就労継続支援A型事業所に設置が義務づけられている設備は、省令(平成18年厚生労働省令第171号 第188条)によって定められています。訓練・作業室・相談室・洗面所・便所・多目的室の5つが基本です。なお「静養室」はA型の省令には明記されておらず、就労移行支援など他のサービスとは異なります。面積の数値基準は省令に定めがなく、「支障がない広さ」が要件です。
根拠法令と条文の位置
就労継続支援A型の設備基準は、「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年9月29日厚生労働省令第171号)第188条に定められています。
同省令は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第43条第2項を根拠として制定されたものです。都道府県・市区町村は、省令の「従うべき基準」を遵守したうえで独自の条例を定めます。そのため、実際の指定を受ける際は、事業所所在地の都道府県・市区町村の条例も必ず確認する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠省令 | 平成18年厚生労働省令第171号(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準) |
| 条文番号 | 第188条 |
| 根拠法 | 障害者総合支援法第43条第2項 |
| 自治体条例との関係 | 省令の「従うべき基準」を遵守したうえで条例を制定。具体的な面積等は自治体条例で上乗せされる場合がある |
省令第188条が定める5つの設備
第188条第1項は、指定就労継続支援A型事業所に次の設備を設けることを義務づけています。
- 訓練・作業室
- 相談室
- 洗面所
- 便所
- 多目的室
- その他運営上必要な設備
以下、それぞれの要件を確認します。
訓練・作業室の要件
省令第188条第2項第1号は、訓練・作業室について次の2点を求めています。
- 訓練や作業に支障がない広さを有すること
- 訓練や作業に必要な機械器具等を備えること
「支障がない広さ」という表現は、利用者数や作業内容によって必要な面積が異なることを前提にしています。省令では利用者1人あたり何平方メートルという数値基準は定めていません。一方、都道府県・市区町村の条例では、利用者1人あたりの最低面積(例:1人あたり3平方メートル以上など)を設定している自治体もあります。開業前に所轄の行政窓口に確認することが必要です。
なお「訓練・作業室」は就労継続支援B型や就労移行支援でも同様の名称が使われますが、A型では利用者が雇用契約を結んで就労することが前提です。そのため作業環境については省令の設備基準に加え、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)や関連規則(事務所衛生基準規則等)の適用を受ける場合があります。具体的には採光・換気・温度管理・通路の確保などです。A型開業時は福祉の指定基準と労働法の両方を確認することが重要です。
省略できる場合がある
第188条第3項は、指定就労継続支援A型の提供に支障がない場合は、訓練・作業室を設けないことができると定めています。
これは、例えば利用者が事業所外の作業場に出向いて就労する形態(工場等への派遣的な就労)など、事業所内に作業スペースを設ける必要がない運営形態を想定した規定です。ただし「支障がない」と判断する基準は自治体によって異なりますので、省略を検討する場合は事前相談が必要です。
相談室の要件
第188条第2項第2号は、相談室について次の要件を定めています。
- 室内における談話の漏えいを防ぐための措置(間仕切り等)を設けること
相談室は、利用者のプライバシーを守るための空間です。「談話の漏えいを防ぐ措置」とは、完全に独立した個室でなくても、パーテーション(間仕切り)等による遮蔽が認められる場合が多いですが、具体的な基準は自治体条例や行政の運用指針によります。声が外部に漏れないよう遮蔽がしっかりしていることが求められます。
面積の最低基準は省令には定められていませんが、相談が行えるだけの広さが必要です。
兼用が認められる場合
第188条第4項は、利用者への支援に支障がない場合は、相談室や多目的室などの設備を兼用することができると定めています。
例えば、多目的室を相談スペースとして兼用したり、他の設備と共用することが認められます。ただし兼用する際も、使用時に談話の漏えい防止措置が確保されていることは必要です。
洗面所の要件
