第二種衛生管理者の労働生理で出題される代謝・体温調節のテーマでは、「基礎代謝の定義と特徴」「エネルギー代謝率(RMR)」「体温調節の中枢(視床下部)」「熱放散の4経路」が頻出です。このページでは試験に出る代謝・体温調節のしくみをまとめます。
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代謝の基本:同化と異化
代謝とは生体内で起きる化学反応の総称です。大きく「同化」と「異化」の2つに分けられます。
| 種類 | 方向 | 例 |
|---|---|---|
| 同化(合成代謝) | 小さな分子から大きな分子を合成 | グルコースをグリコーゲンとして貯蔵・タンパク質の合成 |
| 異化(分解代謝) | 大きな分子を分解してエネルギーを取り出す | グリコーゲンをグルコースに分解・脂肪の燃焼 |
基礎代謝(BMR)
基礎代謝は生命維持のために安静状態で消費される最低限のエネルギーです。試験では「基礎代謝の条件と特徴」が問われます。
基礎代謝の測定条件:
- 早朝・空腹状態で
- 快適な環境温度(暑くも寒くもない)で
- 安静仰臥位(寝た状態)で
- 覚醒状態(眠っていない)で
基礎代謝の特徴(試験頻出):
- 筋肉量が多いほど基礎代謝は高い
- 男性は女性より基礎代謝が高い(筋肉量の差)
- 体表面積が大きいほど基礎代謝は高い
- 年齢が高くなるにつれて低下する傾向がある
- 同じ体格・年齢でも個人差がある
エネルギー代謝率(RMR)
エネルギー代謝率(RMR: Relative Metabolic Rate)は、ある作業のエネルギー消費量が基礎代謝量の何倍かを示す指標です。作業強度の指標として使われます。
- 安静時:RMR ≒ 0
- 軽い作業(デスクワーク等):RMR 0〜1程度
- 中程度の作業:RMR 2〜4程度
- 重労働:RMR 7以上
RMRは「その作業の消費エネルギー÷基礎代謝量」で求められます。RMRが高いほど身体負担が大きいことを示します。
体温調節のしくみ
体温調節の中枢は視床下部(脳の一部)にあります。体温は37℃前後(腋下温)に維持されています。
体温が上昇したとき(暑いとき)の反応:
- 皮膚の血管が拡張 → 体表面に血液が集まり放熱
- 発汗が増える → 汗が蒸発するときに熱を奪う
- 代謝・産熱の低下
体温が低下したとき(寒いとき)の反応:
- 皮膚の血管が収縮 → 体表面の血流を減らして保温
- 「ふるえ」(筋肉の不随意収縮)による産熱
- 立毛筋の収縮(鳥肌)
- 代謝・産熱の増加
熱放散の4経路
体から外部へ熱が逃げる経路(放熱)は4種類あります。
| 経路 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 放射(輻射) | 物体から電磁波として熱が放出される | 接触不要。宇宙空間でも起こる |
| 対流 | 周囲の空気の流れによって熱が逃げる | 風があると対流が増える |
| 蒸発(発汗) | 汗が蒸発するときに気化熱を奪う | 高温環境での主要な放熱手段 |
| 伝導 | 接触している物体(椅子・床等)へ直接伝わる | 熱伝導の高い金属等では大きい |
高温多湿環境では「発汗はあるが蒸発しにくい」ため、放熱効率が低下し熱中症リスクが高まります。
代謝・体温調節の頻出ひっかけパターン
| よくある誤り | 正しい内容 |
|---|---|
| 体温調節の中枢は延髄にある | 誤り。体温調節の中枢は視床下部(延髄は呼吸中枢) |
| 脂肪が多い人ほど基礎代謝が高い | 誤り。筋肉量が多いほど基礎代謝が高い(脂肪はエネルギー消費が少ない) |
| 高温多湿では発汗による体温調節が効果的に働く | 誤り。高温多湿では汗が蒸発しにくく放熱効率が下がる |
基礎代謝量の目安値
基礎代謝量(BMR: Basal Metabolic Rate)の成人の目安値:
| 区分 | 1日の基礎代謝量の目安 |
|---|---|
| 成人男性(20〜40歳) | 約1,500〜1,700 kcal/日 |
| 成人女性(20〜40歳) | 約1,200〜1,400 kcal/日 |
試験ではこの具体的な数値より「男性は女性より基礎代謝が高い(筋肉量の差)」「加齢とともに低下する」という傾向が問われます。
食事誘発性熱産生(DIT)
食事を摂取した後、消化吸収のためにエネルギーが消費され体が温まる現象を「食事誘発性熱産生(DIT: Diet-Induced Thermogenesis)」または「特異動的作用(SDA)」といいます。
- タンパク質:摂取エネルギーの約30%がDITとして消費される
- 糖質(炭水化物):約5〜10%
- 脂質:約5%
試験では「タンパク質の特異動的作用(食事誘発性熱産生)は他の栄養素より大きい」という点が出題されることがあります。
糖質・脂質・タンパク質の代謝の流れ
| 栄養素 | 分解過程 | エネルギーへの変換 |
|---|---|---|
| 糖質(炭水化物) | 消化されてグルコース(ブドウ糖)になる | グルコース→解糖系→ミトコンドリアでATP産生 |
| 脂質 | 消化されて脂肪酸・グリセロールになる | 脂肪酸→β酸化→ミトコンドリアでATP産生 |
| タンパク質 | 消化されてアミノ酸になる | アミノ酸→脱アミノ→有機酸→エネルギー or 糖質・脂質として代謝 |
試験では「代謝の流れの細かいメカニズム」より、「同化・異化」「基礎代謝の特徴」「RMR(エネルギー代謝率)の定義」「熱放散の4経路」「体温調節中枢(視床下部)」が繰り返し出題されます。
