ITパスポートに合格したあと、「次は何を取ればいいか」と迷う人は多いです。ただ、「どの資格を取るか」より「何を目指すか」を先に決めるほうが、遠回りをしません。目的が違えば取るべき資格も変わるからです。この記事では目的別に、ITパスポートの次に選びやすい資格と、その選び方の考え方を整理します。
ITパスポートはITスキル標準のレベル1に位置する
経済産業省とIPAは、ITに関するスキルを「ITスキル標準(ITSS)」というフレームワークで整理しています。ITパスポートはそのレベル1に対応しており、ITを利活用するすべての社会人・学生が身につけておくべき基礎的な知識を問う試験です。
レベル2に相当するのが、基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験の2つです。どちらもIPAが実施しており、ITパスポートの次のステップとして受験する人が多い試験です。レベル3以上はシステムアーキテクト試験やプロジェクトマネージャ試験など、より高度な専門性を問う試験になります。
ITパスポートの合格率は令和7年度で48.6%(受験者271,352人・合格者132,012人・IPA統計情報)と、2人に1人が合格する水準です。レベル2の試験はいずれも難易度が一段上がります。ITパスポートとは別の準備が必要になることを前提に、次の目標を立てましょう。
ITエンジニアを目指す人には基本情報技術者試験が次のステップ
IPAは基本情報技術者試験の対象者を「ITを活用したサービス、製品、システム、ソフトウェアを作る人材に必要な基本的な知識・技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けた人」と説明しています(IPA公式・2026年11月確認)。開発・設計・運用を担うITエンジニアの「登竜門」として、多くの企業で評価される資格です。
試験は科目Aと科目Bの2部構成です。科目Aは90分・60問で情報技術の広範な知識を問い、科目Bは100分・20問でプログラムの動作を追ったりアルゴリズムを読んだりする問題が出ます(IPA公式・2026年11月確認)。ITパスポートの120分・100問とは問題の性質が大きく異なり、特に科目Bはコードを読んで動作を追う実践的な問題です。
プログラムを書いたことがない人にとって、科目Bは最初は難しく感じます。しかし、ITエンジニアとしての就職・転職を考えているなら、基本情報を取得することで書類や面接での評価が変わる場面があります。受験料・最新の合格率はIPAの公式ページ(www.ipa.go.jp)で確認してください。
セキュリティ担当・リーダーを目指すなら情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験は、「情報システムの利用部門で、情報セキュリティリーダーとして部門の情報セキュリティを確保し、維持・改善する人」を対象にした試験とIPAが説明しています(IPA公式・2026年11月確認)。開発者向けではなく、セキュリティの計画・運用・評価・改善を担う人に向いた資格です。
試験時間は120分・60問で、科目Aと科目Bで構成されています。セキュリティポリシーの策定・リスクアセスメント・インシデント対応など、情報セキュリティを組織として継続的に維持するための知識が問われます。
「ITエンジニアにはなりたくないが、社内の情報セキュリティ担当になりたい」「情報システム部門で管理側の仕事をしている」「総務・人事でセキュリティ教育を担当することになった」という人には、基本情報よりこちらのほうが学ぶ内容と仕事内容が一致しやすいです。
経営・コンサルタント志望にはITコーディネータ試験という選択肢もある
「技術職ではなく、IT戦略や経営改革をビジネス側から推進したい」という人には、ITコーディネータ試験という選択肢もあります。ITコーディネータはITコーディネータ協会(ITCA)が認定する資格で、経営とITをつなぐ人材を対象にしています。
ただし、ITコーディネータ試験はIPAの情報処理技術者試験とは別の試験体系であり、受験資格・試験形式・費用等が異なります。詳しくはITコーディネータ協会の公式サイトで確認してください。「技術よりも経営・戦略の視点でITに関わりたい」という人に合う方向性です。
ビジネス職なら「資格を増やす」より「使いこなす」が優先されることが多い
営業・マーケティング・経営企画・総務といったビジネス職でITパスポートを取得した場合、次の資格より「ITパスポートで学んだ知識を業務で使いこなすこと」のほうが先になる場面があります。資格はあくまで知識の証明であり、使いこなせてはじめて価値が出ます。
その上で資格を増やしたいなら、IT系以外との組み合わせが仕事の幅を広げます。会計を理解したい人には日商簿記、資産運用や資金計画に関わる仕事ならFP(ファイナンシャルプランナー)、Officeをより効率よく使いたいならMOS(Microsoft Office Specialist)という組み合わせがあります。どれを選ぶかは職種と目標によって変わります。
