グループホームの個別支援計画(共同生活援助計画)は、サービス管理責任者が利用者ごとに作成する義務のある計画です。アセスメント・原案作成・利用者の同意・交付・モニタリングの順に進め、少なくとも6か月に1回の見直しが義務づけられています。計画を作成していない場合は、所定単位数の10%が減算されます。
共同生活援助計画とは、グループホームの利用者1人ひとりに作成する支援の計画である
共同生活援助計画(以下「個別支援計画」)は、グループホームの利用者が自立した日常生活を送るうえで、どのような支援が必要かを具体的に定めた計画書です。
根拠となる法令は、「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号。以下「運営基準省令」)です。省令第3条第1項は、指定障害福祉サービス事業者が「利用者の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえた計画」を作成し、これに基づいてサービスを提供することを求めています。
計画には以下の内容を盛り込むことが求められます。
- 利用者の希望する生活と長期目標・短期目標
- 目標を達成するための具体的な支援内容(世話人・生活支援員が行うこと)
- 支援の頻度・時間帯
- 日中活動や他のサービスとの連携が必要な場合、その内容
- 計画の評価・見直しの時期
「作ったら終わり」ではなく、定期的にモニタリングを行い、利用者の状況の変化に応じて更新し続けることが前提です。
個別支援計画の作成責任は、サービス管理責任者にある
個別支援計画を作成・管理するのはサービス管理責任者(以下「サビ管」)です。運営基準省令第208条第1項第2号に基づき、グループホームにはサビ管を利用者30人に対して1人以上配置することが義務づけられています。
| 利用者数 | 必要人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 30人以下 | 1人以上 | 定員20人未満は非常勤可 |
| 31〜60人 | 2人以上 | 定員20人以上は常勤専従の努力義務 |
| 61人以上 | 30人を超えて30またはその端数を増すごとに1人追加 | 同上 |
出典:運営基準省令第208条第1項第2号(平成18年厚生労働省令第171号)
サビ管は計画の作成だけでなく、アセスメント・モニタリング・担当職員への指示・進捗確認まで一貫して担います。世話人や生活支援員が日々の支援を担う一方で、支援全体の方向性を管理するのがサビ管の役割です。
グループホームでは管理者がサビ管を兼務することも多いですが、兼務する場合でも計画作成の手続きは省略できません。
作成の流れは、アセスメントから始まる5つの手順で進む
個別支援計画の作成は、以下の5つの手順で進めます。入居開始前(または入居直後)に完了させることが求められています。
手順1 アセスメント(利用者の希望と生活状況の把握)
最初に行うのはアセスメントです。サビ管が利用者と面接し、生活の希望・困りごと・能力・環境などを把握します。
アセスメントで確認する主な内容は以下のとおりです。
- 本人が希望する生活の姿(どこで・誰と・どのように暮らしたいか)
- 日常生活動作(食事・入浴・排泄・整容等)のレベル
- コミュニケーション能力と方法
- 日中活動の状況(他のサービスへの通所状況等)
- 家族・後見人等との関係
- 健康状態・医療的ケアの必要性
- 住居内での他の入居者との関係
- 地域移行・自立生活への意向
面接は必ず利用者本人に対して行います。本人が意思表示しにくい場合は、家族や成年後見人から補足情報を得ることがありますが、あくまでも本人の意向を主軸に置きます。アセスメントの記録は書面で保管します。
手順2 個別支援計画の原案を作成する
アセスメントの結果をもとに、サビ管が計画の原案を作成します。原案には長期目標・短期目標とその達成のための具体的な支援内容を記載します。
グループホームの個別支援計画に特有の点として、共同生活という環境を踏まえた目標設定が求められます。たとえば「他の入居者との関係を良好に保ちながら自分の時間を持てるようにする」「日中活動からの帰宅後の夕食・入浴の流れを自分で管理できるようにする」といった、共同生活ならではの具体的な内容を盛り込みます。
また、利用者が他の事業所(放課後等デイサービス・就労継続支援等)にも通っている場合、それらのサービスとの役割分担を明記しておくと、支援の重複や漏れを防ぐことができます。
手順3 利用者への説明と文書による同意
原案が完成したら、サビ管が利用者(および必要に応じて家族等)に対して計画の内容を説明し、同意を得ます。同意は文書(署名または記名捺印)で行います。
口頭だけでの説明・同意は、運営指導で指摘を受ける原因になります。同意書は計画書の一部として綴じ、保管します。
利用者が内容に同意しない場合や修正を求めた場合は、計画を修正したうえで再度説明・同意の手続きを行います。
手順4 計画の交付(利用者と相談支援事業者へ)
同意を得た計画は、利用者本人に交付します。さらに、利用者が障害福祉サービスの相談支援(計画相談支援・障害児相談支援)を受けている場合は、担当の相談支援事業者にも写しを送付します。
この交付の記録も保管が必要です。「いつ・誰に・どの版の計画を渡したか」を記録しておくことで、運営指導でスムーズに確認できます。
手順5 計画に基づくサービス提供と記録
交付後は、作成した計画に基づいて支援を行います。世話人・生活支援員はこの計画の内容を把握したうえで日々の支援にあたります。
サビ管は、担当職員に対して計画の内容を説明し、各職員がどの支援を担当するかを明確にします。支援の実施状況は日々の記録(サービス提供記録)に残します。
見直し(モニタリング)は、少なくとも6か月以内に1回実施する
個別支援計画は、作成したら終わりではありません。定期的にモニタリングを行い、計画が実態に合っているかを確認・更新する義務があります。
