第1類危険物(酸化性固体)はすべて「酸化性の固体」という共通の性質を持ちながら、品目ごとに水との反応性・発火点・分解条件が異なります。乙種第1類の試験では、第1類全体に共通する特性を正確に理解した上で、各品目の特有の性状を覚えることが求められます。
この記事では、第1類の共通特性・貯蔵・取り扱いの注意点・消火方法をまとめ、各品目の性状の違いと試験で問われやすいポイントを解説します。
第1類危険物に共通する3つの特性
消防法上の第1類危険物(酸化性固体)には、次の3つの共通特性があります。
- それ自体は燃焼しない:第1類の物質は不燃性です。可燃物ではないため、単独では燃えません。
- 加熱・衝撃・摩擦等により分解して酸素を放出する:熱・衝撃・摩擦・他の物質との接触などの刺激で分解し、酸素(O₂)を放出します。
- 放出した酸素が可燃物の燃焼を著しく促進する:自ら燃えなくても、周囲の可燃物の燃焼を加速します。第1類の危険性はここにあります。
これが消防法第2条第7項で定める「酸化性固体」の定義に相当します。試験では「第1類は燃焼する」「第1類は酸素を吸収する」などの誤りの選択肢が出題されるため、「不燃性・酸素放出・燃焼促進」の3点を正確に覚えることが重要です。
また、第1類の物質の多くは固体の状態で安定ですが、特定の条件(高温・湿気・衝撃・混触)が加わると不安定になります。この「条件によって不安定になる」という性質は実務でも試験でも重要な視点です。
可燃物・有機物・酸との接触が最も危険
第1類の物質が酸素を放出して燃焼を促進するため、可燃物(木材・紙・布・油脂類)や有機物と接触すると、わずかな加熱や衝撃で激しく燃焼することがあります。これが第1類の最大の危険性です。
また、強酸(塩酸・硫酸等)と接触すると分解が促進されます。塩素酸塩類や亜塩素酸塩類は酸との接触で二酸化塩素(ClO₂)などの有毒ガスを発生させる品目もあります。
貯蔵・取り扱いの基本は次のとおりです。
- 可燃物・有機物との混触を避ける
- 酸との接触を避ける
- 加熱・衝撃・摩擦を加えない
- 換気の良い冷暗所に保管する
- 容器を密閉する(水分・湿気からも守る)
- 異なる類の危険物と一緒に保管しない
特に無機過酸化物(過酸化ナトリウム・過酸化カリウム等)は水分との接触だけで危険が生じるため、湿気にも注意が必要です。
消火方法の基本は「大量の水」、無機過酸化物は例外
第1類の火災では、原則として大量の水を使って冷却消火します。酸化性固体が燃焼中は周囲の温度が高く、物質自体が酸素を供給するため、空気を遮断(窒息消火)しても効果が出にくいためです。大量の水で冷却することで分解反応を止めることが有効です。
ただし、無機過酸化物(過酸化ナトリウム Na₂O₂・過酸化カリウム K₂O₂・過酸化バリウム BaO₂等)は例外です。これらは水と激しく反応して酸素を発生するとともに、強く発熱します。
過酸化ナトリウムの水との反応:2Na₂O₂ + 2H₂O → 4NaOH + O₂↑
この反応で酸素が発生し、発熱もするため、水を使うと火災が拡大する危険があります。無機過酸化物の火災には乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩を使います。
試験では「第1類の消火にはすべて乾燥砂を使う」「第1類では水を使ってはいけない」という誤りの選択肢が出題されます。「無機過酸化物だけが水厳禁、それ以外は大量の水」という点を正確に覚えておきましょう。
各品目の性状と代表物質
第1類の9品目についての性状を詳しく整理します。
塩素酸塩類(KClO₃等)
塩素酸カリウム(KClO₃)は白色の結晶で、水に溶けます。融点は368℃で、約400℃以上に加熱すると分解して酸素を放出します。硫黄・木炭・有機物との混合で爆発しやすい鋭感性の高い物質です。
マッチの先端(赤りん型マッチの側薬)・煙火・火薬の原料として使われます。塩素酸塩類は古くから危険物として知られており、混合爆薬の事故の原因になった事例もあります。
酸との接触では二酸化塩素(ClO₂)が発生します。有毒ガスのため、酸と一緒に保管してはいけません。
過塩素酸塩類(KClO₄等)
過塩素酸カリウム(KClO₄)は白色の結晶で、塩素酸塩類(KClO₃)より安定しています。塩素酸塩と比べると分解温度が高く(約600℃以上で分解)、感度も低い。ただし有機物・還元剤との混合では発火する危険があります。
花火・煙幕剤・固体ロケット燃料の酸化剤として使われます。
無機過酸化物(Na₂O₂・K₂O₂・BaO₂等)
過酸化ナトリウム(Na₂O₂)は淡黄色の粉末で、強い酸化性があります。水と激しく反応して酸素と熱を発生します。二酸化炭素とも反応するため、CO₂消火器も使えません。有機物・金属粉との接触でも危険です。
過酸化バリウム(BaO₂)は白色〜灰白色の粉末で、過酸化水素の製造原料に使われます。水とゆっくり反応して酸素を放出します。
