ITパスポートのストラテジ系を攻略する。文系社会人が得点源にするための分野別対策

資格

ITパスポートのストラテジ系は35問で、3分野のうち最も問題数が多い分野です(令和8年度・IPA「試験の構成」ページ)。ビジネス経験のある文系社会人であれば、経営戦略・マーケティング・法務の知識を活かして得点源にしやすい分野です。この記事では、ストラテジ系の3分野の攻略ポイントと、勉強の優先順位を整理します。

ストラテジ系は35問・合格に必要な点数は300点以上

ITパスポートは100問出題されますが、採点対象は92問です(IPA公式)。3分野の問題数は以下のとおりです(令和8年度・IPA「試験の構成」ページ)。

分野 問題数(令和8年度) 合格基準(分野別)
ストラテジ系 35問 300点以上(1,000点満点)
マネジメント系 19問 300点以上(1,000点満点)
テクノロジ系 46問 300点以上(1,000点満点)

合格基準は「総合評価点600点以上、かつ分野別各300点以上」です(1,000点満点・IPA公式)。ストラテジ系の足切りラインは300点であり、35問のうちおおよそ30%程度を正解すれば足切りを回避できる水準とされています。ただし、ストラテジ系で高得点を取れると総合点を底上げできるため、文系社会人にとっては積極的に得点を狙う分野です。

ストラテジ系は3つの分野で構成されている

ストラテジ系は、IPAシラバスVer.6.5上で次の3つの大分類に分かれています(IPA公式・シラバスVer.6.5)。

大分類 中分類の例
企業と法務 企業活動(会社の仕組み・財務)、法務(知的財産権・セキュリティ関連法規・個人情報保護・労働法規)
経営戦略 経営戦略マネジメント(SWOT・BSC・KPI等)、技術戦略マネジメント(イノベーション)、ビジネスインダストリ(マーケティング・e-ビジネス)
システム戦略 情報システム戦略(ERP・SCM・CRM等)、業務プロセス(BPR・RPA)、ソリューションビジネス・システム活用促進

3分野の中では「企業と法務」と「経営戦略」が出題の中心です。「システム戦略」はIT系のシステム導入の文脈で出ることが多く、IT未経験者が用語に戸惑いやすい単元が含まれます。

企業と法務の攻略ポイント

知的財産権は4種類と保護期間を押さえる

知的財産権は出題頻度が高い単元です。著作権・特許権・商標権・意匠権の4種類を区別できることが基本です。

種類 保護対象 保護期間 登録の要否
著作権 文章・音楽・プログラム・データベース等の創作物 著作者の死後70年 不要(創作した時点で発生)
特許権 自然法則を利用した技術的なアイデア(発明) 出願から20年 必要(特許庁に出願)
商標権 商品・サービスの名称・ロゴ等 登録から10年(更新可) 必要(特許庁に出願)
意匠権 製品のデザイン・外観 登録から25年 必要(特許庁に出願)

プログラム(ソフトウェア)は著作権で保護されます(登録不要)。一方、ビジネスモデル特許のようにアイデアとして特許を取得することもあります。この2つは混同しやすいため注意が必要です。

個人情報保護法の基本概念を整理する

個人情報保護法は法改正のたびに出題内容が更新される単元です。「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」の用語の違い、取得・利用・第三者提供の条件を整理しておくことが対策の中心です。

  • 個人情報:生存する個人に関する情報で、氏名・生年月日等により特定の個人を識別できるもの。
  • 個人データ:個人情報データベース等を構成する個人情報(検索・整理が容易な形にまとめたもの)。
  • 要配慮個人情報:人種・病歴・犯罪歴等、本人の権利利益を侵害するおそれが特に大きいもの。取得に本人の同意が必要。

セキュリティ関連法規は法律の名前と内容の対応で覚える

情報セキュリティ関連の法規は、法律の名前と保護対象・禁止行為の対応を覚えることが対策の中心です。

法律名 主な内容
不正アクセス禁止法 正当な権限を持たない者がコンピューターにアクセスすることを禁止する
サイバーセキュリティ基本法 国のサイバーセキュリティ施策の基本方針を定める(2015年施行)
不正競争防止法 営業秘密の侵害・不正開示を禁止する。競業他社への情報漏洩等が対象
刑法(不正指令電磁的記録関係) コンピューターウイルスの作成・提供・実行を処罰する(ウイルス作成罪)

