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移動式クレーンのジブ起伏・アウトリガー張り出し・旋回装置の多くは油圧装置で動かされています。試験の「原動機及び電気に関する知識」科目では油圧装置の仕組みも出題されます。ここでは油圧装置の基本構成・主要部品の役割・作動油の特性を整理します。
油圧装置の基本構成
移動式クレーンの油圧システムは主に以下の部品で構成されています。
| 部品名 | 役割 |
|---|---|
| 油圧ポンプ | エンジン(またはPTO)の回転動力を油圧(流体の圧力)に変換する |
| 油圧シリンダ | 油圧をジブの起伏・アウトリガーの張り出しなど直線運動に変換する |
| 油圧モータ | 油圧を旋回・走行など回転運動に変換する |
| コントロールバルブ(方向切換弁) | 作動油の流れる方向を切り換えて動作方向を制御する |
| リリーフバルブ(安全弁) | 回路内の圧力が設定値を超えると開いて油をタンクに戻し、過圧を防ぐ |
| 作動油タンク | 作動油を貯蔵する |
| フィルタ | 作動油の不純物(金属粉・ゴミ)を取り除く |
油圧ポンプの種類
移動式クレーンに使われる油圧ポンプの主な種類は以下のとおりです。試験ではポンプの種類と特徴の組み合わせが問われます。
| ポンプの種類 | 特徴 |
|---|---|
| ギヤポンプ | 2枚の歯車の噛み合いで油を送る。構造が簡単で安価。低圧・中圧向き |
| ベーンポンプ | 回転子の溝に収まったベーン(羽根)が摺動して油を送る。脈動が少なく静か |
| プランジャポンプ(ピストンポンプ) | プランジャ(ピストン)の往復運動で油を送る。高圧・大容量向き。効率が高い |
大型移動式クレーンの高圧回路にはプランジャポンプ(ピストンポンプ)が多く使われます。
リリーフバルブ(安全弁)の役割
リリーフバルブは油圧回路の「安全弁」です。回路内の圧力が設定値(リリーフ圧)を超えると自動的に開き、余分な油をタンクに戻します。これにより機器の損傷や配管の破裂を防ぎます。
試験では「リリーフバルブの目的は回路内の最高圧力を一定以下に保つこと」という知識が問われます。「圧力を上げるための装置」ではなく「圧力が上がりすぎるのを防ぐ装置」であることを正確に押さえてください。
作動油の特性と管理
油圧装置の動力伝達には「作動油(hydraulic fluid)」が使われます。作動油の特性は以下の点が試験で問われます。
| 特性 | 内容 |
|---|---|
| 粘度 | 温度が高いと粘度が低くなり、低いと粘度が高くなる。適正粘度を維持することが重要 |
| 引火点 | 作動油には引火点が高い(引火しにくい)ものが使われる。引火点が低いと火災リスクが上がる |
| 潤滑性 | 金属部品を潤滑して摩耗を防ぐ |
| 防錆性 | 金属部品の錆を防ぐ |
「気温が低い状態で作業を開始すると作動油の粘度が高くなり、油圧機器の動作が重くなる」という現象は実際の作業でも経験される問題です。暖機運転(アイドリング)で作動油を温めてから作業することが重要です。
油圧シリンダの構造
ジブの起伏やアウトリガーの張り出しに使われる油圧シリンダは、「単動式」と「複動式」があります。
| 種類 | 仕組み | 用途例 |
|---|---|---|
| 単動式 | 油圧で一方向に動き、戻りは重力またはスプリング | アウトリガーの下げ動作等 |
| 複動式 | 油圧で両方向に動かせる(伸び・縮みの両方を油圧で制御) | ジブの起伏・テレスコピックジブの伸縮 |
試験でよく問われるポイントまとめ
- 油圧ポンプ:エンジン動力を油圧に変換。ギヤポンプ・ベーンポンプ・プランジャポンプの3種類
- リリーフバルブ:回路内の最高圧力を一定以下に保つ安全弁
- 作動油の粘度は温度が高いと低くなり、低いと高くなる
- 油圧シリンダは直線運動(起伏・張り出し)、油圧モータは回転運動(旋回・走行)に使う
PTO(パワーテイクオフ)の役割
移動式クレーンの多くはトラックまたは専用キャリアに搭載されており、走行用エンジンからクレーン動力を取り出す装置として「PTO(パワーテイクオフ)」が使われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| PTOとは | 走行用エンジンの動力をクレーン動作(油圧ポンプ駆動)に分岐させる装置 |
| クレーン作業時の動力源 | PTO経由でエンジン動力→油圧ポンプ→油圧装置→各作動部 |
| 走行時のクレーン動作 | 走行中はPTOを切ってクレーン動作を停止する |
積載形トラッククレーンはエンジン1基でPTOを介してクレーンを動かしますが、オールテレーンクレーンやラフテレーンクレーンの一部は独立したエンジンを持つ場合もあります。
油圧回路の圧力単位と計算
油圧の圧力はMPa(メガパスカル)またはkPa(キロパスカル)で表します。試験では圧力の単位変換や圧力×面積=力の計算が出ることがあります。
圧力(Pa)= 力(N)÷ 面積(m²)
例:断面積10cm²(= 0.001m²)のシリンダに10MPa(= 10,000,000Pa)の圧力をかけた場合の力
F = P × A = 10,000,000Pa × 0.001m² = 10,000N(≒約1t)
この計算式は「油圧シリンダがどれだけの力を発揮できるか」を求めるときに使います。
油圧装置の故障サインと対処
| 故障サイン | 考えられる原因 |
|---|---|
| 動作が遅くなる | 作動油の粘度上昇(冬季)・油量不足・ポンプの劣化 |
| 異常な音(キャビテーション)がする | 油中に気泡が発生している状態(エア噛み) |
| 動作が突然停止する | リリーフバルブが作動(過負荷状態)・フィルタ詰まり |
| 油漏れが発生する | シール・パッキンの劣化・配管の損傷 |
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