就労継続支援B型の工賃は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額を、利用者に支払うものです。基準(平成18年厚生労働省令第171号)第201条で、1か月あたりの工賃の平均額は3,000円を下回ってはならないこと、工賃の水準を高めるよう努めること、年度ごとに目標と前年度の実績を利用者に知らせて都道府県に報告することが決まっています。さらに、第202条で準用する第192条第6項により、工賃の支払いに、原則として事業所が受け取る給付費(自立支援給付)を充てることはできません。
この記事では、この4つの決まりを条文の原文で確かめ、あわせて、基本報酬の区分を決める「平均工賃月額」の計算式が令和6年度から変わった点を、仮の数字で計算して比べます。毎年やることの一覧も最後に置きました。
工賃は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額を支払う
第201条第1項は、工賃の額の決め方を次のように定めています。「利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第201条第1項))
つまり、作業で得た売上から、材料費や外注費など生産活動に必要な経費を引いた残りが、工賃として利用者に配る額です。生産活動で利益が出たのに事業所の運営費に回したり、逆に経費を過大に積んで工賃を小さくしたりすることは、この条文の考え方に合いません。そのため、生産活動のお金は、事業所の運営のお金と分けて管理する必要があります。高知市の集団指導資料は、会計の区分について次のように示しています。「※障害の就労系事業等における生産活動にかかる収入や工賃等の支出については、事業会計とは別に区分してください。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け) p.25)
会計の区分そのものも、基準で求められています。第41条は居宅介護の条文ですが、B型には第202条で準用されます。「指定居宅介護事業所ごとに経理を区分するとともに、指定居宅介護の事業の会計をその他の事業の会計と区分しなければならない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第41条)) 細かい会計の方法(どの科目に入れるか、按分のしかた)は、法人の種類や指定権者(都道府県・市)の案内によって違うため、所在地の案内で確かめてください。
1か月の工賃の平均は、3,000円を下回ってはならない
第201条第2項が、工賃の平均額の下限を決めています。「前項の規定により利用者それぞれに対し支払われる一月当たりの工賃の平均額(第四項において「工賃の平均額」という。)は、三千円を下回ってはならない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第201条第2項))
下限は「平均」についての決まりで、利用者一人ひとりに3,000円以上を払うという決まりではありません。国の解釈通知は、利用日数がとても少ない利用者がいる場合の扱いも書いています。「ただし、一月あたりの利用者の利用日数が極端に少ない場合については、都道府県知事の判断により、当該影響を排除した計算方法により算出した工賃の平均額をもって本規定を適用することが可能であること。」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.199) また、都道府県(指定都市・中核市)は、「前年度の工賃の平均額が月額3,000円を下回る場合」、工賃を向上させるための指導を行うとされています(この部分は解釈通知の原文がページをまたぐため、前半だけを引用しました)。
工賃は、原則として給付費(自立支援給付)から払わない
工賃の支払いに、事業所が国保連から受け取る給付費を充てることは、原則としてできません。この決まりは、就労継続支援A型の第192条第6項にあり、B型には第202条で準用されています。条文の原文は次のとおりです。「賃金及び第三項に規定する工賃の支払いに要する額は、原則として、自立支援給付をもって充ててはならない。ただし、災害その他やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第192条第6項))
A型の条文なので「賃金」という言葉が入っていますが、B型では、第202条で次のように読み替えます。「第百九十二条第六項中「賃金及び第三項に規定する工賃」とあるのは「第二百一条第一項の工賃」」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第202条)) 読み替えると、「第201条第1項の工賃の支払いに要する額は、原則として、自立支援給付をもって充ててはならない」となります。
なお、国の解釈通知のB型の項(準用の説明)には、第192条第6項が書かれていません。しかし、e-Gov法令検索で令和7年10月1日施行の現行の条文を確認すると、第202条には第192条第6項が入っています。解釈通知は条文の説明で、決まりそのものは条文なので、この記事では条文を優先しています。
