小規模多機能型居宅介護の2年目以降の収支変化。稼働率が上がると黒字化。

小規模多機能型居宅介護の2年目以降の収支変化。稼働率が上がると黒字化。 介護

小規模多機能型居宅介護は開業1年目と2年目以降で収支の構造が大きく変わります。開業初年度は登録者が少なく固定費が重い一方、2年目以降は稼働率が上がり収支が改善するケースが多くあります。この記事では2年目以降の収支変化のポイントを整理します。

1年目と2年目以降の収支の違い

小規模多機能型居宅介護の収支は、登録者数(稼働率)の変化に連動します。1年目に多くの事業所で見られる課題と、2年目以降に変わる点を以下に整理します。

1年目と2年目以降の収支の主な変化
項目 1年目(開業直後) 2年目以降
登録者数 少ない(10〜15人程度から始まるケースが多い) 徐々に増加(口コミ・医療機関・ケアマネジャーからの紹介が積み上がる)
介護報酬収入 低い(登録者数に比例) 登録者の増加に応じて増加
人件費 登録者数に関わらず発生(固定的) 登録者増加に合わせて増員が必要になる場合もあるが、一定まで現状の人員で対応可能
稼働率と収支の関係 稼働率が低いため赤字または損益分岐点未満のことが多い 稼働率が上がるにつれ黒字化しやすくなる
加算の算定状況 認知症加算・処遇改善加算等を算定し始める 要件を満たしながら算定できる加算を積み上げる
口コミ・紹介の積み上がり 認知度が低い 地域の医療機関・居宅ケアマネジャーとの連携が深まり紹介が増える

損益分岐点となる登録者数の目安

小規模多機能型居宅介護の損益分岐点は事業所の人件費・物件費の水準によって異なりますが、月の基本報酬(要介護3の場合:22,359単位/月 × 10円/単位 = 223,590円)を前提に登録者数の目安を考えると、以下のとおりです。

  • 登録定員29人のうち20〜25人の登録者を確保することで、多くの事業所で損益分岐点を超えるケースがある
  • 稼働率70〜80%以上(登録定員29人に対して20〜23人以上)が収支安定の目安
  • 処遇改善加算(Ⅰ:14.9%)は加算率が高く、算定できると収入の底上げに寄与する

損益分岐点は事業所ごとの固定費(家賃・人件費)によって異なります。正確な計画は各事業所の条件で試算することが重要です。

2年目以降の収支改善に向けた取り組み

2年目以降に収支を改善するための取り組みとして、以下が有効です。

①稼働率の向上:紹介ルートの開拓

小規模多機能型居宅介護の利用者は、居宅ケアマネジャー・病院の地域連携室・地域包括支援センターからの紹介が多くを占めます。開業から1〜2年かけてこれらの機関との信頼関係を構築することが稼働率向上に直結します。

  • 近隣の居宅ケアマネジャーへの定期的な訪問・情報共有
  • 病院の地域連携室への挨拶・事業所紹介資料の配布
  • 退院時カンファレンスへの参加
  • 地域包括支援センターとの連携強化

②算定できる加算の積み上げ

認知症への対応実績が増えてくると、認知症加算(Ⅰ:920単位・Ⅱ:848単位)の算定が可能になります。医療的ケアが必要な利用者が増えれば看護職員配置加算の算定も視野に入ります。

処遇改善加算は開業初年度から算定できる(要件を満たす場合)ため、最初から算定することが収入の土台となります。

③人員体制の最適化

開業当初は最低限の人員で始め、登録者数の増加に合わせて人員を段階的に増やすことで、人件費率をコントロールします。登録者数が増えても現行の人員で対応できる範囲を把握しておくことが重要です。

2年目以降に発生する主な変動費

2年目以降、事業が成長するにつれて発生・変化する主な費用は以下のとおりです。

2年目以降に変化する主な費用
費用項目 変化の内容
人件費(介護職員増員) 登録者数の増加に合わせて介護職員を増員する場合に増加
食費・食材費 通い・宿泊の利用者数に比例して増加
消耗品費 利用者数の増加に応じて増加
設備の修繕費 開業から年数が経つと発生することがある

2年目に確認したいチェックポイント

開業から1〜2年経過した時点で確認しておきたいチェックポイントは以下のとおりです。

  • 登録者数の推移と損益分岐点との乖離
  • 処遇改善加算の算定区分の見直し(要件を満たしているか)
  • 認知症加算・看護職員配置加算の算定状況の確認
  • 紹介元(居宅ケアマネジャー・病院)ごとの紹介件数の把握
  • 通い・訪問・宿泊の利用バランスと夜勤コストの見直し
  • スタッフの定着率と採用コストの状況

小規模多機能型居宅介護の開業後の収支変化を含めた試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。

参考・出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号・令和6年改定後)
  • 厚生労働省「介護給付費等実態統計(令和5年度)」

この記事は2026年11月時点の制度・告示に基づいています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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