第188条第2項第3号は、洗面所について利用者の特性に応じたものであることを求めています。
「利用者の特性に応じたもの」とは、利用者の障害の種類・程度に合わせた設計を指します。例えば車いす利用者がいる場合はカウンターの高さや通路幅、視覚障害のある利用者には位置の分かりやすい表示など、個々の状態に応じた配慮が必要です。これはバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の規定とも連動します。
洗面所の数や最低面積は省令には規定がなく、事業所の規模や利用者数に応じた適切な数を用意することが求められます。
便所の要件
第188条第2項第4号は、便所について利用者の特性に応じたものであることを求めています。洗面所と同様の趣旨です。
便所は利用者が直接使用するものであるため、利用者の障害の種類・程度に合わせた設備が必要です。車いす利用者がいる場合は多機能トイレ(手すり・十分な広さ・開き戸でなく引き戸など)の設置が事実上必要になります。自治体によってはバリアフリー対応の便所の整備を指定の条件としている場合もあります。
多目的室の役割
多目的室は省令に名称が挙げられていますが、具体的な要件の記載はなく、「その他運営上必要な設備」に近い位置づけです。グループミーティング・休憩・集会などの用途に使える空間として整備します。相談室と兼用することも認められています(第188条第4項)。
静養室はA型の省令に定めがない
A型の設備基準(第188条)には「静養室」の記載はありません。就労移行支援など他のサービスでは省令上の静養室の設置要件がある場合がありますが、就労継続支援A型の第188条には同様の規定がありません。
| 設備 | 就労継続支援A型(第188条) | 就労移行支援(第72条) |
|---|---|---|
| 訓練・作業室 | 必要(省略可) | 必要 |
| 相談室 | 必要(兼用可) | 必要(兼用可) |
| 洗面所 | 必要 | 必要 |
| 便所 | 必要 | 必要 |
| 多目的室 | 必要 | 必要 |
| 静養室 | 省令上の義務なし | 必要(兼用可) |
ただし都道府県・市区町村の条例で静養室に相当する設備の整備を求めている場合があります。また、利用者の特性に応じた支援の観点から、実務上は安静が取れるスペースを設けることが望ましいとされる場合もあります。所轄の行政窓口に事前相談することを推奨します。
設備の専用性の原則と例外
第188条第5項は、設備は原則として当該事業所の専用とすることを求めています。ただし「利用者の支援に支障がない場合は例外」とされています。
専用性の原則は、複数の事業が同一建物に入居している場合に重要です。例えば就労継続支援A型と放課後等デイサービスを同一法人が同じ建物で運営する場合、設備の共用が「支援に支障がない」かどうかを判断する必要があります。共用が認められるかどうかは自治体の判断によります。
都道府県・市区町村の条例との関係
省令は「従うべき基準」を定め、各自治体はその範囲内で条例を制定します。省令が定めていない面積の数値基準や、追加の設備要件を条例で規定している自治体があります。
| 項目 | 省令の基準 | 自治体条例での追加例 |
|---|---|---|
| 訓練・作業室の面積 | 「支障がない広さ」(数値なし) | 利用者1人あたり○㎡以上などの数値基準を追加する自治体あり |
| 洗面所・便所 | 「利用者の特性に応じたもの」 | 車いす対応・手すり設置等を条例で具体化する自治体あり |
| 設備の専用性 | 原則専用(例外あり) | 共用の条件を具体的に定める自治体あり |
実際の指定申請を進める前に、事業所所在地の都道府県(指定権者)の担当窓口に事前相談することが不可欠です。事前相談の段階で設備の図面を持参し、各室の配置と寸法を確認してもらうことが一般的です。
A型特有の注意点:労働安全衛生法の適用
就労継続支援A型は利用者と雇用契約を結ぶ点が、B型・就労移行支援と根本的に異なります。この雇用関係があることで、事業所は使用者(雇用主)の立場となり、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の適用を受けます。
労働安全衛生法および事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)は、事務所の気積(1人あたり10立方メートル以上)・換気・採光・照度・温度・清潔保持などを定めています。就労継続支援A型の訓練・作業室はこれらの基準にも適合させる必要があります。
