飲食店でスタッフを雇うと法定福利費15%が給与に上乗せされる。社会保険4種類の会社負担分を整理する。

飲食店でスタッフを雇うと法定福利費15%が給与に上乗せされる。社会保険4種類の会社負担分を整理する。 飲食店の開業

飲食店でスタッフを常時雇用すると、給与の約15%が法定福利費(社会保険料の会社負担分)として追加コストになります。公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋)では、月次人件費88.6万円のうち、正社員・専従者の給与合計50万円に法定福利費率15%を掛けた7.5万円が別途かかる計算です。年間では約90万円で、人件費の7.5万円を見込んでいないと収支計画が狂います。週20〜30時間未満の短時間勤務者は適用が一部変わるため、雇用の形態によって試算方法が異なります。

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法定福利費率15%の内訳(社会保険4種類の会社負担分)

法定福利費とは、法律で義務付けられている社会保険料の会社(事業者)負担分のことです。飲食店で従業員を雇用した場合に発生するのは次の4種類です。

社会保険の種類 会社負担率の目安 対象 加入条件
健康保険(協会けんぽ) 給与の約5.0%前後(都道府県・年度で変わる) 会社員・役員 法人の役員・常勤の正社員は強制加入
厚生年金保険 給与の約9.15%(労使折半で18.3%の半分) 会社員・役員 法人の役員・常勤の正社員は強制加入
雇用保険 給与の約0.85〜0.95%(業種・年度で変わる) 雇用されているスタッフ 週20時間以上・31日以上の雇用が見込まれる場合
労災保険 給与の約0.3〜1.0%(業種による) すべての労働者 労働者を1人でも雇えば加入義務あり(役員除く)
合計(目安) 約15〜16% — —

※料率は年度・都道府県・業種によって変わります。最新の料率は協会けんぽ・日本年金機構・ハローワークで確認してください。

健康保険・厚生年金(いわゆる社会保険)は会社と従業員で折半(各半分)します。雇用保険は会社と従業員で負担割合が異なり(会社側の方が多い)、労災保険は全額事業者負担です。合計すると給与額の約15〜16%が会社負担の目安になります。収支シミュレーターでは15%を法定福利費率として計算しています。

公庫の記入例の人件費に法定福利費15%を加えた場合の試算

公庫の創業計画書記入例(洋風居酒屋・軌道後)の人件費内訳に、法定福利費15%を加えて計算します。

区分 月次給与(万円) 法定福利費15%(万円) 実質コスト(万円)
正社員 2人 40.0 6.0 46.0
専従者(家族従業者) 10.0 1.5 11.5
アルバイト(2人・月38.6万円) 38.6 ※適用条件による 38.6〜43.9
人件費合計(法定福利費加算後) 88.6 7.5〜9.3 96.1〜97.9

※アルバイトの法定福利費は週20〜30時間の勤務条件・雇用期間によって変わります。週30時間以上であれば社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務があります。

記入例の人件費88.6万円は、法定福利費を含めた数字として扱うか含めない数字として扱うかで、月次コストが変わります。公庫の記入例では「人件費」として法定福利費が含まれているとする解釈が一般的ですが、自社の収支計画を作る際は、給与と法定福利費を分けて試算することをおすすめします。

個人事業と法人で社会保険の加入義務が変わる

社会保険(健康保険・厚生年金)の強制加入は、従業員の規模と事業形態によって変わります。

事業形態 強制加入の条件 任意加入
法人(株式会社・合同会社等) 従業員数に関わらず、役員・常勤正社員は全員強制加入 —
個人事業(常時5人未満) 強制加入義務なし(飲食業・小売業等) 任意で国民健康保険組合等に加入
個人事業(常時5人以上) 正社員は強制加入 —

飲食店を個人事業として開業し、従業員が常時5人未満の場合は、社会保険(健康保険・厚生年金)の強制加入義務はありません。この場合、事業主本人は国民健康保険・国民年金に加入します。ただし、雇用保険・労災保険は従業員を1人でも雇えば加入義務があります。