共同生活援助のモニタリング頻度は、少なくとも6か月以内に1回以上とされています(横浜市「指定共同生活援助事業 基準等の概要」2025年10月版で確認)。利用者の状態が変化した場合や、重要な出来事(入院・日中活動の変更・家族状況の変化等)があった場合は、6か月を待たずに随時見直します。
モニタリングで確認する主な内容
- 計画に記載した目標の達成状況
- 利用者の生活・健康状態の変化
- 現在の支援内容が本人の意向や状況に合っているか
- 支援の量・頻度が適切か
- 新たな課題・ニーズが生じていないか
モニタリングはサビ管が直接利用者と面接して行います。面接の記録(実施日・実施者・確認内容)を書面で残します。電話や書面だけでの対応は、原則として認められません。
モニタリングの結果、計画の変更が必要と判断した場合は、後述の「計画の変更手順」に従って処理します。変更不要と判断した場合も「見直しを行い変更なし」として記録を残しておくことが重要です。
計画を変更するときは、同意と交付の手続きを改めて行う
モニタリングや利用者の状況変化を受けて計画を変更する場合、最初の作成と同じ手順が必要になります。
- 変更の必要性をアセスメントで確認する
- 新しい計画の原案を作成する
- 利用者への説明・文書による同意
- 変更後の計画を利用者・相談支援事業者に交付する
変更前の計画書は廃棄せず、旧版として記録に残します。「いつ・何を変更したか」の経緯を追える状態にしておくことで、運営指導での確認がスムーズになります。
計画変更の頻度が高い利用者(状態が安定しない方、退居・地域移行を検討している方等)については、変更のたびに手続きが発生します。書式を電子化したり、テンプレートを整備したりすることで、サビ管の事務負担を軽減することが可能です。
計画が未作成のまま放置すると、報酬の10%が減算される
個別支援計画を作成していない場合、または利用者への交付が行われていない場合は、共同生活援助計画未作成減算として所定単位数の10%(×90/100)が減算されます。
この減算は1か月ではなく「計画を作成していない月のすべて」に適用されます。入居日から計画が交付されるまでの期間が長ければ長いほど、減算の累積額が大きくなります。
| 減算の条件 | 減算率 |
|---|---|
| 個別支援計画を作成していない | 所定単位数×90/100(10%減) |
| 利用者への計画交付が行われていない | 同上 |
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の報酬算定構造」・グループホーム収支シミュレーターに収録済みの算定基準
開業直後の段階で入居者の受け入れを急ぐあまり、計画の作成が後回しになるケースが見られます。入居前または入居開始と同時に計画を完成させることを、運営の優先事項として位置づけることが重要です。
他の事業所の支援と役割を計画内に明記することで、支援の重複と漏れを防ぐ
グループホームの利用者の多くは、日中に他の事業所(就労継続支援B型・生活介護・放課後等デイサービス等)にも通っています。それぞれの事業所が別々に個別支援計画を作成しているため、内容が矛盾したり、同じ目標に複数の事業所が取り組んでいる一方で、誰も対応していない課題が生まれたりするリスクがあります。
このリスクを防ぐために、グループホームの個別支援計画には「日中活動における支援の担当事業所・役割」を明記することが有効です。
| 支援の内容 | 担当 |
|---|---|
| 日中の作業・就労支援 | 就労継続支援B型事業所 |
| 帰宅後の食事・服薬・入浴の見守り | グループホーム(世話人) |
| 健康管理・受診同行 | グループホーム(サビ管・世話人) |
| 地域移行への相談・情報収集 | 計画相談支援事業所(相談支援専門員) |
相談支援専門員(計画相談支援)が作成したサービス等利用計画との整合性も確認します。グループホームの個別支援計画がサービス等利用計画の内容と矛盾しないようにすることは、運営基準上も求められる実務上のチェックポイントです。
運営指導では、計画の「手続き」と「内容の適切さ」の両方が確認される
都道府県・市区町村が実施する運営指導(旧:実地指導)では、個別支援計画について手続き面と内容面の両方が確認されます。
手続き面で確認される主な項目
- 全利用者の計画が作成・保管されているか
- 利用者の署名(または記名捺印)による同意書があるか
- 利用者および相談支援事業者への交付記録があるか
- アセスメントの記録があるか
- モニタリングが6か月以内に実施されているか、記録があるか
- 見直した場合は新しい計画と旧計画が両方保管されているか
内容面で確認される主な項目
- 目標が利用者の意向を反映した具体的な内容になっているか(「生活を安定させる」といった抽象的すぎる表現は指摘対象になることがある)
- 支援内容が目標と結びついているか
- 日中活動や他サービスとの役割分担が整理されているか
- 計画の内容が日々のサービス提供記録に反映されているか
内容面での指摘は、「不適切」というより「より丁寧に書いてください」という形で指導されることが多いです。ただし手続き面(同意書なし・未交付・モニタリング未実施)は書面で指摘されやすく、是正を求められます。
計画書の保存期間は、サービス提供終了の日から5年間
個別支援計画書(原案・本計画・同意書・モニタリング記録・アセスメント記録を含む)の保存期間は、サービス提供終了の日から5年間です(運営基準省令の記録保管規定による)。退居後も5年間は廃棄できません。
紙での保管が難しい場合は、スキャンデータでの電子保管も認められています。ただし、運営指導での確認時にすぐに提示できる状態で管理することが必要です。
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