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 気積 | 労働者1人あたり10立方メートル以上(ただし設備占有分は控除) | 事務所衛生基準規則第2条 |
| 換気 | 戸・窓等の開口部で直接外気に通じるものの面積が床面積の1/20以上、またはそれに相当する換気設備 | 事務所衛生基準規則第3条 |
| 温度 | 空調機器がある場合は17度以上28度以下に保つよう努める | 事務所衛生基準規則第5条 |
| 照度 | 精密な作業:300ルクス以上 / 普通の作業:150ルクス以上 / 粗な作業:70ルクス以上 | 事務所衛生基準規則第10条 |
これらは福祉の指定基準(省令171号)には含まれていません。A型を開業する際は、福祉の指定基準と労働安全衛生法の両方をクリアできるかを確認することが必要です。
指定申請における設備基準の確認の流れ
実際の指定申請では、設備基準の確認は以下のような流れで進めることが一般的です。
- 1. 物件の目星をつける段階:所轄の都道府県・市区町村の担当窓口(指定申請窓口)に、候補物件の間取り図を持参して事前相談を行う。設備要件を満たすかどうかの見立てを確認する。
- 2. 物件の賃借・購入前:設備基準を満たせない物件を契約してしまわないよう、事前相談で「この物件で指定を受けられる可能性があるか」を確認してから契約する。
- 3. 内装工事の計画段階:相談室の間仕切り・洗面所・便所の改修などを行う場合は、工事の設計図を持参して再度確認する。
- 4. 指定申請書の提出:設備の平面図(各室の寸法・配置を記載)を申請書類の一部として添付する。
- 5. 実地確認:申請後に担当職員による現地確認が行われる自治体が多い。
設備基準についてよくある疑問
訓練・作業室の最小面積は何平方メートルか
省令には具体的な数値基準がありません。「訓練・作業に支障がない広さ」という要件のみです。ただし自治体条例で利用者1人あたりの面積を定めている場合があります。事業所所在地の条例と担当窓口の確認が必要です。なお、労働安全衛生法(雇用関係があるため適用)の気積基準(10立方メートル/人)は参考になります。
相談室は必ず個室でないといけないか
省令は「談話の漏えいを防ぐための間仕切り等を設ける」としており、完全個室を義務づけてはいません。パーテーション等で声が外に聞こえない状態を確保できれば、一般的には認められます。ただし自治体によって取り扱いが異なるため、担当窓口への確認が必要です。
洗面所・便所はA型専用でないといけないか
省令第188条第5項は「利用者の支援に支障がない場合は共用可」としています。同じビルのテナント共用トイレを使用するケースでも、利用者の特性に応じたバリアフリー対応がされていれば認められる場合があります。こちらも自治体の判断になります。
静養室は設置しなくてよいか
省令第188条にはA型の静養室の義務が記載されていません。就労移行支援など他のサービスでは省令上の要件がある場合がありますが、A型の第188条には静養室の義務規定がありません。ただし都道府県の条例や実地指導の観点から、実務上は休憩できるスペースを確保することが望ましい場合があります。担当窓口に確認してください。
まとめ:A型設備基準のポイント
| 設備 | 要件 | 省略・兼用 |
|---|---|---|
| 訓練・作業室 | 支障がない広さ・必要な機械器具等 | 支障がない場合は省略可(第188条第3項) |
| 相談室 | 談話漏えい防止の間仕切り等 | 多目的室等と兼用可(第188条第4項) |
| 洗面所 | 利用者の特性に応じたもの | 支障がない場合は共用可(第188条第5項) |
| 便所 | 利用者の特性に応じたもの | 支障がない場合は共用可(第188条第5項) |
| 多目的室 | 運営上必要な設備 | 相談室等と兼用可(第188条第4項) |
| 静養室 | 省令上の義務なし | ― |
就労継続支援A型の設備基準で最も重要なのは、省令の要件を満たすことに加え、事業所所在地の都道府県・市区町村の条例と担当窓口の判断を事前に確認することです。また、A型は雇用契約を前提とするため、労働安全衛生法の適用も忘れてはなりません。物件選定・内装設計の段階から、指定基準と労働法の両方の観点で確認することが開業準備の基本です。
出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省令第171号)第188条(e-Gov法令検索で原文確認)
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