就労継続支援B型と就労移行支援は、どちらも障害者総合支援法にもとづく就労系の障害福祉サービスです。しかし、目的・対象者・報酬の仕組みが根本的に違います。
就労移行支援は「就職を目指す人のための、期限つきの訓練の場」です。利用期間の原則は2年で、就職・職場定着が目標になります。就労継続支援B型は「就労の機会を提供しながら工賃を支払う、継続的な場」です。利用に期限はなく、通所しながら工賃を受け取ります。
この記事では、就労移行支援との主な違いを、事業所数・報酬の仕組み・人員基準・全国の収支実態から整理します。開業するサービスを検討している方は、両者の構造を比べてから判断することをお勧めします。
事業所数は、B型が就労移行の約5倍
国保連合会のデータ(令和7年1〜3月)によると、就労継続支援B型の事業所数は14,047か所、就労移行支援は2,834か所です。B型は就労移行の約5倍の規模があります。
B型が多い理由のひとつは、利用に期限がないことです。就労移行は原則2年で終わる契約ですが、B型は長期間の通所が可能なため、利用者が定着しやすく、定員を安定的に満たしやすい面があります。
もうひとつの理由は、対象者の幅が広いことです。就労移行の利用は「一般就労が可能と見込まれる人」が原則ですが、B型は「就労の機会を通じた生産活動の提供が適切と認められる人」が対象で、症状や障害の程度によっては一般就労が難しい方も利用できます。
目的と利用期間の違い
就労移行支援の目的は、一般就労(会社員・パート・アルバイト等)に向けた訓練と就職活動の支援です。標準の利用期間は2年で、やむを得ない事情がある場合に限り1年の延長が認められています。
就労継続支援B型の目的は、就労の機会の提供と、それにともなう工賃の支払いです。利用に期限はありません。雇用契約を結ばず(非雇用型)、施設内で軽作業・手工芸・農作業などの生産活動を行い、その成果に応じた工賃を受け取る形が一般的です。
利用者の視点で言うと、就労移行は「就職という出口に向かって進む場」で、B型は「継続的に通所しながら働く場」という位置づけになります。
報酬の仕組みの違い
どちらも、「基本報酬」を国保連に請求する形は同じです。しかし、基本報酬の決まり方が大きく異なります。
就労移行支援の基本報酬は、就労定着者の割合で決まる
就労移行支援の基本報酬は、「利用定員の区分」と「前年度の就労定着者の割合」の組み合わせで決まります(平成18年厚生労働省告示第523号 別表第12)。就労定着者とは、就職後6か月間継続して就労した人のことです。
たとえば定員20人以下・就労定着者の割合50%以上だと1,028単位/日ですが、割合が0%(誰も定着しなかった)では719単位/日になります。割合が上がると報酬も上がる仕組みです。
開業1〜2年目は前年度実績がないため「みなし」の扱いがあります。1年目は879単位/日、2年目は就職者数から特例の計算で区分を決めます。3年目から実際の就労定着実績が反映されます。
また、新規に指定を受ける事業所への報酬の引き下げは、就労移行支援には適用されていません(令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の改定事項)。
就労継続支援B型の基本報酬は、前年度の平均工賃月額で決まる
就労継続支援B型の基本報酬は、「利用定員の区分」と「前年度の平均工賃月額の区分」の組み合わせで決まります(告示第523号 別表第14)。定員5区分×工賃月額14区分で、計70種類の単価があります。
工賃月額の区分は1万円未満(最低区分)から4万6,000円以上(最高区分)まで14段階あり、工賃が上がると翌年度の報酬も上がります。就労移行が「就職定着実績」で決まるのと同じく、B型は「工賃の実績」が報酬に直結する仕組みです。
開業1年目は前年度の工賃実績がないため、最低区分(590単位/日・定員20人以下)からのスタートになります。就労移行のような「みなし期間の特例」はありません。この点はB型の開業1年目の収支計画を立てるうえで重要です。
なお、令和8年6月施行の報酬改定では、新規指定の事業所の基本報酬の引き下げがB型にも適用されています(就労移行支援は対象外)。
工賃の支払いが、B型だけのコスト
就労継続支援B型には、就労移行支援にはない「工賃」の支払い義務があります。
指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第201条には、「工賃の水準を高めるよう努めるものとし、その平均工賃月額が3,000円を下回ってはならない」と定められています。工賃は生産活動の収入(施設外就労の収入・製品の販売収入など)から支払うこととされており、介護給付費(報酬)を工賃に充てることは認められていません(同第192条第6項を第202条で準用)。
このため、B型の収支計画には「生産活動の会計」と「介護給付費の会計」を分けて管理する必要があります。就労移行は生産活動に比重を置かないため、この会計の分離は求められていません。
全国の令和5年度の平均工賃月額は事業所あたり16,507円(国保連データ・令和7年1〜3月)でした。工賃は運営コストとして確実に発生しますが、工賃の水準が高まると翌年度の報酬単価も上がるため、利用者の工賃を育てることが事業の持続性につながります。
