GH日中型の年間収入5,803万円が障害福祉7サービス中で最大になる理由

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厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)によると、グループホーム(日中サービス支援型・以下GH日中型)の平均年収入は5,803万円です(n=236)。障害福祉7サービスのうち生活介護(7,939万円)に次ぐ収入規模で、定員1人当たりの収入は3,952千円(約395万円)と7サービス中で最高水準です。

GH日中型の収入規模が大きい理由

入居・日中の両方に報酬が発生する:GH日中型は入居(生活支援)と日中支援の両方を提供するため、GH包括型(入居・日中支援なし)と比べて報酬単価が高くなります。包括型の平均年収(3,990万円)と比べると約1,800万円の差があります。この差は日中支援加算・日中支援体制加算等による収入増加が要因です。

夜間支援・日中支援の加算が積み重なる:夜間支援等体制加算(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)と日中支援加算を両方取得できるため、同定員数のGH包括型より収入が多くなります。特に定員規模が大きい事業所ほど加算収入の絶対額が増えます。

重度障害者支援加算の算定機会が多い:日中型はGH包括型より重度障害者(行動障害・医療的ケア等)の受け入れが多い傾向があります。重度障害者支援加算(強度行動障害支援者養成研修修了者の配置等が要件)を算定できる事業所では、収入がさらに上乗せされます。

GH包括型との収入・費用比較

比較項目 GH日中型 GH包括型
平均定員 15人 16人
年間収入(平均) 5,803万円 3,990万円
年間人件費(平均) 3,838万円 2,460万円
人件費率 66.1% 61.7%
収支差率(平均) 5.1% 6.9%
1人当たり収入 395万円 248万円
1人当たり費用 375万円 231万円
1人当たり差額 20万円 17万円

GH日中型は年収が1,813万円多いですが、人件費も1,378万円多い。1人当たりの差額(収益)はGH日中型20万円・GH包括型17万円とほぼ同水準で、高い収入が高い費用で相殺されている構図です。

年収5,803万円でも収支差率5.1%にとどまる理由

GH日中型の年収5,803万円は高水準ですが、収支差率は5.1%と7サービスの中では低い方です(就労移行支援6.0%・短期入所2.3%を除いて)。なぜ高収入でも収支差率が低いのでしょうか。

日中支援員の追加人件費が大きい:包括型と比べて日中支援員を別途配置するため、職員数が平均9.28人と7サービス中で生活介護(9.76人)に次いで多くなっています。この人件費が年収の増加分(1,813万円)の多くを吸収しています。

施設(住居)の維持費が高い:GH日中型は入居施設のため、家賃・リース料・減価償却費等の施設維持費が発生します。depreciation(減価償却費)は平均2,659千円(約266万円)と7サービス中最大です。これも収支を圧迫する要因です。

夜間・日中の両面での人員配置が必要:包括型は夜間支援員だけで済む部分も、日中型は日中支援員も配置する必要があります。常勤換算9.28人という多い職員数は、24時間体制の人員配置要件によるものです。

GH日中型の収支差率を改善するポイント

年収5,803万円規模のGH日中型で収支差率5.1%を改善するには、次のアプローチが有効です。

  • 稼働率86.0%(WAM参考値)以上を維持する:定員15人で稼働率86%(12.9人)の状態から90%(13.5人)に上げると、年収は約240万円増加します(試算値)。人件費が変わらなければ、この240万円が収支差率の改善に直結します
  • 重度障害者支援加算を取得する:強度行動障害支援者養成研修(基礎・実践)修了者を配置し、重度障害者支援加算を算定することで収入を増やせます。研修費用との費用対効果を確認した上で取り組む価値があります
  • 日中支援員の非常勤活用を最適化する:日中支援の時間帯(朝・昼・夕)に合わせた非常勤職員の配置で、常勤職員の残業を減らし人件費を抑えられます。ただし、日中支援の体制要件(常勤換算での配置基準)を満たすことが前提です

GH包括型から日中型へ移行する場合の収益性の変化

既存のGH包括型から日中型に転換・拡充する場合、収入は増える一方で費用も増加します。この転換が収支差率の改善につながるかどうかは、以下の点を確認することが重要です。

  • 日中支援員の追加採用コスト:包括型から日中型へ変更すると、日中支援員の追加配置が必要です。採用コスト・人件費の増加と、日中加算収入の増加を比較して収益性を試算します
  • 設備・スペースの改修コスト:日中型は日中活動のためのスペース要件があります。既存施設の改修が必要な場合、初期投資とランニングコストを含めて検討します
  • 稼働率の確保:日中型に転換しても稼働率が低い(入居者が少ない)場合、日中支援の人件費増加が収支を悪化させます。入居者の確保見通しを先行して確認することが必要です

包括型(年収3,990万円・収支差率6.9%)から日中型(年収5,803万円・収支差率5.1%)への転換は、収入は増えますが収支差率は低下する可能性があります。転換を検討する場合は、稼働率・加算取得・人員配置の3点を徹底的にシミュレーションすることが不可欠です。

GH日中型を新規開設する際の収益性の見方

GH日中型の開業を検討する際、「年収5,803万円」という数字はあくまで稼働率86%・定員15人での平均値です。開業初年度は稼働率が50〜60%程度にとどまることが多く、その場合の年収は3,363〜4,035万円程度になります(試算)。

開業初年度から黒字化するには、稼働率70%以上(定員15人なら10.5人以上)が目安です。稼働率70%に達するまでの期間の資金手当て(運転資金)を事前に確保しておくことが、開業初年度の経営安定に不可欠です。

GH日中型は定員1人当たり収入395万円と高い収入単価ですが、費用も375万円と高い。開業後の収支改善は稼働率の引き上げと重度加算の取得が二大テーマです。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祁サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。定員・収入等は同調査の集計値にもとづきます。GH日中型の開業に関する要件・加算算定の詳細は厚生労働省の指定基準通知をご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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