容は、乙5が筆記30問+鑑別5問、甲5が筆記45問+鑑別5問+製図2問と甲5の方が多くなります。受験資格は乙5が誰でも可、甲5は学歴・実務経験・他の資格等が必要です。

この記事では、乙5と甲5の違いを業務範囲・受験資格・試験内容の3つの観点から整理します。

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乙5と甲5の違い。一覧で比較する

項目 乙種第5類(乙5) 甲種第5類(甲5)
業務範囲 整備・点検のみ 工事・設計・整備・点検
受験資格 誰でも受験可 学歴・実務・他の資格等が必要
筆記問題数 30問(法令10問・基礎5問・構造15問) 45問(法令10問・基礎10問・構造25問)
実技 鑑別のみ(5問) 鑑別(5問)+製図(2問)
試験時間 1時間45分 3時間15分
合格基準 筆記各区分40%以上・全体60%以上、実技60%以上 同左

業務範囲の違い。工事ができるのは甲5だけ

消防設備士法第17条の2の規定により、消防用設備等の工事(設置工事・改修工事)は甲種消防設備士にしかできません。乙種は整備・点検のみです。

避難器具の業務別の担当可能範囲は次のとおりです。

業務の種類 乙5 甲5
避難器具の設置工事(新設・改修) × ○
設計・図面作成 × ○
着工届の届出 × ○
避難器具の整備(分解・修理・調整) ○ ○
避難器具の点検(外観・機能・作動) ○ ○

現場で避難器具の設置・取り外しを伴う工事をする場合は甲5が必要です。既設の器具の定期点検・消耗品の交換・調整だけであれば乙5で対応できます。

受験資格の違い。乙5は誰でも受けられる

乙5は受験資格の制限がありません。年齢・学歴・職歴に関係なく誰でも受験できます。

甲5は次のいずれかの受験資格が必要です。

区分 内容
学歴(理工系) 大学・短大・高専の理工系学科を卒業(大学院含む)
学歴(指定科目修了) 指定の学科で所定の単位を修得して卒業
消防設備士(他の類) 甲種または乙種の消防設備士免状を持つ
電気工事士 電気工事士免状(第一種・第二種どちらでも可)を持つ
電気主任技術者 第一種〜第三種のいずれかの免状を持つ
技術士 二次試験合格者
実務経験 消防用設備等の工事・整備の実務経験が所定の年数以上

出典:消防試験研究センター「受験資格」

現場で消防設備士(他の類)の免状を持っていれば、それを使って甲5の受験資格にできます。たとえば乙6(消火器)や乙4(自動火災報知設備)の免状を持っている場合、それで甲5の受験資格を満たします。

試験科目の違い。甲5は基礎・構造整備の問題が増える

法令は乙5・甲5とも10問(共通6問+類別4問)で同じです。違いが出るのは基礎的知識と構造整備です。

科目 乙5 甲5 増加分
法令共通 6問 6問 —
法令類別 4問 4問 —
基礎的知識(機械) 5問 10問 +5問
構造・機能及び工事整備 15問 25問 +10問
筆記合計 30問 45問 +15問

甲5で増える15問の内訳は、基礎的知識(機械)が+5問、構造・機能及び工事整備が+10問です。工事整備が追加される分、取付け・固定・調整の工事手順に関する問題が出ます。基礎的知識では、乙5の範囲(力・荷重・材料・流体・ロープ)に加え、工学的な計算問題が出やすくなります。

実技の違い。甲5は製図が追加される

乙5の実技は鑑別(5問)のみです。甲5は鑑別(5問)に製図(2問)が追加されます。

製図では、与えられた建物の平面図・断面図をもとに避難器具の設置位置を決め、必要な器具の種類・数量・取付け位置を記入する問題が出ます。設置基準(消防法施行令第25条)と設置除外の条件(同第26条)を正確に理解していないと解けません。

どちらを受けるか。現場の業務で判断する

避難器具の点検業務だけを担当する場合は乙5で十分です。設置工事・改修工事まで手がける予定があるか、会社から甲5の取得を求められている場合は甲5を直接受験する方がよいです。

