ITパスポートのAI分野は、現行試験(シラバスVer.6.5)でも生成AI・機械学習・RAGなどが出題されており、2027年度の新試験ではAI倫理やAI基本法を含む「マインド・スタンス」分野が新設されます。対策の核心は、AI用語の意味と仕組みをセットで理解することです。丸暗記では選択肢を絞れない問題が増えています。
現行試験でのAI関連の出題範囲
現行のシラバスVer.6.5には、すでに生成AI・機械学習・RAGなどのAI関連用語が収録されています(IPA「ITパスポート試験 シラバスVer.6.5」)。令和8年度の問題では問1・問17・問27・問82・問98でAI関連の出題が確認されています。
| 用語 | 意味(現行シラバスVer.6.5) | 出題の傾向 |
|---|---|---|
| 機械学習 | データからコンピュータが自動的にルールや特徴を学習する手法 | 教師あり・なし・強化学習の違いを問う |
| ニューラルネットワーク | 人間の神経回路を模倣した機械学習の一手法。ディープラーニングの基盤 | 機械学習との関係・「ニューロン」の説明 |
| 生成AI | テキスト・画像・音声などを新たに生成できるAI。大規模言語モデル(LLM)が代表例 | プロンプトとの関係・活用と注意点 |
| RAG | 検索拡張生成。外部の情報を検索してAIの回答生成に組み合わせる手法 | ハルシネーション対策との関連 |
| ハルシネーション | AIが事実と異なる情報を、あたかも正確であるかのように生成してしまう現象 | AIの限界・リスクとして出題 |
| プロンプトインジェクション | 悪意のある指示をプロンプトに埋め込み、AIを意図しない動作に誘導する攻撃手法 | セキュリティ観点から出題 |
| HITL(ヒューマンインザループ) | AIの判断プロセスに人間が介在・確認する仕組み | AIの誤り対策として |
| XAI(説明可能AI) | AIがどのように判断したかを人間が理解できる形で説明できるAI | 用語の意味を問う |
| マルチモーダル | テキスト・画像・音声など複数の形式のデータを組み合わせて処理できるAI | 用語の識別 |
2027年度新試験で新設されるAI関連の範囲
2027年度の新試験(シラバス案Ver.0.1・2026年8月31日公表)では、「マインド・スタンス」という新分野が設けられます(IPA「ITパスポート試験 出題範囲等の改定案Ver.1.0」)。この分野に、AI倫理・AI基本法・AIエージェントなど現行シラバスに登場しない用語が含まれます。
| 用語 | 概要 | 出典 |
|---|---|---|
| AI基本法 | AIの開発・提供・利用の原則を定めた日本の法律。2025年6月4日公布 | e-Gov 法令ID:507AC0000000053 |
| AIエージェント | 自律的に判断・行動しながらタスクを達成するAIシステム | シラバス案Ver.0.1 中分類10 |
| 自律性と人間の関与 | AIがどこまで自律的に判断し、どこから人間が介入するかの考え方 | シラバス案Ver.0.1 中分類10 |
| ガードレール | AIの出力や行動を安全な範囲に制限する仕組み | シラバス案Ver.0.1 中分類10 |
| AI倫理・AIガバナンス | AIを倫理的・社会的に適切に活用するための考え方と仕組み | シラバス案Ver.0.1 |
| AI事業者ガイドライン | AI開発者・提供者・利用者それぞれへの指針。総務省と経済産業省が2024年4月公表 | 総務省概要PDF(令和6年4月19日) |
現行試験と新試験のAI範囲の比較
| 項目 | 現行試験(シラバスVer.6.5) | 2027年度新試験(シラバス案Ver.0.1) |
|---|---|---|
| 生成AI・LLM | あり(Ver.6.2から) | あり(継続・拡充) |
| 機械学習・ニューラルネットワーク | あり | あり(継続) |
| RAG・ハルシネーション | あり | あり(継続) |
| AI基本法 | なし | 新設(マインド・スタンス分野) |
| AIエージェント・ガードレール | なし | 新設(マインド・スタンス分野) |
| AI倫理・AI事業者ガイドライン | なし | 新設(情報倫理・AI倫理分野) |
| HITL・XAI | あり | あり(継続) |
現行試験で今すぐ対策できるAI用語のほとんどは、新試験でも引き続き出題されます。現行試験の受験を予定している場合でも、AI用語の学習は新試験対策と重なります。
AIの用語は仕組みと一緒に覚える
AI関連の問題では、「用語の定義を選ぶ問題」と「仕組みや使われる場面を選ぶ問題」の両方が出ます。定義だけを丸暗記していると、言い換え表現の選択肢で迷うことがあります。
たとえばRAGを「外部情報を検索して回答生成に使う手法」と覚えるだけでなく、「なぜRAGが使われるのか(ハルシネーション対策・最新情報への対応)」まで理解しておくと、問われ方が変わっても対応できます。
混同しやすいAI用語の整理
| 用語A | 用語B | 違い |
|---|---|---|
| 機械学習 | ニューラルネットワーク | 機械学習の中にニューラルネットワーク(およびディープラーニング)が含まれる |
| ハルシネーション | バイアス | ハルシネーションは事実と異なる情報の生成、バイアスはデータの偏りが学習に影響すること |
| RAG | ファインチューニング | RAGは外部情報を検索して答えを生成、ファインチューニングはモデル自体を追加学習で更新 |
