放課後等デイサービスの収入は、時間区分と稼働率で決まる。

放課後等デイサービスの収入は、時間区分と稼働率で決まる。 福祉事業の開業と運営

放課後等デイサービスの1か月の収入は、主に時間区分(何時間のサービスを提供するか)と稼働率(定員のうち何人が利用したか)で決まります。この2つの数字が分かれば、月単位・年単位の介護給付費(売上)のおおよそが計算できます。

基本報酬の単位数は、令和6年度改定後(2024年4月〜)で定員10人以下の場合、時間区分1が574単位・時間区分2が609単位・時間区分3が666単位(いずれも1人1回あたり・出典:こども家庭庁告示)。地域によって1単位あたりの単価が異なります(人件費割合60%区分:1級地11.20円〜その他地域10.00円)。

時間区分の定義と単位数

令和6年度の報酬改定で、放デイの基本報酬は時間区分制に見直されました(改定前は学校休業日・放課後の2区分制)。定員10人以下の基本報酬単位数は次の通りです。

放課後等デイサービス 基本報酬(定員10人以下・令和6年4月〜)
区分 サービス提供時間 単位数(1人1回) 備考
時間区分1 30分以上1時間30分以下 574単位 学校終了後・学校休業日どちらも算定可
時間区分2 1時間30分超3時間以下 609単位 学校終了後・学校休業日どちらも算定可
時間区分3 3時間超5時間以下 666単位 学校休業日のみ算定可

出典:こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定」・国保連サービスコード表

重要なポイントは、時間区分3(666単位)は学校休業日のみ算定できるという点です。平日の放課後に3時間超のサービスを提供したとしても、時間区分3ではなく時間区分2で算定することになります。年間を通じた収入を見積もるには、学校休業日(夏・冬・春休み、土日など)と学校終了後(平日)の割合を分けて計算する必要があります。

なお、定員11人以上の事業所は別の単位数になります(このページでは定員10人以下を前提に整理しています)。また、主として重症心身障害児を通わせる事業所も、別の単価体系があります。

地域単価(1単位あたりの金額)

介護給付費は「単位数×地域単価」で計算します。放課後等デイサービスの地域区分は「人件費割合60%」の区分が適用されます(GHや入所施設とは別の区分になります)。

放デイの地域区分単価(人件費割合60%区分・令和6年度〜)
区分 主な該当地域(例示) 1単位あたりの単価
1級地 東京都特別区 11.20円
2級地 東京都町田市・横浜市・川崎市・大阪市など 10.96円
3級地 さいたま市・千葉市・八王子市・名古屋市など 10.90円
4級地 仙台市・広島市・熊本市・大津市など 10.72円
5級地 那覇市・北九州市・岡山市・静岡市など 10.68円
6級地 青森市・盛岡市・秋田市・山形市など 10.54円
7級地 新潟市・松本市・高崎市・倉敷市など 10.17円
その他 上記以外の地域 10.00円

出典:こども家庭庁長官が定める一単位の単価(告示第128号)

地域単価は、事業所の所在地(市区町村)によって決まります。同じ定員・同じ稼働率でも、事業所の場所によって年収入が最大12%程度変わります(1級地11.20円 vs その他10.00円)。都市部ほど人件費コストも高くなりますが、単価も高くなる仕組みです。

稼働率の計算方法

稼働率とは、「定員のうち何人が実際に利用したか」の割合です。

計算式:稼働率(%)= 実利用人数 ÷ 定員 × 100

例えば定員10人の事業所で、ある日7人が利用した場合、その日の稼働率は70%です。月単位・年単位では、日ごとの延べ利用人数を日ごとの定員合計で割って算出します。

放デイの収入を試算するには、「1日あたりの平均稼働率」を想定して計算するのが実用的です。年間の開所日数(学校終了後の日数・学校休業日の日数)を分けて設定すると、より実態に近い試算になります。

収入の試算例

定員10人・その他地域(1単位10.00円)を前提に、時間区分と稼働率を変えた場合の年間収入の目安を示します。加算は含まず、基本報酬のみの計算です。年間開所日数は240日(学校終了後180日・学校休業日60日)を想定しています。

年間収入の目安(定員10人・その他地域・基本報酬のみ・開所240日)
時間区分 稼働率60% 稼働率70% 稼働率80% 稼働率90%
区分1(574単位) 約826万円 約964万円 約1,101万円 約1,239万円
区分2(609単位) 約877万円 約1,023万円 約1,169万円 約1,315万円
区分2(平日)+区分3(休日)の混合(60日区分3) 約898万円 約1,047万円 約1,197万円 約1,346万円

