就労移行支援の発達障害支援研修、面接での特性対応と企業への障害開示の進め方。
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就労移行支援の利用者のうち、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)・LD(学習障害)などの発達障害を持つ方の割合は年々増えています。就労継続支援B型の発達障害支援研修が「作業場での指示の出し方・環境整備」を中心とするのに対し、就労移行支援では「面接での特性対応・企業への障害開示・実習中の感覚過敏への対応」という就職活動固有の場面が加わります。
この記事では、就労移行支援の発達障害支援研修で扱うべき内容を整理します。
就労移行支援で多い発達障害の特性と就職活動場面への影響
| 障害種別 | 主な特性 | 就職活動場面で現れやすい困難 |
|---|---|---|
| ASD(自閉スペクトラム症) | 言葉を字義通りに解釈する・アイコンタクトが難しい・予定外の変更に強いストレスを感じる・感覚過敏 | 面接で「強みを教えてください」という抽象的な質問に答えられない。企業実習で突然の予定変更にパニックになる。実習先の環境音・光・匂いで集中できない |
| ADHD(注意欠如多動症) | 注意が逸れやすい・衝動的な言動・時間管理が難しい・忘れ物が多い | 面接の日時・場所を確認し忘れる。実習中に指示を途中で聞けなくなる。複数の選考を並行すると管理できなくなる |
| LD(学習障害) | 読み・書き・計算の特定領域に困難がある | 履歴書・エントリーシートの記入に時間がかかる。面接で口頭の質問に答えることはできるが、書類での表現が難しい |
面接場面での特性対応
面接練習で事前に準備する内容
発達障害のある方の面接練習では、以下の点を重点的に準備します。
- 質問の意図を解釈する練習:「今までで頑張ったことは?」「あなたの短所は?」など、抽象的な質問の意図を言語化し、答え方のパターンを一緒に作る
- アイコンタクトの代替策:相手の鼻のあたりを見る・首のあたりを見るという方法でアイコンタクトに近い印象を作る練習
- 想定外の質問への対応:「分かりません」「少し考えさせてください」と答えてよいことを事前に伝える
- 時間管理の補助:面接当日の持ち物リスト・出発時間・ルートを書面で確認する
面接同行時の事前確認
発達障害のある利用者に同行する際、面接前に確認しておく事項があります。
- 当日のルート・乗換・所要時間(初めての場所は前日に下見を勧める)
- 待合室での待ち方(どのくらいの時間か・何もしていてよいか)
- 「こんな質問が来たときはこう答える」という事前の打ち合わせ
- 面接後のクールダウンの時間と場所(近くのカフェ等)
企業への障害開示(オープン就労・クローズ就労)の支援
発達障害のある方が就職を目指すとき、障害者雇用枠を使うか(オープン就労)、一般雇用枠で障害を開示しないか(クローズ就労)の選択が必要です(第181条の求職活動支援の一環)。
| オープン就労(障害者雇用枠) | クローズ就労(一般雇用枠) | |
|---|---|---|
| メリット | 配慮を公式に求められる。ハローワークの障害者求人を使える。就労移行支援からの定着支援を継続しやすい | 求人の選択肢が広い。給与水準が高い場合がある |
| デメリット・リスク | 障害者雇用枠の求人は職種が限られる場合がある | 配慮を求めにくい。体調悪化時にサポートを受けにくい。後から発覚した場合に雇用関係に影響することがある |
| 支援者の役割 | 本人が選べるよう両方の情報を提供し、意思決定を支援する(第57条第2項の意思決定支援) | 同左 |
開示するかどうかの決定は本人が行います。支援者が「オープンにした方がよい」と誘導することは意思決定支援の原則(第57条第2項)に反します。選択肢と各選択肢の現実的な結果を伝え、本人が考える時間を作ることが支援者の役割です。
企業実習中の感覚過敏への対応
ASDのある方が企業実習中に感覚過敏(音・光・匂い・触覚)の影響を受けることがあります。実習前に本人から「苦手な感覚刺激」を確認し、企業担当者に伝える場合は本人の同意を得た上で行います。
- 音の過敏:イヤーマフ・耳栓の使用が可能かを実習先に確認する
- 光の過敏:座席の位置(窓際・照明の直下を避ける)の調整を依頼できるか確認する
- 匂いの過敏:食堂・印刷機周辺からの距離の調整が可能かを確認する
- 触覚の過敏:手袋・特定の素材の衣服の着用が業務上許容されるかを確認する
実習前の企業担当者との打ち合わせで「本人が困ったときのサインと連絡先」を共有しておくと、実習中のトラブルを早期に把握できます。
就職後の定着支援での発達障害特性の把握
就職後の定着支援(第182条第1項・月1回以上)では、発達障害の特性に関連した職場での困りごとを確認します。
- 業務の手順を口頭で伝えられても覚えられない→チェックリストの活用を企業に提案できるか
- 複数の業務を同時に頼まれると混乱する→優先順位の確認方法を職場で決めているか
- 予定外の残業・急な業務変更に強いストレスを感じる→事前に伝えてもらうよう企業に依頼できるか
- 会議や朝礼の場で発言できない→発言しなくてよい場面かどうかを企業担当者と確認する
研修で確認する3つのこと
- 利用者の発達障害の特性と就職活動場面での現れ方を職員間で共有する:個別支援計画の記載をもとに、担当職員が面接練習・実習同行の場面を準備する
- 障害開示(オープン/クローズ)の選択肢と各選択肢の現実的な結果を伝える手順を確認する:支援者が誘導しない意思決定支援の原則を全員で確認する
- 企業実習前の感覚過敏確認と企業担当者への説明方針を決める:「何を、誰の同意を得て、どこまで伝えるか」を事業所として統一する
まとめ
就労移行支援の発達障害支援研修では、作業場での特性対応にとどまらず、面接・企業実習・定着支援という就職活動のすべての場面での特性把握と対応手順を職員間で共有します。障害開示の選択は本人が行うもので、支援者は選択肢の情報を提供します。企業実習中の感覚過敏への対応は事前の準備と企業担当者との連携が鍵です。
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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第174条・第181条・第182条。発達障害の特性・支援方法は個人差があります。具体的な対応は主治医・専門支援機関と連携して判断してください。


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