| 決まり | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 工賃の額の決め方 | 第201条第1項 | 生産活動の収入 − 生産活動に必要な経費 = 工賃として支払う額 |
| 平均の下限 | 第201条第2項 | 1か月あたりの工賃の平均額は3,000円以上 |
| 水準を上げる努力 | 第201条第3項 | 工賃の水準を高めるよう努める |
| 目標と実績の通知・報告 | 第201条第4項 | 年度ごとに目標を決め、目標と前年度の平均額を利用者に通知し、都道府県に報告する |
| 給付費を充てない | 第192条第6項(第202条で準用) | 工賃の支払いに、原則として自立支援給付を充てない(災害などやむを得ない理由がある場合を除く) |
| 会計の区分 | 第41条(第202条で準用) | 事業所ごとに経理を区分し、事業の会計をほかの会計と区分する |
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)。表は条文を当方が要約したものです。
目標工賃と前年度の実績は、毎年、利用者に知らせて都道府県に報告する
第201条第4項は、毎年度の手続きを決めています。「年度ごとに、工賃の目標水準を設定し、当該工賃の目標水準及び前年度に利用者に対し支払われた工賃の平均額を利用者に通知するとともに、都道府県に報告しなければならない。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第201条第4項))
解釈通知も同じことを書き、届出の方法は別の課長通知を見るよう示しています。「また、指定就労継続支援B型事業者は、毎年度、当該年度における目標工賃と、前年度における工賃実績を利用者に通知するとともに、都道府県(指定都市にあっては都道府県及び指定都市、中核市にあっては都道府県及び中核市)に届け出なければならないこと。」(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.200) 報告の時期や様式は都道府県ごとに案内されているので、所在地の案内で確かめてください。
利用者への通知は、書いて渡すだけでなく、分かる形で伝えることが大切です。数字だけの紙ではなく、「今年は1か月あたり平均○円を目指します」「去年の平均は○円でした」と、ふりがなや図を添えて説明すると、利用者が自分の工賃の見通しを持てます。通知した日と方法は、あとで確かめられるように記録しておきます。
基本報酬の区分に使う平均工賃月額は、令和6年度から平均利用者数で割る
B型の基本報酬は、平均工賃月額が高いほど高い区分になる報酬体系があります。令和6年度の報酬改定では、その差が広げられました。「工賃の更なる向上のため、平均工賃月額に応じた報酬体系について、平均工賃月額が高い区分の基本報酬の単価を引上げ、低い区分の基本報酬の単価を引下げる。」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.52)
あわせて、平均工賃月額の計算式も変わりました。改定前は、工賃総額を「各月の工賃支払対象者の総数」で割っていました。「工賃総額(イ)÷工賃支払対象者の総数(ウ)により1人当たり平均工賃月額を算出」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.54)(「(ウ)」は原文のまま。前の項目の「ア」を指すと読めます)。改定後は、開所日1日あたりの平均利用者数で割ります。
- 「前年度における工賃支払総額を算出」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.55)
- 「前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.55)(開所日1日あたりの平均利用者数)
- 「前年度における工賃支払総額(ア)÷前年度における開所日1日当たりの平均利用者数(イ)÷12月により、1人当たり平均工賃月額を算出」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.55)
改定の理由として、概要は、利用日数の少ない人を多く受け入れる事業所があることを挙げています。「事業所の中には、障害特性等により利用日数が少ない方を多く受け入れる場合があることを踏まえ、通知を改正し、基本報酬を算定する際の平均工賃月額の算定方法について、平均利用者数を用いた新しい算定式を導入する。」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.54)
仮の数字で、2つの式を比べます。前年度の工賃支払総額が360万円、登録している利用者25人が毎月工賃を受け取り、延べ利用者数が4,800人、年間の開所日数が240日の事業所とします。
| 改定前の式 | 改定後の式 | |
|---|---|---|
| 割る数 | 各月の工賃支払対象者の総数:25人×12か月=300人 | 開所日1日あたりの平均利用者数:4,800人÷240日=20人 |
| 計算 | 360万円÷300人 | 360万円÷20人÷12か月 |
| 平均工賃月額 | 12,000円 | 15,000円 |