※計算式の例(区分2・稼働率70%):609単位 × 10.00円 × 10人 × 70% × 240日 = 約1,023万円

※「区分2(平日)+区分3(休日)の混合」は、学校終了後180日を区分2・学校休業日60日を区分3で算定した場合の試算です。

上の表から分かることは、稼働率が10ポイント変わると年収入が100万円前後変わるという関係です。また、時間区分を1つ上げること(区分1→区分2)で、稼働率70%・240日の場合に年約59万円の違いが生まれます。サービス提供時間を長くする取り組みが、収入に直結する構造です。

加算がある場合の収入

実際の事業所の収入は、基本報酬に各種加算が上乗せされます。主な加算と1日あたりの収入への影響の目安を示します。

主な加算の単位数と収入への影響(1日あたり・定員10人稼働率70%・その他地域)
加算名 単位数(1人1回) 1日の加算額の目安
送迎加算(片道1回) 54単位 54 × 10.00円 × 7人 = 3,780円
児童指導員等加配加算(専門職員1人目) 187単位 187 × 10.00円 × 7人 = 13,090円
専門的支援体制加算 123単位 123 × 10.00円 × 7人 = 8,610円
福祉専門職員配置等加算(I) 15単位/日(事業所全体) 15 × 10.00円 = 150円(事業所単位)

出典:国保連サービスコード表(放課後等デイサービス・令和6年度)

送迎加算は利用者1人ごとに加算されるため、稼働率が高いほど加算の合計も大きくなります。定員10人・稼働率70%で送迎(片道)を実施する場合、年間約90万円(3,780円×240日)の加算収入になります。

令和6年度改定前との違い(旧制度と新制度の比較)

令和6年度(2024年4月)の報酬改定で、放デイの基本報酬の区分が大きく変わりました。改定前は「放課後等(学校終了後)」と「学校休業日等」の2区分で単価が異なっていましたが、改定後は「サービスを何時間提供したか」という時間区分制に統一されました。

改定前後の基本報酬の比較(定員10人以下)
区分 改定前(〜令和6年3月) 改定後(令和6年4月〜)
放課後等(学校終了後) 604単位 時間区分1〜3に統合
574・609・666単位
学校休業日 721単位

参考:改定前の単位数は専門家サイト(「放課後等デイサービス 基本報酬 改定前」等の検索で確認可)。以下の整理は参考値です。

改定前は、学校休業日(721単位)と学校終了後(604単位)の間に大きな単価差がありました。改定後は時間区分3(666単位)が学校休業日のみ算定可という形で一部残っていますが、区分1・2は学校終了後にも算定できるため、旧制度との収入比較は単純ではありません。重要なのは、改定後の時間区分は個別支援計画に基づいて実際に提供した時間で算定するという点です。サービス提供時間の設計が直接、単位数に影響します。

給付費の受け取り方(法定代理受領と自己負担)

放デイの費用は、利用者(保護者)が自己負担分(原則1割)を事業所に支払い、残り9割を市区町村が事業所に直接給付する仕組み(法定代理受領)になっています。

  • 事業所が受け取る介護給付費の試算は、原則として単位数×地域単価×利用者数で計算する
  • 自己負担額(1割分)は保護者から別途受け取る(上限額管理あり)
  • 市区町村から9割の給付費が振り込まれるタイミングは、通常サービス提供月の翌月〜翌々月になります

このため、開業直後は給付費の入金が1〜2か月後ろにずれる点を資金繰りの計画に組み込む必要があります。開所してサービスを始めても、最初の給付費が入金されるのは2か月後という事業所が多いです。

月ごとの収入の動き方

年間の収入は、月ごとに差があります。主な要因は次の2つです。

学校の休業日の多い月の影響

時間区分3(666単位)は学校休業日のみ算定できます。夏休み(7〜8月)や冬休み(12〜1月)は学校休業日が多い月で、区分3の算定機会が増えます。逆に5月・10月は祝日が少なく、平日の区分1または区分2の単価で多くの日数を運営することになります。

利用者の入れ替わり・契約の切れ目

卒業・転出・状態の変化によって利用者が減ることがあります。また、障害児支援利用計画の更新(モニタリング)のタイミングで利用日数や利用時間の変更が生じることもあります。稼働率は固定値ではなく、常に変動することを念頭に置いた収入計画が必要です。

全国平均との比較

厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」(第26表)によると、放課後等デイサービスの全国平均は次の通りです。

  • 年間収入:約3,161万円
  • 収支差率:約5.8%(収支差額÷収入)

