一人親方の消費税は、2027年分から「3割特例」に変わります。インボイスに登録して課税事業者になった一人親方が、これまで使ってきた「2割特例」は、2026年分(2027年3月に申告する分)で終わります。2027年分と2028年分は、納める消費税が「売上にかかる消費税の3割」になり、税込売上1,000万円の人なら、年約18.2万円から約27.3万円へ、約9.1万円増える計算です。この記事では、3割特例を使える人、計算のしかた、2029年分から先の見通し、そして建設業ならではの注意点(材料を元請から支給されている場合)を、国税庁の原文から整理します。
数字を入れるだけで、年ごとの納める消費税と、毎月の積立額の目安が出る試算ページも用意しています。一人親方のインボイス、2027年から消費税はいくら増える?(試算と元請への値上げ相談シート)
3割特例は、2027年分と2028年分の2年だけの特例です
国税庁は、3割特例を次のように説明しています。
「インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者に係る令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割とすることができる特例です。」
令和9年は2027年、令和10年は2028年です。これまでの2割特例は、国税庁のインボイスQ&A(問115)の説明で「令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」が対象です。個人の課税期間は1月から12月なので、2026年分が最後になります。年ごとに並べると、次のとおりです。
| 年分 | 使える特例 | 申告・納付の期限 | 納める消費税の考え方 |
|---|---|---|---|
| 2026年分 | 2割特例 | 2027年3月31日 | 売上にかかる消費税×20% |
| 2027年分 | 3割特例 | 2028年3月31日 | 売上にかかる消費税×30% |
| 2028年分 | 3割特例 | 2029年3月31日 | 売上にかかる消費税×30% |
| 2029年分から | 特例なし | 翌年3月31日 | 簡易課税か本則課税で計算 |
個人事業者の消費税の申告期限は、翌年の3月31日です。2027年に稼いだ分の消費税を、2028年の3月までに納める、という順番になります。3割特例で負担が増えるのは2027年の1月からですが、実際に払うのは2028年の春です。そのぶん、気づくのが遅れやすいところです。
3割特例を使えるのは、登録をきっかけに課税事業者になった個人です
国税庁が挙げている主な条件は、次のとおりです。
- 個人事業者であること(法人は使えません)
- インボイス発行事業者の登録を受けていること
- 基準期間(使う年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること。2027年分なら2025年、2028年分なら2026年の課税売上高を見ます
- 特定期間(前の年の1月〜6月)の課税売上高も1,000万円以下であること(給与などの支払額で判定することもできます)
このほか、国税庁の判定の流れ図では、届出で課税期間を短くしている場合、相続で課税事業者になる課税期間、高額な資産を仕入れたことで課税事業者になる年などは、3割特例を使えない場合として挙げられています。細かい条件は、国税庁のインボイスQ&A(問115-2)で確かめてください。
手続きについて、国税庁の「令和8年度税制改正特集 3割特例(PDF)」は「事前に届出等の必要なく、申告書の所定欄に適用を受ける旨を記載するだけで適用可能」としています。2割特例と同じく、前もって何かを出しておく必要はありません。
「課税売上高」は、税込ではなく税抜の金額です
課税事業者の課税売上高は、消費税を除いた金額で見ます。税込で1,000万円の売上なら、税抜は約909万円なので、1,000万円以下に入ります。税込で1,100万円を超えるあたりから、2年後の特例の条件から外れることがあります。売上が伸びている人ほど、2年前の数字を確かめておくと安心です。
計算は「売上にかかる消費税×3割」だけです
国税庁は、3割特例の計算を次の形で示しています。
売上げの消費税額 - 売上げの消費税額 × 70% = 納付する税額
(出典:国税庁「令和8年度税制改正特集 3割特例(PDF)」Q1)
つまり、売上にかかる消費税の30%を納める、ということです。仕入れや経費でいくら消費税を払ったかは関係ありません。受け取ったインボイスを保存しておく必要もなく、売上が分かれば計算できます。
売上にかかる消費税は、税込の売上に「10/110」をかけると出ます(この記事では、国と地方を合わせた消費税10%で計算しています。端数処理はしていません)。
