短期入所の非常災害訓練には、基準が定める訓練(定期的に)と、消防法が定める消火・避難訓練(年2回以上が目安)の2つの決まりがあります。水防法や土砂災害防止法の対象施設では、避難確保計画の策定と訓練の実施・市町村への報告が必要になる場合もあります。この記事では、短期入所の避難訓練の根拠・回数・記録について整理しました。
非常災害訓練の義務は、基準と消防法の2つから確認する
短期入所の避難訓練には、異なる根拠から来る2種類の義務があります。
| 根拠 | 対象 | 回数 | 報告先 |
|---|---|---|---|
| 障害福祉サービスの基準(第70条・第145条で準用) | すべての短期入所 | 定期的に(回数の定めなし) | 指定権者の案内で確認 |
| 消防法施行規則第3条第10項・第11項 | 防火管理者の選任が必要な施設 | 消火・避難それぞれ年2回以上が目安。事前に消防機関へ通報 | 所轄消防署 |
| 水防法・土砂災害防止法(地域防災計画に名称が記載された施設) | 該当施設のみ | 年1回以上。結果を市町村長に報告 | 市町村 |
表は当方が各根拠を整理したものです。自施設がどの根拠に当てはまるかは、所轄消防署・市町村の案内で確認してください。
基準の非常災害訓練は「定期的に」。回数の定めはない
障害福祉サービスの基準第70条は、非常災害に関する具体的計画の策定・訓練の定期的な実施・消防機関への通報を義務にしています。短期入所には第145条の準用でこの条文が当てはまります。
解釈通知(障発第1206001号)は、この訓練について「定期的」という表現にとどめており、回数の定めはありません。(出典:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日) p.99〜100)消防法の訓練と合わせて年2回実施する事業所が多いです。
基準の非常災害対策計画には、避難・救出・その他の非常災害時の必要な措置についての具体的な計画が含まれます。短期入所では、宿泊中の利用者が夜間に自力で避難することが難しい場合があります。夜間帯の少人数体制での避難誘導手順を、事前に計画として明確にしておく必要があります。
消防法の訓練は、年2回以上・事前に消防機関への通報が必要
消防法施行規則第3条第10項は、防火管理者に対し、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施することを定めています。さらに、同条第11項は、訓練を実施する場合に事前に消防機関へ通報することを求めています。
短期入所が、消防法施行令 別表第一のどの項に当てはまるかは、建物の構造や利用者の状況によって異なります。防火管理者の選任が必要かどうか(30人以上か、より少ない人数か)も、施設の規模によって変わります。所轄消防署に確認してください。
消防法の訓練(消火・避難)を基準の非常災害訓練と一体として実施することは可能です。ただし、自治体によって「年2回以上」の根拠として消防法を示す場合や、「基準の訓練とBCPの訓練は別の目的」と説明している場合があります。訓練の計画を立てる際は、所在地の指定権者の案内を確認してください。
水防法・土砂災害防止法の対象施設は、市町村への報告も必要
市町村の地域防災計画に名称・所在地が記載された「要配慮者利用施設」は、水防法第15条の3または土砂災害防止法第8条の2に基づき、避難確保計画の策定・市町村長への報告と、訓練の実施・結果の市町村長への報告が義務になります。
自施設が地域防災計画に記載されているかどうかは、市町村の担当窓口に確認してください。記載がある場合は、計画の策定・訓練の実施・市町村への結果報告が別途必要になります。
訓練の記録に残す内容
高知市の集団指導資料は、訓練の記録について「研修や訓練は定期的に行い、実施後は実施日時、参加者、具体的な実施内容、資料、欠席した従業者への周知方法等も含め記録を残してください。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」 p.10)としています。
訓練の記録に残すべき主な項目は次のとおりです。
- 実施日時
- 参加者(職員の名前)
- 訓練の内容(どのような場面を想定して、何を確認したか)
- 使用した資料・手順書
- 欠席した職員への周知方法と日時
- 訓練で出た課題と改善点
欠席した職員への周知の方法まで記録することが求められています。夜勤専従の職員が昼間の訓練に参加できない場合の対応(別日に個別確認を行うなど)も、記録として残しておくことが必要です。
短期入所の夜間帯の避難訓練には、独自の視点が必要
短期入所では、夜間に職員が少ない状態で利用者が宿泊しています。昼間の訓練だけでなく、夜間帯を想定した手順の確認が必要です。確認すべき事項として次のものが挙げられます。
- 夜勤者だけで宿泊中の利用者全員を避難誘導できる手順
- 緊急連絡先(管理者・消防署・医療機関・利用者家族)への連絡手順と担当者
- 自力で避難できない利用者(歩行が困難・医療的ケアが必要)への対応
- 夜間の照明が切れた場合の行動(懐中電灯の場所・非常灯の確認)
- 避難場所と避難時の点呼の方法
BCPの訓練と非常災害訓練は、重なる部分がありますが別の目的をもっています。BCPは業務継続(サービスをどう続けるか)、非常災害訓練は利用者の安全確保(避難・救出)を中心に置いています。両方を組み合わせた訓練を年2回実施すると、基準とBCPの両方を一度に確認できます。
当方の法定研修・訓練キット(短期入所版)では、非常災害訓練の記録と年間計画を作れます(有料版)。訓練のシナリオ例もキット内で確認できます。
この記事は、基準の条文(e-Gov法令検索の現行の条文)、国の解釈通知(障発第1206001号・最終改正 令和7年3月31日)、消防法・消防法施行令・消防法施行規則(e-Gov法令検索)、高知市「令和7年度 集団指導資料」の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。自施設の区分や適用される回数の要件については、所轄消防署・市町村・指定権者の案内でそれぞれ確認してください。作成:fufumumu_design


コメント