出典:厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」第26表(2024年公表)

年間収入3,161万円は、定員10人の試算(基本報酬のみ・稼働率70%・その他地域)の約1,023万円を大きく上回っています。これは、全国平均が定員10人超の事業所を多数含むこと、各種加算の効果が含まれること、地域単価の違いなどが影響しています。「定員10人・基本報酬のみ」と「全国平均」を直接比較することはできません。

収支差率5.8%という数字は「年間収入の5.8%が手残り(利益)になる」ことを意味します。年収入1,500万円の事業所なら年間87万円の利益、3,000万円なら174万円が目安になります。一方、全国調査で見ると事業所単位の収支差率の中央値(個々の事業所を並べて真ん中の値)はさらに低い場合があります。

全国平均の収入3,161万円は、定員20人前後の中規模事業所が中心の数値と考えられます。定員10人の小規模事業所では、収入の絶対額は低くなるものの、固定費(家賃・人件費)が小さければ収支差率は全国平均に近い水準を維持できます。

定員別の収入規模の目安

定員が増えると、同じ稼働率でも収入の絶対額が大きくなります。下の表は「その他地域(1単位10.00円)・時間区分2(609単位)・稼働率70%・年間240日」を前提にした、定員ごとの年間基本報酬収入の目安です。

定員別の年間収入の目安(時間区分2・稼働率70%・その他地域・基本報酬のみ)
定員 年間収入の目安 月平均の目安
5人 約511万円 約43万円
10人 約1,023万円 約85万円
15人 約1,535万円 約128万円
20人 約2,046万円 約171万円

※計算式:609単位 × 10.00円 × 定員 × 70% × 240日

定員10人の場合、月平均85万円の基本報酬を稼働率70%で稼ぐ計算になります。これに各種加算が上乗せされますが、同時に職員の人件費・家賃・光熱費などの固定費もかかります。月に何人利用してくれればコストを賄えるか(損益分岐)は、この収入から費用を引いて判断する必要があります。

なお、定員10人以下と11人以上では基本報酬の単位数が異なります(定員11人以上は単位数が低くなります)。規模が大きくなるほど1人あたりの単価が下がる仕組みです。

収入と費用のバランス:損益分岐稼働率の考え方

収入の計算と同時に確認が必要なのが、どの稼働率を下回ると赤字になるか(損益分岐点)です。

定員10人・その他地域(1単位10.00円)・時間区分2(609単位)を前提に、固定費(人件費・家賃・光熱費)が月100万円の場合を例にします。

1人1日あたりの基本報酬:609単位 × 10.00円 = 6,090円。月20日開所なら、定員10人・稼働率100%の場合の基本報酬収入は 6,090円 × 10人 × 20日 = 1,218,000円です。

固定費100万円を賄うための損益分岐稼働率:1,000,000 ÷ 1,218,000 ≒ 82%。つまり1日平均8.2人が利用してくれれば、この条件ではコストを回収できる計算になります。

この計算はあくまで基本報酬のみ・加算なしの単純化した例です。送迎加算・児童指導員等加配加算などが加わると、同じ稼働率でも収入が増え、損益分岐稼働率は下がります。逆に職員配置を厚くするほど固定費が増え、損益分岐稼働率が上がります。開業を検討する際は、自事業所の条件に合わせた試算が必要です。

収入を計算する際の注意点

開業前や運営計画の段階で収入を試算する際、次の点に注意が必要です。

  • 利用開始直後は稼働率が低い:開業したばかりの頃は利用者の登録数が少なく、稼働率は20〜40%程度から始まることが多いです。稼働率80%以上を安定的に維持するには半年〜1年以上かかるケースが一般的です。
  • 時間区分はサービス実績に基づく:令和6年度の改定では、個別支援計画に定めた時間を基本としつつ、実際のサービス提供時間で算定する方針になっています。計画時間と実際の時間が異なる場合の扱いは、事業所ごとの実態に応じて確認が必要です。
  • 新規指定事業所への減算がある:令和8年6月以降に指定を受けた新規事業所には、一定期間の基本報酬の引き下げ(減算)が適用される可能性があります。詳細は開業時点のこども家庭庁の告示を確認してください。
  • 処遇改善加算の扱い:処遇改善加算は職員の賃金改善に使途が限定されており、事業所の利益には含まれません。試算には含めることもありますが、実質的な手残りとは分けて考えることが重要です。

収入・費用・資金の動きを詳しく試算したい方は、こちらのシミュレーターをご活用ください。定員・地域・時間区分・稼働率などを入力することで、月次の収支イメージを確認できます。

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業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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