体温の正常範囲と測定部位による違い
| 測定部位 | 正常範囲の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 腋下温(腋窩温) | 約36.0〜37.0℃ | 最も一般的な測定方法 |
| 口腔内温 | 腋下温より約0.2〜0.3℃高い | — |
| 直腸温 | 腋下温より約0.5〜0.8℃高い(体内の深部体温に近い) | 最も正確な体温 |
日内変動:体温は1日を通じて約0.5〜1℃程度変動します。早朝が最も低く(最低体温)、午後2〜6時頃が最も高い(最高体温)という日内リズムがあります。
労働衛生での応用:体温調節と職場環境
体温調節の知識は労働衛生(熱中症・事務所環境管理)にも直結します。
- 高温多湿環境(熱中症リスク):発汗は増えるが蒸発しにくい → 体温上昇のリスク → WBGT指数の管理が重要
- オフィス環境(事務所衛生基準規則):室温17〜28℃・相対湿度40〜70%という基準は体温調節の観点から設定されている
試験対策まとめ
代謝・体温調節で試験に出る5つのポイント:(1)基礎代謝は「筋肉量が多い・男性・体表面積が大きい」で高い。(2)RMRは「作業のエネルギー消費量÷基礎代謝量」。(3)体温調節の中枢は「視床下部」(延髄ではない)。(4)熱放散は「放射・対流・蒸発・伝導」の4経路。(5)高温多湿では「発汗があっても蒸発しにくいため放熱効率が低下する」。この5点をアプリで繰り返し確認することで確実に得点できます。
食事誘発性熱産生(DIT)
食事を摂取した後、消化・吸収・代謝のためにエネルギーが消費され、体が温まります。このエネルギー消費を「食事誘発性熱産生(DIT)」または「特異動的作用(SDA)」と呼びます。
| 栄養素 | DITの割合(摂取エネルギーに対して) |
|---|---|
| タンパク質 | 約30%(最も高い) |
| 脂質 | 約4〜5%(最も低い) |
| 糖質(炭水化物) | 約6〜8% |
タンパク質のDITが最も高いのは、アミノ酸への分解・タンパク質への再合成に多くのエネルギーを要するためです。
栄養素別のエネルギー代謝
3大栄養素はそれぞれ異なる経路でエネルギーに変換されます。
- 糖質:解糖系→ピルビン酸→TCA回路でATPを産生。最初に使われるエネルギー源
- 脂質:β酸化→アセチルCoA→TCA回路。糖質が不足すると主要エネルギー源になる
- タンパク質:アミノ酸に分解後、糖新生やTCA回路に入る。通常はエネルギー源よりも体の構成成分として使われる
運動の種類によって使われる栄養素が異なります。短時間の高強度運動(無酸素運動)では主にATP・クレアチンリン酸・グリコーゲンを使い、長時間の中低強度運動(有酸素運動)では脂肪酸の分解が増加します。
体温の日内変動と実務への応用
人体の体温には1日の中で規則的な変動(日内変動)があります。
- 体温が最も低い時間帯:早朝(午前3〜6時ごろ)
- 体温が最も高い時間帯:午後2〜6時ごろ
- 日内変動の幅:約0.5〜1.0℃程度
この体温の日内変動は「概日リズム(サーカディアンリズム)」と連動しています。深夜勤務・交代勤務では概日リズムが乱れ、体温調節や睡眠・覚醒サイクルへの影響が生じます。これは産業衛生(夜勤・交代制勤務の健康管理)と関連する出題テーマです。
代謝・体温調節と職場の健康管理
代謝・体温調節の知識は、職場の熱中症予防・寒冷障害予防と直接結びつきます。
| 職場環境 | 体温調節への影響と対策 |
|---|---|
| 高温多湿な環境 | 蒸発による放熱が妨げられる。水分・電解質補給・休憩・WBGT管理が必要 |
| 寒冷環境(冷凍倉庫・冬季の屋外) | 熱産生が追いつかないと低体温症リスク。防寒着・保温・作業時間の制限が必要 |
| エアコンの効きすぎる室内 | 適切な室温管理(17〜28℃)が基準。過度な冷房による体温調節機能の乱れに注意 |
試験対策まとめ:代謝・体温調節の得点ポイント
代謝・体温調節のテーマから得点を確実に取るために意識したいポイント:
- 「体温調節の中枢は視床下部(延髄ではない)」を確実に覚える
- 「基礎代謝は筋肉量に比例する(脂肪量ではない)」を覚える
- 「高温多湿では発汗はあるが蒸発しにくい」という逆説的な内容を押さえる
- 熱放散の4経路(放射・対流・蒸発・伝導)を覚える
- RMRは「その作業のエネルギー消費÷基礎代謝量」で求める
試験対策まとめ:代謝・体温調節の最終確認
代謝・体温調節のテーマでよくある試験の出題形式を確認します。
- 「RMR(エネルギー代謝率)は作業強度が高いほど大きい値を示す」(正しい)
- 「基礎代謝は性別や年齢に関係なく一定である」(誤り):筋肉量・年齢・体格で変化する
- 「高温多湿では蒸発による放熱が効率的に行われる」(誤り):湿度が高いと汗が蒸発しにくい
- 「体温調節中枢は視床下部にある」(正しい)
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▶ 第二種衛生管理者 過去問・AI問題集
出典:公益財団法人安全衛生技術試験協会「衛生管理者免許試験 試験案内」(2026年11月時点)。法令の数字は労働安全衛生法・同施行令・安衛則の条文に基づきます。

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