「次もIT系の資格が取りたい」という場合は、GoogleやAWSなどのクラウドベンダーが提供する認定資格も選択肢になります。ただし、これらは業務でその製品を使っていることが前提になるものが多く、取得のタイミングは業務内容と合わせて判断するのが実用的です。
迷ったときは基本情報技術者試験を目指すのが手堅い選択
「何を目指すかまだ決まっていない」という場合、基本情報技術者試験を次の目標にするのが手堅い選択です。理由は2つあります。
1つは、認知度と汎用性の高さです。IT業界をはじめ、多くの企業で「基本情報を持っている」ことが採用・評価の場面で一定の参考にされやすいとされています。2つ目は、勉強を通じて自分の方向性が見えやすくなる点です。科目Bの問題を解く中で「プログラミングが面白い」「セキュリティのほうが向いている」と気づき、その先のステップが自然に定まることがあります。
ただし、あくまで「迷ったときの手堅い選択肢」であり、自分の仕事や目標が明確なら、その目的に合った資格を選ぶほうが効率的です。
次の資格を選ぶときの比較
ITパスポートの次に選びやすい資格を、対象者・試験内容・向いている人の観点で並べました。
| 資格名 | レベル | 試験構成 | 主な対象者 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 基本情報技術者試験 | ITスキル標準 レベル2相当 | 科目A(90分・60問)+科目B(100分・20問) | ITエンジニア志望・開発・運用担当 | プログラミング・システム開発の仕事を目指す人、方向性が未決定の人 |
| 情報セキュリティマネジメント試験 | ITスキル標準 レベル2相当 | 120分・60問(科目A・B構成) | 情報セキュリティリーダー・情報システム部門 | 開発より管理・セキュリティ担当を目指す人、ユーザー企業の情報システム部門 |
| 日商簿記(2〜3級) | IPA試験外(商工会議所主催) | 筆記・CBT形式 | 経理・財務・経営企画・ビジネス職 | 会計・財務の理解を深めたいビジネス職 |
| FP(ファイナンシャルプランナー) | IPA試験外 | FP技能士(国家資格)・AFP/CFP(民間) | 金融・保険・不動産・相談業務 | お金に関わる仕事・顧客提案をする人 |
レベルはITスキル標準(ITSS)のおおよその位置づけです。基本情報・SGについてはIPAが公式にレベル2相当と説明しています。受験料・最新の合格率はIPA公式サイト(www.ipa.go.jp)で確認してください。
よくある疑問
基本情報と情報セキュリティマネジメント、どちらを先に取るべきか
「IT系の仕事に就きたい」なら基本情報を優先するのが一般的です。開発・運用・インフラどの方向に進むとしても、基本情報で学ぶアルゴリズム・ネットワーク・データベースの知識が土台になります。「社内の情報セキュリティ専任担当になる予定がある」という場合は、情報セキュリティマネジメント試験を先に取ることも理にかなっています。仕事の内容と試験で学ぶことを照らし合わせて選んでください。
ITパスポートと基本情報を両方持つ意味はあるか
ITパスポートを持っていても基本情報は「免除」にはなりません。ただし、ITパスポートの学習で身につけたIT全般の知識(ネットワーク・データベース・経営・法律)は基本情報の科目Aで重なる部分があります。基本情報の勉強を始めたとき「ITパスポートで一度見た」という部分が増えるため、ゼロからより取り組みやすくなることが多いです。
次の試験に合格するまでどのくらいかかるか
基本情報技術者試験は、ITパスポートに合格した人でプログラミング経験がある場合は3〜4ヶ月、未経験の場合は6ヶ月以上を目安にする人が多いとされています(資格対策サイト等の参考情報。IPA公式データではありません)。情報セキュリティマネジメント試験はIT全般の基礎がある人なら3〜4ヶ月程度とされています。学習ペースと既存知識によって個人差が大きいです。
2027年の新試験移行は関係があるか
ITパスポートは2027年度に新試験へ移行する予定です(IPA発表)。ただし、基本情報技術者試験・情報セキュリティマネジメント試験の移行スケジュールはITパスポートとは異なります。受験を検討するときは、IPAの公式サイトで最新の実施スケジュールを確認してください。
まとめ
ITパスポートの次に取る資格は、目的によって変わります。
- ITエンジニアを目指す人:基本情報技術者試験(ITスキル標準レベル2)
- セキュリティ担当・リーダーを目指す人:情報セキュリティマネジメント試験
- 経営・コンサルタント志望の人:ITコーディネータ試験の選択肢もある
- ビジネス職で使いこなしたい人:簿記・FP・MOSとの組み合わせ、または活用を先に
- 迷っている人:基本情報技術者試験が手堅い出発点
どの資格を選ぶにしても、「ITパスポートで学んだ知識をまず業務や日常で使う習慣」を作ることが先です。資格はそのあとの実力の証明として機能します。
ITパスポート試験の全体的な情報はITパスポート試験の全体ガイドで、難易度や合格率の詳細はITパスポートは難しいか。合格率と他の試験との比較の記事で確認できます。


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