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ボイラーの腐食は缶体・管類の損傷・減肉・破損につながる重大な問題です。一級ボイラー技士試験では、腐食の種類・発生メカニズム・缶水管理(pH・溶存酸素)・防止対策が頻出テーマです。
ボイラー腐食の種類
1. 酸素腐食(全面腐食・点食)
給水中に溶存酸素(O₂)が含まれると、鉄が酸化されて腐食が進みます。酸素腐食は全面的な腐食と、局所的なくぼみ状の点食(ピッティング)の2種類があります。点食は局部的に深く進行するため、管の穴あきにつながりやすい危険な腐食です。
発生箇所:給水ポンプ・給水管・節炭器・蒸発管(特に低負荷・停缶時)
2. 酸腐食
缶水のpHが低い(酸性側)と鉄が水素発生を伴って溶解します。pH低下の原因には、炭酸ガス(CO₂)の溶け込み・塩化物の加水分解・腐食生成物(FeSO₄等)の蓄積があります。
3. アルカリ腐食(苛性ぜい化)
缶水が高アルカリ(pH 13以上)になると鉄が腐食します。また高圧ボイラーでは過度のアルカリ環境で鋼材の粒界が脆化する「苛性脆化(かせいぜいか)」が起こる危険があります。
4. 電気化学的腐食(ガルバニック腐食)
異種金属が接触して電解液(缶水)に浸かると、電位差によって電流が流れて腐食が生じます(ガルバニックセル腐食)。電位が低い(卑な)金属が腐食します。例:鉄(Fe)と銅(Cu)の接触では鉄側が腐食する。
5. 孔食(クレビス腐食・すき間腐食)
フランジ面・溶接継手のすき間では酸素濃淡電池が形成され、酸素濃度の低い部位(すき間内部)が腐食しやすくなります。
缶水管理とpH管理
ボイラー給水・缶水の水質はJIS B 8223「ボイラーの給水及びボイラー水の水質」で規定されています。缶水のpH管理は腐食防止の基本です。
缶水pHの推奨範囲(JIS B 8223参照)
JIS B 8223では最高使用圧力に応じて缶水のpH管理範囲が定められています。一般に低圧〜中圧ボイラーでは缶水pH 10.5〜11.5程度が目安として用いられますが、高圧ボイラーではpH範囲がより厳しく管理されます。詳細な管理値は圧力区分ごとにJIS B 8223の該当表を確認してください。
- pH が低すぎると:酸腐食が進行
- pH が高すぎると(13以上):アルカリ腐食・苛性脆化の危険
- 管理目的:鉄表面に保護的な酸化被膜(マグネタイトFe₃O₄)を形成させる
pHを調整する薬品
| 薬品 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 水酸化ナトリウム(NaOH) | pH上昇 | 過剰添加でアルカリ腐食の危険 |
| 炭酸ナトリウム(Na₂CO₃) | pH上昇・軟化 | 高圧では分解してCO₂を生成 |
| りん酸ナトリウム類 | pH調整・スケール防止 | 高圧ボイラーで広く使用 |
| 揮発性アミン(モルフォリン等) | 給水・蒸気配管のpH維持 | 蒸気側の腐食防止に有効 |
溶存酸素の管理と脱気
給水中の溶存酸素を除去することは腐食防止の最重要対策です。溶存酸素の管理はJIS B 8223でも規定されています。
脱気器(ヒータ式)
給水を加熱(通常105℃前後)して溶存酸素の溶解度を下げ、気体を排出します。脱気器を通過した給水の溶存酸素は大幅に低下します。高圧ボイラーでは必須設備です。
酸素スカベンジャー(脱酸素剤)
脱気器で除去しきれない残留溶存酸素を化学的に除去します。
- ヒドラジン(N₂H₄):N₂H₄ + O₂ → N₂ + 2H₂O の反応でO₂を除去。高温高圧ボイラーに使用。ただし毒性が強く取扱いに注意が必要
- 亜硫酸ナトリウム(Na₂SO₃):2Na₂SO₃ + O₂ → 2Na₂SO₄。低〜中圧ボイラーに使用。高圧では硫酸イオンが増加するため不適
- タンニン・カルボヒドラジド:ヒドラジンの代替品として環境負荷が低い
電気化学的腐食の防止
- 異種金属の接触を避ける:配管材料の統一・絶縁継手の使用
- 犠牲陽極法:亜鉛などの電位が低い金属を取り付け、保護対象の鉄の代わりに腐食させる
- 外部電源法(電気防食):外部から直流電流を流して腐食を防ぐ
- コーティング:防錆塗料・エポキシライニングで電解液との接触を遮断
停缶時の腐食防止
ボイラーを停缶する際は、缶内が低温になって溶存酸素が増加しやすく腐食リスクが上がります。休缶管理が重要です。
- 湿式保管:缶水を満水にし、防食剤(pH調整薬・酸素スカベンジャー)を添加して保存する
- 乾式保管:缶水をすべて排出して乾燥させ、乾燥剤(シリカゲル・塩化カルシウム等)を入れて封じる
- 窒素封入:缶内を窒素ガスで置換し、酸素を排除する
試験対策ポイント
- 酸素腐食→溶存酸素除去(脱気器+スカベンジャー)が主な対策
- 缶水pH管理はJIS B 8223を根拠とし、低圧〜中圧では概ね弱アルカリ(pH 10台)に維持する
- ヒドラジンは高圧ボイラー向け脱酸素剤だが毒性があることも押さえる
- 苛性脆化はpH過剰(高アルカリ)で発生する
まとめ
- 腐食の主な原因:溶存酸素・低pH・高アルカリ・異種金属接触
- 缶水pH管理はJIS B 8223に従い圧力区分に応じた範囲を維持する
- 溶存酸素対策:脱気器+酸素スカベンジャー(ヒドラジン・亜硫酸ナトリウム等)
- 停缶時は湿式・乾式・窒素封入のいずれかで保護する
出典:ボイラー及び圧力容器安全規則・ボイラー構造規格・JIS B 8223・安全衛生技術試験協会 公表試験問題
作成:fufumumu_design|更新:2026年11月
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