2割特例と比べると、納める消費税は1.5倍になります
税込の売上ごとに、2026年分(2割特例)と2027年分(3割特例)を比べると、次のとおりです(どれも試算です)。
| 1年間の売上(税込) | 売上にかかる消費税 | 2026年分(2割特例) | 2027・2028年分(3割特例) | 増える額(年) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 272,727円 | 54,545円 | 81,818円 | 27,273円 |
| 500万円 | 454,545円 | 90,909円 | 136,364円 | 45,455円 |
| 800万円 | 727,273円 | 145,455円 | 218,182円 | 72,727円 |
| 1,000万円 | 909,091円 | 181,818円 | 272,727円 | 90,909円 |
増え方は、ちょうど1.5倍です。売上1,000万円の人なら、毎月に直すと、2026年分は約1.5万円、2027年分からは約2.3万円を取っておく計算になります。消費税は年に一度まとめて払うので、入金のたびに別の口座へ分けておくと、3月に慌てずに済みます。
2029年分からは、簡易課税か本則課税になります
3割特例が終わると、特例はなくなります。そこから先の計算は、簡易課税か、本則課税(一般課税)のどちらかです。
簡易課税:建設業は、原則として第3種(みなし仕入率70%)
簡易課税は、売上にかかる消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」をかけた額を、仕入れの消費税とみなして差し引く方法です。国税庁のタックスアンサー(No.6509)では、建設業は第3種で、みなし仕入率は70%です。
第3種なら、納める消費税は「売上にかかる消費税×30%」で、3割特例と同じ額になります。売上1,000万円(税込)の人なら、年約27.3万円です。
簡易課税を使うには、2年前の課税売上高が5,000万円以下であることなどが条件で、原則として、使う年の前の年までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出しておく必要があります。ただし、3割特例を使った翌年に移る場合について、国税庁は次のように説明しています。
「3割特例の適用を受けた翌課税期間であれば、その申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能です。」
2028年分で3割特例を使った人なら、2029年分の申告期限(2030年3月31日)までに届出書を出せば、2029年分から簡易課税で申告できる、ということです。
本則課税:経費の消費税を実際に差し引く
本則課税は、売上にかかる消費税から、仕入れや経費で実際に払った消費税を差し引く方法です。受け取ったインボイスの保存が必要です。材料を自分で仕入れていて経費が大きい人や、車両などの大きな買い物をした年は、本則課税のほうが少なくなることもあります。どちらを選ぶかは、実際の数字で比べて決めることになります。
材料を元請から支給されている人は、第4種になることがあります
ここが、建設業の一人親方にとって、いちばん見落としやすいところです。
建設業は原則として第3種ですが、国税庁の通達(消費税法基本通達13-2-7)は、次のような事業を第四種にあたるとしています。
「他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工等を施して、当該加工等の対価を受領する役務の提供又はこれに類する役務の提供をいう。なお、当該役務の提供を行う事業は第四種事業に該当することとなる。」
元請から支給された材料を使って、手間(施工)だけを請けている場合は、これにあたることがあります。第4種のみなし仕入率は60%なので、納める消費税は「売上にかかる消費税×40%」です。売上1,000万円(税込)なら年約36.4万円で、2026年分の2割特例(約18.2万円)の2倍になります。
| 売上1,000万円(税込)の場合 | 納める消費税(年・試算) |
|---|---|
| 2026年分(2割特例) | 181,818円 |
| 2027・2028年分(3割特例) | 272,727円 |
| 2029年分から・簡易課税(第3種・材料を自分で仕入れる) | 272,727円 |
| 2029年分から・簡易課税(第4種・材料を元請から支給) | 363,636円 |
第3種か第4種かは、契約の中身や、実際の材料の出どころで決まります。同じ人でも、現場によって違うこともあります。3割特例のあいだは区分に関係なく30%なので気づきにくいのですが、2029年分から差が出るのです。迷うときは、税務署や税理士に確かめてください。