法人として開業した場合(株式会社・合同会社等)は、役員も含めて全員が強制加入になります。公庫への融資申請では法人と個人事業のどちらでも可能ですが、法人化すると法定福利費の負担が変わる点を収支計画に反映させる必要があります。

個人事業と法人の収益構造の違いについては、飲食店の開業は個人事業と法人、どちらで始めるかで詳しく説明しています。

週20〜30時間のアルバイトへの社会保険適用(2024年以降の変更点)

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用は段階的に拡大されています。2024年10月から51人以上の事業所、2026年10月からは41人以上の事業所にも、週20時間以上かつ月収88,000円以上のパート・アルバイトへの加入義務が拡大されています。

適用要件(2024年10月以降・51人以上の事業所) 内容
労働時間 週20時間以上
賃金 月額88,000円以上
雇用期間の見込み 2か月超
学生 学生は原則対象外

飲食店の開業当初(従業員5〜10人程度)では51人の基準に達しないケースがほとんどですが、将来的な店舗拡大や従業員数の増加を見込む場合は、社会保険コストの試算に組み込んでおく必要があります。最新の適用基準は日本年金機構のウェブサイトで確認してください。

正社員を1人追加すると社会保険料が年間何万円増えるか

記入例では創業当初の正社員1人から軌道後に2人に増やしています。正社員を1人追加する場合の法定福利費の増加額を確認します。

追加する正社員の月給 法定福利費(月次・15%) 年間の追加コスト
18万円 2.7万円 32.4万円
20万円(記入例水準) 3.0万円 36.0万円
22万円 3.3万円 39.6万円
25万円 3.75万円 45.0万円

正社員を月給20万円で1人追加した場合、給与本体の240万円(20万円×12か月)に加えて法定福利費36万円がかかります。採用・研修コストは別途必要です。

法定福利費は「隠れた人件費」とも呼ばれます。月給20万円のスタッフを雇っても、実質的には月23万円以上のコストがかかると理解しておく必要があります。

飲食業の労災保険料率の目安

労災保険の保険料率は業種によって定められており、飲食業(一般の飲食店業)は厚生労働省が定める率が適用されます。労災保険は全額事業者負担で、従業員の給与額を元に計算します。

飲食業の労災保険料率は、厚生労働省の告示(労災保険率表)で定められています。具体的な料率は、事業の実態や最新の改定内容を都道府県の労働局・労働基準監督署で確認してください。

労災保険料は年1回(4月〜翌3月)の確定精算と概算申告を行う形式です(労働保険料の年度更新)。開業1年目は概算申告で先払いし、翌年の確定精算で差額を精算します。

収支計画に法定福利費を正確に組み込む

法定福利費を収支計画に組み込む際のポイントを3つ整理します。

第1は、給与と法定福利費を分けて計上することです。「人件費88.6万円(法定福利費込み)」と「人件費81.6万円+法定福利費7.0万円」では、同じ月次コストでも分析のしやすさが違います。試算段階では給与と法定福利費を分けて計算すると、正社員・パートの構成変化による影響を把握しやすくなります。

第2は、アルバイトの勤務条件を事前に確認することです。週20時間以上の勤務で雇用保険が発生します。また、勤務先の規模や勤務時間によっては健康保険・厚生年金も対象になります。短時間の勤務でも、雇用する以上は労災保険の加入が必要です。

第3は、採用ごとに社会保険の発生の有無を確認することです。正社員1人を追加するたびに法定福利費が年30〜40万円単位で増えます。人員計画と同時に法定福利費の変動を試算に反映させることで、収支の見通しを正確に保てます。

人件費全体の設計と損益への影響については、飲食店の人件費で詳しく説明しています。月次の収支シミュレーションは飲食店の開業 収支シミュレーターで確認できます。

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本記事の社会保険料率は協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省の公開情報をもとにした目安です。健康保険料率は都道府県・年度によって変わります。社会保険の加入義務・適用基準の最新情報は、所轄の年金事務所・労働基準監督署・ハローワークに確認してください。本ツールは当方が作成した民間のシミュレーターであり、日本政策金融公庫が作成・提供するものではありません。むむ(fufumumu_design)作成・2026年11月確認。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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