訪問看護の緊急時訪問看護加算。24時間対応の要件と介護・医療保険の違い。
訪問看護の緊急時訪問看護加算(介護保険)は、24時間365日の連絡体制を整備し、利用者の緊急の状態変化に対応できる事業所に月単位で算定できる加算です。加算額は算定区分によって異なり、緊急時訪問看護加算Ⅰが600単位/月、Ⅱが574単位/月です(令和6年度改定後)。医療保険には別途「緊急訪問看護加算」(1回2,650円)と「24時間対応体制加算」(月6,800円)があり、制度ごとに算定できる加算の種類と要件が異なります。本記事では、介護保険・医療保険それぞれの加算の要件・算定の流れ・注意点を整理します。
介護保険の緊急時訪問看護加算
加算の概要と算定額
介護保険の緊急時訪問看護加算は、利用者またはその家族から随時連絡を受け、必要に応じて緊急の訪問を行う体制を確保した場合に算定できます。加算は月に1回、利用者1人につき算定します。
令和6年度改定後の単位数は以下のとおりです(根拠:平成18年厚生労働省告示第523号 別表第5の訪問看護費 注5・注5の2)。
| 区分 | 単位数(月) | 要件の違い |
|---|---|---|
| 緊急時訪問看護加算Ⅰ | 600単位 | 24時間連絡体制+緊急時訪問の体制を整備し、かつ夜間・早朝・深夜の訪問実績がある等、より高い体制が求められる区分 |
| 緊急時訪問看護加算Ⅱ | 574単位 | 24時間連絡体制を整備し、随時緊急の訪問を行える体制がある区分 |
※上記の単位数・区分要件は告示および解釈通知(平成18年厚生労働省通知)を確認してください。令和6年度改定で区分が新設・見直しされています。地域区分(1単位あたりの単価)は事業所の所在地によって10.00〜11.40円の範囲で変わります。
算定要件
緊急時訪問看護加算(介護保険)を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 利用者またはその家族からの随時連絡に対応できる体制を24時間確保していること
- 連絡に応じて、必要と判断した場合に緊急の訪問看護を行える体制があること
- 緊急連絡に対応できる担当者の氏名・連絡先を利用者・家族に事前に伝えていること
- 加算算定の対象であることについて、利用者・家族への説明と同意を得ていること
- 訪問看護計画書・訪問看護報告書に緊急時訪問の記録が適切になされていること
緊急時訪問看護加算Ⅰを算定するには、上記に加えてより高い体制要件が求められます。具体的な要件(夜間・早朝・深夜訪問の実績等)は、令和6年度改定の解釈通知・Q&Aを確認してください。
他の加算との関係
緊急時訪問看護加算(介護保険)は、24時間対応体制加算とは別の加算です。介護保険の訪問看護には「24時間対応体制加算」は設けられておらず、緊急時訪問看護加算がその機能を担う仕組みになっています。
なお、緊急時訪問看護加算を算定している利用者に対して実際に緊急の訪問を行った場合は、通常の訪問看護費(基本報酬)を別途算定できます。緊急訪問の際に早朝・夜間・深夜に訪問した場合は、早朝加算・夜間加算・深夜加算を重ねて算定することも可能です。
医療保険の緊急訪問看護加算と24時間対応体制加算
緊急訪問看護加算(医療保険)
医療保険の訪問看護では、緊急の連絡があって計画外の訪問看護を行った場合に「緊急訪問看護加算」を算定できます。1回あたり2,650円です(令和8年度診療報酬改定後の告示第74号に基づく参考値。最新の診療報酬告示で確認してください)。
医療保険の緊急訪問看護加算は、訪問1回ごとに算定するため、緊急訪問の回数が多いほど収入が増えます。介護保険の「月定額」方式とは算定の仕組みが異なります。
24時間対応体制加算(医療保険)
医療保険の訪問看護では、24時間365日の連絡体制と必要時の緊急訪問体制を確保した場合に「24時間対応体制加算」を月単位で算定できます。加算額は6,800円/月です(令和6年度改定後。負担軽減を行っている場合は6,520円に減額。最新の診療報酬告示で確認してください)。
| 区分 | 加算額(月) | 備考 |
|---|---|---|
| 24時間対応体制加算(通常) | 6,800円 | 利用者1人につき月1回算定 |
| 24時間対応体制加算(負担軽減あり) | 6,520円 | 訪問看護師の負担軽減計画書を作成・提出している場合 |
24時間対応体制加算の算定要件は以下のとおりです。
- 利用者・家族からの随時連絡に対応できる24時間の連絡体制を整備していること
- 必要に応じて緊急の訪問看護を行える体制があること
- 体制の内容を利用者・家族に説明し、同意を得ていること
- 連絡窓口・担当者・連絡方法を文書(重要事項説明書等)に記載して交付していること
