放デイ収支差率9.1%と児発7.8%の差は費用内訳のどこから来るか

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令和6年度の障害福祉サービスで、放課後等デイサービス(放デイ)の収支差率は9.1%・児童発達支援(児発)は7.8%です。両サービスは同じ指定基準グループ(児童通所支援)に属し、提供する支援の内容も近いため、費用構造の違いが収支差率の差(1.3ポイント)を生んでいます。

放デイと児発の費用内訳比較

費用項目 放デイ(金額・比率) 児発(金額・比率) 差(ポイント)
年間収入 31,025千円 22,131千円 −
人件費 19,983千円(64.4%) 15,057千円(68.0%) +3.6pt(児発が高い)
減価償却費 840千円(2.7%) 547千円(2.5%) +0.2pt(放デイが高い)
外注費・委託費 290千円(0.9%) 629千円(2.8%) +1.9pt(児発が高い)
その他費用 7,081千円(22.8%) 4,177千円(18.9%) -3.9pt(放デイが高い)
収支差率 9.1% 7.8% -1.3pt(放デイが高い)

人件費率の差(3.6ポイント)と外注費率の差(1.9ポイント)が収支差率の差に影響しています。一方、「その他費用」は放デイの方が3.9ポイント高く、これが差を一部相殺しています。

両者の収支差率(放デイ9.1%・児発7.8%)の差1.3ポイントは、主に人件費率の差(3.6pt)から来ており、外注費・その他費用の差が残りを決定しています。

人件費率の差(3.6pt)の背景

児発(68.0%)の方が放デイ(64.4%)より人件費率が3.6ポイント高い理由は、次の要因が考えられます。

児発は専門職配置の比率が高い傾向:児童発達支援は発達支援の専門性が求められるため、保育士・児童指導員・理学療法士・作業療法士等の有資格者を多く配置している事業所が多い傾向があります。専門職の給与水準は一般の介護職員より高いため、人件費率が上昇します。

医療型児発(重心型)の運営コスト:医療型児童発達支援(重症心身障害児対応)を行う事業所では、看護師・理学療法士・作業療法士の配置が義務付けられます。これらの医療職・リハビリ職の人件費は高く、人件費率を押し上げる要因になります。

支援の質の追求と人件費の関係:放デイは主に学校教育後の余暇支援や生活能力の向上が中心ですが、児発は早期発達支援として専門的な個別支援(発達評価・療育等)が重視されます。専門的な支援を提供するほど人件費は高くなります。

外注費・委託費の差(1.9pt)の背景

児発の外注費・委託費比率(2.8%・629千円)は放デイ(0.9%・290千円)の約2倍です。

外注費・委託費には給食(食事)の外部委託・送迎業務の外部委託・看護師等の業務委託等が含まれます。児発では給食を提供する事業所が多く、給食の外部委託費が高くなる傾向があります。また、医療型や放課後型に向けた専門的なプログラム(療育コンテンツ等)のライセンス費用が外注費に含まれるケースもあります。

「その他費用」の差(-3.9pt)の意味

放デイは「その他費用」(22.8%・7,081千円)が児発(18.9%・4,177千円)より3.9ポイント高くなっています。「その他費用」には家賃・リース料・光熱費・消耗品費・修繕費・管理費等が含まれます。

放デイは平均年収が31,025千円と児発(22,131千円)より多く、収入規模に連動して施設運営費(家賃・光熱費等)の絶対額も大きくなります。「その他費用」の比率が高くても、人件費率が低いため収支差率は放デイが上回っています。

両サービスで収支差率を比較する意味

放デイと児発を同一事業所・同一法人で一体的に運営している場合、両者の収支差率の差を把握することで「どちらのサービスが経営を支えているか」が分かります。

放デイ(9.1%)の方が収支差率が高いため、放デイを主力にして収益を稼ぎながら、専門性の高い児発(7.8%)を組み合わせるという経営モデルを取っている法人もあります。ただしこれはサービス全体の平均値であり、個別事業所によっては逆の関係(児発の方が高い)になることもあります。

特に児発が「医療型」か「福祉型」かによって費用構造が大きく変わります。医療型(重症心身障害児対応)は看護師・理学療法士の配置で人件費率が80%近くになることもあり、その場合は収支差率が全国平均7.8%を大きく下回ります。

自事業所の放デイ・児発をそれぞれ個別に収支差率を計算し、全国平均(放デイ9.1%・児発7.8%)と比較することが経営把握の基本です。どちらが全国平均を下回っているかを特定することで、改善優先度が明確になります。

放デイ・児発の収支差率を改善する際の視点

放デイ・児発を運営する事業所が収支差率を改善するためのアプローチを比較します。

サービス 収支差率の弱点 改善の優先アプローチ
放デイ 「その他費用」22.8%が高い 稼働率の向上・専門的支援加算の取得
児発 人件費率68.0%・外注費2.8%が高い 稼働率向上・外注費の見直し・加算取得

児発の人件費率を放デイ並みの64%に下げることは、専門的な支援の提供を維持しながらでは難しいケースが多い。実際には稼働率の向上(収入増)と加算取得(収入増)の組み合わせで収支差率を改善するアプローチの方が現実的です。

放デイと児発を一体的に運営している事業所では、両サービスの費用構造の差を把握することで、どちらの事業が収支を支えているかを確認できます。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。費用内訳の分類は同調査の集計区分にもとづきます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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