免税のままでいる人は、元請の負担が少しずつ増えていきます
インボイスに登録せず、免税事業者のままでいる人は、消費税を納めません。そのかわり、元請は、あなたへの支払いに含まれる消費税を、少しずつ差し引けなくなります。国税庁の説明では、免税事業者などからの仕入れで差し引ける割合は、次のように下がっていきます。
| 期間 | 元請が差し引ける割合 | 支払い600万円(税込)で、元請が差し引けない額(年・試算) |
|---|---|---|
| 2026年9月まで | 80% | 109,091円 |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% | 163,636円 |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% | 272,727円 |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% | 381,818円 |
| 2031年10月から | 0% | 545,455円 |
ここで、1つ面白い一致があります。2026年10月から2028年9月の「70%」の期間に元請が差し引けなくなる額は、あなたが登録して3割特例で納める額と、ちょうど同じになります(売上にかかる消費税の30%)。登録しても、しなくても、この額の負担が、あなたか元請のどちらかに出る、ということです。元請と取引の条件を話し合うときに、この関係を知っておくと、話がかみ合いやすくなります。
元請に消費税分の話し合いをお願いするときの頼み方と話す順番は、一人親方の消費税分の値上げは、数字を1枚にして、そのまま頼む。元請との交渉の順番と国のQ&Aで詳しく書きました。国は、免税事業者から課税事業者になった取引先について、新たに納める消費税分を「明示的に協議することなく取引価格を据え置くこと」は問題となるおそれがある、とQ&Aで示しています(出典:財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」)。
よくある質問
建設業の第3種なら、3割特例と簡易課税は同じ額です
建設業で第3種(みなし仕入率70%)なら、どちらも売上にかかる消費税の30%で、同じ額です。第4種(60%)にあたる人は、3割特例のほうが少なくなります。3割特例は、申告書に適用を受ける旨を書いて使う特例なので、使わずに簡易課税(事前の届出が必要)や本則課税で申告することもできます。どれにするかは、条件と届出によって変わります。
3割特例を使うのに、前もっての届出は要りません
国税庁は「事前に届出等の必要なく、申告書の所定欄に適用を受ける旨を記載するだけで適用可能」としています。
2年前の課税売上高が1,000万円を超えた年は、3割特例を使えません
2027年分は2025年、2028年分は2026年の課税売上高(税抜)で判定します。その場合は、簡易課税か本則課税で計算することになります。
法人成りした一人親方は、3割特例を使えません
国税庁は、3割特例を「個人事業者に係る」特例と説明しています。法人は対象ではありません。
まず、自分の数字で一度試算してみてください
3割特例は、計算そのものは単純です。売上にかかる消費税の30%。ただ、2026年分、2027・2028年分、2029年分からと、3段階で負担が変わり、建設業では材料の扱いで区分も変わります。自分の売上で一度数字にしておくと、毎月いくら取っておけばいいかが見えてきます。
売上と材料の扱いを選ぶだけで、2026年から2031年までの年ごとの納める消費税と、毎月の積立額の目安が出るページを作りました。入力した数字は、その端末の中だけで計算し、どこにも送りません。
▶ 一人親方のインボイス、2027年から消費税はいくら増える?(試算と元請への値上げ相談シート)
この記事の数字は、国と地方を合わせた消費税10%で計算した概算です(端数処理なし)。個別の税額や、どの方式を選ぶかの判断は、税務署や税理士に確かめてください。出典:国税庁「令和8年度 税制改正特集」と、その中の「3割特例(PDF)」、国税庁「2割特例 特設ページ」、国税庁「インボイスQ&A 問115」、国税庁「タックスアンサーNo.6509 簡易課税制度の事業区分」、国税庁「消費税法基本通達 第13章 第2節」、財務省ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(いずれも2026年9月27日確認)。


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