乙5→甲5の順で取得することもできますが、乙5を持っていれば甲5の受験資格を満たすため、乙5を足がかりにして甲5にステップアップする方法もあります。ただし試験対策は一から行う必要があるため、どちらかに絞って集中して学習する方が効率的です。

乙5・甲5で共通する試験対策のポイント

乙5・甲5とも共通して次の対策が有効です。

  • 施行令第25条の表(設置基準・何階から必要か・収容人員の基準)を覚える
  • 避難器具の8種類の名称・構造・特徴を覚える
  • 施行規則第27条の各器具の設置要件(降下空間・操作面積)を理解する
  • 法令共通(消防設備士全類で出る範囲)を早めに固める
  • 鑑別のための写真・図を使った練習をする

甲5のみの追加対策は「基礎的知識(機械)の工学計算」と「製図(平面図への設置位置の書き込み)」です。

甲種特類(特殊消防用設備等)との違い

甲種特類は、消防法で定められた「特殊消防用設備等」の工事・設計・整備・点検を行うための資格です。甲5(甲種第5類)とは別の資格で、消防設備士の中で最上位に位置します。

特殊消防用設備等とは、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・避難設備等に代わる、同等以上の防火安全性能を有する特別な消防用設備のことです(消防法第17条第3項)。

項目 甲種第5類 甲種特類
対象設備 避難器具(はしご・救助袋・緩降機等) 特殊消防用設備等
受験資格 学歴・他の資格等(一般的な条件) 甲種消防設備士免状(複数の類)が必要(詳細は消防試験研究センターで確認)
位置づけ 第5類専門 消防設備士の最上位資格

5類を受験しようとしている段階では、甲種特類の受験は先の目標として意識する程度でかまいません。まず第5類(乙5または甲5)の取得を目指してください。

試験申請の流れ。乙5と甲5で共通する手順

乙5・甲5とも、消防試験研究センターから申請します。申請手順は次のとおりです。

  1. 消防試験研究センターの公式サイトで受験先都道府県の試験日程を確認する
  2. 受験申請書を入手する(支部窓口での配布または電子申請)
  3. 甲5の場合は受験資格の証明書類(卒業証明書・他の免状等のコピー)を準備する
  4. 科目免除を申請する場合は「科目免除申請書」と証明書類(免状等のコピー)を添付する
  5. 申請書・手数料を受付期間中に提出する(郵送申請または窓口申請)
  6. 受験票を受け取り、試験当日に持参する

乙5と甲5の申請手順に大きな違いはありません。甲5は受験資格の証明書類が追加で必要な点が異なります。

出典:消防試験研究センター「受験申請」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/)

現場でよくある疑問。乙5の業務範囲で迷う例

乙5と甲5の業務範囲について、現場で判断に迷うことがあります。よくある疑問を整理します。

疑問 回答
マンションのバルコニーに設置されている緩降機(吊り下げはしご)の点検は乙5でできるか できます。整備・点検は乙5の業務範囲です。ただし、取付け金具の取り外しを伴う改修工事の場合は甲5が必要です。
壁に固定された避難はしごの取付け位置を変える工事は乙5でできるか できません。位置の変更を伴う工事は「設置工事」に該当するため甲5が必要です。
消耗品(ロープ・フック等)の交換は乙5でできるか 整備の範囲内で交換できます。ただし、工事に相当する改修は甲5が担当します。乙5か甲5かの判断が難しい場合は、消防本部や消防試験研究センターに確認することをおすすめします。

乙5と甲5の業務範囲の区別は、試験でも問われる重要なテーマです。「工事(設置・移設・改修)は甲5」「整備・点検は乙5でも可」という原則を軸に判断してください。なお、消防設備士の資格がない者が消防用設備等の工事・整備を行った場合は消防法違反になります(消防法第17条の2第1項)。