経営戦略の攻略ポイント

SWOT分析とBSCは図と用語を対で押さえる

経営戦略の分野では分析フレームワークが頻出です。SWOT分析とBSC(バランスト・スコアカード)は特に出題実績が多い単元です。

フレームワーク 概要 試験でのポイント
SWOT分析 強み(S)・弱み(W)・機会(O)・脅威(T)の4要素で現状を整理する 内部環境(S・W)と外部環境(O・T)の区別。機会と脅威は外部環境であることを押さえる
BSC(バランスト・スコアカード) 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点でKPIを設定・管理する 4つの視点の名称とそれぞれの評価軸。財務が最終的な目標という位置づけ
KPI・KGI KGI(最終目標)を達成するための中間指標がKPI(重要業績評価指標) KGIとKPIの関係性。KPIはKGIの達成度合いを測る中間指標

マーケティングの4Pと顧客関連概念を整理する

マーケティングの単元では「4P」と「顧客関連の指標・概念」がよく出ます。

  • 4P:Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)の4要素でマーケティング戦略を組み立てる考え方。
  • CRM(顧客関係管理):顧客情報を一元管理し、顧客との長期的な関係を維持・強化する仕組み。
  • LTV(顧客生涯価値):1人の顧客が取引期間を通じてもたらす利益の総額。
  • SEO(検索エンジン最適化):Webサイトが検索結果の上位に表示されるよう改善する施策。SEM(検索エンジンマーケティング)はSEOと広告を含む概念。

ストラテジ系で出る計算問題の基本

ストラテジ系には計算問題が含まれます。出題される主な計算は次のとおりです。

指標名 計算式 覚え方のポイント
ROI(投資利益率) (利益 ÷ 投資額)× 100(%) Returnは「返ってきたもの(利益)」、Investmentは「投入したもの(投資額)」
売上総利益率(粗利率) (売上総利益 ÷ 売上高)× 100(%) 売上総利益 = 売上高 − 売上原価
損益分岐点売上高 固定費 ÷(1 − 変動費率) 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
生産性 産出量 ÷ 投入量 労働生産性なら「付加価値額 ÷ 従業員数」

計算の難易度自体は高くなく、公式と変数の意味を正確に理解していれば対応できます。ROIと損益分岐点は特に出題実績が多いため、例題を1〜2問ずつ解いて感覚を掴んでおくことをおすすめします。

システム戦略の攻略ポイント

システム戦略の分野は、IT未経験者には用語が多くなじみにくい単元です。ただし、出題は「システム導入の場面でどの手法を選ぶか」という実務的な問題が中心で、用語の意味を一対一で覚えることで対応できます。

用語 意味 試験での出方
ERP(統合基幹業務システム) 会計・人事・在庫・購買等の基幹業務を統合したシステム 導入の目的(情報の一元管理・業務の効率化)が問われることが多い
SCM(サプライチェーン管理) 調達・製造・物流・販売を含むサプライチェーン全体を最適化する仕組み 在庫削減・リードタイム短縮が目的として出題される
CRM(顧客関係管理) 顧客情報を一元管理し、顧客との関係を強化する仕組み(経営戦略と共通) 経営戦略の文脈でも出題されるため、定義を正確に押さえる
BPR(業務プロセス再設計) 既存の業務プロセスを根本から見直し・再設計する取り組み 「既存のやり方にとらわれず根本から設計する」がポイント
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション) ルールが明確な定型業務をソフトウェアロボットで自動化する技術 「定型作業の自動化」という目的で選択肢として出る

