放課後等デイサービスでは、言葉による意思表示が難しい子ども、または話しているのに伝わらずフラストレーションが高まりやすい子どもが多く通います。職員がコミュニケーション支援の手法を知っていると、子どもとの関係構築や行動面のサポートに直接つながります。この記事では、放デイで使われるAAC・視覚支援・構造化の基礎と、研修での教え方を整理します。
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AACとは、音声以外のすべてのコミュニケーション手段のこと
AAC(Augmentative and Alternative Communication:拡大代替コミュニケーション)とは、音声言語だけに頼らず、ジェスチャー・絵カード・サイン・電子機器などを使って意思を伝え合う方法の総称です。「Alternative(代替)」は音声の代わり、「Augmentative(拡大)」は音声を補う、という意味です。
| 手段の種類 | 具体例 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 身体サイン・ジェスチャー | 「もっと」「終わり」「トイレ」をサインで表す | 道具なしで使える・即時性が高い |
| 絵・写真カード | 選択肢を絵カードで提示して選ばせる・PECS(絵カード交換式コミュニケーション) | 言葉での要求が難しい子どもに有効 |
| コミュニケーションボード | よく使う単語・フレーズを一覧にしたボードを常備する | 複数の選択肢を一覧で見せたいとき |
| VOCA(音声出力コミュニケーション機器) | ボタンを押すと音声が出るスイッチ・タブレットのAAアプリ | 音声出力で他者への伝達をサポート |
| タブレット・スマートフォン | AAC専用アプリ(Let me talk等)・文字入力・写真・動画 | 操作できる子どもにとって汎用性が高い |
AACは「話せない子どものためのもの」だけではありません。「話せるが伝わりにくい」「感情を言葉にしにくい」「初対面の人に緊張して話せない」という場面でも有効です。
PECS(絵カード交換式コミュニケーション)の基本。6フェーズで段階的に習得する
PECSは、子どもが絵カードを手渡す(交換する)という行為を通じて要求を伝える方法です。アメリカで開発され、自閉症スペクトラムのある子どものコミュニケーション支援に広く使われています。フェーズ1から6まで、段階的にスキルを積み上げます。
- フェーズ1:欲しいものの絵カードを大人に手渡す(物理的な交換行動の習得)
- フェーズ2:離れた場所にいる大人に絵カードを持って近づいて渡す(距離・持続性)
- フェーズ3:複数のカードの中から欲しいものを選んで渡す(弁別)
- フェーズ4:「〜をください」という文の形で要求する(文の構成)
- フェーズ5:「何が欲しいの?」という問いに答える(応答)
- フェーズ6:コメント・感想を表現する(自発的なコミュニケーション)
放デイでPECSを導入する場合は、相談支援専門員・保護者・学校と連携して「どのフェーズにいるか」を共有し、一貫した支援を行うことが重要です。
視覚支援とは、「見てわかる」情報を整える手法のこと
視覚支援とは、言葉(音声)で伝える代わりに・または補足して、絵・写真・図・文字・色分けなど目で見てわかる形で情報を提示することです。自閉症スペクトラムや知的障害のある子どもは、音声情報より視覚情報が処理しやすい場合が多いため、視覚支援は放デイの現場で幅広く活用されています。
| 種類 | 用途 | 具体例 |
|---|---|---|
| 視覚スケジュール | 1日の流れや活動の順番を事前に伝える | 写真・絵・文字を使ったホワイトボードのスケジュール表 |
| 手順書(視覚的な手順) | 「着替えの順番」「手洗いの手順」など手順をステップで示す | 番号付きの絵カードを壁に貼る |
| 選択ボード | 活動の選択肢を見て選ばせる | 「どっちで遊ぶ?」と2枚のカードを提示する |
| 終わりの提示 | 「いつ終わるか」を視覚的に示す(見通しを持てるようにする) | タイムタイマー・活動の回数カード |
| ルールの掲示 | 部屋のルールを絵と文字で示す | 「走らない」「椅子に座る」を絵で壁に貼る |
構造化とは、物理的・時間的・視覚的な「わかりやすさ」を設計すること
構造化(Structured Teaching)は、TEACCHアプローチで広く使われる考え方で、「物理的構造化・時間の構造化・視覚的構造化・作業システム」の4つを整えることで、子どもが「何をするか・どこでするか・どれくらいやるか・終わったら何が起きるか」を理解しやすくする手法です。
- 物理的構造化:活動エリアを分ける(学習コーナー・遊びコーナー・クールダウンコーナー)。境界を視覚的に示す(テープ・棚・カーテン)
- 時間の構造化:1日のスケジュールを視覚的に示す。「次は何をするか」が見えると見通しが持てる
- 視覚的構造化:どこを使うか・何がどこにあるかを色分けや絵で示す
- 作業システム:「何を・どのくらい・終わったらどうするか」を一目でわかるようにする
研修での教え方。実物を使った体験型研修が効果的
コミュニケーション支援研修は、概念の説明だけでは現場での活用につながりにくいため、実物・体験型で行うことが推奨されます。
- 座学(30分):AAC・PECS・視覚支援・構造化の概要と放デイでの活用例を紹介する
- 教材体験(30分):実際の絵カード・コミュニケーションボード・タイムタイマーを手に取って使い方を確認する
- 個別情報の確認(15〜20分):在籍している子どもごとに「使っているコミュニケーション手段・学校での支援方法」を共有する
保護者や相談支援専門員から「家でどんな方法を使っているか」を聞いて、事業所でも同じ方法を取り入れることが連携の基本です。
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作成者:fufumumu_design 作成日:2026-11-01
【出典】
・Andy Bondy, Lori Frost「PECS(絵カード交換式コミュニケーション・システム)」(Pyramid Educational Consultants, Inc.)
・Gary B. Mesibov, Victoria Shea, Eric Schopler「TEACCHアプローチ」(Autism and the TEACCH Program)
・日本自閉症協会「視覚支援のすすめ」
本記事の内容は情報提供を目的としたものです。


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