ボイラー水処理とpH管理・水質基準

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ボイラーの内面腐食・スケール(水垢)の生成を防ぐには、缶水と給水の水質を適切に管理することが不可欠です。JIS B 8223(ボイラーの給水および缶水管理規格)や各事業者の管理基準に基づき、缶水・給水の水質を管理します。二級ボイラー技士試験では水処理の目的・pH管理・水質管理の指標(pH・電気伝導率・溶存酸素・硬度)が出題されます。

水処理が必要な理由

水にはさまざまな不純物が含まれており、そのままボイラーに供給すると次の問題が起きます。

不純物 引き起こす問題 水処理の対応
カルシウム・マグネシウム(硬度成分) スケール(炭酸カルシウム・硫酸カルシウム)として管内面に付着。熱伝達を妨げ管を過熱・焼損させる 軟化処理(イオン交換)・リン酸塩処理でスケール防止
溶存酸素(O₂) 鋼の腐食(点食・孔食)を促進する。給水配管・缶内面の腐食の主因 脱気器による溶存酸素除去・亜硫酸ソーダ等の脱酸素剤添加
シリカ(SiO₂) 高圧ボイラーではシリカスケールや蒸気タービン羽根へのシリカ付着 軟化・脱塩処理でシリカを除去
塩素イオン 塩素イオン濃度が高いと応力腐食割れ(SCC)が起きることがある 軟化・脱塩・ブローで管理
油脂・有機物 フォーミング(泡立ち)・キャリーオーバーの原因 油脂の流入を防ぐ。油水分離器の設置

pH管理の重要性

缶水および給水のpH(水素イオン指数)は、腐食の起きやすさに直接影響します。

pH域 缶水・給水の状態 問題
7未満(酸性) 酸性域。鋼が急速に腐食する 鋼の腐食が激しくなる。pH 7以下は避けなければならない
7〜9(弱酸性〜中性付近) 中性域。腐食は起きにくいが銅系合金の腐食リスクあり 銅・黄銅の配管・附属品がある場合は腐食する可能性
9〜11(弱アルカリ性) ボイラー缶水の適正管理域。鋼の腐食が最も少ない 過度なアルカリは苛性腐食(アルカリ腐食)の原因になる
11超(強アルカリ) 苛性(アルカリ)腐食が発生するリスクがある 局所的な濃縮でアルカリ腐食が起きる

ボイラー缶水の適正 pH は一般的に pH 11 以下(目安として pH 11〜12 前後が上限)とされています(圧力・型式により異なる)。給水は pH 7 以上に保つことが基本です。

水処理の方法

軟化処理(イオン交換)

イオン交換樹脂(ゼオライト樹脂等)を使って給水中のカルシウム・マグネシウムイオンをナトリウムイオンに交換する方法です。

  • 硬度成分を除去することでスケールの生成を防止する
  • 樹脂が飽和したら食塩水(NaCl)で再生(再利用)できる
  • カルシウム・マグネシウムを除去するが、溶解性シリカは除けない

脱気処理(溶存酸素の除去)

給水中の溶存酸素は腐食の主因です。脱気器で除去します。

  • 加熱式脱気器(機械的脱気):給水を約100℃(大気圧)または減圧下で加熱して溶存ガスを追い出す。酸素だけでなく二酸化炭素(CO₂)も除去できる
  • 薬品脱酸素(化学的):亜硫酸ソーダ(Na₂SO₃)・ヒドラジン・タンニン系薬品などを添加して残存酸素と反応させる

ブロー(排水)

缶水を一部排出して新しい給水と入れ替え、不純物の濃縮を防ぎます。

  • 間欠ブロー:ボイラー下部の排水弁を短時間開いて底部に沈殿したスラッジを排出する。シフト開始時・終了時などに行う
  • 連続ブロー:ボイラー胴の水面付近から常時少量を排水して溶解固形物の濃縮を防ぐ

水質検査の主な指標

指標 意味 管理の目的
pH 水素イオン濃度の指標(0〜14)。7が中性、7以上がアルカリ性 腐食防止のため缶水は弱アルカリ性(pH 11前後以下)に保つ
電気伝導率(μS/cm) 溶解イオン(硬度成分・塩類)の量を反映する指標 電気伝導率が高いほど溶解固形物が多く、スケール・キャリーオーバーのリスクが高い
溶存酸素(mg/L) 水に溶けている酸素の量 腐食防止のため給水中の溶存酸素を0.007 mg/L以下等(圧力・規格による)に管理
硬度(mg/L・CaCO₃換算) カルシウム・マグネシウムイオンの量 ゼロ(軟水化済み)を目標とする。硬度があるとスケールが生成する
アルカリ度(m-アルカリ度) 炭酸イオン・重炭酸イオン等の量 缶水のアルカリ保持・腐食防止の参考値

試験で間違えやすいポイント

  • 「缶水のpHは7以下(酸性)に保つと腐食が少ない」は誤り。酸性では鋼が腐食する。弱アルカリ性(pH 9〜11程度)に保つ
  • 「軟化処理でシリカを完全に除去できる」は誤り。イオン交換軟化処理は硬度成分を除去するが、シリカは除去できない
  • 「連続ブローは底部からスラッジを抜く操作」は誤り。連続ブローは水面付近から溶解固形物の濃縮を防ぐ。底部からスラッジを抜くのは間欠ブロー
  • 「脱気器は炭酸ガス(CO₂)を除去できない」は誤り。加熱式脱気器は溶存酸素と二酸化炭素の両方を除去できる

この記事のまとめ

  • 水処理の目的:スケール防止(軟化処理)・腐食防止(脱酸素・pH管理)・キャリーオーバー防止(油脂除去・ブロー)
  • 缶水のpHは弱アルカリ性(9〜11程度)が適正。酸性は腐食・強アルカリはアルカリ腐食のリスク
  • 溶存酸素が腐食の主因。加熱式脱気器で酸素とCO₂を除去し、薬品脱酸素で仕上げる
  • 間欠ブロー(底部スラッジ除去)と連続ブロー(水面付近から溶解固形物の濃縮防止)を使い分ける

出典:ボイラー及び圧力容器安全規則(e-Gov法令検索)・ボイラー構造規格(昭和47年労働省告示第33号)・安全衛生技術試験協会 公表試験問題
作成:fufumumu_design|更新:2026年11月

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この記事を書いた人

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上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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