文系が得点しやすい単元と注意が必要な単元

ビジネス経験のある文系社会人にとって、ストラテジ系の単元は有利・不利がはっきりしています。

単元 文系社会人にとっての難易度 理由
法務(著作権・個人情報) 得点しやすい 言語的な理解が中心で、ITの知識が少なくても対応できる
マーケティング(4P・CRM) 得点しやすい 営業・マーケ経験があれば既知の概念が多い
経営戦略フレームワーク(SWOT・BSC) やや得点しやすい 用語の暗記が中心・論理的な概念で理解しやすい
財務計算(ROI・損益分岐点) 普通〜やや注意が必要 公式を覚えれば対応可・計算自体は難しくない
システム戦略(ERP・SCM・BPR) やや注意が必要 IT系のシステム用語が多く、初見では意味が掴みにくい

ストラテジ系の勉強の進め方

最初に「企業と法務」から入ると土台が安定する

法律・制度系は内容が安定しており、一度理解すると忘れにくい単元です。個人情報保護法・知的財産権・セキュリティ法規の3本柱から始めることで、ストラテジ系の基礎を固めることができます。

次に経営戦略のフレームワークを整理する

SWOT・BSC・KPI・マーケティング4Pは出題実績が高く、定義を正確に覚えることが得点に直結します。フレームワークの名前と「何のために・何を整理する手法か」という目的をセットで覚えることが効率的です。

計算問題は例題1〜2問を解いてから次に進む

ROIと損益分岐点は、公式を見ただけでは本番で使いにくい単元です。例題を1〜2問解いて変数の意味を確認してから、次の単元に進む方が確実に定着します。

システム戦略の用語は「導入の目的」とセットで覚える

ERP・SCM・BPR等は単語だけ覚えても問題が解きにくいです。「ERPは基幹業務の一元管理のために導入する」「BPRは既存プロセスに縛られず根本から再設計する」というように、導入の目的や特徴とセットで覚えることが効率的です。

よくある疑問

ストラテジ系は業種・職種によって有利不利がありますか。

あります。営業・経営企画・人事・法務などビジネス職に就いている人は、法務や経営戦略の内容が業務と重なるため得点しやすい傾向があります。技術職・エンジニアの場合はシステム戦略寄りに馴染みがあり、法務系は改めて勉強が必要になることがあります。

ストラテジ系だけに時間をかけすぎてもいいですか。

合格には3分野すべてで300点以上が必要なため、ストラテジ系だけを集中的に学習してテクノロジ系を後回しにすると足切りのリスクが生じます。テクノロジ系の対策と並行して進めることをおすすめします。テクノロジ系の分野別対策はテクノロジ系攻略法でまとめています。

ストラテジ系の法律系の問題は、法律の条文を読む必要がありますか。

条文を原文で読む必要はありません。過去問・参考書で出題された内容の範囲で、概念と例を理解すれば対応できます。ただし、個人情報保護法のように頻繁に出題される法律については、用語の正確な定義(「個人情報」と「個人データ」の違い等)を参考書レベルで押さえることをおすすめします。

マネジメント系との違いは何ですか。

ストラテジ系は「経営・事業の戦略・方針レベル」、マネジメント系は「プロジェクトマネジメントやシステムの開発・保守の管理レベル」を扱います。マネジメント系についてはマネジメント系攻略法をあわせて参照してください。

ストラテジ系で出題される損益分岐点・ROIの計算問題は、公式と例題を計算問題の解き方で整理しています。

まとめ

ITパスポートのストラテジ系は35問(令和8年度)で、文系社会人にとって得点源にしやすい分野です。

  • 企業と法務:知的財産権4種・個人情報保護法の用語・セキュリティ関連法規の名称と内容
  • 経営戦略:SWOT・BSC・KPIのフレームワーク・マーケティング4P・基本的な財務計算(ROI・損益分岐点)
  • システム戦略:ERP・SCM・BPR・RPAの「導入目的」とセットで用語を覚える
  • 勉強の順番:法務から入り→経営戦略フレームワーク→計算問題→システム戦略の順が取り組みやすい

テクノロジ系の対策はテクノロジ系攻略法、試験全体のガイドはITパスポート試験の全体ガイドを参照してください。難易度全体についてはITパスポートの難易度でも整理しています。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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