甲5免状取得後の業務範囲の広がり

甲5を取得することで、乙5の業務(整備・点検)に加えて、次の業務が追加されます。

  • 避難器具の新規設置工事(建設中の建物への設置・既存建物への追加設置)
  • 設置位置の変更・改修工事
  • 設計図面の作成(平面図への設置位置の書き込み・設置仕様書の作成)
  • 着工届の提出(消防法第17条の3の2の規定による甲種消防設備士の義務)

設備管理会社・ビルメンテナンス会社・消防設備会社では、乙5より甲5の有資格者を求めるケースが多いです。工事・設計まで担当できる甲5の取得は、業務の幅を広げる点で有利です。また、甲5の免状を持つことで他の類の試験での甲種受験資格を満たしやすくなります(消防設備士の免状が受験資格の条件に含まれるため)。複数の類を取得していくキャリアパスを考えている場合は、甲5を早めに取得しておくと後の受験がスムーズになります。

乙5・甲5とも免状取得後は法定講習が必要

乙5・甲5いずれの免状を取得した場合も、取得後に法定講習(消防設備士講習)を受けることが義務付けられています(消防法第17条の10)。乙5と甲5で講習の内容・期限に違いはありません。

講習の種類 期限
初回の法定講習 免状交付日以後の最初の4月1日から2年以内
2回目以降の法定講習 前回の講習日以後の最初の4月1日から5年以内

出典:消防法第17条の10(e-Gov法令検索)

法定講習を受けなかった場合、免状の返納を命じられる場合があります(消防法第17条の14)。免状を取得したら、2年以内の初回講習の期限を忘れずに確認してください。

甲5の「構造・機能及び工事整備」で追加される内容

乙5の構造整備(15問)に対して甲5は25問と10問増えます。増加分は主に「工事」に関する内容です。

内容 乙5 甲5
各器具の構造・各部の名称 出る 出る
各器具の機能・動作原理 出る 出る
点検の手順(外観・機能・作動) 出る 出る
整備の手順(分解・清掃・調整・交換) 出る 出る
取付け工事の手順(アンカー・支持具の固定方法) 出ない 出る
設計・図面(平面図への設置位置の書き込み) 出ない 出る
降下空間・操作面積の計算と確認方法 部分的に出る 詳しく出る

甲5の工事整備の出題では、器具の種類ごとに「取付け金具のアンカー強度の確認方法」「固定ボルトの締め付け手順」「展張テストの方法」などが問われます。乙5の範囲(整備・点検)はそのまま甲5でも出るため、乙5の範囲を先に完全に仕上げてから甲5の工事部分を追加するのが効率的です。

乙5を先に取るか・甲5を直接受けるか。選択の考え方

乙5→甲5の順でステップアップするか、甲5を直接受けるかは、現場の業務内容と受験資格の有無によって決まります。

状況 おすすめのルート
甲5の受験資格がない(学歴・他の資格等がない) まず乙5を取得する。乙5の免状が甲5の受験資格になる。
甲5の受験資格がすでにある(他の消防設備士免状・電気工事士等) 甲5を直接受験する方が効率的。
現場での業務が整備・点検のみ(工事なし) 乙5で十分な場合が多い。
設置工事・改修工事まで担当する予定がある 甲5が必要。乙5→甲5のステップアップも可能。

乙5を取得してから甲5を目指すと、試験2回分の勉強・費用・時間がかかります。甲5の受験資格がある場合は、甲5を直接受験する方が時間的に効率がよいです。一方、試験範囲を段階的に覚えたい場合や、まず整備・点検の実務をこなしながらスキルを上げたい場合は、乙5→甲5のステップアップも合理的な選択です。現場の業務計画と照らし合わせて判断してください。

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作成日:2026年11月5日 作成者:fufumumu_design
参照した主な一次資料:消防法第17条の2・第17条の3の2・第17条の10・第17条の14(e-Gov法令検索・消防法)・消防試験研究センター「受験資格・試験科目と問題数」(https://www.shoubo-shiken.or.jp/)・消防法施行令第25条・消防法施行規則第27条・消防法第17条の2の5(e-Gov法令検索・消防法施行令・施行規則)

この記事を書いた人

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