介護保険と医療保険の加算の比較
| 項目 | 介護保険(緊急時訪問看護加算) | 医療保険(緊急訪問看護加算・24時間対応体制加算) |
|---|---|---|
| 対象 | 介護保険の訪問看護利用者 | 医療保険の訪問看護利用者 |
| 月額加算(体制整備) | Ⅰ 600単位、Ⅱ 574単位 | 24時間対応体制加算 6,800円/月 |
| 緊急訪問1回ごとの加算 | なし(通常の訪問看護費を別算定) | 緊急訪問看護加算 2,650円/回 |
| 算定の単位 | 月1回・利用者ごと | 月1回(体制)+訪問ごと(緊急訪問加算) |
利用者が介護保険と医療保険のどちらで訪問看護を受けるかは、主治医の指示書の種類(訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書等)と疾患の種類によって決まります。末期癌・難病・厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合は医療保険が優先されます。65歳以上の要介護認定を受けている方は原則として介護保険が優先されます。
緊急訪問の実際と収支への影響
緊急訪問はどれくらい発生するか
緊急訪問の発生頻度は、利用者の疾患・重症度・在宅療養の状況によって大きく異なります。ターミナルケア(終末期看護)の利用者が多い事業所では夜間・深夜の緊急訪問が頻繁に発生することがあり、スタッフの負担と収入の両方に影響します。
緊急訪問への対応体制をどう組むかは、事業所の経営判断です。夜間帯の緊急対応を一部のスタッフが当番制で担う事業所・外部の緊急訪問体制サービス(協力機関)を活用する事業所・24時間対応を運営方針としない事業所(緊急時加算を算定しない)など、事業所ごとにアプローチが異なります。
緊急時加算が収支に与える影響の試算(介護保険)
緊急時訪問看護加算Ⅱ(574単位/月)を利用者30名に算定した場合の概算収入(1単位10円・その他地域):
574単位 × 10円 × 30名 = 172,200円/月
緊急時訪問看護加算Ⅰ(600単位/月)の場合:
600単位 × 10円 × 30名 = 180,000円/月
基本報酬(訪問看護費)に加えて月17〜18万円の収入が加算されるため、利用者数が多い事業所ほど加算の収入規模が大きくなります。一方で、24時間対応体制を維持するためのスタッフ確保・当番手当・深夜割増などのコストも発生するため、加算収入とコストのバランスを把握することが重要です。
24時間体制を整備する際の人員確保の課題
深夜・夜間対応のスタッフ確保
訪問看護事業所で24時間対応体制を維持するには、夜間・深夜に緊急呼び出しに対応できる看護師を確保する必要があります。常勤換算で2.5人(複数の事業所の場合2人)以上の看護師が必要な訪問看護事業所では、少人数で24時間体制を回すことになりがちです。
スタッフの少ない事業所では、緊急対応が特定のスタッフに集中してバーンアウトのリスクが生まれます。この問題に対応するため、令和6年度改定では「24時間対応体制加算(負担軽減あり)6,520円」が設けられ、負担軽減計画書の作成を求める代わりに加算の算定要件として緩和が行われています。
協力機関・複数事業所の連携
同一法人内に複数の訪問看護事業所がある場合や、近隣の事業所と連携協定を結ぶことで、緊急対応の当番を分散させる取り組みも行われています。都道府県・市区町村によっては、訪問看護ステーション間の連携を促進する仕組みを設けているところもあります。
運営指導での緊急時加算の確認ポイント
24時間対応体制の文書化
緊急時訪問看護加算(介護保険)・24時間対応体制加算(医療保険)を算定するには、利用者・家族への説明と同意が要件です。重要事項説明書・契約書・訪問看護計画書に「緊急時連絡体制の整備・加算の説明」の記載があるかを確認されます。
緊急訪問の実績記録
緊急訪問を行った場合は、訪問した日時・訪問者・訪問の経緯・実施した内容を記録する義務があります。記録のない緊急訪問は算定根拠が証明できず、返還請求の対象になる可能性があります。
加算Ⅰ・Ⅱの要件の充足確認
緊急時訪問看護加算Ⅰを算定している場合は、Ⅰの要件(Ⅱよりも高い体制要件)を満たしていることを証明できる実績記録が必要です。要件を満たさずⅠを算定していた場合は差額の返還が求められます。
訪問看護の開業収支シミュレーターでは、利用者数・稼働率・算定加算(緊急時訪問看護加算を含む)の組み合わせで月次の収支見込みを試算できます。24時間対応体制にかかるコストと加算収入のバランスを確認することができます。

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