生活介護の収支差率、中央値が平均を上回る理由

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生活介護の収支差率を、厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)から整理しました。生活介護は7サービスの中で特徴的なパターンを示しています。

令和6年度決算の全体の数字

指標 令和6年度(R6) 令和5年度(R5)
収支差率(表の平均) 6.3% 7.1%
収支差率(中央値) 7.9% 7.7%
調査事業所数 368 —
給与費率(人件費率) 69.1% —
赤字割合(収支差率<0%) 25.3% —

中央値が平均を上回るのは、大規模事業所の収益が低いため

生活介護の令和6年度は、中央値7.9%が表の平均6.3%を上回っています。この逆転が起きるのは、7サービスの中で生活介護と児童発達支援だけです。

この逆転は次の構造を示しています。生活介護では収入の大きな(大規模な)事業所の収支差率が相対的に低く、小規模〜中規模の事業所の収支差率が高い事業所が多い分布になっています。表の平均は収入で加重されるため、大規模事業所の低い収支差率に引っ張られて平均が低く出ます。

放課後等デイサービスは中央値2.7%・平均9.1%という逆のパターン(大規模事業所の収益が高い)で、生活介護とは分布の形が違います。

赤字割合25.3%は7サービス中最も低い

収支差率がマイナスの事業所の割合は25.3%で、7サービスの中で最も低い数字です。4事業所に1事業所が赤字というのは決して少ない割合ではありませんが、就労移行支援(39.9%)・短期入所(41.8%)と比べると大きな差があります。

生活介護で赤字割合が相対的に低い背景には、加算の多さがあると考えられます。重度障害者支援加算・医療連携体制加算・強度行動障害支援者養成研修修了者配置加算など、利用者の状態や職員の資格に応じて取得できる加算の種類が多く、適切に加算を取得することで収入の底上げができます。ただし、これは調査データから直接確認できることではなく、当方の解釈です。

経営主体別の収支差率

以下の数字は当方が調査データから計算したものです(収支差 ÷ 収入)。

経営主体 収支差率(表の値) 事業所数
社会福祉法人(社協を含む) 6.1% 241
NPO法人 8.7% 47
営利法人 5.7% 47
その他 7.1% 33

生活介護では、NPO法人(8.7%)の収支差率が最も高く、営利法人(5.7%)が最も低い結果です。これは他のサービスとは異なるパターンです(グループホームや放デイでは営利法人が上位になることが多い)。ただし、NPO法人・営利法人はそれぞれ47事業所と調査件数が少ないため、個別事業所の影響を受けやすい点に注意が必要です。

社会福祉法人は241事業所と最も多く、全体の65%を占めています。生活介護は社会福祉法人の運営比率が高いサービスです。

区分別の中央値は原典に掲載されておらず、上記は表の値(金額加重の平均)です。

給与費率69.1%、職員配置の厚さが反映される

給与費率(人件費率)69.1%は、7サービスの中で短期入所(69.2%)と並んで最も高い水準です。生活介護は医療的ケアが必要な利用者が多く、看護職員や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職を配置することが多いため、給与費が相対的に高くなります。

生活介護の職種別月給(全国平均・2026年4月時点):

職種 常勤月給(全国平均) 非常勤月給(全国平均)
施設長・管理者 381,410円 207,162円
サービス管理責任者 336,892円 —
看護職員 299,528円 132,192円
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 303,120円 104,162円
生活支援員 258,376円 127,163円

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和7年4月分の給与)

生活介護の事業規模の特徴、定員28人・年収入7,939万円

経営概況調査に回答した事業所の平均を見ると、定員28人・年間収入7,939万円という規模感です(令和6年度決算)。定員1人あたりの年間収入は284万円(月24万円)になります。

就労移行支援(定員14人・年収入2,878万円)と比べると、生活介護は定員と収入ともに約2.7倍の規模です。支援員・看護職員・理学療法士などの専門職を複数配置する体制が標準で、スタッフ数は平均9.76人に上ります。規模が大きいほど職員の体制が整い、収益も安定しやすい構造があります。

一方、定員が大きくなると定員を埋めるための利用者確保が課題になります。WAMの参考指標では生活介護の稼働率は84.2%とされており、定員28人を満たすためには常時23〜24人程度の利用者が必要という計算になります。

生活介護の稼働率と収益の関係

生活介護の収支で大きな変数のひとつは稼働率です。定員28人・年収7,939万円の標準的な規模で、稼働率が10ポイント下がると(84%→74%)、収入は約945万円減少します(定員1人あたり年収284万円×2.8人分相当)。

人件費は短期的に削減が難しいため、稼働率の低下は直接収支差率を圧迫します。一方で加算(重度障害者支援加算・医療連携体制加算など)を取得することで、定員が増えなくても収入を上積みできます。稼働率の管理と加算の活用が収益改善の主な手段です。

生活介護の経営診断で注目すべきポイント

生活介護の経営診断では、稼働率・人件費率・加算の取得状況の3つを最初に確認することを推奨します。赤字割合が7サービス中最も低い25.3%という水準を維持するためには、稼働率を84%以上に保ちながら、加算の取得によって収入の底上げを図ることが有効です。収支差率が全国の中央値7.9%を大きく下回っている場合は、まず稼働率と加算の取得状況を確認するのが早道です。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算・令和7年4月分給与)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標 2023年度決算分。経営主体別の収支差率は当方が原典データから計算したものです。各機関が作成したものではありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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