この例では、1日に来る人数(20人)が登録している人数(25人)より少ないため、改定後の式のほうが平均工賃月額が高くなります。毎日は来ない利用者が多い事業所ほど、この差は大きくなります。反対に、ほぼ全員が毎日来る事業所では、2つの式の差は小さくなります。数字は仮のもので、実際の区分の判定は、報酬の通知(留意事項通知)と指定権者の案内に従ってください。概要は、改定前の式の除外の決まり(月の途中の利用開始・入院など)について、「※現行の②・③の算定方法は廃止する。」としています。
工賃目標を達成した場合の加算も新設されました。「目標工賃達成指導員配置加算の対象となる指定就労継続支援B型事業所等が各都道府県において作成される工賃向上計画に基づき、自らも工賃向上計画を作成するとともに、当該計画に掲げた工賃目標を達成した場合に加算する。」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.54) 概要では、この目標工賃達成加算は1日10単位です。
工賃の扱いを誤ると、虐待に当たることがある
国の虐待防止の手引きは、施設・事業所の職員による虐待の例に、賃金を渡さないことを挙げています。「年金や賃金を管理して渡さない。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.14)(経済的虐待の例)。工賃を理由に利用者を威圧することも、心理的虐待の例として挙げられています。「「給料もらえないですよ」「好きなもの買えなくなりますよ」などと威圧的な態度を取る。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.12)
作業を急がせたいとき、つい「これができないと工賃が減るよ」と言ってしまうことは、どの事業所でも起こりえます。工賃は利用者の権利であり、指導の道具にしないことを、職員全員で確かめておきます。また、手渡しの場合は、受け取った確認(署名など)を残し、支払った職員とは別の職員が確かめると、誤りや疑いを防げます。
毎年・毎月やることは、6つにまとめられる
ここまでの決まりを、やることの一覧にしました。時期は目安で、報告の時期や様式は都道府県の案内に従ってください。
| いつ | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 毎月 | 生産活動の収入と経費から工賃を計算し、支払う。受け取りの確認を残し、別の職員が確かめる | 第201条第1項 |
| 毎月 | 生産活動の収入・支出を、事業の会計とは別に記録する | 第41条(準用)、高知市の資料 |
| 年度の初め | 前年度の工賃の平均額を出し、3,000円を下回っていないか確かめる | 第201条第2項 |
| 年度の初め | 今年度の目標工賃を決め、目標と前年度の実績を利用者に通知し、都道府県に報告する | 第201条第4項、解釈通知 |
| 報酬の算定時 | 平均工賃月額を新しい式(工賃支払総額÷平均利用者数÷12)で計算し、基本報酬の区分を確かめる | 令和6年度報酬改定の概要 |
| いつも | 工賃を理由に利用者を急がせたり脅したりしない。工賃の支払いに給付費を充てない | 手引き、第192条第6項(準用) |
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)、厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日)、高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け)、厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)。表は当方が整理したものです。
職員研修で工賃の決まりを共有する方法
工賃の決まりは、管理者やサービス管理責任者だけが知っていても、毎日の作業の声かけで崩れることがあります。当方の「法定研修・訓練キット(就労継続支援B型版)」には、B型だけのテーマ「生産活動の安全と工賃」があり、この記事の条文を使った研修資料・確認テスト・受講記録を作れます。記録様式の「工賃の支払いの確認」(2人目の確認者つき)も印刷できます。無料版では虐待防止のテーマを、記録や印刷まですべて使えます。
この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(最終改正 令和7年3月31日)、令和6年度報酬改定の概要、国の虐待防止の手引き、高知市の集団指導資料の原文を確認して書いています(確認日:2026年9月27日)。報酬の区分の細かい判定、報告の時期・様式は、指定権者(都道府県・市)の案内で確認してください。作成:fufumumu_design
この記事の出典
- 障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)
- 高知市「令和7年度 集団指導資料」(高知市指定障害サービス事業所向け)
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日)
- 厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)
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