無機過酸化物の消火には乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩を使います。水・二酸化炭素・ハロン類は使用禁止です。
過マンガン酸塩類(KMnO₄等)
過マンガン酸カリウム(KMnO₄)は特徴的な紫色〜黒紫色の結晶で、水溶液は紫〜赤紫色になります。強い酸化力があり、有機物・硫黄・硫酸との接触で発火する危険があります。
皮膚の消毒・水の浄化・化学分析の試薬として広く使われます。外観の色が試験で問われやすい品目です。大量の水での消火は可能です(無機過酸化物とは異なります)。
重クロム酸塩類(K₂Cr₂O₇等)
重クロム酸カリウム(K₂Cr₂O₇)は橙黄色の結晶です。六価クロム(Cr⁶⁺)を含むため毒性があります。有機物・還元剤・硫黄との混触で発火する危険があります。
金属のメッキ・皮革なめし・染料製造に使われます。近年は環境規制により使用が減少傾向にあります。外観の橙黄色も試験で問われやすい特徴です。
硝酸塩類(KNO₃・NH₄NO₃等)
硝酸カリウム(KNO₃)は白色の結晶で、水に溶けやすい。農業用肥料・食品の防腐剤(亜硝酸カリウム代替)・火薬(黒色火薬の成分)に使われます。約400℃で分解して酸素を放出します。
硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)は白色の固体で水に溶けやすい。農業用肥料として大量に使われます。大量加熱では爆発する危険があり、過去に大規模事故が発生しています。
第1類を整理する3つの切り口
乙1の性消は品目数が9品目と多いため、次の3つの切り口で整理すると覚えやすくなります。
- 指定数量別:50kg(危険等級I・5品目「塩・過・無・亜・臭」)/ 300kg(危険等級II・4品目「硝・ヨ・過マン・重」)/ 1,000kg(III)
- 水との反応:無機過酸化物は水厳禁 / その他は大量の水で消火可能
- 色・外見の特徴:過マンガン酸カリウムの紫色・重クロム酸カリウムの橙黄色
この3点を軸に各品目の特徴を追加していくと、体系的に理解できます。
試験でよく出る引っかけパターン
性消の問題でよく見られる誤りの選択肢をまとめます。
- 「第1類はすべて水厳禁」:誤り。水厳禁は無機過酸化物のみです。それ以外の品目は大量の水で冷却消火できます。
- 「第1類は燃焼する(可燃性固体)」:誤り。第1類は不燃性です。自ら燃えるのではなく、他の可燃物の燃焼を促進します。
- 「過マンガン酸カリウムは黄色」:誤り。過マンガン酸カリウムは紫色〜黒紫色です(重クロム酸カリウムが橙黄色)。
- 「硝酸塩類の指定数量は50kg」:誤り。硝酸塩類は300kgです。50kgは塩素酸塩類・過塩素酸塩類・無機過酸化物・亜塩素酸塩類・臭素酸塩類の5品目です。
- 「過酸化ナトリウムはCO₂消火器で消火できる」:誤り。無機過酸化物はCO₂とも反応するため使えません。
各品目の保管・取り扱い上の注意点
第1類の各品目を保管・取り扱う際の具体的な注意点を品目別に整理します。
- 塩素酸塩類:硫黄・木炭・金属粉・有機物との混触厳禁。火薬類に近い性質のため、少量でも引火源・衝撃源の近くに置かない。
- 過塩素酸塩類:有機物・還元剤との接触を避ける。塩素酸塩類より安定だが、高温での分解に注意。
- 無機過酸化物:水・湿気・二酸化炭素・有機物との接触厳禁。密閉容器で乾燥保管。火災時はCO₂消火器も使用不可。
- 亜塩素酸塩類:酸との接触で有毒ガス(ClO₂)を発生。換気の良い場所で取り扱う。
- 臭素酸塩類:酸化力が強いため可燃物との混触を避ける。
- 硝酸塩類:硝酸アンモニウムは大量加熱で爆発の危険があるため、特に温度管理が重要。
- 過マンガン酸塩類:有機物・硫酸・塩酸との混触で発火・爆発の危険。皮膚に付着すると褐色に変色するため保護具を使用。
- 重クロム酸塩類:六価クロムは発がん性があるため、吸入・皮膚接触を避け保護具を使用。廃液は中和・還元処理してから排水。
第1類の合格基準と試験対策
乙種第1類の合格基準は、すべての科目で「60%以上の正解率」が必要です。
- 危険物に関する法令(15問):9問以上(60%以上)
- 基礎的な物理・化学(10問):6問以上(60%以上)
- 危険物の性質と消火(10問):6問以上(60%以上)
- 合計(35問):21問以上(60%以上)かつ全科目60%以上
科目免除を使って性消10問のみで受験する場合も、6問以上(60%以上)が必要です。性消10問の範囲で第1類9品目の性状・消火方法・保管注意点が幅広く出題されるため、各品目を体系的に理解することが重要です。
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出典:消防法第2条第7項・危険物の規制に関する政令・一般財団法人 消防試験研究センター(shobo.or.jp)

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