| HITL | XAI | HITLは人間がAIの判断に介在する仕組み、XAIはAIの判断理由を人間が理解できるよう説明する仕組み |
| プロンプトエンジニアリング | プロンプトインジェクション | プロンプトエンジニアリングは指示文を工夫してAIを活用する技術、プロンプトインジェクションはその悪用(攻撃手法) |
令和8年度のAI関連問題の特徴
令和8年度の問題では、AIに関連する出題が問1・問17・問27・問82・問98に確認されています。テクノロジ系の問98ではプロンプトエンジニアリングが出題されており(正解:ウ)、問題文はIPA公表の公開問題で確認できます。
AIの問題は「正解の選択肢が1つだけ明確に正しい」形式よりも、「他の選択肢の何が誤りかを理解していないと絞れない」形式が多い傾向があります。誤りの選択肢に「機械学習の説明をニューラルネットワークとして書いたもの」「ハルシネーションをバイアスと混同させたもの」などが使われるため、混同しやすい用語の違いを整理しておくことが対策の中心になります。
現行試験を受ける人のAI分野の優先順位
現行試験で得点源にするためには、以下の順番で対策すると効率的です。
| 優先度 | 用語・テーマ | 理由 |
|---|---|---|
| 高 | 生成AI・機械学習・ニューラルネットワーク | 出題頻度が高く、定義問題として問われやすい |
| 高 | ハルシネーション・RAG | 生成AIの使い方・リスクとセットで出る |
| 高 | プロンプトインジェクション | セキュリティ分野との複合出題あり |
| 中 | HITL・XAI・マルチモーダル | 用語の識別問題として出題 |
| 中 | AI基本法・AI事業者ガイドライン | 現行シラバスには未収録だが2027年度新試験向けに先行学習が可能 |
| 低(新試験向け) | AIエージェント・ガードレール・自律性と人間の関与 | 現行試験での出題は確認されていない(シラバス案Ver.0.1の新設用語) |
AI分野の学習に使えるリソース
IPA公表のシラバスVer.6.5を確認すると、収録されているAI関連用語の全量を把握できます。現行シラバスに登場する用語を過去問で出題パターンごとに確認してから、シラバス案Ver.0.1の新設用語に進む順番が効率的です。
IPA公式のサンプル問題(2026年8月31日公表)では、マインド・スタンス分野から1問・情報倫理・AI倫理分野から1問が出題されています。サンプル問題の問題文と選択肢を読むと、新試験でどういう角度から問われるかの感覚がつかめます。
当サイトのAI問題集「ITパスポート2027 AI問題集(プロデジ)」では、現行シラバスと新試験シラバス案に対応したAI分野の練習問題を収録しています(ITパスポート2027 AI問題集)。
生成AIを使うときのリスクと注意点
現行試験・新試験ともに、生成AIの「活用」だけでなく「リスクと注意点」が出題されます。ハルシネーションや著作権の扱いは試験でも問われる重要テーマです。
| リスク・注意点 | 内容 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| ハルシネーション | 事実と異なる情報を正確であるかのように生成する現象 | 出力を一次資料で確認する。RAGで最新情報を参照させる |
| 著作権の問題 | 生成AIが既存の著作物に酷似したコンテンツを生成する場合がある | 生成物の利用前に著作権リスクを確認する |
| 個人情報の入力リスク | AIサービスに入力した個人情報が学習データとして使われる可能性がある | 利用規約の確認・機密情報の入力を避ける |
| バイアスの問題 | 学習データの偏りが出力に偏りを生む。特定の集団への差別的な表現が出力される場合がある | 出力の確認・多角的な判断 |
| プロンプトインジェクション | 悪意ある指示をAIに与えることで、意図しない動作や情報漏えいを引き起こす攻撃手法 | AIシステムの入力バリデーション・ガードレールの設置 |
AIリテラシーとは何か
AIリテラシーとは、AIの仕組みを正しく理解し、適切に活用できる能力のことです。2027年度の新試験(シラバス案Ver.0.1)では「マインド・スタンス」分野でAIリテラシーに関連する出題が予想されています。現行試験でもAIの活用と限界を理解しているかが問われる問題があります。
AIリテラシーに含まれる要素として、AIの仕組みの基礎理解(機械学習・ニューラルネットワーク)、AIが誤りを犯す場面の理解(ハルシネーション・バイアス)、AIの倫理的な使い方(個人情報の扱い・著作権への配慮)が挙げられます。これらは試験の知識としてだけでなく、実際のAIツール活用時にも役立つ考え方です。
現行試験で学んだAI用語(生成AI・RAG・HITL・XAI)は、新試験のAIリテラシー分野の基礎にもなります。現行試験の受験予定がある人も、AI用語を「丸暗記」ではなく「活用場面とリスク」とセットで理解しておくことで、問われ方が変わっても対応できます。
この記事のまとめ
- 現行試験でもAI用語(生成AI・RAG・HITL等)は既に出題されている
- 2027年度新試験ではAI倫理・AI基本法・AIエージェントなどが新設分野に加わる
- 現行試験で出る用語のほとんどは新試験でも継続して出る
- 混同しやすい用語の違いを整理することが対策の核心
- 現行試験受験者は生成AI・RAG・ハルシネーション・プロンプトインジェクションを優先する


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