人員基準の違い
就労移行支援とB型では、必要な職員の種類と配置基準が異なります。
就労移行支援の人員基準
就労移行支援で必要な職種と基準は次のとおりです(指定基準第175条)。
- 職業指導員・生活支援員の合計(常勤換算):利用者数÷6以上。それぞれ1人以上が必要
- 就労支援員(常勤換算):利用者数÷15以上。就職活動の支援・職場実習の調整を担う職種
- サービス管理責任者:利用者60人以下で1人以上(うち1人以上は常勤)
- 管理者:1人(兼務可)
定員20人の場合、職業指導員・生活支援員の合計は最低4人以上(20÷6≒3.33→切り上げ4人)、就労支援員は2人以上(20÷15≒1.33→切り上げ2人)が必要です。就労移行は、就労・職場への定着支援に特化した「就労支援員」が別途必要な点がB型と異なります。
就労継続支援B型の人員基準
就労継続支援B型の基準は次のとおりです(指定基準第193条・第213条)。
- 職業指導員・生活支援員の合計(常勤換算):利用者数÷10以上。それぞれ1人以上が必要
- サービス管理責任者:利用者60人以下で1人以上(うち1人以上は常勤)
- 管理者:1人(兼務可)
定員20人の場合、職業指導員・生活支援員の合計は最低2人以上(20÷10=2人)です。就労移行の4人に比べて少なく、人件費の面で柔軟性があります。ただし、実際には工賃を生む生産活動を指導・管理するため、基準以上の職員を配置する事業所も多くあります。
全国の収支実態の比較
厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)にもとづく、両サービスの全国平均です。
| 項目 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 |
|---|---|---|
| 集計事業所数 | 605か所 | 296か所 |
| 年間収入(平均) | 約3,163万円 | 約2,878万円 |
| 給与費(平均) | 約2,103万円 | 約1,848万円 |
| 収支差率(平均) | 約4.7% | 約6.0% |
B型の方が年間収入は多い傾向にありますが、収支差率は就労移行より低い数字です。B型は利用者数が多い事業所が多いこと、工賃を払いながら運営することが、コスト構造に反映されていると考えられます。
就労移行は事業所規模がB型より小さい傾向がありますが、就労定着実績を積み上げることで報酬単価が上がる仕組みがあり、収支差率は若干高くなっています。
なお、これらは全国の平均値です。地域・定員・運営主体・加算取得の状況によって、個別の事業所の収支は大きく変わります。
定員の最低数の違い
就労移行支援・就労継続支援B型ともに、単独の事業所では定員を20人以上とすることが求められています。ただし、複数のサービスを一体的に提供する「多機能型」の場合は、各サービスの利用定員を10人以上にすることができます(指定基準第174号 第62条の2・第74条)。
20人という最低定員は、開業時の利用者の確保・職員配置のいずれにおいても一定の規模感を意味します。開業当初から20人の利用者を確保できるかどうかは、収支計画において重要な前提になります。
どちらを開業するか
就労移行支援は、「一般就労を目指す段階の人を、期限つきでサポートしたい」という事業者に向いています。就労定着実績を積むことで報酬が上がる仕組みがあり、就職実績を持つ事業所として地域での評価にもつながります。一方で、2年の利用期間が終わると利用者が入れ替わるため、継続的な新規利用者の確保が必要です。
就労継続支援B型は、「雇用が困難な方に継続的に就労の機会を提供したい」という事業者に向いています。利用者が長期間通所するため、定員が埋まれば収入が安定しやすい面があります。一方、工賃の支払い・生産活動の会計管理・製品や受注の安定確保など、就労移行とは異なる運営の複雑さがあります。
どちらのサービスが地域に必要とされているかは、市区町村の障害福祉計画や指定権者への事前相談で確認することを勧めます。
まとめ
- 就労移行支援は「一般就労を目指す2年間の訓練の場」、B型は「工賃を支払いながら継続的に就労機会を提供する場」
- B型の事業所数は就労移行の約5倍(14,047対2,834・R7年1〜3月)
- 報酬の決まり方:就労移行は就労定着者の割合、B型は前年度の平均工賃月額
- B型の開業1年目は最低区分(590単位/日・定員20人以下)からスタート。みなし期間の特例はない
- B型には工賃の支払い義務(平均工賃月額3,000円以上)があり、就労移行にはない
- 人員基準:就労移行は利用者÷6(+就労支援員)、B型は利用者÷10
- 収支差率:就労移行が平均約6.0%、B型が約4.7%(厚労省 R7概況調査)
開業時の収支の試算は、各シミュレーターで確認できます。
- 就労継続支援B型 開業向け収支シミュレーター:前年度平均工賃月額の区分・定員・人員構成をもとに、月次36か月の試算ができます。
- 就労移行支援 開業向け収支シミュレーター:就労定着者の見込み・定員・人員構成をもとに、月次36か月の試算ができます。


コメント